DXオーズドライバーSDX   作:トライアルドーパント

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お気に入り件数が700件を突破。ご愛読ありがとうございます。753まで後少し。

きりのいい所まで……と思っていたら、15000字書いてしまった。
段々と一話あたりの文字数が増えていってる気がする……。


第12話 たくらみと恋と灼熱コンボ

束特性のパワーダイザーの大きさは、ISを装備した人間と比べておおよそ50~60cm程高いだろうか。その分、リーチは長く懐も広い。飛び込みさえすれば何とかなるかと思いきや、そう簡単な話ではない。

 

なにせ、徒手空拳の一撃が速い上に重い。特にパンチが脅威だ。先程かわしたメガトンパンチは、地面にヒビとクレーターを作っていた。単純な破壊力はジョーカーの必殺技である『ライダーパンチ』並みにあるような気がする。

 

機体の各所にブースターが付いていて、機動力が明らかに本家より高く、空だって飛べる。状況に応じて足を変形させて、ローラースケートの様にタイヤを使って小回りの効く高速移動までしてくる。

 

その上、ある程度距離が離れていれば、ミサイルやら荷電粒子砲やらバカスカ撃ってくる。中でも荷電粒子砲は出力が半端では無い。並みのISなら直撃すればお陀仏なのでは無かろうか。

 

『気がするじゃない。本当に「ライダーパンチ」並みにある。拳も飛び道具も一発も貰うな』

 

「貴重な情報だな。しかし、『ファングクエイク』に比べれば楽だ」

 

IS大戦でも思ったが、徒手空拳で戦う相手が俺にとって一番やりづらい。しかし、このパワーダイザーは『ファングクエイク』と比べて機械的な動きをする。無人機だからこそ人間ではまず不可能な動きも可能になっているが、人間の様なフェイントや駆け引きが無いのだ。

 

『ISは元々人間が使う事で最大限の力を発揮するように造られてるからね~。無人機だと、ど~してもスペックダウンしちゃうんだよね~。それでも充分過ぎると思うんだケド』

 

これで最大限の力じゃないのか。だが、確かに対戦相手としては申し分ない。繰り出されるメガトンパンチをかわし、すれ違いザマに胴体にトラクローの一撃を入れる。しかし、アンクから追加された『スキャニングチャージ禁止』、『セルバースト禁止』、『マキシマムドライブ禁止』の制限の所為で、此方の攻撃が中々通らない。

 

それでも、相手の攻撃はなんとかかわせるし、此方の攻撃はまだ当てやすい。IS大戦での『ファングクエイク』との戦いが無ければもっと苦戦しただろう。

 

目的は『コンボ』の解禁。その為に、アンクと共に思いつく限りの様々な方法を、メダルを次々と変えて試している。

 

一例を挙げると、クワガタヘッドの電撃を、ラインドライブを通して全身に添付させる事で身体能力を上げる。ライオンヘッドの閃光と熱を、全方位から一方向に集中させるといった具合だ。

 

組み合わせとしては、カマキリアーム+クワガタヘッドの電撃で千鳥刀。更にルナメモリの力で電撃を形態変化させると言った事を試した。頭の中のイメージを現実で形にしている為か、『幻想の記憶』を持つルナメモリは、かなり役に立つ。

 

「ガンガン行くぞ、出来る限りで」

 

『ふん、出来ればな』

 

そんな感じで、戦闘開始から約30分が経過。幾つか掠りはしたが、クリーンヒットは一発も貰っていない。パワーダイザーは至る所に切り傷や焼け跡を作っており、荷電粒子砲は破壊され、搭載されたミサイルは撃ち尽くしたようだ。

 

『よし、コレに変えて最後に最大火力を試してみろ!』

 

『クワガタ! トラ! チーター!』

 

『スキャニングチャージ!』

 

『セルバースト!』

 

『ACCEL・MAXIMUM-DRIVE!』

 

メダルとメモリを変えて即座に必殺技に入る。コアメダルの『スキャニングチャージ』。セルメダルの『セルバースト』。ガイアメモリの『マキシマムドライブ』。無人機が相手だからこそ出来る、三つの必殺技を融合させた最大火力だ。

 

「ララララララララララセイヤァアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」

 

全身にクワガタの電撃とアクセルメモリの副次効果で生まれた炎を纏い、セルバーストで強化されたトラクローで何度も切り裂く。最後にアクセルグランツァーを叩き込んでフィニッシュ。吹き飛ばされたパワーダイザーは爆発した。

 

『終~了~! ゴッくんの勝ちだよ! 早く戻ってきてね!』

 

天井が高い所為か、束の元気な声がよく響いた。

 

 

●●●

 

 

ゾーンのマキシマムで戻り、スポーツドリンクをストローで啜りながら、ダウンしている俺をよそに、アンクと束が今後について相談している。

 

「一度の戦闘で稼げるセルメダルはざっと200枚ってトコか。思いっきり戦ったせいか、コアメダルの成長率も悪くない。この調子で戦えば試合までにコンボが使えそうだが……何日で直せる?」

 

「安心して~、『パワーダイザー』は同型を全部で10体用意したから。でも明日は武装を変えようか?」

 

「そうするか。上手くすれば『ガタキリバ』も『ラトラーター』も使える。どうせだ、どちらも狙う」

 

俺としては『ラトラーター』を使えればそれで良かったんだが。

それよりもアンクに聞きたい事があるんだった。

 

「アンク。お前、オルコットをどう思ってる?」

 

「ああ、俺達を観察する為の捨て駒だろう」

 

アンクは上機嫌でとんでもない事を言った。あのオルコットが捨て駒?

 

「問題だ。金髪ロールとチェスで勝負するとして、奴の最初の一手は何だと思う?」

 

「……分からん。何か参考になる情報があれば別だが」

 

「それだ。国や政府はとにかく『NEVER』の情報が欲しい。その気になれば国の一つや二つ、簡単にぶん取れるだけの力があるからな。幾ら大人しくしていると言っても、『俺達がどんな人間なのか分からない』訳だ。それはつまり『何をしてくるか分からない』と言う恐怖に繋がる」

 

まあ、そもそも対ISを掲げる組織にいたからな。敵対の意思はありませんって言っても、信じられないのが本音だろう。

 

「相手が裏側の人間なら何をした所で表沙汰には出来ない。だが、表側の人間ならどうだ? それなりの立場のある、一般的に周囲に知られている人間に。『オーズ』を知らない人間にどう対処するのか。それを知るには『女尊男卑の社会のお手本の様なIS操縦者』を送り込んで観察すればいい。

この世界のIS操縦者の殆どが、ISが最強だと妄信している連中で、男など取るに足らないと考えている連中だ。十中八九、何かしらのトラブルを起こす。それらにどんな対応をするか、どんな方法を好むかを知りたい。つまりは、情報を得る為の捨て駒だ」

 

「それでなんでオルコットを選ぶ? 反応を見るなら、代表候補生でもIS操縦者でもなく『女尊男卑の社会のお手本の様な女』で充分だろう?」

 

「代表候補生は幾らでもいるが、あれだけ金を持っている代表候補生はそうはいない」

 

金か。『ミレニアム』が過去にオルコット家に関わっている事を考えると他人事ではない。

 

「今、欧州連合で第三次イグニッション・プランの次期主力機を選定している。イギリスは実用化においてティアーズ型でリードしているが、まだまだ難しいのが現状だ。そこでBT兵器の実稼動データを取る為に金髪ロールをIS学園に送ったわけだが……ここに『プロト・ティアーズ』でフレキシブルが使えるヤツがいる。

正直、金髪ロールと『ブルー・ティアーズ』を育てるよりも、『プロト・ティアーズ』のISコアを回収した方が手っ取り早い」

 

マドカか。確かにフレキシブルが使えたな。今は『プロト・ティアーズ』ではなく、ガイアメモリ対応ISの試作機『青騎士』だけど。

 

「仮にあのままウサギ女が金髪ロールのISを破壊していれば、堂々と『NEVER』にISを請求できる。大義名分は国防を損ねたってトコか? 金髪ロールにはISの管理責任を理由に、賠償の名目で財産を回収できる。普通なら自己破産モノだが、金髪ロールは払える」

 

「……『いとも容易く行なわれるえげつない行為』って感じだな」

 

「はッ! 人間なんざ、どいつもこいつも一皮向けば欲望の塊だ! 欲望を叶える為ならなんだってする! それこそ他人を平気で犠牲にするなんて事は朝飯前だ!」

 

このアンクはあくまでIS由来のグリードもどきだが、そう言われると胸が痛い。

 

「もっとも、今なら黙っていても金髪ロールの財産はイギリス政府が入手できる可能性はある」

 

「……具体的に説明してくれ」

 

「あの馬夏に渡される『白式』の『零落白夜』は、シールドエネルギーを無効化する能力を持っている。言うなればIS殺しの能力だ。そんな搭乗者さえも殺しかねないモノを、ド素人の未熟者が使えばどうなる?

能力の仕様上、使いこなせず自滅するのがオチだろうが、もしも使えれば高確率で事故が起こる」

 

確かに。『零落白夜』は『エターナル』の参考になった能力だが、アレは文字通りの必殺技。本来スポーツに使われるような能力では無い。

 

「『白式』については国際IS委員会に通達されている。当然、イギリスも知っている。

仮にそうなったとしても、試合中の事故として処理されるだろうが、『白式』はまず没収される上に、馬夏もこの学園にはいられなくなる。そして、イギリス政府が保護の名目で管理している金髪ロールの財産は、イギリス政府が丸儲けってトコだ」

 

考えてみれば、一夏だって利用価値はあるのだ。ISを使える男。ISごと搭乗者を殺せる能力を持つ機体。メモリやメダルに頼る事無く『仮面ライダー』に勝てる可能性。欲しいと思う奴は幾らでもいるだろう。

 

しかし、オルコットに対して言えない秘密がどんどん増えていくような気がする。

 

「色々と思うところはあるが、要するにオルコットも一夏も死なずに、無事に試合を終えれば問題ないんだろ?」

 

「そうだな」

 

「それなら可能な範囲で二人を鍛える。お互いに死なない程度に」

 

「関わる事で難癖を付けられる可能性もあるんだがな。……まあ、少し試したい事もある。丁度いいだろう」

 

とりあえず、一夏とオルコットの安全を第一に考える事で話は纏った。箒とマドカに協力を求めたが、マドカは断固として拒否した。

 

 

●●●

 

 

翌日は朝から修羅場だった。

クロエと一緒に箒とマドカを迎えに行こうと思ったら、一夏が部屋にやって来た。

 

「おはよう。これから朝飯か?」

 

「ああ、それで箒とマドカを迎えに行く所だった」

 

「そりゃ丁度いい。そう言えば、箒と知り合いなのか?」

 

「ああ、一ヵ月半位前からな」

 

「え~っと、そっちの子は?」

 

「俺のルームメイトで妹分」

 

「へぇ、俺は一人部屋だったから、そっちもかと思ったけど」

 

それは俺がそうしたからだ。流石に15歳でプライベートがないのはキツイだろうと思ったからな。俺は自分の城があるし。

 

「クロエ・クロニクルです。以後、お見知りおきを」

 

ペコリと頭を下げて挨拶するクロエ。目を閉じている事と、杖を持っている事で目が不自由なのだと一夏は気付いた。

 

「えっと、それで大丈夫なのか?」

 

「何か問題でも?」

 

「いや、ほら……」

 

「目が不自由でも日常生活には問題ない。物を見るのは目だけじゃないって事だ」

 

「そう言うものか?」

 

「そーゆーものだ」

 

心配する気持ちからなのだろうが、なんだってコイツは正確に地雷を狙って踏み抜くのか。コレも一つの才能だな。

 

次に、箒とマドカの部屋に行ったが、一夏がマドカを見て驚いていた。当然か、織斑先生に似て、同じ織斑を名乗っている訳だし。

 

「千冬姉!?」

 

「……違う。私は織斑マドカだ」

 

「いや、だって、同じ織斑で、なんでそんなに似てるんだよ?」

 

「……そう言えば私が『良くぞ聞いてくれました』とでも言って、身の上話をするとでも思っているのか?」

 

不愉快極まると言わんばかりの顔で、一夏に対して喧嘩腰のマドカ。織斑一夏を認めていないと知っていたが、ここまで酷いとは思わなかった。

 

「おい、今、マドカの奴、ジョークを言ったのか?」

 

「多分な」

 

「お前に話すことなど何も無い。行くぞゴクロー」

 

「あ! おい! ちょっと話を……」

 

「私は貴様を認めていない。此処に来るまでに何も準備する事無く、技術を磨く事もしていない。自分が持っているモノを戦略も無しに、ただ感情任せにぶつけるだけ。それで何とかなると思っている」

 

「うっ!」

 

「はっきりと言う。ここに来た人間は皆、誰もが努力した結果、此処にいる。貴様の様な努力せずに此処に居る人間を快く思わない者は大勢居る。私を含めてな」

 

リアクションを見るに、一夏も一応自覚しているらしい。オルコットもその類だったろう。マドカの顔が織斑先生に似ている事もあって、一夏はぐうの音も出ないと言った感じだ。

 

「………」

 

「ふん。さあ、行くぞ」

 

そう言って、マドカは拒絶の意思をはっきり見せたのだが、それでも話がしたいのか、一夏もちゃんとついてきた。

結局、6人で食べられる大テーブルに、俺、クロエ、箒、マドカ、一夏の五人で座って食べる事になったが、雰囲気が最悪だ。

 

「……あ、コレ美味いぞ」

 

「………」

 

「……落ち着けマドカ」

 

「私は何時だって落ち着いている」

 

そんな無表情で言われても……。気まずい雰囲気のまま、初めての学食の朝を終えた。

 

 

●●●

 

 

授業を受けている一夏の顔から余裕が消えた。漸く、『何とかなりそうもない』と自覚したようだ。嘗めてかかったツケなので、この結果は自業自得なのだが悲惨だ。

 

山田先生の授業は相変わらず分かりやすいが、元が女子校だったこともあって、時折爆弾の様なネタが投下されるのは勘弁して欲しい。

ただ、ISの意識に関してはアンクがどんな存在なのかを知っている所為か、説明しづらい感じが口調にでていた。

 

『それもあるだろうが、それ以外の理由もあると思うぞ』

 

「先生―、それって彼氏彼女の様なかんじですかー?」

 

「いえ。どちらかと言うと、相棒や戦友と言った感じですね」

 

『……ふん』

 

山田先生は、はっきりとそう断言した。いい人だ。

織斑先生から、一夏に専用機が渡される事を告げられたのだが、当の本人はその意味が全く分かっていなかった。その様を見て、やっぱり箒がイライラしていた。

しかし、予備機が無い……か。つまり、一夏は決闘までの一週間、ISを使って練習する事が出来ない訳か。

 

「あの、先生。篠ノ之さんと、シュレディンガーさんって、篠ノ之博士の関係者なんでしょうか?」

 

そう言えば、昨日から束の事が噂になっていた。仕方ないと言えば仕方ないが。

 

「篠ノ之はあいつの妹だ。シュレディンガーは、単独で束をテロリストから守りきった張本人であり、『NEVER』の首領だ」

 

『…………えぇえええーーーーーッッ!!』

 

沈黙。数秒後、再起動したクラスメイト達の大音量の叫びが教室を襲った。窓がビリビリと振動している。

 

表向きでは『篠ノ之束奪還作戦』において、36対26の戦争に国際IS委員会と各国が集めたIS操縦者達は敗北。その後、テロリストから束博士を守った組織が『NEVER』であり、束博士はそのまま『NEVER』に所属している……と言う事になっているが、その構成員が誰なのかは、まだ知られていない。

 

「静かにしろ! 授業を始める。山田先生、号令」

 

「はい!」

 

授業が始まったものの、此方をチラチラと見る視線が多い事、多い事。まあ、嘘は言ってないし、試合に合わせて『NEVER』の構成員も同時に公開される。

 

所謂、表向きの情報しか知らない世間の人々は、『ヴァルキリーやブリュンヒルデクラスのIS操縦者が束博士を奪還した』と、面白おかしく話している。それが、まさか男が単独で成した事だったとは思いもしなかったのだろう。

 

他には『それならドイツやアメリカの代表操縦者に勝ったと言うのも納得だ』って感じの視線や、『織斑先生が相手にならないと言った意味が理解できた』って感じの視線が俺に向けられている。

 

……まあ、箒の方にあまり視線がいってないのが唯一の救いか。箒は『束の妹』って見られる事を凄く嫌がるから、織斑先生はそれを狙ってワザと教えたのかも知れない。

 

 

 

さて、昼休みだ。早速、食堂へ行くつもりだったのだが、その前にオルコットが俺の所に来た。

 

「驚きましたわ。まさか、貴方が『NEVER』のリーダーだったとは思いませんでしたわ。当然、貴方も専用機を持ってらっしゃるのですわよね?」

 

「ああ、コレだ」

 

平成仮面ライダーの必須技能。「どこからともなくドライバーを取り出す」を使い、オルコットに『DXオーズドライバーSDX』を見せる。

 

「そ、それでですわね。公式戦の経験は無いのですか?」

 

「ああ。一度もやった事が無い」

 

「それなら、やはり慣れが必要なのではないか思いまして。今日の放課後に、私が練習相手になって差し上げますわ」

 

「いいのか? そっちもクラス代表戦があるだろう?」

 

「『ノブレス・オブリージュ』。高貴な振る舞いには高貴な振る舞いで返すものですわ。それに、私がクラス代表になるのを応援すると言ったではありませんか。私にとっても良い経験になると思いまして」

 

なるほど。それは此方としても都合が良い。一撃も貰わないように、オルコットを鍛えてみよう。

 

「分かった。よろしく頼む」

 

「ええ、此方こそよろしくお願いしますわ。アリーナの申請はわたくしがやっておきますので」

 

「ああ、ありがとう」

 

放課後に約束をして、オルコットは去っていった。しかし、態度がかなり軟化していたな。

 

「ゴクロー、迎えに来たぞ。ん? 箒はどうした?」

 

「え?」

 

マドカとクロエが一組にやってきたが、箒は何時の間にか教室からいなくなっていた。

 

「篠ノ之さんなら織斑君と一緒に食堂に行ったよ」

 

マジか。せめて一声かけて欲しかった。

 

 

 

マドカとクロエと共に食堂に行ったのだが、一夏と箒が二人で一緒に食べていた。ただ、箒が物凄く不機嫌そうな顔をしている。

 

「放って置け。きっと二人っきりがいいだろうからな」

 

「……そうか? 箒が今にも爆発しそうな位、苛立っている気がするんだが」

 

「気のせいだ」

 

いずれにせよあのテーブルには入れん。今回はこの三人で食べる。マドカの雰囲気が朝よりも柔らかい所為か、一緒に食べても良いかと一組のクラスメイトが三人やってきた。マドカとクロエも構わないとの事なので一緒に食べた。

 

食べ終わって食堂を出たところで、箒が俺の所にやって来た。どうやら待っていたらしい。

 

「……ちょっと良いか?」

 

「ああ」

 

何か悩んでいる様な、困っている様な表情の箒。一体何があったのか。

 

 

 

箒の話は一夏についてだった。

 

一夏はオルコットとの試合に勝つ為に、箒にISについて教えてくれるように頼んだらしいのだが、その時にふらりと現れた親切な三年生にISを教わる事になったらしい。

 

「……『NEVER』や俺の名前を出せば良かったんじゃないのか?」

 

「そんな虎の威を借る狐の様な真似はしたくない。それに、ISについてはそうなったが、格闘技の経験はISの近接格闘に応用できると言っておいたから、今日は剣道場で訓練する」

 

ふむ。自分に出来る事を、経験をまじえて教えるわけか。良いじゃないか。

 

「そ、それでだな。わ、私と、い、一緒に、やってくれないか?」

 

「俺と箒で? 箒と一夏でマンツーマンの方が良いんじゃないか?」

 

「い、いや、その、お前が一緒なら心強いからな! 私と一緒に一夏を鍛えようではないか!」

 

「待て、ここは俺が行く」

 

突然、ドライバーからアンクが飛び出してそんな事を言った。一夏を馬夏呼ばわりしていたのに、強くなるのを手伝うとは意外だ。

 

「……アンクが居ないと『オーズ』に変身できないんじゃないのか?」

 

「サポート役がいなくなるだけだ。変身は出来る。こいつは放課後、金髪ロールを相手に公式戦の練習をする先約がある」

 

「! ゴクロー! 一体何時の間にそんな約束をしたのだ!」

 

「お前が馬夏と一緒に食堂に行った時だ」

 

アンクの言葉に「ガーン!」と言う効果音が聞こえそうな表情で箒が固まった。

一夏はマドカと鉢合わせしたくなかったから、幼馴染の箒を無理言って食堂へ連れて行ったのだが、それが箒にとって思わぬ結果を生んでいた。

 

「俺がいない状態で一度戦ってみろ。使うメダルは『タトバコンボ』の3枚。メモリはジョーカー。パッケージは『Type-ZERO』で戦え。金髪ロールの相手ならそれで充分だ」

 

「………」

 

目に見えて落ち込んでいる箒。遊んで欲しかったのに、遊んでくれなかった子供みたいだ。……待て、この状況ならアレが出来るな。

 

「箒」

 

「な、なんだ?」

 

右手の人差し指と中指を使って、指先で箒の額を軽く突く。『NARUTO』のうちはイタチが弟サスケに多用する必殺技だ。一度でいいからやってみたかった。

 

「許せ箒。また今度だ」

 

「……や、約束だぞ! 約束したからな!」

 

少しだけ頬を赤くして、箒は恥ずかしそうに返事をした。可愛い。

 

 

●●●

 

 

放課後、アリーナで公式戦の練習と言う名の、オルコット強化訓練が始まる。噂になっているのか、ギャラリーが結構いる。オルコットは既に準備万端だ。

 

「あら、ISスーツに着替えませんの?」

 

「これは開発時からISスーツの運用を考えていない。だから必要ない」

 

とは言うものの、流石に制服はアレなので、今回はジャージ姿だ。オーカテドラルにタカ・トラ・バッタのコアメダルを装填し、オースキャナーでスキャンする。

 

「変身!」

 

『タカ! トラ! バッタ! タ・ト・バ! タトバ! タットッバ!』

 

この学園で大勢の人間に見られての初変身。ギャラリーから驚きの声が聞こえる。

 

「た、タカ、トラ、バッタ!? それが!?」

 

「歌は気にするな。コレは『オーズ』。どれほどのモノかは……戦ってみれば分かる」

 

困惑するオルコットに対して、お決まりの台詞を投げかけ、右手にメダジャリバーを召喚して構える。

 

「おほん! それでは始めましょう! わたくし、セシリア・オルコットと、『ブルー・ティアーズ』の奏でる円舞曲を!」

 

「オペラ鑑賞ならよく行ったけどな」

 

主に少佐に付き合ったお蔭で。俺としては少佐の口ずさむオペラの方が好きだったが。

 

ブルー・ティアーズから分離した四基のビットから放たれるレーザーの軌道を、タカの目で正確に見切り、一歩も動かずにメダジャリバーで全てのレーザーを弾いてオルコットに当てる。

 

「えッ!? きゃあああっ!!」

 

オルコットが驚いているが、やはりマドカとは雲泥の差だ。光学兵器は直線的で軌道が読みやすい。だからこそ、フレキシブルが求められるのだが、それを体得していないオルコットは正直やりやすい。まあ、マドカと比べるのは酷か。

 

「くぅっ! 当たりなさい!」

 

その後も果敢に攻撃してくるが、タカヘッドの見切りと、バッタレッグの三次元的な跳躍でレーザーを回避。此方がISより小さい事も当てづらい原因だろう。避けられない部分はメダジャリバーで弾いてオルコットに当てる。遠距離攻撃の為の手段として、ビットはあえて破壊しなかった。

 

ある程度シールドエネルギーを削った所で、バッタレッグを変化させての大ジャンプと、ブースターを使って一気にオルコットに接近する。すると、オルコットがにやりと笑ったのが見えた。

 

「かかりましたわね! 『ブルー・ティアーズ』のビットは6基あってよ!」

 

「分かっている」

 

『トリプル・スキャニングチャージ!』

 

『NARUTO』の白眼の如く、タカヘッドの目でスカートに仕込まれたミサイルピットが透けて見えていた。……誤解が無い様に言っておくが、オルコット本人は見ていない。本当だ。

 

メダジャリバーに投入しておいたセルメダル3枚を、オースキャナーでスキャン。セルメダルのエネルギーを纏った状態でミサイルを切り裂き、右手のメダジャリバーを反転させて、峰の部分で寸止めした。メダルのエネルギーは刀身に纏ったままだ。

 

「……参りましたわ」

 

オルコットは素直に敗北を認めた。

 

 

 

その後、消費したISのエネルギーを補給する間にBT兵器について色々と意見交換し、補給が済んだらそれらを模擬戦で試すと言ったことを3回繰り返した。

 

「これではどっちが教えられたのか分かりませんわ」

 

「不満か?」

 

「まさか。色々と勉強させてもらいましたわ。まあ、わたくしの勝利は、元々日を見るより明らかですが」

 

「弱者を侮らない方がいい。オルコットの立場を考えればな」

 

「? どう言う事ですの?」

 

「第三者の視点から見れば、代表候補生のオルコットは勝って当たり前。対して一夏はかすっただけでも名誉になる。つまり、オルコットにとって勝っても得るものが少ないどころか無い。かなり分の悪い試合だ」

 

「あ……」

 

「まぐれでも一発も貰うな。失態があればここぞとばかりに傷口にたかる連中なんて大勢いる。積み上げたモノを失いたくないなら、その事を忘れるな」

 

オルコットの目をしっかりと見つめてそう断言する。秘密を隠した上に卑怯なやり方かもしれないが、金の亡者に狙われたオルコットの過去を利用させてもらった。コレで一夏に対して舐めプすることはないだろう。

 

しかし、オルコットはなんでそんなに驚いた目をしているのか? そんな事を考えていたら、通信が入った。相手はアンクだ。

 

『そろそろ終わったか? すぐに寮の箒とマドカの部屋に来い』

 

「何があった?」

 

『馬夏が箒の幻想を破壊しやがった』

 

確かに一夏からは、どこぞの上条さんの様な感じがなんとなくしていたが、箒の幻想をぶっ壊すとはどう言う事だ? お馬さんこと、ユニコーンヤミーじゃあるまいし。

 

「分かった、直ぐに行く」

 

『急げ。相当酷い』

 

「今日はここまでだ。また機会があったら頼めるか?」

 

「……ええ、構いませんわ」

 

「ありがとう、オルコット」

 

「あ、あの! と、友達なのですから、そんな他人行儀でなく、せ、セシリアと呼んでも構いませんわ」

 

「分かった。俺もゴクローでいい。またな、セシリア」

 

「え、ええ。また……」

 

何故かセシリアは何かを思い出したような、寂しそうな顔をしていた。

 

 

○○○

 

 

私とアンクは放課後、剣道場へ一夏を呼び出した。

 

一夏はアンクを見て驚いていたが、説明するとそんなものかと納得していた。本当に分かっているのだろうか。

 

現在の一夏のレベルを調べる為に私と手合わせした訳だが、一夏は私に全く歯が立たなかった。

 

「まるで養豚場の豚でも見るような目だな。まあ、当然か。弱過ぎる」

 

そうだな。そしてまた一つ、一夏は私の期待を裏切った。私の心が失望と怒りに満ちていくのが分かる。聞いてみると中学時代は帰宅部で、バイトと受験勉強に精を出していたらしい。

 

「……呆れた。そんな錆付いたナマクラ刀で、よくあんな啖呵が切れたものだな」

 

「確かに致命的だな。ゴクローとは反対の意味で勝負にならん。弱すぎて勝負にならん」

 

「……勝負はやってみなきゃ分からねぇじゃねえか」

 

「やかましい! てめぇが喧嘩売った相手は国家に実力を認められた代表候補生! それに対してお前は一時間も操縦していない上に、専門用語も禄に知らんド素人! はっきり言って戦力差はヤバイと言うよりも絶望的なんだよ!」

 

カチンと来たのか、反論する一夏にアンクが現状を説明するが、それでも一夏はチンプンカンプンと言った感じで分かっていなかった。短気な所は変わっていないな。

 

「ちっ! お前の頭じゃ、どれ位絶望的なのか分からないらしいな。ここは一つ表で解説してやる」

 

「表?」

 

「強さ表って奴だ。どっちらかと言えば、ランク付けに近いがな」

 

「どこから持ってきたんだ?」

 

一夏のツッコミを無視して、鳥から右腕になったアンクが、ホワイトボードにマジックペンでスラスラと表を書いていく。意外と可愛いイラストつきで。

 

SS 織斑千冬

S ヴァルキリー

A 各国家代表操縦者

A- 軍所属IS操縦者

B 各国家代表候補生(平均)

C IS学園3学年一般生徒(平均)

D IS学園2学年一般生徒(平均)

E IS学園1学年一般生徒(平均)

F 何も知らないド素人の馬夏

 

「なんだよ最後の!」

 

「馬鹿な一夏。略して馬夏だ。分かりやすいだろ、喜べ」

 

アンクが自信満々に書いたのは、結構頭の悪そうな表だった。このランクの基準は恐らく適当だろう。

 

例えば、山田先生は嘗て代表候補生であり、『銃央矛塵【キリング・シールド】』という二つ名まで持っている凄腕。公式戦では緊張の余り実力が発揮できなかったらしいが、実力は相当なものだ。

他にゴクローが戦った、ラウラ・ボーデヴィッヒなるドイツの代表候補生も、年齢の問題で代表操縦者になれないだけであって、実力はドイツの代表操縦者よりも上だと聞いた。

 

「まあ、実際の戦闘では相手との相性、コンディション、他にも色々な要素でコロコロ変わる。こうして表にすること自体ナンセンスだがな。

お前の操縦技術は他の連中と大して変わらないだろうが、知識面で大幅に遅れている。それは原爆の取り扱いを知らないで原爆を弄るようなもんだ」

 

「いや、いけるって。入試の時も簡単に動かせたし、何とかなるって」

 

一夏の楽観的な、驕っているような言葉に不快感を覚える。

それでは力に溺れているのと同じではないか。

 

「もう少し早く専用機ってやつを都合してくれたら良いのにな」

 

「お前が此処に入学して一週間後に、倉持技研から専用機が渡される予定だったんだよ! 今回の決闘に関しちゃ、お前が身の程知らずな余計な事したのが原因だろうが! 自業自得だ馬夏が!」

 

「なんだよ! アレだけ馬鹿にされたら流石に男が廃るだろ!」

 

「は! 安いプライドだな! アレが今の世界の普通の反応って奴だ!」

 

アンクと一夏が言い争っている中で、私は別の事を考えていた。

ISを手にする事が、専用機を手にする事がどう言う事なのか、一夏はまるで分かっていない。一夏にとってISは便利な道具位の認識なのではなかろうか。

 

「とにかく! これから毎日三時間! 放課後に稽古をつけてやる!」

 

「だから! 俺はISについて教えて欲しいんだよ! 箒は『束さんの妹』なんだから、IS詳しいだろ!?」

 

「ッッ!!」

 

入学してからの一夏の行動や言動に失望しつつも、私は一夏に対して一つの希望を持っていた。

それは一夏が、小学生時代の女の子らしくない自分を、唯一女の子として扱ってくれた事。私にとって一夏は「私自身をちゃんと見てくれた男の子」だった。それが、私の一夏に対する一途な恋心の根源だった。

 

その一途な恋心が、何時の日か再会する事を夢見る事が、私の過酷で孤独な6年間を支えてきた。一夏なら、私を『篠ノ之束の妹』としてではなく、『篠ノ之箒』として見てくれるとずっと信じていた。再会した時に一夏が私の事を覚えていてくれた事で、それを確信したつもりだった。

 

違った。

 

一夏は私を「『篠ノ之束の妹』だからISに詳しい」と思って自分を頼ってきたのだ。私の唯一の希望が砕けた音が聞こえた。

 

そして、私はまた間違いを犯した。感情任せに竹刀を両手で一夏に打ち込んでしまった。

 

「お、落ち着け箒。俺はまだ死にたく無いし、お前もまだ殺人犯になりたい年頃でもないだろう? な、頼むから。何か奢るから」

 

「……この……軟弱者が……っ」

 

竹刀を受け止め、的外れな弁解をする一夏に、私はそう答えるのが精一杯だった。

 

「ふぅ、助かった……」

 

「……馬夏がッ! おい! 箒!」

 

アンクが何か言っていたような気がするが、私の心は絶望で満たされていた。

 

一人、自分の部屋に戻った私は、ベッドで布団に包まって泣いた。

 

一夏も私と同じように『織斑千冬の弟』だからと『亡国機業』に誘拐されていた事を知った時は、自分と同じ様な経験をしている一夏は、きっと自分以上に努力しているに違いないと期待していた。

 

その期待は見事に裏切られた。誘拐された時の絶望を、無力感を知っているハズなのに。何の対策も、努力も、改善も見られない。流れに身を任せるような心構えと態度で、ISの事を禄に勉強せずにIS学園に入学している事も、男が廃ると体裁を気にしている事も信じられない。今の私には、今の一夏が全く理解できなかった。

 

私は元々、『篠ノ之束の妹』だからとの理由でIS学園への入学が決まっていたが、ゴクローが「自分にちゃんとそれ相応の資格がある事を証明する」と言って、入学が決定していたにも関わらずIS学園の筆記試験を受けると言った。運転免許もちゃんと試験を受けて取得した。

 

それに触発されて、私も、クロエも、マドカも真面目に試験を受けた。四人でそれぞれ分からない事を聞きあい、教えあい、全員で試験に臨んだ。全員合格したときは皆で喜んだ。テンションが高かった所為か、少々過激なスキンシップがあったが、嫌な気持ちは一切しなかった。

 

私は堂々と胸を張って『篠ノ之束の妹』ではなく、『篠ノ之箒』としてこのIS学園に入学した。だから、一夏もそうに違いないと思っていた。

 

「姉さんも……こんな気持ち、だったのかな……」

 

他人の自分を見る目が変わってしまった事に対する絶望。それが今の私には嫌と言うほど分かった。

そこで、私が本当に欲しかったものは何だったのかと考える。姉さんは『失ってしまった愛』だとゴクローは言ったが、私はなんなのだろうか……。そう考えて思い至る。

 

私が欲しかったのは、私を『篠ノ之束の妹』としてではなく、『篠ノ之箒』としてまっすぐに見てくれる誰か。

今にして思えば、一家離散するまでの経験と、肉体も精神もみるみる摩耗していったあの6年間で、私はそれが一夏だけだと思い込んでいたのではないだろうか。

 

不意に部屋の扉がノックされる。涙を拭いて扉を開けると、心配そうな顔をしたゴクローとアンクがいた。きっと、事の顛末をアンクが教えたのだろう。

 

今の私は全て、この男との出会いから始まった。

 

ずっと心の底から憎んでいた姉と仲直りして、今では姉を心から守りたいと言える程の関係になった。

自分を『篠ノ之束の妹』としてではなく、『篠ノ之箒』として見てくれる人達と出会えた。

今まで友達も禄に出来なかったが、マドカやクロエと言った同世代の友達が出来た。

家に帰って「ただいま」と言えば、「お帰り」と誰かの返事が返ってくるし、夜は和気藹々と皆で食卓を囲んで、その日に起こった事を話し合って笑い合うことが出来る。

 

そうだ。ここ一ヵ月半の間、今までの生活が嘘だったかの様な毎日で、何もかもが楽しくて仕方が無かったのは、全部ゴクローのお蔭だ。それなのに私は……。

 

「……私は……また、間違ったんだ」

 

過去に自分が犯した罪を教えてくれた人。それを優しく許してくれた人。

その信頼を裏切ってしまった。恩を仇で返してしまった。それがとても申し訳なかった。

 

「……何があった?」

 

「……一夏が……私を、見てなかったんだ……私を、姉さんの妹、だからって……頼ってきて……ISに詳しい、だろうって……。

私は、頑張ったのに……それで、嫌で、悔しくて、……また、暴力をッ……私は…ッ…全然、変わって、無くてッ……お前は、信じてくれたのに……ッッ」

 

「……いいから、無理に言わなくてもいいから」

 

あの時と同じように、自分が犯した罪を後悔して泣いている私を、壊れないように優しく抱きしめてくれた。あの時と同じように、涙が溢れて止まらなくなってしまった。

 

「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい……」

 

「……大丈夫だから。箒がどんなになっても、絶対に見捨てたりなんてしない。ずっと箒をちゃんと見てるから」

 

……そうだ。一夏が私をちゃんと見てくれなかった事は、とても悲しくて、とても悔しくて、とても切なくて、とても苦しかった。

 

だが、それ以上に、同じ過ちを犯した私が、ゴクローに見捨てられる事がとても怖かった。そんな、ゴクローはあの時と同じように、私が望む優しい言葉をかけて、頭と背中をやさしく撫でてくれた。

 

「……ずっと、ちゃんと、見てて、くれる?」

 

「ああ。ずっと、ちゃんと、箒を見てる」

 

もう何も考えられない。今はただ、この暖かさに縋って、この心地よさに浸って、この優しさに甘えていたかった。

 

 

○○○

 

 

今日は土曜日。授業も午前中で終わって後は自由時間だ。

 

入学してから不機嫌だった箒は、あの一件以来よく笑顔を見せるようになった。

 

一夏は三年生の先輩からISを、箒からは剣道を教わっている。約束通り箒と一緒に一夏を見たが、流石に自分の力不足を理解したようで真面目にやっている。

 

セシリアとの練習も一日おきにやっているが、確実にスキルアップしている。恐らく、今までの方法で大抵の相手は倒せた為に、それ以上の事を考えなかったのではなかろうか。

 

ただ、マドカの一夏を見る目が、親の仇でも見るかの様な目になっている。理由を聞いたら、「俺を見る箒の目が、スコールを見るオータムみたいな目になっている」と言っていた。

 

どう言う事なのか? 普段はツリ目だが、話している時は垂れ目になると言う事か? それとも雰囲気が柔らかくて可愛くなるという事か? ……いや、待て、まさかそう言う事か? だとするとスコールとオータムって……。

 

『目の前の事に集中しろ! とっとと決めてコンボに至れ!』

 

そうだった。今は戦闘中だったな。

 

俺の方の問題はどうかと言うと、極めて順調。相手が無人機だから手加減が要らない事が良かったのか、色々と実験したのが良かったのか、必殺技を極力発動しない戦い方が良かったのかは分からないが、今日にもコンボが解禁されそうだとアンクは言う。

 

ここまでで、パワーダイザーが7体スクラップになった。難易度を上げるためと言って、途中からパワーダイザー2体を同時に相手している。まずは一体を確実に仕留める。

 

『スキャニングチャージ!』

 

『セルバースト!』

 

『FANG・MAXIMUM-DRIVE!』

 

「セイヤァアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」

 

セルバーストと、ファングのマキシマムドライブで強化した、ラキリバの必殺技でパワーダイザーの両腕両脚を切断。残った胴体も爆発した。

本当はカーズ様の『輝彩滑刀』をカマキリソード+ファングメモリの組み合わせで再現したかったが、今は志々雄誠の『無限刃』が精一杯のようだ。

 

『よし! 上出来! いや、それ以上だ! これで二つとも使えるようになった!』

 

そうか。狙い通りに上手く言ったか。ならば、早速試してみよう。

 

「アンク。試しに『ラトラーター』を使ってみるか」

 

『待て。知っているだろうが、コンボはとんでもない力だ。使えばただじゃ済まない』

 

「ぶっつけ本番で使うよりマシだ。それに、策も考えてある」

 

ラトラーターは火力の高く、制御が難しいコンボだから、試してみないと怖い。最悪、更識を殺しかねない。

 

『……どうなっても知らないからな。ウサギ女! ちゃんと記録しておけ!』

 

『はいは~~い! 遂に見られるんだねぇ、コアメダルの本当の力が!』

 

もう一体のパワーダイザーは、最初に相手をしたパワーダイザーと同じ仕様だ。ただし、今度は此方も手加減抜きだ。

 

オーカテドラルに装填されたコアメダルが猫系の黄色いメダルに統一され、斜めに傾けると発光する。コンボが成立した証であり、このコンボが使用出来る証でもある。オースキャナーでメダルをスキャンして、コアメダルの真の力を解放する。

 

『ライオン! トラ! チーター! ラタラタ~! ラトラーター!』

 

猛獣の様な咆哮の後に、全身が黄色く輝き、『仮面ライダーオーズ・ラトラーターコンボ』への変身が完了する。

メモリスロットに装填したメモリはルナメモリに、ユニットは『イエーガー』に変更した。

 

タトバコンボや亜種形態の時よりも、ずっと大きな力が体から湧き上がってくるのが分かる。各種武装も若干『S.I.C』っぽく変化している。元から本家よりちょっとゴツイ見た目だったが、攻撃的と言うかより戦闘向きになった感じだ。

 

このコンボで試したかったことを試すべく、早速ルナのマキシマムドライブを発動する。

 

『LUNA・MAXIMUM-DRIVE!』

 

「ウオオオオオオオオッッ! セイヤァアアアアアアアアアアアアッッ!!」

 

ラトラーターの固有能力である熱線放射『ライオディアス』。それをルナメモリの力で、本来の全方位展開から、前方のみに集中させてパワーダイザーに放つ。

両手で押し出すようなアクションと供に放たれた熱線の直撃を受けたパワーダイザーの装甲は表面が赤く溶解し、所々のパーツがショートしている。

 

『なるほど、「ルナメモリ」を制御装置に……か。考えたな』

 

ガイアメモリでコアメダルの弱点をカバーできないかと考えて、俺は『仮面ライダーW ルナトリガー』からヒントを得た。

トリガーメモリの高火力をルナメモリで抑制してバランスを取っていたのだから、同じように高火力のラトラーターコンボを、ルナメモリで抑制できるのではないかと思い、その為にルナメモリを多用して、レベル2に至らせるつもりだった。

 

『確かにレベル2に大分近い上に、ある程度制御できているが……コンボの力を完全に制御できているわけじゃない。早く決めろ』

 

確かに、コンボの影響なのか、体への負担が結構キツイ。早々に終わらせるべく、チーターレッグの加速とイエーガーユニットの旋回能力を駆使し、トラクローの斬撃とチーターレッグの加速から生まれるキックを叩き込む。

切り裂かれ、蹴り飛ばされ、瞬く間にパワーダイザーがボロボロになっていく。

 

同色同系統のコンボは、各メダルの能力が噛み合う相乗効果によって、総合的な戦闘力が亜種形態よりも高くなると聞いたが、コレほどまでとは思わなかった。

 

「コレで決まりだッ!」

 

『スキャニングチャージ!』

 

満身創痍のパワーダイザーに止めを刺すべくメダルをスキャンすると、パワーダイザーに向かって黄色い三つのリングが展開される。

今までの『スキャニングチャージ』とは比べ物になら無いほどの、はち切れそうな力がラインドライブを通して全身を走っているのが分かる。

 

「セイヤァアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」

 

全身から眩いばかりの閃光を放ちながら、三つの黄色いリングを通る度に加速し、トラクローでパワーダイザーをX状に切り裂く。ラトラーターの必殺技『ガッシュクロス』がパワーダイザーに決まった。

同時に背中を懐かしい衝撃と感覚が襲った。ラトラーターコンボから発生する余剰エネルギーに耐え切れず、イエーガーユニットが爆発したらしい。

 

『流石に、とんでもなかったなぁ。それでも意識は保ったか。『タトバ』に変えろ』

 

「ッッ、ああ……」

 

『タカ! トラ! バッタ! タ・ト・バ! タトバ! タットッバ!』

 

地面に投げ出された俺に、アンクがタトバコンボに変えるように促す。体の負担は軽くなったが、今まで以上に体が疲労している。

 

「……帰るぞ、アンク」

 

『ああ』

 

『ZONE・MAXIMUM-DRIVE!』

 

ゾーンのマキシマムドライブを使って『NEVER』の拠点に戻ったが、直ぐに変身が解かれて俺は意識を失った。

 

「(少しヤバいか、コンボは。……例の件をウサギ女に相談してみるか)」

 

ドライバーから右腕形態で飛び出したアンクの手には、猫系の黄色いコアメダルが3枚握られていた。




キャラクタァ~紹介&解説

5963
 大道克己はどうか知らないが、フィリップや弦太朗、そして火野映司の様な鈍感スキルは持っていない。現在使えるコンボは、ガタキリバ、ラトラーター、そして恋愛コンボ。

アンコ
 本家『オーズ』の火野映司以上の鈍感スキルを持つ朴念仁と、剣道少女のやり取りを見て割りとマジギレ。「馬夏」呼ばわりは恐らく死ぬまで続く。

モッピー
 596の所為で見えなかったものが見えてしまい、アンコの所為でワンサマーの本音を聞いてしまった為、『人は皆、都合のいい事を現実と思い込む』って感じの原作の箒から、大分かけ離れてしまった。許せ、箒ェ!

チョロコット
 受けた恩は忘れない『仮面ライダーカブト』の神代お坊ちゃま的な所のある良い子。596の手によって原作より強化。実際、ブルジョワなIS操縦者ってかなり稀なケースだと思う。

まどか
 ワンサマーに対して原作とは別の意味で、そしてより深い憎しみを覚える。その内、ソウルジェムが真っ黒になって、救済の魔女が生まれるかも知れない。男女の恋愛は知らないが、女同士の恋愛は嫌と言うほど見てきた。

ワンサマー
 乙女の幻想を『粉砕・デストロイ!』する『幻想殺し』を持つ男。そして、VTラウラ戦でのラウラに対する思いを考えると、『男女平等パンチ』の使い手でもある。
 原作で箒が「あの人(束)は関係ない!」と言っているのに、「束の妹だからISに詳しいだろう」と考えている辺り、何かがおかしい気がする。



メダジャリバー
 通称ジャリ剣。どう考えてもセルメダル3枚で防御不可能な次元斬が使えるのは、バースシステムを遥かに圧倒していると思う。距離に関係なく、問答無用で空間ごと相手を斬れるガード不可の攻撃って相当なチートの筈……。
 今回の『トリプル・スキャニングチャージ!』は、サメヤミー戦でトライドベンダーに乗って使っていたのをイメージ。

ルナメモリ
 『幻想の記憶』を秘めたガイアメモリ。596は本家『W』の使い方に加え、頭のイメージを現実に反映させるような使い方をしている。今回で何気にメダルもメモリも黄色に統一されている。
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