目を開けたらそこは緑一色の液体がみっちり詰まった水槽の中だった。
「!?」
水槽の外では白衣を着た医者か科学者のような人間が何人か確認出来る。
試しに水槽の壁をドンドンと叩いてみる。
俺に気がついて驚いているようだが、なんと言っているかイマイチ分からない。
呼吸は口に装着された器具で問題なく出来るが、一体ここは何処なのか。
そんな事を考えていたら緑色の液体ごと水槽からドジャーッと、金魚鉢から放り出された金魚の様に床に叩きつけられた。
水槽の中は温かかったが、床は固くて冷たかった。
「ゴホッ! ガハッ! あ、あんたらは?」
「ほう? 言葉が喋れるのか? その上、明確な自我があるように思える。実験は大成功と言うわけだ」
自分に対して、実に興味深いと言った感じの視線を向ける相手の姿を確認する。
小太り……いや、デブと言ったほうがいい体型の眼鏡を掛けた男。
年齢は見た感じでは20代後半。
身長は160cmそこそこ。
着ている服は白いスーツに白いコート。
「では自己紹介だ。私はモンティナ・マックス少佐。もしくは総統代行と呼ばれている。
ああ、君の名前は言わなくていい。初めに言っておくが、君は我々によって造られた」
見た目と声と名前は完全に『HELLSING』の少佐だ。飛田展男ボイスの。
渡されたタオルで身体を拭いて服を着ながら、少佐は俺の事を聞いてもいないのに説明してくれた。要点を纏めると……。
「つまり、自分は死人の細胞から作られたクローン人間のモルモットと言うことですか」
「それなりの知能もあるようだね。理解が早くて助かるよ。
君の身体は、元々は死体を蘇らせて不死身の戦士を運用する事を目的とした実験の為に造られた体だ。ただ、今回はちょっと別の実験に使わせてもらったのだよ」
つまりは、『仮面ライダーW』におけるネクロオーバー的な実験と実戦投入が少佐の主な目的だが、今の俺はゾンビ兵士ではないと。
この世界には吸血鬼がいないのだろうか?
ついでに少佐繋がりで石仮面も無いのか?
「今回は平行世界を検証するに当たって、『平行世界の存在を此方側に寄越せるのか』と言う実験をしていてね。
我々の知らない技術や、知識を齎してくれる存在を確保する事がその体を使った実験の目的だ」
少佐が言うには、この実験の他にも娯楽小説の中の仮定や理論、設定を実際に検証してみたらしい。
それらの実験で、自分は初の成功例なのだとか。
「何、クローンだからと言って心配する事は何も無い。テロメアも短くは無いし、ちゃんと生殖能力はある。誰とでも何人とでも励むと良い」
「それは有り難い話ですが、このショタボディでナニをどうしろと?」
「ハハハ、言うじゃないか。冗談はさておき、それらの検証に関する実験は君が成功するまで全て失敗している。
そして、君は成功例第1号であると同時に実験体596号と言うわけだ」
「500回を超えた辺りで諦めようとは思わなかったのが凄いですね」
「我々は執念深いのが取り柄なのでね。幾らでも何度でも降らない結果など覆してやろうと言う、心底諦めないどうしようもない連中なのだよ」
「諦めが人を殺すってやつですね。諦めを踏破した時、人は運命を踏破する権利人になる」
「ほう……良い事を言うな君は」
本当は踏破するのは人道なのですが。
しかも発言者が最強の吸血鬼ときている。
しかし、少佐の眼つきが変わった気がする。
観察して値踏みするような目から、獲物を見つけてロックオンしたような目に変わったような……。
「ところで、君はどのようにしてココに来たのかね? 参考までに教えて欲しい。
研究者によると、トラックに轢かれるパターンと、神との遭遇を果たしたパターンがメジャーらしいのだが、君はどんな涙を誘う感動的な死に方と、目を背けたくなるような残酷な最期を迎えたのかね?」
「……朝起きたらスマホに『マトリックスはお前を見ている。白兎を追え』ってメールが届きました」
「なるほど、それで?」
「丁度、夏季休講で山に行く予定だったので山でウサギを探していたら熊に遭遇して強烈な右フックを頭に喰らって吹っ飛ばされました」
「……なるほど、所で君はウサギの生態を詳しく知らないようだね」
「ウサギの生態?」
「そう、特に君が探していた野ウサギだ。野ウサギが白いのは雪が降る冬の間だけで、夏場に山で白兎に遭遇する事はまずありえない。飼育化にある白いウサギを人為的に放さない限りはね」
そう言われれば、確かにそうだ。
『NARUTO』でもカカシ先生が似たような事を言っていた気がする。
「どうやら言われるまで全く気がつかなかったようだね」
「首の無い俺の体が、俺が最後に見たものです」
「そうか。もっとも、そのメールの送り主は恐らく我々だがね」
「!?」
「そのメールと言う形で我々のアプローチは無数の平行世界と、数多の人間の中から君を選んだ。そして、君が我々を選んだのだ。
いずれにせよ、ようやく生まれた成功例である君を、それこそ野ウサギの様に野に放すつもりは無いので覚悟してくれたまえ」
正直、意識が戻ったときは液体の中に居たし、チューブに繋がれていたから本当にマトリックスの世界に来たと思ったんだけどな……。
「では、我々に協力するならこの赤いカプセルを、協力を拒むならこのイヌのウ○コを飲むんだ」
「それどっちもイヌのウ○コじゃないですか?」
鷹の爪の吉田がネオに覚醒した原因がアレだとしたら最悪だ。
エンディングのレオナルド博士は可愛かったが。
「中々どうして頭が回る。いや、大したものだ」
「イヌのウ○コを飲ませておいて、これで仲間だって言う精神は全く理解できませんが」
「その前に君の名前を決めておこうか。いつまでも596号じゃナンセンスだ」
このデブ話題を変えやがった。
しかし、名前か。せっかくだから少佐に名付けてもらおう。
「少佐が、ゴットファーザーになって下さい」
「そうか。そうだね……君は日本語で話しているが、君は元々日本人だったのかな?」
「はい。日本人ですけど」
「それなら語呂あわせで、『ゴクロー』でいいだろう。ファミリーネームは『シュレディンガー』と決めていた。どうだ、センスの光る良い名前だろう?」
そんな事はどうでもいい。即座に頭に手をやって確認する。
……どうやら猫耳は生えていないようだ。
「? どうかしたのかね」
「いえ……。確か『シュレディンガー』ではなく、『シュレーディンガー』が正しいのでは? エルヴィン・シュレーディンガー」
「良く知っているな。いや、それはつまり平行世界と共通の人物。歴史や発明があるという事か。実に興味深い」
「しかし、もうちょっと捻っても良かったのではないかと」
「良いじゃないか。もしも君が0721号だったなら、君は悲惨で陰惨で陰鬱極まりない、理由の無い悪意に晒され続ける、ハンカチ無しでは語れない悲劇的な人生を送っていたんだから」
割りとテキトーな少佐のネーミングにちょっと後悔したが、そう言われると言い返しづらい。
そんな葛藤を知ってか知らずか、当の少佐は実に愉快だと言わんばかりの悪い笑顔を浮かべている。
「ところで、こんな事をする我々には『敵』と言える存在がいる」
「それは一勢力ですか? それとも一個人ですか?」
「一勢力だ。彼らの名は『亡国機業【ファントムタスク】』。簡単に言えばテロリストだ」
少佐の言う『亡国機業』とは裏の世界で暗躍する秘密結社。
第二次世界大戦中に発足したとされているテロ組織で、50年以上前から活動している。
組織の目的や存在理由や規模などの詳細が一切不明の謎が多い組織なのだとか。
「それってむしろ、『目的の為に手段を選ばない』のではなくて、『手段の為に目的を選ばない』って言うどうしようもない連中なのでは?」
「ははは、確かにそうだろうな。実際にそうだろうさ」
「ちなみに、ここはどんな組織なのですか?」
「正直な所、反社会的などうしようもない連中と言う点で我々も似たようなものだな」
少佐が率いる組織の名前は『ミレニアム』。
予想できたが、やっぱりナチスだった。
『ミレニアム』とは、ナチスの人員物資移送計画の部隊名であり計画名。
極秘人員物資移送計画の事なのだとか。
そして、その移送先は親ドイツ国家群の多い南米。
ちなみにここも南米のジャブロー。
その活動目的は総統特務666号と言う計画の成就。
総統閣下こと、ひっとらぁ伯父サンはゲルマン民族が人類の頂点に立つことを信じて疑わなかった。
問題は頂点に立った後でその権力をどうすれば永遠に継続させる事ができるのか……と言うことだった。
その為に医学、薬学、科学力等様々な分野で研究を続けていたのがこの『ミレニアム』なのだと言う。
具体的には不老不死とか、強力な武器の製造とか、思考・価値観の統一だとか。
戦争がとっくの昔に終わっているにも関わらず、未だにナチス・ドイツの再起を狙っている根性は凄まじい。
「しかし、3年ほど前に世界の状況が大きく変わってしまった。
インフィニット・ストラトス。通称ISと呼ばれる兵器が現れたことでね」
少佐の言う『インフィニット・ストラトス』とは、日本人科学者の篠ノ之束が開発したマルチフォーム・スーツで、本来は宇宙開発を目的としたものだったが、発表された当時は注目されなかった。
何でも、『現行兵器全てを凌駕する』と言う発言が問題だったらしい。
ところが、ISの存在が発表されてから1カ月後。
日本を射程内とするミサイルの配備されたすべての軍事基地のコンピュータが一斉にハッキングされ、2341発以上のミサイルが日本へ向けて発射。
その約半数のミサイルを搭乗者不明のIS。通称「白騎士」が迎撃した上、「白騎士」を捕獲・撃破しようと各国が送り込んだ大量の戦闘機や戦闘艦等の軍事兵器の大半を単独で無力化した。
この『白騎士事件』以降、ISの持つ驚異的な戦闘能力に関心が高まり、兵器としての価値を見出された。
また、原因は不明であるがISは女性にしか動かせず、それが原因でこの世界は女尊男卑の世の中になっていると言う。
実際の映像を見せてもらったが、印象としては簡易化したモビルスーツだ。
話だけだったら『宇宙キター!』なリーゼントの高校生を想像していた。
「そこで我々はこうして秘密裏に最強の兵器ISに対抗できる兵器を開発していると言う訳だ。君の実験も、不死身の兵士もその為だ。
早速だが、君の世界の兵器を教えてくれまいか?」
いや、ぶっちゃけた話、あんなモビルスーツもどき見せられたら、知っている兵器で役に立ちそうなモノが無い。
どうしたものかと考えていると、少佐が察してくれたのか、続けて説明してくれた。
「ああ、なんだったら創作物でも構わないよ。
我々が欲しているのは我々の知らないアイディア。我々が思い至れない発想なのだ。可能か不可能かなどは初めから問題ではない」
そう言われても何がいいのだろう。
……この際、好きな特撮ヒーローでも良いかな?
「地球の記憶が封印された『ガイアメモリ』と、欲望の結晶である『コアメダル』の話なんてどうでしょうか。どちらも創作物ですが」
「実に興味深い。是非とも聞かせてくれ給え」
場所を変えて、少佐と二人で話すことになった。
若干ヤケになって、『仮面ライダーW』と『仮面ライダーオーズ』についてペラペラ喋った。
途中から明らかにドクと思える血まみれの白衣を着た科学者と一緒に、包帯グルグル巻きにサングラスを掛けたシュラウド的な女科学者が来たときは度肝を抜いた。
あと、ジョンブルなおじいちゃんバトラーが差し入れをもって来てくれたが、明らかにHELLSINGのおじいちゃんバトラーよりもヨボヨボだ。80歳くらいか?
そんな、おじいちゃんバトラーが作ってくれたココアとお茶菓子を楽しみながら、各自の設定を話して用意された紙にイラストを書いていく。
『ガイアメモリ』と『コアメダル』、各種ドライバーに各仮面ライダーのデザイン。
兎に角、思い出せる限り紙に鉛筆で書いていく。
「実に有意義な時間だった。今日はもう休み給え。明日から楽しくなるぞ、シュレディンガー君」
2時間ほど経過した所で今日の所はお開きになった。
少佐はイラストとメモを全て回収して部屋から去っていった。
入れ違いでドクがやってきて着いてくるように言われた。
案内された先は科学者の研究室だった。
「今日はココで寝なさい。明日には部屋を準備しておく」
視線の先には寝袋が一つ。
せめて段ボールと新聞紙があれば床の冷たさがダイレクトに伝わらなくていいのだが。
試しに要求したら持って来てくれた。
これはこれで伊達さんみたいでいいじゃないかと思って妥協して寝た。
○○○
彼を案内し、戻ってきたドクに早速質問してみた。
「どうかね彼は?」
「素直に従っています。段ボールと新聞紙を要求してきましたので、与えましたら寝袋の下に敷いて寝ています。明らかにそうした経験が有るかと」
素直に従っているか。まあ、反抗した所で今は大した事も出来ない事を分かっているのだろう。しかし、最初に要求した物がダンボールと新聞紙?
笑わせてくれるね。普通なら文句の一つも言いたくなるだろうに。
「しかし、よりによってあの素体が成功するとは……」
「ああ、よりにもよってあの素体が選ばれるとはね。
因縁や因果。或いは運命と言うものを信じずにはいられないよ」
「もしくは何者かの作為ですな」
シュレディンガーがシュラウドと呼んでいた科学者。
彼女が我々に協力する理由はISのテロによって死んだ息子を蘇らせる事。
そして、ISに対する復讐。いや、この世界に対する復讐と言うべきか。
過去に不死身のアンデッドを兵士として実戦投入する事を考えていたが、それらは思考能力が著しく低く、生前の状態とは到底比べ物になら無いほど粗末なもの。
それは死滅した脳細胞は戻らない事の証明。
それは失われた記憶は戻らない事の証明。
それは終わった命は戻らない事の証明。
そんな当たり前の事を確認する研究の毎日で、ある実験が行なわれた。
今いる世界とは似ているようでどこかが違う世界。
平行世界。或いは異世界や別世界。
そんな世界の住人を此方の世界に呼び寄せ、その知識を得ることが出来ないか。
その実験の一環で、平行世界の魂だけを此方に呼び寄せると言う実験で、平行世界の魂の器として様々なクローンが用意された。
その内の一体が、彼女の息子のクローンだったわけだが、これが当たった。
彼女の息子のクローンである彼だけが成功した。
私としては喜ばしいが、彼女としては複雑な思いだっただろう。
再会したい本人を呼び寄せる事は叶わず、何の接点も無い他人を呼び寄せる事は叶った。
それも誰よりも再会を望んだ人間の肉体を器として。
なんとも因縁めいた残酷な奇跡が起きたものだ。
「それにしても面白い。欲望の結晶コアメダルと、地球の記憶ガイアメモリ。実に興味深いと思わないかね。ドク」
「ええ。しかし、彼は創作物だと言っていましたがやたらと詳しかったですな」
確かに妙に詳しかった。
ガイアメモリの精製にはGマイクロ波と言う特殊電磁波が必要だとか。
ガイアメモリ工場に必要な要素は広大な底面積と深さを持った建造物。そしてGマイクロ波を使用しても問題の無い密閉性だとか。
もしもGマイクロ波が漏れ出したら周囲一帯の自然環境が電子レンジで加熱されたような過熱現象を引き起こしてしまうのだとか。
しかし、彼の話の中で最も興味を持ったのは、コアメダルとセルメダルから造られる人工生物グリードについてだった。
コアメダルを核とし、セルメダルで肉体を構成する人工生命グリード。
メダルの塊である彼らは『生き物と物の中間の様な自我を持つ存在』なのだと言う。
この話を聞いて、私はある事を考えていた。
ISコアの深層にはそれぞれ独自の意識があると言われ、それらが操縦時間に比例して操縦者の特性を理解し、操縦者がよりISの性能を引き出せるようにするのだと言う。
未だにその意識と意志の疎通を果たした例を聞いた事が無いが、ISもまたグリードの様に、『生き物と物の中間に位置する明確な自我を持つ存在』なのではないかと、操縦者の『強くなりたいという欲望を糧に成長する存在』なのではないかと考えた。
彼が言うには、生まれた順番はオーズが先でグリードが後らしいが、逆にグリードからオーズが生まれても不思議はないのではなかろうか。
この意見を彼に言ったところ『それは正に仮面ライダーですね』と言っていた。
詳しい説明を求めると『仮面ライダーとは怪人のなりそこないであり、元々は同じ闇から生まれた怪人と紙一重の存在であり、改造人間なのだ』と答えた。
「我々も一つ発想を変えようではないか。
ISを上回るモノを造る為に、ISを礎にしてソレを造ればいい……とね。
幸いにしてISコアなら幾らか奪取している。それらISコアを全て用いて、あらゆる方法を試して、全く新しいモノを造り出す。
何、全て使い潰しても構わないさ。なんならもう少し調達すれば良い」
「正気ですか少佐殿。ISコアは世界に467個しか無いのですよ」
「馬鹿なことを言うな世界に467個もあるんじゃないか」
ミレニアムの協力者は世界中にいる。
今までの研究で得られた物をエサにISコアの奪取に協力してもらう。
禁断の甘い果実に誘われる馬鹿も、この世界に恨みを持つ人間も幾らでもいる。
それに面白い事を聞けた。
彼にISについて説明した時だ。
『かなり突拍子も無いとは自分でも思うのですが、そのISコアって本当に地球上で作られた物なんですかね? 別の惑星の金属生命体をサイボーグ化したとかそう言うオチじゃないんですか?』
彼が言う通りかなり突拍子も無いが、何か心当たりがあるようだ。
これはまだまだ引き出しがありそうで期待できる。
なにより、我々に理解があるように思えるし、否定的な感情も持っていないようだ。
彼ならば、もしかしたら、もしかするかも知れない。
「彼が教えてくれた『仮面ライダー』と言う存在。これが、我々が目指すべき到達点だ。これより我々は『仮面ライダー製造計画』をスタートさせる」
狂気と狂喜と驚喜の入り混じる一室で、異世界の知識を元に、私達は準備を始めた。
「楽しそうですね。少佐」
「当然だろう。考えてみたまえ。闘争だよ、闘争。きっと世界を巻き込んだ血みどろの闘争になるに違いない。闘争。闘争だよ……」
○○○
制服と私室を与えられて、このミレニアムの施設で生活しているが、なんとも個性的な面々ばかりだった。
ナチスの残党。ドイツ第三帝国最後の敗残兵とか言っているが、全員がドイツ人で構成されているわけではなく、実際は様々な人種が混ざった寄せ集め集団と言った感じだ。
「確かに今の我々はナチスの残党と言うよりは、ISを敵視し、ISを否定し、ISに挑戦する一反撃勢力と言うべきだ。
それにナチスは別にドイツ人だけで構成されているわけではない。亡命したロシア人の幹部だっていたんだ」
基本的には実技と座学とお茶を飲む毎日。
座学はドクとシュラウドとよぼよぼウォルター。たまに少佐も教えてくれる。
しかし、実技に関する教育係がなんとも癖の強い面子だった。
魔弾の射手の異名を持つ駄目な子のレッテルを貼られた坂本真綾ボイスの狙撃手。
大鎌を持ったTHEガッツのコスプレが似合いそうな姉御。
これに素手での格闘戦に無口な大尉が加わる。
しかも全員割りと容赦が無い。
毎日の様にボロ雑巾にされている。
だが、負けっぱなしは性に合わないのでひたすら食いつく。
身体に傷は増えていくが、充実した毎日であると言える。
「ココにいる女性は大半がISの適正が壊滅的でね。だから、彼女達が使っている武器は対IS戦を想定した特別なものだ。
君に施されている訓練もまた、対IS戦を想定したものだ。生身でも戦えるように」
「骨が鉄で出来てるのかと思う位、攻撃が重いです」
「よくわかったな。確かに身体の半分位は機械だ。文字通りの筋金入り、所謂サイボーグだな」
ああ、吸血鬼がいない世界だから、幹部クラスがサイボーグなんですね。分かります。
「そうですか。ドクとシュラウドは?」
「ちょっと実験をしていてね。何、君にとっても悪い事ではない。むしろモチベーションが上がるだろう。断言する」
「おじいちゃんは?」
「今日のお茶会を張り切っている。君がココに着てから随分と元気になったよ」
●●●
しばらくして、確かにモチベーションが上がるものを渡された。
「試作品だがね。君の話を参考にして作ってみたのだよ。
とりあえず、これらを生身で自由に使えるようになってくれ給え」
そこに置かれているのは様々な武器。
オーズの誕生日プレゼントである、ジャリ剣こと『メダジャリバー』。
風都の半分こ怪人が使う『メタルシャフト』と『トリガーマグナム』。
ハードボイルドの化身の愛銃『スカルマグナム』。
全てを振り切るノンストップ刑事の『エンジンブレード』。
そして永遠の悪魔が愛用する『エターナルエッジ』。
「ライダー装備ですか」
「ああ、後で感想も聞かせてくれ」
確かにコレはモチベーションが上がる。
今の俺は眼がさぞキラキラしている事だろう。
正直言って、ガイアメモリとロストドライバーも欲しい。
「それらも現在製作中だ。君の話を聞いて色々と考えたのだが、我々はコアメダルとオーズドライバーの開発を目標としている。その前段階として、あるものを教材にして試作機の仮面ライダー0号を製作中だ。
ガイアメモリとロストドライバーを使う仮面ライダーをね」
それは良い事を聞いた。しかし試作機の0号ライダーとして、Wの何の仮面ライダーを選んだのか。
ロストドライバーなら、スカル・ジョーカー・サイクロン・エターナルの四人だが、スカルは余りにも恐れ多くて変身できない。あのハードボイルドの化身へと変身する権利は俺には無い。
「なぁに、心配は要らない。君はただ、我々と寝食を共にし、我々と共に心身を鍛え、我々と共に実験し、我々と意見を交換し合う。ただそれだけでいいんだ」
しかし恐るべきは、ミレニアムの科学力。
メダルシステムを作ったのが原作ではドクター真木だが、この世界ではドクとシュラウドとその他大勢らしい。
他のメダルシステムも作っているのだろうか。
カンドロイドは是非とも欲しい。可愛いから。
メモリガジェットも欲しい。カッコイイから。
とりあえず、渡された武器を一通り使ってみる。
エターナルエッジは見た目より重いが問題なく使える。
メタルシャフトとメダジャリバーはかなり重いが何とか振れる。
問題は、エンジンブレード。これが滅茶苦茶に重い!
聞いたら重量が30kgあるらしい。東宝公式サイトの10kg重い方を作りやがった。
トリガーマグナムもスカルマグナムも反動が凄い。
5103みたいに派手に吹っ飛びはしなかったが、肩がイカれそうだ。
「ふむ。それでも的に当たるだけマシだ。私などは生まれてこのかた、一度も的に当たった事がない」
「それでどうやって武装親衛隊に入隊したんですか」
「ああ、それと実弾兵装について何かアイディアはないかね?」
「正直、同じような創作物の話になるのですが」
「構わんよ。むしろそれを望んでいる」
せっかくなので仮面ライダーアギトのG3、G3-X、G4の事を話した。
あれはレーザー等のビーム兵器が皆無だったからな。
G3時代の装備はアンノウンに殆ど効果が無かった気がするが。
しかし、氷川さんは何度アンノウンとの戦いで敗北を喫しても諦めずに最後まで戦った。
あれもまた『諦めを踏破した権利人』の姿の一つなのではなかろうか。
そこら辺を熱く語ったら少佐の食い付きがやたら良かった。
「なるほど。参考にさせてもらうよ」
「あまり役に立たないと思いますが」
「馬鹿を言うな。むしろ大成功に近い。我々は君から得られた情報を元に、一定の成果を上げている。それは確実に恐るべき存在へと至る媒介となる」
確かに聞いた話とイラストだけでココまで形にしたのは凄い技術力だと言える。
正直な感想は『ミレニアムの科学力はァァァァァァァアアア世界一ィィィイイイ! できんことはないイイィーーーーーーッ!!』と叫びたい所だ。
「自信を持ちたまえ、君は確実に素晴らしい存在だよ」
「……感謝の極み」
「さて、今日のトレーニングが済んだら、何時もの場所で今日も存分に語り合おうじゃないか」
そんな事を言って少佐は去っていった。
取り敢えずエンジンブレードを振ることに挑戦する。
「ヒー! ヒー! ヒーヒーヒー!」
魔法使いに変身するわけでも無いが、ヒーヒー言わなければやってられない位重い。
ブレードの切っ先を地面に落したらドゴンと音を立ててヒビが入る。刺さるというよりめり込むだこれは。
こんな代物を生身で使うとは、流石は全てを振り着る男。照井竜は半端じゃない。
トレーニングが終われば、ゴクローのライダーアカデミーが今日も始まるのだ。
他にも色々な作品のネタを喋るからライダーアカデミーと言う名前はどうかと思うけど。
ちなみに生徒は少佐とドクと大尉の三人。
他の人とは一切やった事が無い。
「今日は何のネタ話すかな……」
そう考えた所でふとある事を思い出した。
確か、ショッカーはナチス・ドイツの人体改造技術や人材を受け継いでいるのではなかったかと。
ゾル大佐はかつてアウシュヴィッツ強制収容所の管理人で、正体は狼男ではなかったかと。
イカでビールこと、死神博士はナチス・ドイツに派遣されて臓器移植の研究をしていた日露ハーフではなかったかと。
バダン帝国に至っては南米に潜むナチスの残党そのものではなかったかと。
「……あれ? 俺もしかして『ミレニアム』を『ショッカー』にした?」
もしかしたら、1000回記念のオーズの様な感じで仮面ライダーになるのかも知れんと俺は思った。
キャラクタァア~紹介&解説
ゴクロー・シュレディンガー
本作主人公。IS世界の肉体に平行世界の魂が宿った、『ミレニアム』の対IS最終兵器。肉体はシュラウドもどきの息子のクローン。猫耳はついていない。
見た目は金髪に黒メッシュで、来人→フィリップ→大道克己と変化していく。原作開始時はフィリップと大道克己の中間位をイメージ。
特に何も考えずにベラベラと元ネタを提供し続けた結果、ミレニアムのショッカー化を招く。本家『オーズ』の火野映司とは違った意味で色々悩む事になる宿命。悩みながらも答えを出して前に進むのが仮面ライダーですから。
仮面ライダー
ゴクローの情報により、半ばショッカーと化したミレニアムが製作。本作では、「改造人間の苦悩」とか、「敵と同じ力で戦う」とか、「人間の自由のために戦う」とか、昭和・平成を超えて綿々と続く『仮面ライダー』と言う作品の根本をなんとか表現したいところ。……出来るなら。
ガイアメモリ
マダオボイスの素敵な変身アイテム。本作のガイアメモリ精製方法うんぬんの下りは、『小説仮面ライダーW~Zを継ぐ者~』より参照。作者は『Vシネマ 仮面ライダーエターナル』のスイーツドーパント。