DXオーズドライバーSDX   作:トライアルドーパント

17 / 40
真面目なのばっかり書いていると、唐突にギャグが書きたくなる。そう言えばローゼンメイデン再開したな~と思い、息抜きのつもりでこの作品のキャラでローゼンメイデンのパロディを書いてみたら……余りにもカオス過ぎる狂った展開に、途中で書くのを止めた。配役は此方。異論は認める。

水銀燈……クロエ・クロニクル
金糸雀……京水
翠星石……織斑千冬
蒼星石……織斑マドカ
真紅………アンク
雛苺………織斑一夏
薔薇水晶…ラウラ・ボーデヴィッヒ

桜田ジュン…少佐
桜田のり……リップバーン・ウィンクル
柏葉巴………篠ノ之箒
草笛みつ……シュラウド
槐……………ドク
白崎…………クラリッサ・ハルフォーフ
ラプラス……篠ノ之束

雪華綺晶……ゾーリーン・ブリッツ

アリスゲームの景品は5963。名前が一文字しか違わないとの理由で採用したシンクを筆頭に、薔薇乙女の内七人が男で、アニメ第二期のキャラも混ざっている。

そして、雛苺コスで「これゾン」の相川歩みたいな雛一夏が、きらきーコスのゾーリーンに襲われると言う、誰得なR-18版に行かなきゃイケナイ様な展開になり、ズタボロになった雛一夏が「俺……皆の所に帰れねぇ……。俺、喰われちまった……」と言うオチまで考えた。

きらきーコスのアリーシャに雛一夏が喰われても面白く無さそうだったし。



第17話 復讐のV/仮面ライダーの流儀

今日も朝から騒がしい一年一組の教室では、一夏が昨日と同じようにクラスメイトに纏わりつかれていた。しかし、纏わりつかれている理由が、昨日とちょっと違う。

 

「シュレディンガー君! 昨日の放課後に織斑君が二組のクラス代表と模擬戦して勝ったんだって!」

 

「……ちょっと詳しく教えてくれるか?」

 

昨日は箒の『黒柘榴』の性能テストに付き合ってから、寮の消灯時間が残り30分に迫るまで、『NEVER』の拠点で『黒柘榴』の装備について束や箒、クロエとずっと意見交換していた。晩飯もそちらで済ませたので、そんな事になっていた事は露ほども知らない。

 

「うん。昨日の放課後に、二組の凰さんと三年生の千歳先輩が模擬戦して、その時は凰さんが勝ったんだけど、その後に一夏君と凰さんが模擬戦して、一夏君が勝ったんだって!」

 

「……つまり、凰は連戦したって事か?」

 

「うん。でも織斑君は試合をたった一撃で決めたんだって! ISに乗って一ヶ月位なのに、三年生に勝った専用機持ちに勝っちゃうなんて凄いよね!」

 

「『零落白夜』か……」

 

織斑先生が現役時代に使ったIS『暮桜』と同じバリアー無効化能力。相手に一発当てれば、ほぼ勝利確定と言う反則染みた能力。

但し、能力の発動中は本体のシールドエネルギーをガンガン消耗すると言うリスクがあり、とても多用できる様な能力では無いとか。

 

「一日でまた随分と人気者になったな、一夏」

 

「本当にそう思うか?」

 

「ああ、妙に嬉しそうだ」

 

そう。一夏は朝から疲れた表情をしているが、何処か嬉しそうな雰囲気を漂わせている。まあ、その理由は見当がついている。

 

「織斑君ってやっぱり織斑先生の弟さんなんだね~」

 

「そうそう。流石だよね~」

 

「……まあ、俺は千冬姉と同じ武器を使ってるからな。そりゃしっかりしないといけないだろ」

 

一夏の嬉しそうな雰囲気の原因はズバリ、周りの「流石織斑先生の弟」と言う評価だろう。まるで、うちはフガクに「流石俺の子だ」と言われて喜ぶサスケの様だ。

クラス代表戦の前に二人で話した時、一夏は「この学園の全員に俺の事を認めてもらう」と言っていたが、それは『織斑一夏として見て欲しい』と言う意味ではなく、『織斑先生の弟として相応しくありたい』と言う意味だったようだ。

 

「なんでだ?」

 

「え!? なんでだって、そりゃ、千冬姉は『雪片』の『零落白夜』で世界一になったんだぜ? それなら千冬姉と同じ武器を使ってる俺がしっかりしないといけないだろ?」

 

「……同じ武器を使っているから、敗北する事は織斑先生の誇りを傷つけると?」

 

「おう!」

 

一夏は自分の考えを理解してくれて嬉しいと言う様な表情をしているが、実のところその点に関して俺はその気持ちがイマイチ理解できない。

 

同じ武器を使って誰かの誇りを傷つけると言うのなら、俺は『鎧武』の闇ッチがそれに該当すると思う。すなわち、闇ッチがメロンニーサンのゲネシスドライバーを使って変身した「仮面ライダー斬月・偽」。兄・貴虎に化けて紘汰を抹殺しようとしていた闇ッチの行動こそが、正に『同じ道具を使って誇りを傷つけた』と言える行動だろう。

 

すなわち、誇りとは勝敗と言う結果で決まるのではなく、戦い方と言う過程で左右されるモノなのだと俺は思う。シャルモンのおっさん的に言うなら、一夏が「エレガンスに欠ける」戦い方をしない限り、織斑先生の誇りはずっと傷つかないと思うのだが……。

 

「まあ、兎に角俺は千冬姉の――」

 

「諸君、お早う。早く席に着け」

 

一夏が何か話そうとした所で、織斑先生と山田先生が教室にやって来た。クラスメイトの全員がそれぞれ席に着き、今日の朝のSHRが始まった。

 

しかし、織斑先生と同じ武器を使っているから……か。俺も贋物とは言え、『仮面ライダー』と同じ武器を使っているが、俺はそんな気持ちが湧いた事は無い。

 

『同じ武器を使っている事で、自分と織斑千冬を同一視してるんじゃないか? 自分の敗北は織斑千冬の敗北って感じでな。もしくは、同じ武器を使っている事で、自分が織斑千冬の後継者だと思ってるってトコだろ』

 

なるほど、一夏はそう言う考えなのかも知れないな。

 

俺の場合、自分の存在が色んな意味で偽者だという認識が心の根底にあるし、ドライバーも贋物だが、魔改造が施された「本物よりもずっと強い力を持った贋物」だ。それならその使い手である俺は、「本物よりもずっと強い心を持った偽者」にならないといけない。

 

つまりは「本物を超えたい」。そんな気持ちなら俺にはある。

 

『本物より強い偽者か……悪くないな』

 

そんな俺の考えを聞いて、グリードもどきのアンクは不敵に笑った。

 

 

●●●

 

 

一夏が凰を倒したとの噂が広まってから一週間ほど経った頃。凰を倒してから、一夏は何故か凰に避けられているらしい。一夏は避けられている理由がよく分からないとの事だが、千歳先輩に話を聞いた所、女心の分からない一夏が悪いと断言していた。

 

今日はマドカと一緒にセシリアの訓練に付き合うことにした。アリーナで今日の訓練について話していた時、凰が俺達のところにやって来た。

 

「アンタ! ゴクローって言ったわよね! 今からあたしと勝負しなさい!」

 

「? 俺とお前が?」

 

「そうよ! 決闘よ! あたしが勝ったら、この学園から出てってもらうわ!」

 

凰はどう言う訳か俺に勝負を申し込んできた。そう言えばコイツは専用機持ちの代表候補生だから、IS大戦のオーズ無双を知っている。

それはつまり、万が一『オーズ』が襲撃してきた場合に備えた、対オーズ用のナニカがあると言う事。つまり、そのナニカに相当な自信があると言う事だろうか?

 

『いや、そうじゃない。中華娘が「甲龍」の強化パッケージを頼んだ時に、本国にいる「オーズ」を……と言うか、男を快く思わない連中が、「オーズ」がISを破壊する為に造り出された兵器だって事を中華娘に教えて焚きつけた。コイツを突き動かしているのは、青臭い正義感ってヤツだ』

 

そう言えば、表向きには『オーズ』は新世代型ISって設定だったな。それが実は対IS兵器だと知って、凰は俺が皆を騙していると思った訳か。しかし、どうしてアンクはそんな事を知っているのか?

 

『バイラスメモリをそれなりに使える様になってきてな。通信に関しては常に網を張っているから何でも分かる』

 

……そう言えば、IS大戦でバイラスメモリの使用権をアンクに渡してから、ずっとそのままだったな。

 

「この学園をアンタみたいな悪魔の好きになんてさせないわ! 覚悟しなさい!」

 

「……悪魔?」

 

「アンタの事に決まってるじゃない!」

 

俺は悪魔ディケイドか? しかし、『世界の破壊者』の設定を考えると、あながち間違いでも無い。

 

「ご、ゴクローさんは悪魔なんかじゃありませんわ!」

 

「本国の政府高官が言ってたのよ! 『オーズ』は全てのISを破壊する為に生まれた悪魔で、この世界を滅ぼすって!」

 

「……重要なのは持っている力がどんなモノなのかではなく、持っている力をどんな風に使うかだ。ISを自分の欲望を押し通す為の脅迫の道具として使う貴様の方が、よっぽど悪魔なんじゃ無いのか?」

 

「な、なんですって!」

 

俺を倒すべき敵だと言う凰に対して、セシリアとマドカが真っ向から対立。『ディケイド』のもやし……もとい、門矢士は何時もこんな感じだったのだろうか。

 

「上等じゃない! アンタ達の方からボッコボコにしてあげるわ!」

 

「良いだろう。先ずは私だ。ゴクロー、セシリア、ここから離れてくれ」

 

「……やり過ぎるなよ」

 

「分かっている。ただ……」

 

「ただ?」

 

「私に与えられた『青騎士』は、『オーズ』を守る為に造られたISだ。だが、私はずっと自分の為だけに、『織斑マドカ』になる為だけに戦ってきた。何かを守る為の戦いなんて、私は一度もした事がない」

 

ああ、知っている。束が考えている『青騎士』、『黒騎士』、『紅騎士』の三機のガイアメモリ対応IS。箒からは「ガイアメモリとコアメダルを使う相手に対抗する為」と聞いていたが、実際は「『オーズ』を守り、共に戦う為に造ったIS」だと、後に束が言っていた。

 

どこか『555』の「三本のベルト」みたいだが、その内『パラダイス・ロスト』に登場する「帝王のベルト」に該当する様なISも出てくるのだろうか。

 

「だから、見ていて欲しい。私にも、お前みたいに“何かを守る戦い”ができるのかどうか、私が“変身”できるのかどうか、お前に判断して欲しい」

 

そんな事を言うマドカの表情から察するに、凰との勝負に負けるつもりは欠片も無いが、元テロリストの自分が本当に変わる事が出来るのか不安と言った所か。

 

「心配するな。俺が“変身”できたんだ。マドカだって“変身”出来るって俺は信じてる」

 

「……そうか。でも、ちゃんと見ててくれ」

 

「ああ、ちゃんとマドカを見てる」

 

不安が拭えたのか、マドカの表情が少し明るくなった。俺とマドカのやり取りを見て、凰の方はイライラしているみたいだが。

 

「ねぇ、さっき言った事を謝るなら、少し痛めつけるレベルを下げてあげてもいいわよ」

 

「さっさと来い。私は絶対に負けない」

 

「……上等ッ!」

 

かくして、マドカと凰の戦いが始まった。

 

マドカの纏う『青騎士』の開発コンセプトは「状況に応じて二つの形態を使い分けるIS」で、ガイアメモリの力を利用する事でそれを可能としている。通常状態は遠距離特化で、ナスカメモリを使えば近距離特化と実に分かりやすい。

『カブト』のホッパーゼクターの、デザイン開発時のコンセプトと似ている気がするが気のせいだろう。織斑先生とマドカの地獄姉妹は少し見てみたい気がするが。

 

『青騎士』の通常形態は、ぶっちゃけ『ガンダムSEED DESTENY』のストライクフリーダムがISになった感じ。連結可能な高出力BTエネルギーライフルが二丁。両腰にはエネルギーソードの懸架ラックを兼ねた、2つ折り式レールカノン。連結可能なエネルギーソードが二本。両腕部にはビームシールドと、ビーム系兵器がこれでもかと搭載されている。

 

その中で最も特徴的なのは、背部のウイングバインダーに搭載されている合計8基のビット兵器。ミレニアム製のマルチロックオンシステムと、ドラグーンシステムを使用したもので、束がそれらをマドカが使うに当たって最適な仕様に調整したとか。

しかも、『プロト・ティアーズ』のISコアを使った影響か、8機のビットから発射されたレーザーを自由自在に曲げる事が出来る。

 

正直な話、機体スペックとマドカの操縦技術を考えると、ナスカメモリを使わなくても大抵の敵に勝てる。

そんなマドカは今、二丁のエネルギーライフルしか使っていない。凰は序盤から衝撃砲でガンガン攻めているが、マドカは攻撃を回避してばかりで殆ど攻撃していない。

 

「なんで! なんで当たらないの!」

 

「ふん。貴様の殺気が塊になってコッチに向かって来るんだ。見えない砲身? 見えない砲弾? 私に言わせれば丸見えだ」

 

そう。見えない攻撃と言っても、衝撃砲には凰の殺気が込められており、あれなら凰の殺気を読んで狙いを特定する事は、マドカにとって容易だろう。

まるで『ARMS』の「空間の断絶」を殺気を読む事で回避した、少々忍術を嗜むサラリーマンの様だ。

 

「殺気ですか……わたくしには難しそうですわ」

 

「セシリアはそう言うタイプじゃないからな。セシリアの場合は、相手の表情や攻撃パターンを読む事を極めた方が良いと思うぞ」

 

「ええ。しかし、なんでマドカさんは攻撃しないのでしょうか? 幾らでも攻撃のチャンスはあったと思うのですが?」

 

「無駄撃ちや空振りは、精神的にも肉体的にも一番疲れる。特に凰には“見えない”って言うアドバンテージがあるのに、それが全く効いてない。凰の精神的ダメージはかなりのものになっている筈だ」

 

『最強の装備でも対抗できないって事もな。本国で整備担当が無理をして三日で仕上げたってのに』

 

なるほど。つまり「凰の考えた最強の『甲龍』」か。しかし、マドカは被弾数ゼロ。今も凰が繰り出した『高電圧縛鎖【ボルテック・チェーン】』を撃ち落し、まだまだ余裕の表情をしている。

それに対して凰は段々と攻撃が単調になり、動きも悪くなってきた。顔にも疲労の色が見てとれる。

 

「こんのぉおおおおおおおおッッ!!」

 

衝撃砲が効かないマドカに対して、凰はとうとう自爆覚悟の特攻を選択したようだ。両刃の薙刀状に連結した『双天牙月』を振り回し、マドカに急接近する。その凰に対して、マドカは迎撃するのかと思いきや、なんと両手のエネルギーライフルを格納した。

 

「貰ったぁああああああああッッ!!」

 

「危ない!」

 

「いや、誘いだ」

 

「フッ!」

 

マドカが選択したのは真剣白刃取り。遠心力で攻撃力が増した『双天牙月』を両手で挟んで止めた。

 

「なっ!」

 

「終わりだ」

 

凰の動きが止まった所で、左右の腰に装着された二つ折り式レールガンを展開。至近距離から凰にレールガンを二発撃ちこんだ。

直撃を受けて大きく仰け反りながら吹き飛んだ凰に対し、マドカは8機のビットの内6機を使って追撃。ビットから放たれるレーザーが、『甲龍』の両腕と両脚、そして『非固定浮遊部位【アンロック・ユニット】』を撃ち抜いた。

 

「終わりましたわね」

 

「ああ、終わったな」

 

一撃も当てられないまま一気に戦闘不能に追い込まれ、敗北した凰はアリーナに大の字で倒れていた。マドカはそんな凰に目もくれず、『青騎士』を解除して真っ直ぐ此方に向かってきた。

 

「ゴクロー、どうだった?」

 

「ああ、最後の白刃取りが凄かった」

 

「あの、マドカさんなら直ぐに勝負を決められたのでは?」

 

「ふん。あの手の人間はな、一度格の違いを教えてやれば二度と反抗しないんだ」

 

そう言われればそうかも知れない。昔は織斑先生から、今はマドカから格の違いを教えられたとすれば、何か因縁めいたモノを感じざるを得ない。

 

 

 

その後マドカから、夕飯の後でデザートにアイスを買って欲しいと言われた。随分安上がりなおねだりだと思ったが、どうやら二つに分けて食べるアイスが食べたいらしい。

 

「言っておくが、単に一人分だと量が多いから分けて食べるのであって、別に他意は無い。そう、断じて、断じて他意は無いぞ」

 

大事な事なのか二回同じ事を言うマドカだが、視線が泳いでいて挙動不審だ。しかし、断る理由は無いので、夕食後にマドカと二人で購買部にアイスを買いに行った。棒のタイプも、パピコみたいなタイプも無かったので、モナカのアイスを買う事にした。

早速マドカが袋から取り出して半分に割ろうとしたのだが、モナカアイスは半分に割れず、右手の方に8分の一、左手の方に7分の一位の比率で割れた。

 

「あ……」

 

「あるある、よくある」

 

予想外に不器用だったマドカをフォローし、結局俺がモナカアイスを割って、二人で半分ずつ食べた。何となく『NARUTO』の自来也とナルトみたいだと思った。

 

 

●●●

 

 

あれから俺達と凰との間に接点は殆どなく、たまに食堂で顔を合わせると直ぐにそっぽを向いて何処かに行ってしまう。一夏の方も同様で、未だに凰に避けられているらしい。

 

その間に起こった事と言えば、簪から『打鉄弐式』の製作を手伝ってくれたお礼にと抹茶のカップケーキを貰って二人で茶をしばいたり、楯無が再び生徒会の仕事をサボり出したことで虚と二人で生徒会の仕事を捌いたり、生徒会の仕事が終わった頃に何故か本音がタイミングよくやってきて三人で茶をしばいたりした。

 

『コンボが一つ使える様になったのはどうした?』

 

そうだった。新しくコンボが使えるようになる為に、今度は常時バトルモードのサイドバッシャーを相手にする羽目になった。

ミサイルやらビームのバルカン砲やら飛び道具が充実し、格闘能力も高いと言う高スペックから、ライダーマシンの中でも最強候補と名高いコイツを、束が無人機ISと組み合わせて無駄に強化していた所為でやたらと強かった。

 

 

 

そして本日、凰と王鶴華なる中国の代表候補生が、専用機持ちの座とIS学園の残留を賭け、放課後のアリーナで戦うと聞き、箒達と一緒にその様子を観戦しに来た。一夏も一緒だったのだが、千歳先輩に連れ去られてしまった。

 

しかし、なんだってそんな事になったのやら。

 

『王鶴華って奴は、この学園に来る予定だった中華娘がそれを断った為に、お鉢が回ってきてIS学園に来る事になった、専用機持ちじゃない代表候補生だ。

ところが、中華娘は馬夏がIS学園に来るって分かった途端、軍部を脅して力づくでIS学園に転入した。他にも色々と好き勝手しているが、そんな奴を面白く思わない奴なんて幾らでもいると思わないか?』

 

確かに、その話を聞いた時は俺も面白いとは思わなかった。例え凰に傷つけるつもりがなかったとしても、事実として残るのはISと言う兵器による脅迫行為と、それによって植えつけられた恐怖だ。

そんな凰を専用機持ちとして相応しくないと考えている人間は政府高官や軍部の他に、中国の代表候補生の中にもいるだろう。

 

『だが、中華娘のどんな相手にも立ち向かっていく生来の負けん気の強さと、天性の才能と言える野生的なバトルセンスの高さは、いざと言う時には頼りになる。

だからこそ専用機持ちに選ばれ、ある程度の暴走も容認されていた。しかしそれは、中華娘が自分達に齎す結果を期待しての話だ』

 

それはつまり、期待するような結果を出せない凰を見限りつつあるって事か?

 

『更に、代表候補生に与えられる専用機は、開発した最新兵器の性能を試す実験機の意味合いが強い。しかし、中華娘は使いこなせているとは言い難い。

そこで王鶴華にも衝撃砲を搭載した機体を使わせて、どちらがより衝撃砲を使いこなせるのか比較しようって訳だ。そこらへんが今回の試合が認められた理由だろうな』

 

なるほど。それで王の方が訓練機じゃないのか。確かにマドカ戦でも「衝撃砲の砲身には稼動限界角度が無い」と言う利点を、凰は生かしきれていなかった。そして、アンクの説明を聞いている内に試合が始まった。

 

凰は衝撃砲で王を牽制しつつ、隙を見て自分の得意な近距離戦に持ち込もうとしているが、挑戦者の王は冷静に衝撃砲の射程距離を見極めて常に中・遠距離をキープし、凰の衝撃砲が届かない距離からアサルトライフルで攻撃している。

 

『もっと言えば、中華娘の衝撃砲を撃てない角度と、有効射程を既に特定している。そして衝撃砲は中距離の牽制のみに使い、本命は相手の攻撃が届かない遠距離から確実に決める。中華娘を攻略する為にかなり勉強してきたみたいだな』

 

なるほど、つまり理詰めか。相手に攻めづらく、自分は攻めやすい位置を取り、相手が苦手とする戦法で確実に此方の攻撃を決める。実に合理的な作戦だ。

それでも、マドカ戦の時ほど凰は苦戦していない。凰の攻撃も王にある程度決まっている。

 

そのまま試合は王が優勢のまま進み、このまま王の勝利かと思われたが……ここで、凰が何かを左手に握り、握っている何かを右腕に当てた様に見えた。

その直後、凰の『甲龍』のカラーリングがシルバーメタリックに変化し、機体の各所に黒い鉄板の様な物が出現した。全体的に一回り程大きくなり、ドラゴンの様な形状のヘッドギアも頭につけている。

 

「!? これってまさか、『第二形態移行【セカンド・シフト】』!?」

 

突然の『甲龍』の変化に王が驚いているが、『第二形態移行【セカンド・シフト】』はここまで外見が極端に変化したりはしない。この劇的な外見の変化はむしろ、スパイダーメモリを使った時のアラクネに近い。まさかアレは……。

 

『そのまさかだ。バレない様にしていたが、左手にガイアメモリの端子が見える』

 

アンクの説明と共に、俺の目の前に空間ディスプレイが展開され、先程の凰の様子が拡大映像として映し出される。アンクの言う通り、確かに左手にガイアメモリの端子に見えるものが映っている。しかし、どうして凰がガイアメモリを持っているんだ?

 

『包帯女に加担しそうな生徒や教員はネコ女にマークされて接触は困難だった。他にも理由はありそうだが……問題は、何のメモリかって事だ』

 

「ゴクロー、アレはまさか……」

 

「ああ、『第二形態移行【セカンド・シフト】』じゃない。ガイアメモリだ」

 

箒達は心底驚いているが、アンクの言うとおり、アレが何のメモリなのかが気になる。変化した『甲龍』の見た目は『フォーゼ』のドラゴン・ゾディアーツを髣髴とさせるが、機体から生えている鉄板は『W』のバイオレンス・ドーパントっぽい。

しかし、俺が持っているユニコーンメモリの他にも、『Zを継ぐ者』でフィリップが言及していた、ペガサスやグリフィンと言った他の神獣・幻獣系のメモリも造っていた事を考えると、もしかしたらシンプルにドラゴンかも知れない。

 

「アハ、アハハハハ! 本当だ! 急に力が満ち溢れてきた!」

 

試合の方は、ガイアメモリを使った凰のワンサイドゲームと化し、先程とは全く逆の展開となっていた。苦戦していた衝撃砲もアサルトライフルも物ともせず、接近戦では武器を使わず徒手空拳の攻撃を加え、その度に王のISの装甲が砕けている。ガイアメモリの力によって、単純に攻撃力と防御力が強化されているようだ。

 

「この! 離れろ! 離れろぉおおおおおおおッッ!!」

 

王は至近距離から衝撃砲を放っているが、直撃している筈の凰の方はビクともしない。王のISの装甲を左手で引っつかみ、力技で王をアリーナの地面に押さえつけて動きを止めると、右手を大きく引いてパンチを打ち込む構えを取る。すると、右手が巨大な鉄球と化した。

 

「さあ、自分が砕ける音を聞きなさいッ!!」

 

「ヒッ!!」

 

恐怖に顔を歪めた王に、凰は『仮面ライダーメテオ』のジュピターハンマーを髣髴とさせる一撃を繰り出した。王はそのまま成す術なく凰の攻撃を受けて戦闘不能に陥った。余りにも強過ぎる攻撃でシールドを貫通したのか、王は泡を吹いて痙攣している。アリーナのほうにもクレーターが出来ており、どれだけ強力な一撃だったのかが伺える。

 

『試合終了。勝者――凰鈴音』

 

凰はISを解除すると、倒れている王を一瞥する事無くその場を立ち去った。しかし、勝利者である筈の凰に拍手が送られる事はなく、アリーナが喚声に湧く事も無い。織斑先生から通信が入ったのは、それからすぐの事だった。

 

『遂に来るべき時が来たな……』

 

アンクの言葉に過酷な戦いを予感した。

 

 

○○○

 

 

どうしても一夏に自分が強くなった事を証明したくて。自分でも無謀だと思っていたけど、『オーズ』に挑戦しようと思って強化パッケージを本国に注文した時、『オーズ』の正体を本国の政府高官が教えてくれた。

 

アレは世界中のIS全てを破壊する為に造られた兵器で、その力を使って『オーズ』はこの世界を破壊しようとしていると。あたしは今のこの世界が好きだ。その世界を破壊するなんて許せない。

 

あたしの専用機『甲龍』の強化パッケージが本国から届くと、あたしは自分の持ちうる最強の力で『オーズ』を倒すべく、放課後に使い手のゴクローを探し出して、決闘を申し込んだ。

 

でも、そこで思わぬ邪魔が入った。一組の専用機持ちで、確かイギリスの代表候補生と、千冬さんによく似ている三組のクラス代表の織斑マドカの二人だ。二人はあたしの言葉を真っ向から否定し、マドカに至ってはあたしの方が悪魔だと言った。

 

そこで、『オーズ』と戦う前に邪魔な二人を先に片付けるつもりだったが、あたしはマドカに手も足も出ずに負けた。あたしはそのマドカの姿に、昔の千冬さんを幻視した。

 

弱いお前には、誰も何も守れない。そう言われた様な気がした。

 

 

 

マドカに敗北してから、本国からIS学園にいる中国の代表候補生と戦えと言われた。敗北すれば専用機を没収の上、本国の学校に行く様に言われている。一夏がIS学園に行くと知る前まで、あたしが行く事になっていた学校だ。

 

せっかく一夏と同じ学校に入れたのに、また離れ離れなんて冗談じゃない。抗議したが全く聞き入れて貰えなかった。本国から楊代表候補管理官も来るらしく、本気で言っているのだと理解した。

 

そんな負けられない戦いが迫る中、携帯電話が無い事に気付いて思い当たる所全てを探していた。目的の携帯電話は、二組の教室の机の中に忘れていた。確かにポケットしまったと思っていたけど、気のせいだったかしら?

 

ふと教室全体に目を向けると、夕焼けの光が窓から差し込んでいる。その光景が一世一代の告白をしたあの日を思い出させ、あたしをブルーにさせた。

 

そんな気分に浸っていたら、天井の方から声が聞こえた。

 

『弱い自分が嫌いなのね?』

 

「!? 誰!? 誰なの!?」

 

『貴方に力をあげる。常識を超えた力よ』

 

「……常識を超えた力?」

 

『そうよ。貴方に、悪魔と相乗りする勇気があるのなら……』

 

「な、何よ! あたしを馬鹿にしてるの!?」

 

その直後、あたしの頭に何かが落ちて当たった。地味に痛い。頭を抑えて視線を下に向けると、赤くて大きなUSBメモリみたいなモノが床に落ちていた。

 

「こ、これって……」

 

『そう、ガイアメモリ。全てのISを破壊する悪魔の力。その力を貴方のISに使えば、貴方は生まれ変われる。もう誰かに守られる必要は無くなる』

 

悪魔と相乗りするだなんて大げさだと思った。でも、確かに床に落ちている赤いガイアメモリは、どこか異様なオーラを放っている。危険な臭いがするが、それと同時に抗い難い魅力も感じる。あたしがどうするか考えていると、そんなあたしの背中を押すような声が聞こえた。

 

『守りたい人がいるのでしょう?』

 

「ッ!!」

 

『何かを守る為には力が要る。それは貴方もよく知っている筈よ』

 

あたし教室から飛び出して、寮に向かって走った。右手に赤いガイアメモリを握り締めて。この事は誰にも言わなかった。

 

 

 

そして、あたしにとって、絶対に負けられない戦いが始まった。相手はあたしを攻略する為に随分と研究したのか、やたらと攻めづらい相手だった。このままでは負けてしまう。せっかく一夏に会えたのに、また一夏と離れ離れになる。

 

それだけは……それだけは絶対に嫌だ!

 

『VIOLENCE!』

 

バレないように取り出したガイアメモリ起動し、『甲龍』の右腕部分に差し込むと『甲龍』の機体が大きく変化した。身体の底から今までに感じた事が無いほど力が満ち溢れ、体中を不思議な衝動が駆け巡っていく。

 

この力があれば、なんだって出来る様な気がした。さっきまで劣勢だった対戦相手を、真正面からあっさりと倒す事が出来た事が、それを裏付ける証拠に思えた。

 

遂に手に入れた。それこそ千冬さんの様な、圧倒的な力を。

 

あたしが負けられない戦いに勝利した余韻に浸っていると、その千冬さんとゴクローがやって来た。

 

「凰。少々聞きたい事がある。」

 

「何ですか、千冬さん?」

 

「織斑先生だ。単刀直入に言う。お前のISとガイアメモリを渡せ。それと、ガイアメモリを何処で手に入れた?」

 

!? バレてる!? でも、冗談じゃない。せっかく手に入れたこの力を手放すなんて絶対に嫌だ。それにしても、どうして千冬さんはそんな事を言うのか。……ああ、そうか。

 

「あたしが強くなると困るんですね。だからそんな事を言うんですよね?」

 

「? 凰、何を言っている?」

 

「心配いりませんよ。あたしは強くなったんです。守れるだけの力があるんです。だからこれからは、一夏はあたしが守りますから」

 

「……訳のわからない事を言ってないで、早くISとガイアメモリを渡せ」

 

訳がわからないのは千冬さんの方だ。この力は一夏を守る為に必要なんだから。

 

「ええい、相変わらず手間の掛かる奴だな!」

 

「!! は、離してぇッッ!!」

 

ISを渡さないあたしに業を煮やしたのか、待機状態にあるISを取り上げようと、実力行使に出た千冬さんの手を振り払おうとしたら、千冬さんの体が空中で一回転して、千冬さんは床に尻餅をついた。

 

え!?

 

「凰、お前……」

 

「……コレで分かりましたよね。あたしは強いんです。もう、誰にも守られる必要なんて無い。これからはあたしが一夏を守るんです」

 

絶対に敵わないと思っていたあの千冬さんが、尻餅をついてあたしの前で倒れている。他ならぬ、あたしの力で。その事に歓喜で震えていたあたしに、今まで黙っていたゴクローが話しかけてきた。

 

「凰。お前は自分が強くなったから、一夏を守るって言ったな」

 

「ええ、そうよ。もう誰にも負ける気なんてしないわ。勿論、アンタにもね」

 

そうだ。もう誰にも負ける気がしない。あの『青騎士』にも、『オーズ』にも勝てると確信している。

 

「それなら一つだけ質問する。なんでカバの牙には小鳥が止まって、ライオンの牙には小鳥が止まらないんだと思う?」

 

「……はあ? 何言ってんの? カバが間抜けだからに決まってるじゃない。馬ッ鹿じゃないの?」

 

訳がわからない。これ以上は時間の無駄だ。そう思ったあたしは、二人を無視してその場を後にした。

 

その後、楊代表候補管理官から、ISとガイアメモリを持って中国へ帰国する様に言われたが、何時も優しいオジサマ達にしている様に、“優しくお願い”して納得してもらった。なんだ、初めからこうすれば良かったんだ。

 

 

○○○

 

 

夕食が終わった後、『NEVER』の拠点で凰に関する会議が行なわれた。会議に出席したメンバーは、我等『NEVER』の5人とアンクの他に、織斑先生、山田先生、楯無、虚、簪、本音、セシリアの、IS大戦のオータムを知る7人だ。

 

「バイオレンス? つまり『暴力の記憶』と言う事か?」

 

「恐らくは。それよりも問題なのは、既にメモリの毒素の影響が出始めている事です。放っておけば、凰はメモリの毒素に耐え切れずに死ぬ」

 

「……それは大問題だな」

 

先程の織斑先生を投げ飛ばした凰の異常な怪力は、『W』のドーパント開業医・井坂深紅郎が、若菜姫のドライバーを直挿しと同じ状態に改造した際の、若菜姫の症状の一つと同じものだろう。

作中で井坂は、若菜姫の精神状態を見て、「幸せに満ちた状態はメモリとより高いレベルに適合した証」だと言っていた。それが一つの目安になるだろうが、早く対処しないと不味い。

 

中国政府は凰をISごと本国に帰還させたいらしいが、凰はコレを無視した……と言うか、それを伝えた楊代表候補管理官を、力で黙らせたらしい。

その楊代表候補管理官を通し、ガイアメモリの直挿しが使用者に齎す危険性を中国政府に伝えたが、中国政府に動きは無い。つまり、無視されていると考えて良い。

 

「多分、貴重なサンプルを手放したくないって事と、シュラウドに繋がる糸として確保して置きたいって事でしょうね」

 

「だろうな。ガイアメモリを使っていても、ウサギ女や織斑千冬の命を狙っていないなら、わざわざ排除する必要が無いと判断したんだろ。コレも包帯女の狙いかも知れんな」

 

中国政府の狙いは楯無とアンクの言う通りだろう。第三世代機をバージョンアップさせる魔法の小箱。それが意図せず手に入った事を、連中は諸手を挙げて喜んでいるのだろう。

 

「何者をも超える力が欲しいと思う人間なんて幾らでもいる。それは『白騎士事件』以降の世界を見れば一目瞭然だ」

 

「しかし、凰をこのまま放っておけば手遅れになる」

 

「……そもそも、あの中華娘を助ける必要があるのか?」

 

どうやって凰を助けるか皆で考える中、アンクが会議の前提を覆すとんでもない爆弾を投下してきた。

 

「お前達は一つ重大な事を忘れてないか? あの中華娘はこのIS学園に転入する為に、ISを展開して軍部の人間を脅しているんだぞ? それも一度や二度じゃない。ガイアメモリを手に入れる前でそれだ。

つまり、中華娘はガイアメモリの力でああなったんじゃない。中華娘の持っている欲望の所為だ。言い換えれば、ああなる素質が元々あったって事だ」

 

つまり、凰のあの変化はガイアメモリに原因があるのではなく、元々持っていた凰の欲望がメモリの力で助長されただけ。そう語るアンクの声色は、心底人間を馬鹿にしているように感じた。

 

「何かを得るためにはそれ相応の代価を支払う。だが人間はただ欲しがるばかりで、その代価を支払うつもりも、支払っている自覚も無い。何かを得る度に、必ず何かを失っている」

 

「……強さと引き換えに、優しさを失うように……か?」

 

「そうだ。例えば、お前の『包帯女の暴走を止めたい』、『復讐と憎しみの連鎖を止めたい』と言う欲望を満たす為に、お前はウサギ女や織斑千冬の命を守り、場合によっては包帯女と戦うという代価を支払う事になる。それはつまり、時として命さえも代価として支払うと言う事。そんなリスクを背負う事が、お前がお前の欲望を満たす為に支払う代価だ」

 

「い、命って、そんな事……」

 

「戦いとは本来そうしたものだ。敵も味方も、時に傷つき時に死ぬ。そんな命のやりとりをする事。そうでなければ、一方的な殺戮か虐殺だ」

 

思わず声を上げた簪を含めて、数人がアンクの言葉にショックを受けている。だが、アンクの言う通り、「戦う事」とは「命のやり取りをする」と言う事。生半可な思いでは出来ない過酷な事だ。

 

「お前の事だ。今回の相手が中華娘じゃなくても助けようとするんだろう。だがな、人間なんて一皮向けば欲望の塊だ。どうしようもなく愚かで、力を得れば必ずと言っていいほど間違った道を選ぶ。人間はそんな馬鹿ばかりで、あんなのは幾ら助けてもキリがない」

 

これはアンクの本心だった。どれだけキレイな言葉で言い繕っても、人間と言う生き物は結局の所、自分の欲望を満たす為に生きている。言うなれば「欲望の奴隷」だと、アンクは本気で思っている。

 

「俺に言わせれば、アレは自分の欲望一つまともにコントロール出来ない、簡単に力に溺れる“救い難い馬鹿”の部類だ。

よぉく考えろ。もしも中華娘を助けるって言うなら、それは中華娘と戦う事も覚悟する必要がある。そこまでして助けるだけの価値があの中華娘にあると、お前は本当に思っているのか?」

 

これでもアンクは、「馬鹿で面倒だが、力を持っている人間にしてはマシな方」だと、ゴクローの事は多少なりとも認めている。

 

ただ、ゴクローは『仮面ライダー』を目指す上で、「誰かの自由と未来を奪う者」を悪と定義し、「誰かの自由と未来を守る為に戦う」と言っていた。

それがゴクローの欲望なのだとして、その“誰か”はゴクローが戦うと言うリスクを背負ってまで守る価値があるのだろうか。それが“救い難い馬鹿”ならどうするのか。

 

そんな事をずっと前から思っていた。

 

「……お前の言う通りなのかも知れない」

 

「……え?」

 

「シュレディンガー君?」

 

「正直な話、俺は人間が高尚な生き物だと思っていない。アンクの言う通り、人間は自分自身の欲望にさえ歯止めをかけられない愚かな生き物で、救いがたい馬鹿は大勢いる。それは確かだ」

 

俺がアンクの言葉を否定するのかと思っていたのか、簪と山田先生が思わず声を上げる。アンクの方は俺の言葉を聞いて、我が意を得たりと言わんばかりの表情をした。

 

「その一方で、一度欲望に負けても、そこからやり直す為に頑張る人間もいる。力に溺れた事を後悔して、またそうなるんじゃないかって恐怖と戦いながら、そうならないようにずっと踏ん張っている人もいる。そんな人間が俺の身近にいる。それも確かな事だ」

 

アンクが言う事は紛れも無い真実だ。

 

人間は欲望の塊。どんな人間もその心の中に、残酷な欲求やエロい妄想を必ず持っている。しかし、それは当然の事で何ら恥じる事は無いと思う。大事なのはそれと上手く向き合い、コントロールする事だと思っている。

少なくとも、欲望を暴走させた過去の自分を悔やんで、欲望を上手くコントロールしようと努力する人間が身近にいる。

 

それもまた紛れも無い真実だ。

 

「……お前は中華娘を“救い難い馬鹿”じゃないと思ってるみたいだが、理由はなんだ?」

 

「凰は『一夏を守る』って言っていただろ? 凰はただ一夏を守れる位に強くなりたくて、力を求めたんじゃないかと、俺は思った」

 

「その結果がコレだ。自分が手に入れた力に酔いしれて、自分の欲望に飲み込まれつつある。その上、自分がとんでもなく法外な利子を支払っている事に、まるで気付いていない」

 

「……そうだな。でも、俺は前にこう言ったよな。『人間の自由を奪う奴が。誰かの未来を奪う奴等は例外なく悪だ』って。凰の未来が奪われようとしている今、俺はシュラウドと、中国政府を相手に戦わなきゃいけない」

 

「!? な、なんで中国が敵なんだ!?」

 

皆黙っていたが、俺の「中国と戦う」宣言は想定していなかったのか、アンクを含めた全員が驚いている。箒の発言はこの場に居る全員が思った事だろう。

 

「恐らく中国政府は、ガイアメモリを手に入れる為に、凰を見殺しにしようとしている。それなら奴等も、俺が戦うべき敵だ」

 

放っておけば凰が死ぬと教えたにも関わらず、何も動きがない。つまり中国政府は、このままにしておけば凰を自然に排除できると思い、その上でメモリを手に入れようと考えた可能性がある。凰が政府高官や軍部に良く思われていない事を考えれば、それは充分に考えられる事だった。

正直そーゆー事をする奴等は、ある意味でオータムよりも反吐が出る。そうした奴等もまた、誰かの自由と未来を奪う悪だ。

 

アンクはその言葉を聞いて「IS大戦の時と同じ目をしている」と思った。あの時も、国家のこうしたやり口を、その歪んだ欲望を見て、ゴクローは怒りを露にしていた。

 

「それがお前の目指す『仮面ライダー』としての答えか。しかし、お人好しもココまでくれば病気だな」

 

「……自覚はしている」

 

相変わらず甘い男だ。そこまでしても、あの中華娘がやり直せる保障など何処にも無いと言うのに。

 

「それなら……俺がついてないと相当ヤバいよな? お前みたいな馬鹿は」

 

「……そうだな、俺にはお前みたいな相棒が必要だ」

 

しかし、可能性はある。

 

ゴクローは自分の事をそう思っていないだろうが、コイツこそが誰よりも強大な力を持ち、誰よりもその力に飲み込まれないように頑張っている人間だ。そして、その力を誰かの為に使う事が出来る人間だ。それだけ強大な力があれば何でも出来るだろうに。

 

「それなら、らぶりぃで頼りになるメカニックも必要だね!」

 

「兄様、バックアップは私に任せて下さい」

 

「万が一の為の護衛も必要だな!」

 

「わ、私だって戦えるぞ!」

 

「流石に中国政府と敵対しない方が良いと思うが……凰を助けるのは賛成だ」

 

「そうですね。凰さんもこの学園の生徒ですからね!」

 

「わたくしも、出来る限りお手伝いしますわ!」

 

「わ、わたしも……頑張る……」

 

「ふふふ、捨てる神あれば拾う神ありって所ね。それじゃ、どうやったら上手く拾えるか、これから皆で考えましょうか」

 

「ええ、副会長がやり過ぎない様にしないといけません」

 

「みんなでりんりんを助けるぞ~♪」

 

ここに居る連中は、ゴクローのそんな所に、多かれ少なかれ惹かれている。力を持つ者の一つの手本として認めている。他人を認識しないと言われていたウサギ女や、目的の為にテロリストになったマドカでさえもだ。

 

そんなコイツなら案外――

 

そんな楽天的な考えが浮かぶ辺り、俺も随分とコイツに感化されているな……と、アンクは自嘲する様に、しかし何処か満足気に笑った。

 




キャラクタァ~紹介&解説

王 鶴華
 本来IS学園に行く筈だった鈴が断ったので、中国政府が代わりの代表候補生をIS学園に寄越したのでは無いかと考えて生まれたオリキャラなのだ。彼女の役割はバイオレンス甲龍の噛ませ犬なのだ。
 例の如くアナグラムで適当に漢字を割り振ったのだ。作者はとりあえず「わんちゃん」と呼んでいるのだ。

 補欠
 →HOKETSU
 →OH TSUKE
 →王 鶴華



サイドバッシャー
 仮面ライダーカイザの専用マシン。サイドカー型バリアブルビークルだが、この作品ではバトルモードのみでバイクに変形しない。初めはコイツとのバトルシーンも書いていたのだが、それだと新しく習得したコンボがバレて、今後の展開的に面白味が無いのでカットした。

V バイオレンスメモリ
 暴力の記憶を持つガイアメモリ。井坂先生曰く、肉体を超強化するパワータイプのメモリの代表格。ドーパント体は、井坂先生が理性を失うほど素晴らしい大胸筋を持っている。しかし、コレを使った鈴の大胸筋、もとい胸は……。
 このメモリを使った『甲龍』の外見的なイメージは、『W』のバイオレンス・ドーパントと、『フォーゼ』のドラゴン・ゾディアーツが合体した感じ。

鈴「ねぇ、全然変わらないんだけど?」ペターン
京水「むしろ一夏ちゃんの方がおっきいわよね~♪」
鈴「………」

井坂深紅郎
 今は亡き干柿鬼鮫の中の人が演じた、『仮面ライダーW』のドーパント開業医にして、超ド級の変態。園崎冴子との絡みはどう見ても朝っぱらのヒーロー番組で流す内容ではない。
 能力の開発と強化に余念が無く、彼がドライバーやメモリを改造して行なった数々の人体実験は外道の極みだが、作者は話のネタ的に非常に助かっている。 
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。