DXオーズドライバーSDX   作:トライアルドーパント

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月曜にスマホで確認したら、無色の評価に色がついて
「へぇ、評価数が5人になると色が付くんだ。よし、これからも頑張ろう!」
……それが数日でお気に入り件数が200件を超えていた。

評価して下さった皆様ありがとうございます。そして、お気に入り件数が250件を突破。ご愛読感謝です。

次回より原作開始です。今年中に終われてよかった。


第10話 還ってきたT/ブリュンヒルデは傷ついて

お茶会から三日後。織斑千冬から束に連絡が来た。『NEVER』の3年間の滞在を認めるのでIS学園に来て欲しいとの事。怪物マシンを配置する場所も同時に送信されてきたので、今回は乗り込んでも良いと言うことなのだろう。

今回は、俺以外の四人はデウス・エクス・マキナ号で向かわせ、俺とアンクは前回同様モノレールと徒歩でIS学園に向かった。服装は大道克己コス。正面受付で、織斑千冬と更識楯無の二人が待っていた。

 

「来たか。IS学園はお前達『NEVER』を受け入れる事に決定した」

 

「そうか。しかし、何故我々の要求が通った?」

 

「見せしめに更識の黒服を何人か老人にしただろう。丸一日経ったら戻ったらしいが」

 

「ああ、アレか。いや、てっきりストーカーの類だと思ったんだ。可愛いのと綺麗なのが4人も居たから」

 

「……そう言う事にしておくか」

 

こんな事を言っているが、ゴクローは割りとノリノリでオールドの能力を使用していた。こんな感じで。

 

『OLD・MAXIMUM-DRIVE!』

 

「うおおおおおおおおおおおおお。きぃさまああああああ……」

 

「『直』は素早いんだぜ。パワー全開だ~~。『グレイトフル……』じゃなかった、『オールド』の『直』ざわりはよおおお」

 

触れた人間を瞬く間に老けさせる信号機の様な三色怪人。どう見てもヒーローには見えない。しかし、ゴクローは「ブッ殺すと心の中で思った」訳ではないので、黒服の拳銃を奪って頭に弾丸を撃ち込んだりはしなかった。

 

「本当にびっくりしたわよ。屈強な男達が皆揃っておじいちゃんになって、お茶とおせんべい食べながら、『天下泰平、はあどぼいるどじゃぁ~』とか言ってたんだから」

 

「でも、一日で戻っただろ」

 

「ええ、お蔭でスムーズに事が運んだわ。手を出すとどんな報復が来るか分からないって」

 

更識楯無が疲れた顔で説明する。追跡した相手でコレなら、敵と判断した相手に対して一体どんな報復を仕掛けてくるか分からない。相手は人知を超越した力を持った存在なのだと知らしめたらしい。

 

「元々貴方達『NEVER』と事を構えるつもりは無かったみたいだけど、これで貴方達にそう簡単に手を出す事は無いでしょう。」

 

「黒服をじいさんにする前から? 何で?」

 

「やっぱり気付いてたんじゃない……。貴方、客観的に自分を見たことある? どんな大国でもISを36機も実戦配備してないわ。国家代表は大体が従軍している専用機持ちだけど、専用機の数はどう見積もっても一国につき3機位。もっと言えば専用機と言っても量産型を改造したケースも多いわ」

 

「ああ、カラーリングとパッケージだけ変えている奴とかいるよな」

 

戦場では基本的に物量が物を言う。戦場での最新装備の優位性と言うのは割りと不確実なもので、より信頼性の高い旧式武器を選ぶ事が最善策であり、これにより対費用効果も期待できる……とミレニアムで習った。こないだのIS大戦でも量産型が多かったのは、そう言う事なのだろう。

 

「それと、国際IS委員会を経由して、ドイツに問い合わせて戦闘記録を見せてもらったわ。非公式ではあるけど、ドイツ代表操縦者のクラリッサ・ハルフォーフを撃破したわよね?」

 

「ああ、その後で乱入されたけどな」

 

「つまりね、貴方は非公式だけどアメリカとドイツに勝っているのよ。それでも『オーズ』の戦闘能力は図りきれない。私だって『オーズ』の事を聞いたとき、絶対に何でも有りの実戦では戦いたくないって思ったわ」

 

コアメダルの事を説明した際に、オーズについても話した。

 

オーズはベルトに装填した3枚のコアメダルの力によって変身し、3枚のコアメダルはそれぞれが頭部・腕部・脚部の3か所に対応している。そしてコアメダルを入れ替える事でその都度様々な姿に変化し、あらゆる状況とあらゆる敵に対応する事ができる。

 

注目されたのは、同色同系統のメダルを3枚揃える事で発動する『コンボ形態』。それぞれのコンボがISの『単一仕様能力』に該当する特殊能力を一つ持つ。経験値を積まなければ使えない限定条件を考えれば『二次移行【セカンドシフト】』と『コンボ形態』は同義である。これが大きな誤解を生んだ。

『単一仕様能力』はIS一機につき一能力と決まっている。しかし、『オーズ』は一機で複数の『単一仕様能力』が使える機体であると言った上で、コンボに変身できないと言わなかった。

これにより、『IS大戦の時は手加減した状態で戦っていたのでは?』と誤解された。手加減して36機のISを相手に勝てる存在が本気になれば、一体どれほどの被害が及ぶか想像してお偉いさんは心底恐怖したそうだ。

 

また、コアメダルを全て見せた事も一つの勘違いを生んだ。

コアメダルは鳥系・昆虫系・猫系・重量系・水棲系・爬虫類系・甲殻系・恐竜系・怪人系・海洋系・害虫系・寒冷系・草食系の合計13種。恐竜系と怪人系はメダルチェンジが出来ない事も話した。

つまり、この世界で造られた『オーズ』がコアメダルを使ってできる組み合わせは11×11×11=1331+2(プトティラ&タマシー)の1333種類。

2015年現在最多のフォーム数と言われている本家『オーズ』が5×5×5=125+4の129種類なのだから、文字通り桁が違う。どこぞの世界の破壊者が裸足で逃げ出すフォーム数である。

実際に戦闘で使用出来るのは7×7×7=343+2の345種類で、今はコンボが使えないので336種類だ。それでも充分に本家より多い。また、ドライバーに最大で27枚まで搭載できる事も言わなかった。

 

常識的に考えて、1333種類の組み合わせを瞬時に判断する事は不可能と思われる。だが、高い状況判断能力を持ち、それぞれのメダルの特性を把握し、冷静に状況・敵を分析して瞬時にメダルの組み合わせを判断する、『アンク』と言うサポートの存在がそれを可能にしている事も教えた。

 

次にガイアメモリ。コレは『AtoZ』のT2シリーズだけ教えたが、『ウェザーメモリ』の様な名前からして明らかにヤバそうな能力のメモリもあれば、『イエスタディメモリ』の様などんな能力なのか判別しづらいメモリもあり、此方も慎重を要する。

 

パッケージにしても、飛行能力を得る為のオマケの様な意味合いが強かったらしいが、戦闘中に瞬時に変更する事は、現在のISの技術力では不可能だ。

 

そして、『真のオーズ』と呼ばれるISのエネルギーをセルメダルへ変換し、セルメダルを無限に吸収し際限なく力を蓄えていく能力。つまり、ISが多い=エネルギーの回復手段が多いと言う事も教えた。

原理としては、奪ったエネルギーをマテリアライズにより物質化して『拡張領域【バススロット】』に蓄えると言うもの。そして肝心の『拡張領域』が異常に広い。武器よりもセルメダルの収納に重点が置かれている為、格納されている武器がメダジャリバー、メタルシャフト、トリガーマグナム、エンジンブレード。そしてロックされているメダガブリューの5つしかないが、エネルギー切れを狙っても即座にセルメダルをエネルギーに変換して回復すると言うのは、とてつもなく厄介だ。

 

つまり纏めると、『オーズ』は1333種類のフォーム数と、13種類の『単一仕様能力』を持ち、26本以上のガイアメモリで更に柔軟な対応と強化が可能。それに加えて、瞬時に状況判断が出来る強力なサポートが存在し、更に戦闘中に変更可能な複数の専用パッケージを持つ。止めに異常に広い『拡張領域』を持ち、ISが多ければ多いほど相手のエネルギーを奪って補給し、幾らでも回復できる。喋っていない情報があるだけで、嘘は一切言っていない。

 

画して、あらゆる敵と状況に対応するというコンセプトの元造られた『オーズ』は、正に対ISを目的に造られた『ミレニアムの最終兵器』の名に恥じない恐るべき兵器であると認識された。

 

また、篠ノ之束が『NEVER』の一員になっている事も問題だった。初めは篠ノ之束が『オーズ』を手に入れたと思われていたが、実際は『オーズ』が篠ノ之束を手に入れたと分かった。正直、只の一組織と言うには『NEVER』の力は強大過ぎた。

 

幸い『NEVER』は『亡国機業』以外の国や組織に敵対する意思は持ち合わせておらず、篠ノ之束を筆頭とした厄介な連中を大人しくさせている事がそれなりに評価された。

但し、下手に突くとどうなるか分からない。何せ、自分を追跡した相手を老けさせると言う常識では考えられない、それこそ魔法の様な対処をしているのだ。他にどんな手札を持っていてもおかしくはない。そんな恐怖から出された結論は……。

 

「自分達が敵ではないとアピールしつつ、ご機嫌取りってとこか」

 

「ええ。それに篠ノ之博士と織斑先生をシュラウドから守れる手段は少ない。シュラウドの行方を私達も行方を追っているけど尻尾が掴めないわ」

 

シュラウドに対する扱いは各国様々。抹殺を目的とする国もあれば、確保を目的とする国もある。各国で共通している事は、ガイアメモリやコアメダルに精通している上に、独自にISコアの生産方法を確立させている復讐鬼ともなれば、厄介度は俺よりも上と考えている事だ。何せシュラウドが本当に恨んでいる相手は、この世界そのものなのだから。

 

「勿論、『仮面ライダー』に対抗するモノを手に入れる為。或いはISに対抗するモノを手に入れる為でもあるでしょうね。最悪、織斑先生達に復讐する事に協力する形でシュラウドが何処かの国や組織に懐柔されるってことも……」

 

「それはない。あのシュラウドが、ガイアメモリやコアメダルで得られる利益や損得の為に、復讐に手を貸す様な連中と手を組むとは思えない。手を組むとすれば、自分と同じ傷を持った復讐鬼だろう」

 

「……まあ、貴方がそう言うならそれは心配ないのかしら。それと、委員会から博士に新規のISを作ってくれって来てるんだけど?」

 

「断る。それなら、ISコアと引き換えに『ミレニアム』から受け取った報酬の内容を全部バラすって言っておけ」

 

「……なるほど。26個も奪取しておいて特に目立たなかったのは可笑しいと思ったけど、『ミレニアム』はISコアを各国から奪取したのではなく、取引して手に入れたのね」

 

「それなら後腐れが無い上に、弱みも握りやすいって言っていた。取引の為の小細工はしたのかも知れないがな」

 

もっとも、事と次第によっては奪取と言う方法も辞さなかったと聞いた。取引の報酬の内容を聞いたときは、人の欲望とはかくも醜いものなのかと絶望させるような、聞くだけで便所コオロギも吐き気を催すであろう、オゾマシイものもあった。

 

「ここに入学するまで約一ヶ月ある。色々準備があると思うが、全て間に合うのか?」

 

「大丈夫だ、問題ない」

 

織斑千冬の質問に堂々と答える。建築する我等『NEVER』の建物は、鳴海探偵事務所みたいな感じにしようと思う。スペースさえ確保できれば問題ない。業者なんぞ信用できないし、束は独自にラボを造っていたから建築に関しても大丈夫だ。俺の仕事は肉体労働に従事するだけ。

 

「それと、運転免許の方も都合がついたわ。後は写真を撮るだけよ」

 

「いや、俺はちゃんと運転免許センターで取りに行く。それとここの入学試験も受けるぞ。ISは動かせないが、ペーパーテストは受ける」

 

「……真面目と言うか律儀と言うか」

 

「馬鹿なだけだ。コイツのこーゆー所は今の内から慣れた方がいいぞ」

 

アンクが突然会話の中に入ってきた。酷い言い草だ。

 

「免許や試験はそれに相応しいと認められる為にある。それを受けてこそ価値があるんだ」

 

「……分かったわ。関係書類とか面倒な事は何とかしてあげる」

 

「それとこれはかなり個人的な要求なのだが……」

 

「あら、まだ何かあるのかしら?」

 

「玩具会社に渡りをつける事は可能か?」

 

「え?」

 

「あん?」

 

「このドライバーとコアメダルとガイアメモリのレプリカを玩具として売るんだ。音が出るだけのものだけど、売れると思う。子供向けと大人向けが作れれば尚良い」

 

何せ、現実世界では本編のグリードのメダル争奪戦以上の、壮絶なメダル争奪戦が全国で繰り広げられたと言う。実際にゲーセンで盗難騒ぎも起こったらしい。

 

「……お前、何考えてんだ?」

 

「どの道、『オーズ』の事を知った連中はコアメダルやガイアメモリの力を利用しようと考えているんだろう? それなら連中にとって都合のいい形で表舞台に立つのも時間の問題だ。なら、此方も利用させてもらう」

 

「そうだな。現に委員会から、お前と更識が戦うように要求されている。それも、公式ルールの試合だ」

 

実戦とはある意味何でもありだ。制限も反則も存在せず、あるのは勝つか負けるか、生きるか死ぬかの結果が全て。

それならば公式ルールを基にした、スポーツ競技として戦うならばどうか。『オーズ』の為に新たにルールを作り、それを理由に大幅にスペックダウンさせる事が可能だ。

要するに、国際IS委員会にとっては、どんな形であれ『仮面ライダーがISに敗北する』と言う事実さえできればそれでいいという訳だ。

 

「使用出来るメダルやメモリの数の制限、『コンボ』の使用制限、使用するパッケージの使用制限なんかが検討されているわ。一方で、未知の力を解析したい人も居るから、なかなか決まらないみたいだけどね」

 

「相手の都合で作られたルールに縛られて戦う初の公式戦の相手が、ロシアの代表操縦者か。学生トトカルチョがあったら、俺は俺の勝ちに10万円賭ける」

 

「あら、それなら私は私の勝ちに賭けようかしら」

 

「あるのか、トトカルチョ」

 

「貴方と私で賭けをするの。こうしましょう。私が勝ったら貴方が私をディナーに誘う。貴方が勝ったら、私が貴方をディナーに誘うの」

 

「……どっちにしたってお前と二人で食事に行くって事?」

 

「知ってた? 賭け事って言うのは負けない事が重要なのよ。それに、いいじゃない。玩具会社に渡りをつけるご褒美って事で」

 

「……受けないって選択肢は?」

 

「……ねぇ、どうしても駄目?」

 

 

 

「……で、あのメス猫の上目遣いに負けて、結局賭けに乗ったんだ。ふ~~ん」

 

「………」

 

「ククク。まあ、代価としては安いと思うがなぁ」

 

束とクロエが不貞腐れ、その様を見てアンクが笑う。だがアンクよ。お前はその内、『こいつは儲けたなぁ』とか言い出すぞ。何せ前の世界ではオーメダルは3300万枚売れた。2011年の1円・5円・50円の貨幣発行枚数が各45万6千枚なので、現実のお金よりも多く作られたのだ。

 

「別に怒ってないよ。ただ、束さんはゴッくんが大破させたパッケージを新しく作ったり、いっくんのISの『白式』を作ったり、みんなの秘密基地を作ったりして頑張ってるのにな~とか、束さんには何も無いのかな~とか全然思ってないよ」

 

「………」

 

「『白式』?」

 

「『白騎士』のISコアを使った第三世代機。正確には3.5世代って所だ。『零落白夜』が使えるそうだ」

 

「……対オーズ用としてか?」

 

「いや、既に『白騎士』のコアが『暮桜』のコアと通信して、独自に開発していたらしい」

 

かつて織斑千冬の『暮桜』が使っていた『零落白夜』。公式の試合なら一撃入れるだけで相手に勝てる能力だと聞いた。数少ない『オーズ』にも勝てる能力だろう。

 

「……運転免許取って、車買ったら一番初めに助手席に乗せて、何処かに出かける相手は束って決めて……」

 

「本当!? いや~~、ちゃんと考えてるって言ってくれたら、何も束さんはそんな意地悪な事言わなかったんだよ? 本当だよ? も~ゴッくんは、照れ屋さんだなぁ!」

 

「………」

 

「それであのメス猫は?」

 

「何時行くかは決めていない。つまりはそう言う事だ」

 

「ふ~~~~~~~~ん♪」

 

「あと、二番目はクロエって決めてる」

 

「!!」

 

一気に機嫌が回復した束とクロエは、鼻唄交じりに作業していた。俺もやるべきことをやろう。

 

 

●●●

 

 

あれから真面目に試験を受けて運転免許を取り、『オーズ』に変身して建設を手伝い、各人の護衛目的でメモリガジェットを生産している。流石に女の子に渡すものなので、束とクロエに協力してもらい、ギジメモリ及びガジェット本体を従来のものより薄型化・小型化した。ついでなので、織斑先生達にも見せに行った。

 

「可愛いですね! これなんて言うんですか?」

 

「『デンデンセンサー』。あらゆる光の波長、変動をキャッチするセンサーを持っていて、見張りや敵の探索ができるガジェットだ」

 

「それじゃあ、デンデンですね! こっちのカエルさんは!?」

 

山田先生は機械のカタツムリとカエルに興奮している。織斑先生も更識も布仏も居るが、ガジェットやカンドロイドを興味津々と言った感じで見ている。

 

「ふむ……。コレで男性用の物を作ってくれないか?」

 

「それは織斑一夏用で?」

 

「そうだ。この『スタッグフォン』と、『スパイダーショット』と、『デンデンセンサー』があればいいだろう」

 

「全部で3万円です」

 

「金を取るのか!?」

 

「割りと『NEVER』も資金難でして。一機につき一万円です」

 

「買います! デンデンとケロちゃんで2万円ですね!」

 

「むむむ、悩みますね……」

 

「ん~手間も掛からないし、どうしようかしら?」

 

山田先生が即決でカタツムリとカエルを買っていった。後で使い方も教えないと。布仏と更識はどれを買うか悩んでいる。メモリガジェットもカンドロイドも100円ショップで買った物を材料に作っているから利益率はそんなに悪くない。

 

 

●●●

 

 

残り2週間位で入学式だが、ここ数日やたらと誰かが絡んでくる。お蔭で一人の時間が確保しづらい。そこで、ライドベンダーに乗って何処かに出かけようと考えた。旅のお供はドライバーの中に居るアンクだけ……の予定だった。

 

「ゴクロー、何処かに行くのか?」

 

「……ああ、ちょっと風を感じにな」

 

早速、箒とマドカに捕まってしまった。テロリストと捕われた人質だったから、仲良くできるか不安だったんだけど、結構な頻度で一緒に行動している二人だ。

 

「どれ、私も一緒に行こうじゃないか」

 

「いや、『ライドベンダー』は一人乗りなんだが」

 

「ふっふっふ……コレを見ろ!」

 

マドカが取り出したのはバイクの運転免許証。何時の間にか取得していやがった。

 

「どうだ! 私もちゃんと試験を受けて取ったんだ、これで私も一緒に行けるぞ!」

 

「ああ、だけどなんでこんな笑顔なんだ?」

 

「笑えと言われたからだ」

 

チェイスかお前は。しかもコレ無理に笑っている所為か、うちは一族の顔芸を髣髴とさせる感じの笑顔だ。

 

「確か、『ライドベンダー』は二台あった筈だ。セルメダルを一枚寄越せ。一緒に着いて行ってやろう」

 

「むう……」

 

「……箒、ちょっと待ってろ」

 

マドカに手にしていたヘルメットを渡し、三台目のバイクを引っ張ってくる。黒と緑のツートンカラーのバイクで、此方は二人乗りが出来る。

 

「も、もう一台あったのか!?」

 

「ああ、コッチは二人乗りが出来る。箒はコッチに乗れ」

 

「い、いいのか?」

 

「問題ない。乗れ」

 

ヘルメットを箒に渡し、後ろに乗るように促す。バイクに乗るのは初めてなのか、動きがぎこちないし、捕まるのも遠慮がちだ。これじゃ振り落とされるぞ。

 

「しっかり捕まっていろ」

 

「あ、ああ。と、ところで、このバイクはなんて言うんだ?」

 

「『ハードボイルダー』だ」

 

「……独特な名前だな」

 

「全くだ」

 

「ぐぬぬ……」

 

マドカは計画が狂った事で奥歯をギリッと噛み締めた。ライドベンダーが一人乗りで二台しかない事を知っていた。秘密裏に免許を取得し、唯一バイクで一緒に出かけられるポジを獲得しようと思っていた矢先、思わぬ伏兵の存在が明らかになった。

 

「(……いや、待て。それならアイツを後ろに乗せる事が出来る。そうだ、今度は『ハードボイルダー』一台で行けば……フフッ)」

 

「行くぞ。箒、マドカ」

 

「うむ!」

 

「ああ……」

 

バイクの運転ができるのはゴクローと自分だけだ。このアドバンテージはデカい。マドカはとりあえず前向きに考え、先に出発したハードボイルダーを追跡する事にした。

 

30分程適当に走り、自販機とベンチを見つけて飲み物を買って、三人で一息ついた。

 

「免許取るの大変だったろう。偉いぞ」

 

「あ、いや、それほどでも無いぞ。簡単だった」

 

「頑張って結果出したんだから大したもんだ。素直に受け取っておけ」

 

「あ、う、うん……」

 

面と向かって褒められるとちょっと恥ずかしい。出来て当然で褒められた経験が皆無なマドカは褒められる事に不慣れだった。

 

「……やっぱり、そうは見えないな」

 

「ん? 何?」

 

「……今、姉さんから提案されている事がある。シュラウド、ひいてはガイアメモリとコアメダルを使う相手に対抗する為に、ガイアメモリとコアメダルの力を使う事を前提としたISを造ると言う話だ」

 

「……まあ、『仮面ライダー』のシステムはISの技術を元に造られているから、束ならそれも可能だろうな。ドライバーのデータを使えば安全に使えるだろう。だが、コアメダルとガイアメモリはどうするつもりだ」

 

「既存のガイアメモリの複製なら可能だと言っていた」

 

「そうか……」

 

ガイアメモリとコアメダルの力に対抗するには同等の力が居る。マスカレイドクラスなら兎も角、通常のISでは先ずメモリやメダルを使って強化されたISにはまず歯が立たないだろう事は明白だ。

 

「嫌じゃないのか?」

 

「いや。一人で全部何とかできるとは思ってなかったからな。むしろ助かる。それよりも、二人とも何か悩み事でもあるのか?」

 

「……鋭いな」

 

「ちゃんと見てるからな」

 

正確にはこの二人以外もそんな感じ。一体何に悩んでいるのやら。

 

「……私とマドカにその、ガイアメモリに対応するISをと言われているが……正直怖いんだ」

 

「敵と戦う事がか?」

 

「違う。力を手にする事が……だ」

 

箒は缶ジュースを手に心の内を語っていく。

 

「私は……姉さんを守りたい。家族を、仲間を、大切な人を守れるようになりたい。その為には力が居る。それは分かっている。だが、その力で何時かみたいに憎しみで人を傷つけるかも知れないと思うと、力を持つ事が怖いんだ」

 

嘗て、自身の憎しみの捌け口を探して、他人に暴力を振るった箒の過去。それを自覚した事で箒の中の束への憎しみは消えたが、同時に箒に力を持つ事そのものを恐怖させているらしい。

 

「お前は『間違ったからこそ正しい道を行ける』と言ってくれたが、憎しみから暴力を振るった私なんかが力を手にしたら、また同じ様な事が、同じ様な間違いを起こすんじゃないかと、どうしても考えてしまうんだ……」

 

いや、これはもしかしたら、自分自身を信じる事が出来なくなっているのか。しかし、箒自身は気がついていないみたいだが、お前はその力を手にするにふさわしい資格を手に入れたんだぞ。

 

「……力に恐怖しているって事は、箒自身がこれから手にする力がどんなものなのかを理解しているって事だ。

自分自身の憎しみと向き合って、誰かを傷つけた罪悪感に苛まれて、自分の罪を数えた。それはとても辛くて苦しいけれど、その痛みが箒を成長させたんだと思う」

 

「成長? 私が?」

 

「そうだ。『大いなる力には大いなる責任が伴う』。力を手にする上で一番大事な事を、箒は自分の力で見つけたんだ」

 

「………」

 

「それに今の箒は一人じゃない。もしも箒が間違いそうになったら、必ず止めてくれる人が、必ず正してくれる人が居る。それじゃ不安か?」

 

「……もしも、もしも私が間違いそうになったら、お前は止めてくれるのか?」

 

「必ず止める。まあ、俺も間違わないとは言い切れないし、時々怖くなることもあるけどな」

 

何時か自分が、知らず知らずの内に自分で無くなる恐怖が無いわけではない。

強い力を持つと人はおかしくなる。実際に『オーズ』の力を得て、改めて火野映司が凄い男なのだと理解できた。

 

「……大丈夫だ。そうなったら、私がお前を止める」

 

「そうか。それは頼もしいな」

 

「ああ、任せろ」

 

とりあえず箒の悩みはこれで良さそうだ。今まで空気を察して黙っていたマドカの方はどうだろうかと思ったのだが……。

 

「……いや、どうやら杞憂だったようだ。問題ない」

 

「そうか?」

 

確かに悩んでいる様には見えないが……。

なんとなく一人の時間を過ごすつもりが、また何か人生相談みたいな事をしている。最近こんな展開ばっかりだ。

 

「そろそろ帰ろう」

 

「ああ、そうだな」

 

「うむ」

 

「……大丈夫だ。アイツは『暴走』なんてしない」

 

「ああ。そうなったとしても、その時は私が止める」

 

「ふん。私の方が先に止めてやるさ」

 

「頼りにされたのは私だ」

 

「「………」」

 

「? 二人ともどうしたんだ?」

 

『お前は気にするな』

 

よく分からんが、アンクの言う通り気にしないことにした。

 

後日、二人のガイアメモリの適合率を調べてみた。

 

「マドカが『ナスカ』。箒が『アクセル』か……」

 

「ああ、マドカのISがプロトタイプとして先に造られるらしい。確か『青騎士』とか言っていたな」

 

「まさに、ナスカだな」

 

風都を愛して散っていった男のガイアメモリと、憎しみを振り切った男のガイアメモリ。果たしてあの二人は『仮面ライダー』に成れるのか……楽しみだ。

 

 

●●●

 

 

IS学園入学を一週間後に控えた今夜。遂に完成した『NEVER』の拠点で完成パーティーを開いていた。地味に食費をケチっていたのはこの日のためと言わんばかりに豪華な食事だ。当然手作りケーキも用意してある。ハッピバァァァスディッッ!!

 

「それでは、乾杯!」

 

『かんぱ~い!!』

 

世話になった織斑先生、山田先生、更識、布仏の四人も呼んだ。しかし、見たことの無い人が一人混じっていた。

榊原菜月。IS学園の教師で、生徒に優しく品行方正。容姿も悪くないが、とてつもなく男運が悪い29歳。安定を求めず、疲れるような結婚はしたくないおかげで、おかしな男に引っかかるとか。

今回来たのは、今日が宿直で気になって見に来たらしい。しかし、それは男運がないんじゃなくて、ただの自業自得だと思う。

 

「よし! 歌うぞ、アンク!」

 

「まあ、たまにはいいか」

 

酒が入ってテンションが上がった俺は、ミュージックメモリ対応のカラオケマイクを使ったカラオケ大会へシフトさせた。

 

俺とアンクの『Time judged all』から始まり、仮面ライダーオーズの曲は全部歌った。『POWER to TEARER』とか、『Reverse/Re:birth』とか、作品は変わるが『乱舞Escalation』とか、二人で歌う曲は全てアンクと一緒に歌った。串田アキラさんとか居ないし。

 

松岡充さんの歌う『W』も『cod-E~Eの暗号~』も『SURPRISE-DRIVE』も歌った。仮面ライダー3号の主題歌『Who's That Guy』を歌い終わったら何人か涙目だった。解せぬ。

 

しかし、箒とマドカが『POWER to TEARER』を歌ったり、束と織斑先生が『Time judged all』を歌ったりしたのは驚いた。俺達の時とは全然印象が違う。当然、抜け目無く録音しておいた。

 

「キャーーー! シュレディンガーく~~ん! もういっか~~い!」

 

「でね、きいれくらはいよ。あのおぜうさまはほんとうにヒドかったんでふよ。きいれまふか?」

 

「聞いてる、聞いてるからもう止めて。分かったから、本人だから、虚ちゃん」

 

全員、酒が入っておかしな事になっている。山田先生はハイテンションで、布仏はおぜうさま本人に、おぜうさまに対する愚痴を言っている。更識は涙目だ。泣き上戸なのか、それとも打たれ弱いのか。ちゅーか、未成年が飲むなよ。

 

途中から寝てしまい、目が醒めて辺りを見渡すと辺りは散乱し、全員酔いつぶれていた。おい、榊原先生。あんた宿直だって言ってたよな?

 

緊急事態に備え、大量の布団と毛布。そして食料が此処には常備されている。一階フロアの家具をどかして布団を敷き、全員をそこに寝かせる。労力の代価として頭を撫でる位は許されるだろう。人として。

 

中には首に腕を絡ませてきた奴もいて、本当は起きているのかと思ったが無視した。ただ、束は確実に起きていたと思う。布団に置いたら引きずり込もうとしていたからな。しかし、紳士の俺は脱出し、二階で久しぶりに寝袋を使って寝た。……惜しい事をしたかも知れん。

 

 

 

翌日、俺の喉は壊滅状態で見事にオンドゥルっていた。有機ナノマシンと薬物で強化された改造人間でも、合計48回の全力熱唱は流石に無理があったようだ。

 

「ドァブァベェ、ドァブベデグデェ」

 

「? なんて言いました?」

 

「『束、助けてくれ』だ。クロエ、ウサギ女を呼んでこい」

 

それから喉が回復するまで、俺は常に通訳のアンクを肩に乗せて過ごした。

 

 

○○○

 

 

一夏がISを起動させたことに始まり、ここ一ヶ月余りは色々な事が起こった。

 

束がテロリストに捕まり、奪還作戦は失敗。表向きはIS同士の戦争だったと報道されたが、国際IS委員会から提供された映像資料は、嘗て自身が片棒を担いだ『白騎士事件』を髣髴とさせるものだった。十中八九どころか、十中十の確立で束の仕業だと確信した。

 

「やっほ~ち~ちゃん。今からIS学園に行くね~。会わせたい人がいるんだ~」

 

束の奴からそんな電話が掛かって来た時は、携帯電話を握りつぶしそうになった。そんな束と共にやって来た同伴者は、資料で見た金髪の若い男。小さい頃の面影がある束の妹。ドイツにいた頃の教え子に酷似した両目を閉じた少女。そして、昔の私に酷似したナイフの様な雰囲気の少女だった。

 

場所を移して、『NEVER』と名乗る彼等と話し合いとなったが、対ISを掲げるテロ組織が造ったクローンをベースにした強化人間。失敗作として廃棄されそうになっていた人造人間。そして、私の細胞から造られたクローン人間ときた。まともなのは束と妹の箒くらいだ。

 

束が何故こんな連中といるのかと問えば、『白騎士』と『暮桜』のISコアを奪取し、しかも『暮桜』のISコアを手に入れる為に、凍結処理の原因となった事件を影で起こした組織こそが、シュレディンガーの所属していた『ミレニアム』だと聞かされた。対IS兵器を造る為の教材として回収する事が目的だったらしい。

 

その事を聞いて、一夏の誘拐事件も『ミレニアム』の仕業かと勘繰ったが、それは敵対する『亡国機業』の仕業だと言った。マドカと名乗る私のクローンも元メンバーだったらしいが、組織から信用されていなかった為に、内情はよく知らないらしい。まあ、有益な情報が手に入っただけでも良しとしよう。しかし、大国の不祥事だから世間に知られるわ訳にはいかない事は分かるが、国際IS委員会の小細工には腹が立つ。

 

そして、ISを打倒する為に生まれた新技術。ガイアメモリとコアメダルがISに運用され、新たな脅威となる可能性と、シュラウドと言う復讐鬼の存在を知った。『ミレニアム』はISコアを生産する技術を既に確立し、その『ミレニアム』の元科学者が、改造したガイアメモリをテロリストに渡し、暗躍している。

 

全てはこの世界に対する復讐の為に。

 

それによって、シュレディンガーは一夏が第二のシュラウドになると言ったが、そのシュラウドは第二の私と束だと言える。そして、シュラウドの復讐が成されれば一夏が第三の私と束になり、憎しみの連鎖が続く。

自分が片棒を担いだ『白騎士事件』がテロと変わらないと理解できるようになった頃から、何時か自分が報いを受ける日が来るのではないかと思ってはいたが、そんな事は考えもしなかった。

 

後から聞いたが、マドカはかつて私と一夏を殺すつもりだったと聞いた。だが、今では殺すつもりは無いらしく、その理由を聞いてみた。

 

「何、そんな事をしなくても私を私として見てくれる人がいる。『織斑マドカ』を認めてくれる人がいると分かったからな。もっとも、何時か打倒しようとは思っているが」

 

マドカは不敵な笑みでそう返してきた。既に、私と一夏の命をシュレディンガーは救っていたのだ。

 

 

 

色々と深く考える日が続く中、『NEVER』がIS学園に来て10日位経った頃。

シュレディンガーが何者なのか。それが知りたくて、シュレディンガーがクロニクルと出かけている時を狙い、関係者を集めて束からシュレディンガーの経緯を聞いたが、信じられないような話だった。

平行世界の魂だと? ふざけているとしか思えない。箒もマドカも信じられないと言っていた。だが、その話を聞いた更識はむしろ納得していた。

 

「ずっと、おかしいと思っていました。テロリストは、自分の主義主張を武力によって貫こうとする連中で、話し合いでの説得や相互の理解を求めるような行動はしません。あれだけ強大な力を持っていれば尚更です。

なんと言うか、話をしていて『色々な経験をして確固たる自我や考え方を持った人間が、ミレニアムに7年間在籍していた』って感じの理性を感じました」

 

「しかし、平行世界の知識を得るため呼び寄せたなら、シュレディンガーに『オーズ』の力を与える必要は無い筈だ。この世界に憎しみを持った人間の集まりなら、もっと好戦的な人間に与えれば目的は達成できたと思うのだが」

 

「それは……」

 

「『オーズ』が暴走するリスクを回避する為だ」

 

突然、その場に居なかった人物……いや、存在の声を聞いた。

アンクだ。一緒について行ったんじゃなかったのか。

 

「ちょっと待て、暴走だと?」

 

「そうだ。コアメダルは欲望の力に強く反応する。そして、『オーズ』はコアメダルの力を使う性質上、変身する人間が持つ『欲望の器』を超えた力を取り込んだ場合、変身した人間は暴走する。

そして、『ミレニアム』に居たのはISの社会を破壊したい欲望を持った連中が大勢いた。そんな連中に『オーズ』の力を与えてみろ。あっという間に暴走して手がつけられなくなる」

 

……なるほど。確かに暴走されて制御できなくなれば本末転倒だ。それで、憎しみを理解し、憎しみを無くそうとしていたシュレディンガーを『オーズ』に選んだと言う訳か。

 

「あれだけ強大な力だ。何らかのリスクがあるとは思っていたが……」

 

「だが、この『欲望の器』と言うのが曲者でな。欲望を許容できる器を作ること自体は簡単だったらしいが、その中身となる欲望が入っていれば、直ぐに器から溢れてしまう。だから一度、中身を空にしてどんな欲望も受け止められる状態にする必要があった。その為に『ミレニアム』は壊滅した」

 

「中身を空にするって、どう言う事かしら?」

 

「仮にも7年間過ごしてきた仲間達の死。どんなに強大な力を持っていても、人一人救う事さえままならない絶望。一人の憎しみを無くすことさえままならない無力感。そして、自分一人だけが生き残ってしまったと言う罪悪感を与え、心に隙間を、空白を与える。

それには普通の感性を持った人間でなければならない。人の死に慣れている人間や、復讐のために全てを捨てた人間では効果が薄い」

 

つまり、シュレディンガーの『欲望の器』を完成させる為に『ミレニアム』は壊滅した? たった一人の為に組織を潰すなど度し難い話だが……。

 

「それでもアイツ自身の欲が無くなったって訳じゃない。だが、戦いが終わる度に何時も無力感に打ちのめされている。それこそが『オーズ』の器として重要なものだ。

一国の軍事力を容易く上回る力を手にしていながら、戦う度にその心は無力感で満ちている。だからこそ、『オーズ』の強大な力に酔いしれ、その力に飲まれる事が無い。つまり、暴走のリスクが極めて低い人間になった。デブの少佐の目論見通りに」

 

「だが、そんな人間なら『オーズ』の力を使いたがらない。いや、そもそも戦いたがらないだろう」

 

「だから『白騎士』と『暮桜』をエサにウサギ女を呼び寄せた。あの馬鹿がウサギ女の憎しみを無くしたいと思っていた事と、ウサギ女の科学力をアテにしていた事も有る」

 

なるほど。世界中から指名手配されている束と一緒に居れば、嫌でもISと戦う機会がある。そしてその力が知られれば、嫌でも他人が起こす欲望の渦と、闘争の螺旋に巻き込まれる……。

 

「それは、戦いたくない人間を戦わせているってことなんじゃないですか?」

 

「それは違う。俺も昔に一度だけそんな事を聞いた事がある。そしたら『戦いたくなくても、何時か必ず戦う日が来る』と答えた。『自分はあの日、運命を選んだからもう引き返せない』とも言っていた。アイツは自分の意思で戦っている」

 

山田先生の言葉をアンクは真っ向から否定する。『あの日、運命を選んだから』……か。

 

「もっとも、『オーズ』の使い方が間違っている事は確かだがな」

 

「間違っているとは、どう言う事だ」

 

「オリジナルとなった平行世界の『オーズ』は、元々国を侵略する為に造られた兵器だ。とある国のとある王は、『オーズ』の力を用いて他国への侵略を開始し、その圧倒的な力の前に人々は成す術なく屈服していったと言う。征服した国々の民を奴隷にし、保管されていた宝物は全て自分の物にした。最終的に王は神に等しい力を得て、新世界を創造しようとしたそうだ」

 

圧倒的な力の前では全てが無意味。それはかつて私自身がやった事だけに理解できた。新世界の神。『オーズ』の力があれば、それもきっと不可能ではない。

 

「それをアイツは、誰かの自由を守るために使っている。それが『オーズ』が『仮面ライダー』になる為に必要なんだと言っていたが……それがアイツ自身の欲望。いや、夢なんだろうな」

 

本来、宇宙開発の為に作られた力を世界への攻撃に使った私と、世界を攻撃する為に作られた力を誰かを守るために使うシュレディンガー。本来とは違った力の使い方。しかしそれは余りにも私と対照的だった。

 

 

 

入学式まで残り一週間。束から『NEVER』の拠点が完成したからパーティーを開くので来て欲しいと誘われた。世話になったとかで、山田先生も更識も布仏も誘われているようだ。最近の更識は真面目に生徒会の仕事に取り組んでいる。良い傾向だ。

 

束達はシュレディンガーの歌を聞いて無邪気にはしゃいでいるが、私の心は晴れなかった。

 

シュレディンガーに言われるまでずっと気がつかなかった。

 

束。お前は、本当はずっと泣いていたのか?

 

私は束と一緒に戦っているつもりで、実は一緒に逃げていただけだったのか?

 

私がお前の闇に気がついていれば、『白騎士事件』は起こらなかったのか? 

 

束の実家が散り散りになる事もなかったのか?

 

もっと別の織斑千冬の生き方があったのか?

 

最近シュレディンガー達を見ると、そんな『在り得たかも知れない過去と未来』を考えてしまう。

 

思えば、自分を飾ってばかりの人生だった。

 

初めは、一夏を不安にさせないために必要な飾りだった。意味のある行動だった。それが何時の間にか、自分で貼り付けた飾りと、他人に貼り付けられた飾りが綯い交ぜになって、飾る事が自然になっていた。

今では誰もが私を恐れ入る。だが、それは私の飾りに恐れ入っているだけだ。私自身を見ている訳じゃない。気がつけば、ありのままの自分がどこにもいない。最近では一夏を相手にする時さえ、自分を飾っている気がする。

 

その飾りの所為で、おかしくても笑えない。悲しくても泣けない。怒りが込み上げても爆発できない。痛くても打ち明けられない。そんな我慢をし続けていた事に気がついた。気付いてしまった。

 

それに比べてシュレディンガーはどうだ。自分に張られた飾りを理解している筈なのに、自分を一切飾っていない。ありのままの自分で生きている。それがとても羨ましかった。そんなシュレディンガーを見ている所為か、一時でもいいから何も考えたくなくて酒に逃げた。しばらく飲んでいなかったこともあって、アルコールは体に良く染みた。

 

 

 

ぼんやりとする意識の中、自分の体が宙に浮いている感覚を覚える。もしかして運ばれているのか? そう考えていたら、自分の体が柔らかい布団の上に置かれた事を理解した。

 

ま、まさか!?

 

身の危険を感じたが、布団をかけて頭を撫でられただけだった。その後も酔いつぶれた山田先生達が運ばれて来たが、やはり布団をかけて頭を撫でただけだった。

……疑ってしまった事に罪悪感が芽生えた。だが、束。これだけ大勢いる中で一緒に寝ようとするな。全員運び終わると、シュレディンガーは二階へ去っていった。

 

世界を手に出来る『オーズ』の力を手にしてもその力に溺れない。復讐と言う名の憎しみの連鎖を断ち切る為に、本当の強さを、『仮面ライダー』である事を求める男。

 

『仮面ライダーオーズ』……か。

 

皮肉にも、ISを打倒する為に造られた存在が、一番私達を理解しようとしていた。

束、お前が私にシュレディンガーを会わせたいと言った理由が分かったよ。




キャラクタァ~紹介&解説

山田麻耶
 IS学園の教師。上から読んでも下から読んでも「やまだまや」。割りと早めに『NEVER』のメンツと仲良くなっている。フロッグポッドは目覚まし代わりに使っている。
 カラオケ大会でクロエが録音していた、596の歌が入ったフロッグメモリをダビングしてもらっている。

布仏虚
 更識家に代々使える布仏家の従者。アニメでは何故かリストラ組。真面目に試験を受けて免許を取り、真面目に入学試験のペーパーテストをしっかり受けた596の人柄を高く評価している。お嬢様も見習って下さい。
 ガジェットもカンドロイドも色々買いたかったが、今回はデンデンセンサーとフロッグポットだけ買った。

榊原菜月
 ちょい役。アニメには出ていない。パーティーに来た本当の理由は世界で最も危険な男であろう596がどんな男か見たかっただけ。波乱万丈な人生は約束されるだろうが、596が好くかどうかは別問題だ。

596
 アンクがオーズの暴走についてカミングアウトした所為で周りから心配されていたが、映画『スパイダーマン』の名台詞によってそれは解消された。
 この二次小説で書きたかった事の一つが『力の使い方と責任』で、『オーズ』を通してそれを理解していく形で周りの人物を成長させたいと作者は思っていた。だって、原作ヒロインって、ギャグ描写だとしてもそこら辺を理解しているように見えないんだよね……。



オーズ
 作中でも説明されている通り、小説版『仮面ライダーオーズ アンクの章』では、800年前の王が他国への侵略に『オーズ』の力を容赦無く使用し、『オーズ』という力が人間にとってどれほど脅威であるかを分かりやすく説明してくれている。『映司の章』における火野映司の『オーズ』の使い方とは実に対照的で、力の使い手の持つ『欲望』によって、その力は良き事にも、悪しき事にも使えるという事を証明している。
 今作ではISと同じように、本来の用途とは違う使われ方をしているモノ同士と言う側面も持っている。

白式
 原作主人公である織斑一夏の専用IS。今作では一応、一夏の隠れた危険性も考慮して、原作通りの3.5世代的な機体だが、『白騎士』と『暮桜』を参考にして作られた『エターナル』から得られたデータも使用されている為、原作よりもスペックは高い。束が作った後で、倉持技研に596とクロエが持って行った。
 原作10巻で白騎士暴走形態になったのを見て、VTラウラ戦の「偽者絶対許さねぇ!」や「訳の分からん力に振り回されるラウラが気にいらねぇ」発言が、見事にブーメランしている気がするのは作者だけでは無いはず。
 VTシステムと同じっぽいが、オリジナルなのである意味VTシステムより性質が悪い。ネタバレだが、VTラウラ戦で暴走白騎士形態を出す予定。

青騎士
 653と同じ『ナスカメモリ』に対応した、織斑マドカ専用IS。原作10巻では『サイレント・ゼフィルス』から変形して『黒騎士』になっているので、今作では『ナスカメモリ』を使う事で変形する仕様に。使用ISコアは『プロト・ティアーズ』。
 ガイアメモリ対応ISの試作機だが、596が使えなかった『ミレニアム』製の武装も一部流用しているので、原作の『黒騎士』よりも強い。

M ミュージックメモリ
 本家『W』において、根津と言うガイアメモリのセールスマンが、バイラスメモリと一緒に持っていたメモリ。596が少佐に頼んで無理言って作ってもらったもの。前世の平成仮面ライダーソングやアニソンが入っている。容量は2テラバイトだが、一本じゃ足りなくて複数本造られた。
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