・♯.3『忍者、飛ばされるの巻』その1からの続きです。先にそちらを読むことをお勧めします。
「こんばんわ、忍者のお嬢さん。ちょっと話があるんだけど」
「へ!?」
夕飯の片付けをしていた忍が後ろを向くと、そこには女性が一人立っていた。見たところ二十代後半というところの女性はにこにこしながらこちらを見ている。不審に思ったがとりあえず忍は聞いた。
「あの、どういったお話でしょうか」
「私は八雲紫。あなたに簡単な人助けの手伝いをお願いしたいの。仲間と一緒にね」
突然だと思う。しかも自分だけでなくクラスメイトも必要らしい。
「みなさんに聞いてみないと答えられません。あと見習いの忍者ではお役に立てないと思いますよ。プロの方に相談してみてはどうでしょうか?」
「大丈夫よ。期待してるのは質より量だし問題ないわ。それにあなた達にしかできないこともあるのよ。それじゃあ行きましょう」
「えっ!な、何ですかコレ!吸い込まれる!?」
忍はスキマに呑み込まれ、そこで意識は闇に沈んだ。だが忍はその後何かを見た気がする。
黒く赤く、そして優しい、とても冷たい微笑を。
「・・・ぶさん、忍さん。朝ですよ。起きてください」
気がつけば目の前に早苗がいる。どうやら昨日の夢を見ていたようだ。
「あ、おはようございます」
しかしこれは現実なのだろうかと忍は思う。早苗から聞いた幻想郷というこの世界は、妖怪も神様も存在する御伽話のような場所だ。最初は冗談かと思ったが二人の神様が出てきて、飛んだりお粥を出したりしたのを見て深く考えるのはやめた。
『ここでは常識に囚われていては生きていけません』
そんな昨日の早苗の言葉を思い出す・・・郷に入れば郷に従えということだろうか。
「朝ごはんの支度を手伝ってもらえますか。さすがに三食お粥では皆さん飽きてしまいますからね、うちの神様も食事にはうるさいんですよ。ほかに楽しみもありませんし」
「もちろんです。着替えたらすぐにお手伝いします」
とりあえず前向きに考えよう。自分の取り柄は元気と健康なのだから。
そして忍は朝日を見て思う。今日はどんな一日になるだろうかと・・・。
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「起きろ変態ども」
鉄格子が開かれ、音速丸とサスケは座敷牢から別の部屋へと連れていかれる。
昨日崖から落ち天狗の水浴び場にダイブしてしまった彼らは、あの後椛と水浴び場にいた天狗達に袋叩きにされ、気を失い牢に放り込まれていた。しかしその時の顔は終始幸福そうで周りにいた誰もが気味悪がった。ちなみに今もそうだ。
「これから貴様等を尋問する。正直に答えたほうが身のためだぞ」
二人が入ったその部屋は、殺風景で机と椅子が置いてあるだけだった。しかし気になることが一つある。それは壁や床についている何かの跡だ。それは赤黒い色で壁と床をびっしりと埋めている
「すいません。聞きたいんですけど、あの壁に付いてる染みとか文字はなんでしょう」
先ほどまでにやけていたサスケは壁に染み付いた無数の跡を見て不安そうに聞いた。椛は平然と答える。
「あれは口が堅かった連中が最後に残した遺書みたいなものだ。声にならない断末魔ともいうが」
一瞬で空気も心も凍りついた。どうやらここは夢というより悪夢のほうが正しい世界のようだ。
「サ、サスケなんかヤバイぞ、これ!」
「もう僕等、終わりなんじゃないんでしょうか・・・いやだ!死にたくない!」
二人は縄で縛られた手で頭を抱え泣き出しだした。椛は鬱陶しいと思いつつ告げた。
「まったく賑やかな変態達だ。別に拷問してどうこうする気はない。既に貴様等の情報は守矢神社から回ってきているのでな。こちらの質問に答えれば仲間のところに案内してやる。私は『
そして二人は椛から、自分達の身元と幻想郷に飛ばされた経緯を聞かれた。
音速丸達はありのままを説明しこの世界について色々質問した後、納得したように椛に言った。
「つまり、この幻想郷って場所はとんでもないパラダイスで間違いないってわけだ。やっぱりありがとう神様!!」
「本当ですね。てっきり僕は、拷問されて生贄か何かにされるのと思いましたよ音速丸さん!それに忍ちゃん達もいるみたいですから安心しました!」
やはり鬱陶しい。聞けるだけの情報は聞いたようなので、さっさと二人を守矢神社に引渡したほうがいいだろう。また何か起こされても困るし。そう椛が思っていると取り調べ室のドアが突然開いた。入ってきたのは椛より少し背の低いカメラを下げた少女だ。
「やっと見つけた。探すのに意外と手間取ってしまいました」
「はっ!エンジェルがまた一人!」
「羽生えてますしね、黒いですけど」
椛を見ればいやそうな顔をしているが、そんなことはお構いなしにその少女は続ける。
「早速ですけど質問させてもらいますよ。名前と職業をお願いします」
彼女は椛の上司らしく『
「さて、これから私は博麗神社へ取材に行きます。なんでもあそこにも、面白い外の人間が来てるらしいですから。それでは機会があればどこかで」
疾風のような人物だと二人は思う。椛はため息をついた。
「やっといったか…まったく毎度毎度困った人だ。今度は姫海棠も巻き込んでいるようだし」
「あんたの上司なんだろ。苦手なのか?」
音速丸に言われ椛は答える。
「とくに嫌っているわけでない。ただもう少し真面目にしていてほしい。ああ見えても立場がある人なのだ」
遠い目をしている彼女にサスケは声をかける。なんとなく気持ちが分かる気がした。それは自分も、忍者学園頭領である音速丸との上下関係で、たまにウンザリするときがあったからだろう。
「なかなか大変ですね。天狗の世界も」
その言葉の響きは同情というより気遣いだった。
「すまん、忘れてくれ。それより仲間のところに約束した通り案内しよう」
そして二人は守矢神社に椛と向かう。時間はあっという間に正午を過ぎていた。
三話の2になります。以上です