・♯.2『装着せよ。強き自分』その2からの続きです。先にそちらを読むことをお勧めします。
「一体どうするの?」
にとりは興味津々といった面持ちでトニーを見ていた。彼はその手に持った赤いケースを地面に設置すると、
「こうするのさ」
そう言ってケースの一部を足で勢いよく踏み込んだ。すると機械の作動音と同時にケースの内部から赤と銀の装甲が展開する。彼はその開いたケースに両腕を入れ内部からさらに装甲を引き出した。そして胸の辺りで引き出した装甲ごと腕を開くと赤と銀の鋼がスライドし彼の全身を包み込む。
「おおッ!!!すっご――――い!!!!どうなってんのあれ!?」
「たまげたね。こりゃ・・・」
にとりは目を輝かせその姿に興奮し、霖之助は呆然とこちらを見ている。その間も鋼のスライドは続き定位置まで移動した装甲はロックされた。
そして最後、頭に銀色のマスクが装着されると胸部装甲から覗くアーク・リアクターから眩い光があふれだし、トニー・スタークは再び『アイアンマン』となった。
『こいつはMk-Ⅴ、携帯式のパワードスーツだ。機能は省略されているが性能的に問題ない』
トニーはセンサーを起動させ周囲をスキャンした。すると地上に三つ、空中に一つの反応がある。空中を確認すると魔理沙がドローンと激しいドッグファイトを続けていた。どうやら一機落としたらしい。一方地上では頭部を潰した機体が再起動し残りの二機とこちらへ近づいてきている。それを確認しトニーは走り出した。
「大丈夫なのかいトニー?」
『こいつなら問題ない。あとは任せろ』
前進するアイアンマンのセンサーが後ろからきた存在を知らせた。
『ニトリ?』
「その通り。備えあれば憂いなしって言うしね」
後ろからにとりが飛んできた。
『相手は戦争用の兵器だ。危険だぞ』
「それは承知してるよ。でもさ一対三じゃ不公平だよ。何があるかわかんないし」
この状況では確かにそうだ。敵の増援や不測の事態もありえる。それにここは自分の知らない世界だ。
『分かった。では君は光学迷彩で隠れつつ援護してくれ』
にとりは頷き、オプティカルカモフラージュを起動させ景色に溶け込んだ。
アイアンマンはドローンに標準をロックし腕をかざした。するとその開かれた鉄の掌からエネルギー兵器リパルサー・レイが発射される。放たれた光線は先行して進んできていた空軍仕様のドローンを一撃で吹き飛ばした。
『調子は良好のようだ。次!』
続けて、頭部が潰れかけているドローンに両手でのリパルサー・レイが炸裂し強力なプラズマエネルギーの直撃を受けた敵は爆発四散した。
さらにアイアンマンは異質な人型メカを探そうとするが、センサーに映る最初に吹き飛ばしたドローンの反応がおかしいことに気がついた。
カメラをズームし確認するとその全身は黒く変色しており、次の瞬間には氷が砕けるように消えてしまった。
『これは・・・どうなっているんだ?』
その時、にとりの雄叫びが聞こえた。
「目標確認!リミッター解除!いっけー!!」
光学迷彩が解けると同時に、彼女の背負うリュックのサイドポケットから巨大な拳が出現し凄まじい勢いで隠れていた敵に伸びる。異質な人型は避けようとするが間に合わない。
「遅い!」
加速した凶悪な拳は鉄のボディーを砕くには十分すぎた。
「デーストローイィィィ!!!」
激しい破砕音が響き異質な人型は粉砕された。やはりその破片も空中で黒ずみ地面に落ちる前に消滅する。
『これで後は空のやつだけか』
トニーは空中で戦う魔理沙を確認しようと再度スキャンを行う。すると先ほどは一つだったはずの機影が一瞬二つになった。
『まさか増援か?』
しかし詳細な分析を行う前に影はレーダーから消えた。ただの誤認だったのだろうか。
そして上空では新たな動きが生まれていた。空中で絡み合うように魔理沙とドッグファイトを続けていたドローンが突然方向を変え香霖堂へ猛スピードで向かっていったのだ。
「おいおい、なんだよ突然」
魔理沙を無視してドローンは高速でアイアンマンとにとりの頭上を通り過ぎていく。その軌道から予測される行動は店への特攻だった。しかも道と店の間には霖之助が立っている。
『まずい!リンノスケ今すぐ離れろ!!』
「店主逃げてー!!」
自分に特攻してくる形になったドローンに抗議の言葉を吐きつつ霖之助は全力疾走で店の方向へ逃げる。
「ちくしょー!何の恨みがあるんだよ!僕は関係ないじゃないか!このポンコツ!!」
アイアンマンは標準を合わせリパルサー・レイの発射体勢をとる。
『伏せろ!お前も吹き飛ぶぞ!』
その声を聞き、霖之助は道の横の草むらに飛び込んだ。アイアンマンはそれを確認しリパルサー・レイを発射した。
「僕の店―――――――――!!!!」
放たれた攻撃は店のぎりぎり手前でドローンに命中し、閃光が周囲を包む。
こうして一つの戦いに終止符が打たれた。
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さきほど魔理沙が戦闘していた高度の遥か上空に人影があった。
「意外と分かっちゃうのね。なかなかいい性能してるわ、あのスーツ」
その姿は少女で黒と赤を基調としたゴスロリ風の服装をしている。少女は愉快そうに地上の彼らを見下ろし一人つぶやく。
「さすがは黄金の
そして少女は頭上に現れた対極図のような魔方陣に吸い込まれるように消えていった。その様子を見ていたものは誰もいない。
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香霖堂の前に四人は集まっていた。危機を退けた彼らの顔は安堵と疲労が入り混じった表情をしている。だが店主だけは違った。彼は地面で体育座りをするようにしゃがみ込み悲しみを爆発させている。そんな霖之助に魔理沙とトニーは声をかけた。
「いや~まさかこっちに逃げてくるなんて予想外だったぜ。泣くなよ香霖」
「すまないリンノスケ。まさかこんな事になるとは」
香霖堂の正面玄関は最後のドローン撃破の爆風で悲惨な光景になっていた。入り口の扉はひしゃげ穴が開き、軒先に飾ってある看板は黒焦げとなり、さらに店の外に置かれていた道具は爆風でめちゃくちゃな状態だ。
「もう二度と手に入らないかもしれない物もあったのに・・・ひどすぎる!僕が何をしたっていうのさ!!」
体育座りから突然立ち上がり、霖之助は狂ったように意味不明なジェスチャーを繰り返している。その形容しがたい動きに三人は背を向けひそひそと会話した。
「彼はいつもあんなエキセントリックな怒り方をするのか?」
「ありゃ相当やばいな。昔ちょっとした出来心で大切にしてた熊の置物を、本で見たパンダとかいう生き物に改造した時もあんな動きしてたぜ。そのときは二週間くらい口も聞いてもらえなかった。ちゃんと熊に戻したのに・・・・・・」
「魔理沙もかなりエキセントリックだよね。問題はそこじゃないと思うよ」
「結局どうすればいいんだ。彼とは付き合いが長いんだろう?」
「・・・じゃあ説得してみるよ」
魔理沙はやれやれという仕草をしてから動きをエスカレートさせる店主の背後にすばやく回りこんだ。
「香霖機嫌直せよ・・・ほら!」
「あべし!!」
首筋にきれいなチョップが入り霖之助は地面に沈んだ。
「「物理的な説得かよ!!」」
ツッコミを入れる二人を無視し、よし!と何かをやり遂げたように魔理沙はガッツポーズを決める。
「私は一足先に霊夢のとこにいって状況を確認してくる。香霖は起きたら元に戻ってるはずだから、博麗神社まであんたを案内するように伝えてくれ。じゃあ嫌な感じがするから急ぐぜ」
彼女はそう言い残し逃げるように飛んでいってしまった。残された二人はなんともいえない表情で立っている。
「さて一応問題は解決したが、博麗神社というのは何なんだ?そこに何がある?」
「ああ、トニーは知らないよね。簡単に説明すると博麗神社は外の世界と繋がってる場所で巫女の霊夢が管理してるんだよ。まあ管理といっていいかは微妙だけど」
外の世界に通じる場所。それはつまり、
「そこに行けば元の世界に帰れるというわけか」
「ご名答。外から迷い込んだ人間は大抵そこから帰るようになってるんだ。とりあえず行くのは店主が起きてからだけどね」
霖之助が言っていた打開策とはこの事だったのだろう。元の世界に帰る方法は見つかった。しかしトニーはすぐに帰ることはできないと思う。
それはさきほどの襲撃者達の存在だ。倒したドローンや異質なあのメカはAIの暴走で動いているようには見えず、明確にこちらを狙ってきていた。おそらく誰かが差し向けたものだろう。それと撃破したドローンの破片の消え方も気にかかる。さらに残っているであろうパワードスーツの行方も探さなくてはいけない。
まったく忙しくなりそうだ。そんなことを考えつつトニーはバラバラになったMk-Ⅰの装甲を拾い上げた。
「そうだな。リンノスケが起きるまでとりあえずこいつを修理しよう。手伝ってくれるか、ニトリ?」
「もちろん!聞きたいところもあったしね」
それはカミナが大妖精達と出会った直後の出来事であった。
この後博麗神社へと向った彼らに待ち受ける巫女との出会いはこの世界に何をもたらすのだろう。
そして新たな客人達が幻想郷へ招かれ、物語の歯車は再び回りだす。黒い観客に見守られながら・・・・・・。
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カミナとトニーが博麗神社へ向かったその頃、妖怪の山でさまよう怪しい影が二つ。果たして彼らの正体は?
次回、『忍者、飛ばされるの巻』
第二話終了になります。
次回よりニニンがシノブ伝篇に話は移ります。
そんなわけで次回