次回で原作一巻相当が終了。予想よりも随分と長く掛かってしまった。
本当なら三月中にシャルロットもラウラも登場していたはずなのに……。
しかし、イエスタデイのマキシマムについての反応が怖い。
二回目のイエスタデイのマキシマムドライブが決まった瞬間、凰は突然動きを止めた。
「………」
「よし。マドカはそこの『雪片弐型』を持って一夏の所に行け。俺はコアメダルとガイアメモリを引っこ抜いてから、凰のISに外から干渉して――」
「ちょっと待ってくれ、少し説明してくれないか? どうして『イエスタデイ』のマキシマムを二回打ち込んで、こいつは動きが止まったんだ?」
「……簡単に説明すると、『イエスタデイ』は相手に二回マキシマムを叩き込む事で、一回目のマキシマムから二回目のマキシマムまでの時間を無限ループする精神世界に、相手の意識を叩き込む能力だ」
「無限ループ? それじゃ、コイツの意識はずっとその無限ループの世界に囚われたままと言う事か?」
「いや、その無限ループから抜け出せる方法は初めから用意されている。元ネタが『強大すぎる力に驕った仲間を救う為の術』だからな」
「元ネタ?」
マドカが怪訝な表情をしているが、恐らく元ネタは分かるまい。
元ネタはズバリ『NARUTO』のうちはイタチが使ったイザナミだ。
本編『W』において、653こと園崎霧彦の妹である須藤雪絵が使ったイエスタデイメモリの能力は、対象人物に「イエスタデイの刻印」を打ち込み、相手に「24時間前」の行動をとらせると言う、かなりトリッキーな能力だ。
正直言えば、数あるメモリの中でもこれはかなり使いづらい。そこで他のメモリとは異なり、初めからオリジナルと異なる能力開発を試みた。
そして、メモリの能力を『NARUTO』のうちはイタチのイザナミを参考にした、無限ループの能力か、『うえきの法則』のバロウ・エシャロットの「過去の映像を現実に変える能力」を参考にした、過去から攻撃する能力のどちらにしようか考えた。
最終的に、イエスタデイ・ドーパントである須藤雪絵の「永久に昨日という監獄に囚われるがいい!」と言う台詞と、砂時計を模したマークを「8の字マーク」ではなく「∞マーク」に見立てる事で、それらのイメージからイザナミを採用した。
そんなイエスタデイメモリの使用を決めた理由は、昨日のシュラウドの言葉が原因だ。
『貴方にも、誰にも、凰鈴音の自由と未来を守る事は出来ない。そして、力に溺れた凰鈴音には、もはや誰の声も届かない』
この言葉について散々考えた末、一つ発想を転換してみた。
俺にも、誰にも救えないのなら、誰の言葉も届かないのなら、凰は凰にしか救えない。ならば、凰が凰を救う事ができる方法を考えればいい……と。
「つまり凰が自分を見つめ直して、コアメダルやガイアメモリの力に固執する事を止めれば、自ずと『昨日と言う名の監獄』から抜け出せる……と言う訳だ」
「……なるほどな」
「しかし、幾つか懸念材料もある。上手く行くかどうか……」
そう。このイエスタデイメモリに関して、幾つか懸念材料が有る。実は、このイエスタデイの無限ループを抜け出した人間は、今までに一人もいないのだ。
俺がまだ『ミレニアム』にいた頃。某国のとある刑務所に侵入し、どうしようもない終身刑の悪党10人を用いて、イエスタデイの能力で改心するかどうかを試した事があるが、今でも10人全員が昏睡状態で眠り続けている。
実験後になんで失敗したのか考えていたら、井坂先生が「イエスタデイの能力は体内に残留するメモリの毒素も同時に刻印に打ち込むことで精神汚染を防ぎ、攻撃と防御を同時に行っている」みたいな事を言っていた事を思い出した。
つまりイエスタデイの能力は、「メモリの毒素を相手に打ち込む事で発揮される能力」だと言う事。生身の人間にそんなものを打ち込んで、無事に済むわけが無かったのだ。
では、それとは逆に初めからメモリの毒素に侵されている人間に、イエスタデイの刻印を打ち込んだ場合ならどうなるだろうか?
それならば『BAKI』で柳の毒手拳に侵された後で、李海王の毒手拳を受けた刃牙の様に「毒がッッ裏返ったッッ!!」となるのではないだろうか?
そう考えた俺は「毒が裏返る」イメージで、イエスタデイの刻印を二回凰に打ち込んでみたが、メモリの毒素に侵された人間に打ち込んだ事は皆無。もっと言えば、イエスタデイの元の能力と同じく、24時間の制限があった可能性もある。
しかし、半ばネタで開発した能力とは言え「人を救うための力」である事に変わりは無い。それに24時間近く経っても駄目だったら『エターナルRX』に変身して、プリズムブレイクでイエスタデイの刻印を切り裂けばいい。
上手くいくと信じよう。
『……グ……』
「ん? もうループから抜け――」
『ガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!』
突然、爆音の様な咆哮を上げる凰。衝撃波にも似たそれを受けて、俺とマドカはその場から吹き飛ばされた。
何事かと思い凰を見ると、体がボコボコと膨れ上がり、瞬く間に大きくなっていく。その様子は明らかに無限ループから抜けた訳でも、毒が裏返った訳でもない。
「何だ!? 失敗したのか!?」
『違う、イエスタデイはまだ効いている。単に中華娘が意識を失った事で、コアメダルの力が抑えられなくなっただけだ。つまり、コアメダルの暴走だ』
龍人の様な姿だった『甲龍』は、劇的に姿を変え巨大化した。今の『甲龍』の姿は正に、甲羅を背負った龍……と言うか、ぶっちゃけガメラだ。
『グギャァアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!』
そしてアンクの言う通り、あのガメラもどきに凰の意思は無い様に感じられる。完全に暴走し、ただ持て余したエネルギーを吐き出すだけの存在と言った感じだ。
「名づけるなら『巨大甲龍』って所か?」
『人間は誰でも、理性の箍が及ばない心の奥底に悪魔を飼っている。それは「快楽」と言う名の怪物であり、「欲望」と言う名の化物だ。あれは中華娘が心の中で飼っている「欲望」の姿なのかもな。さて、どうやって倒す?』
「対巨大戦なら『ガタキリバ』しかない」
『セルメダル1000枚をドブに捨てろってか?』
「だが、コアメダルの経験値も一気に稼げる」
アンクがガタキリバコンボの使用を渋るのは理由がある。
この世界で造られたガタキリバコンボは、使用するためにセルメダル1000枚を必要とする。これは固有能力である「ブレンチシェイド」と言う分身体を、最大数の50体造る為のコストではない。ガタキリバコンボを使用する為に、セルメダル1000枚が必要なのだ。
この余りにも高すぎるコスト故に、公式戦では確実に使えないし、実戦でも中々使用に踏み切れない。
メリットとしては、100%同じスペックの分身が出来る為、単純に50倍手数が増える事。これに「戦力は数の二乗に比例する」と言う『ランチェスターの法則』を当て嵌めると、分身精製による戦力の増強は2500倍にもなる。
そして、『NARUTO』の影分身修行法の理論で、分身にコアメダルを使わせれば、コアメダルの経験値を複数同時に稼ぐ事ができる。
デメリットは、分身一人一人が受けたダメージも本体に通じるため、本体が受ける肉体的・精神的ダメージが50倍になる事。
そして分身にコアメダル使わせる場合、本体のドライバーからメダルやメモリを取り出して分身に渡す為、分身が撃破されれば使っているメダルやメモリを紛失する危険性がある事。それこそ、「吹っ飛ばされてメダルを失くす」というやつだ。
ただし後者の場合は、分身が撃破されること無く、本体の意志で分身を解除すれば、メダルとメモリは本体のドライバーに自動的に還元される。
『……アレをやるなら、本体のお前はラトラーターに変えろ。コンボが使えるメダルが無くなるリスクは極力避けたいからな』
オーカテドラルにクワガタ、カマキリ、バッタの昆虫系コアメダル3枚が揃い、傾けた瞬間、コアメダルが緑色に発光する。
「マドカ。さっき言った通りに、お前は一夏の所に向かえ」
「アレを相手に一人で大丈夫なのか? 理性無く暴れまわっている分、さっきよりも付け入る隙は多そうだが、半端じゃないぞ?」
「大丈夫だ、策はある」
メモリもイエスタデイからサイクロンに変更。メダルとメモリが緑色に統一された状態で、メダルをスキャンする。
「超変身!」
『クワガタ! カマキリ! バッタ! ガータガタガタキリバッ、ガタキリバッ!』
ガタキリバコンボに変身した瞬間、『ブレンチシェイド』によって無数に分裂し、分身達が一斉に『巨大甲龍』へ突撃する。
しかし、こうして見ると小型レギオンの群れに襲われるガメラの様な絵面だ。体中に纏わりつくガタキリバの分身達を、『巨大甲龍』は体と激しく動かして振り払おうとしているが、分身達はしぶとく張り付き、何度振り落とされても直ぐに立ち向かっていく。そして『巨大甲龍』からセルメダルを少しずつ、そして確実に削り取っていくのだ。
「おい、お前等! さっさとコイツに変えろ!」
ドライバーから飛び出したアンクが、適当な分身達にコアメダルを次々と投げ渡す。しかし、原作『オーズ』の様なアンクと分身達のやりとりを見て、言いようの無い悲しみと悔しさを感じるのは気のせいか。
しかし、感傷に浸っている時間は無い。各メダルの組み合わせはアンクから知らされているので、俺も渡されたメダルを装填し終えた分身達の、それぞれに適したメモリを投げ渡す。
『クワガタ! カマキリ! バッタ! ガータガタガタキリバッ、ガタキリバッ!』
『シャチ! ゴリラ! タコ!』
『タカ! クジャク! ゾウ!』
『サイ! ウナギ! エビ!』
『サソリ! カニ! コンドル!』
『コブラ! カメ! ワニ! ブラカ~ワニッ!』
『ライオン! トラ! チーター! ラタラター! ラトラーター!』
6体の分身達と共に、本体の俺もラトラーターに超変身する。メモリはルナ。パッケージはトライドだ。
そして、新しく習得したブラカワニコンボ。これは、ガタキリバの負担を軽減する目的で習得したコンボで、ブラカワニの固有能力である回復能力と、ガタキリバの分身による体力共有を利用した、二つの意味での最強コンボだ。
現時点で劇場版『将軍と21のコアメダル』の様なオールコンボは不可能だが、それでもかなり強力な布陣の筈だ。
「おお……」
「早く行け!」
「わ、分かった!!」
『コッチも急げ! 肉体的なダメージと体力は、ブラカワニとサイクロンで何とかなるが、精神面のダメージは考慮してないからな!』
大丈夫。長引けば精神崩壊の危険性があるって事は分かっているし、最初から短時間で終わらせるつもりだ。
改めて『巨大甲龍』を見てみると、頭と尻尾そして手足を胴体に引っ込め、体を高速回転して纏わり着いている分身達を吹き飛ばし、そのまま空を飛んだ。まさか、逃げる気か!?
『いや、そうじゃない。アレは攻撃の為だ』
アンクの読み通り、空中で高速回転する『巨大甲龍』は地上の俺達に向かって、大量の鉄球の雨を降らせてきた。これはリクガメヤミーの攻撃手段だが、大きさも規模も桁違いだ。早くあのガメラもどきを地べたに叩き落さなければ、せっかく増やした分身達が全滅してしまう。
本体の俺は、トライドにより装着された背面のマルチユニットを展開する事で、メダル状のエネルギー弾を両肩から発射する砲撃態勢を取り、トリガーメモリが装填されたトリガーマグナムを召喚する。
「一斉発射だ!」
『TRIGGER・MAXIMUM-DRIVE!』
『GAOOOOOOOOOOOOOOOOOO!』
本体の俺が放つトリガーフルバーストと、メダル状のエネルギー弾の一斉発射は、降り注ぐ鉄球を全て撃ち落し、空中で高速回転する『巨大甲龍』にも命中する。タダでさえ的がデカイので当てるのが楽だ。
『タカ! クジャク! ゾウ! ギン! ギン! ギン! ギン! ギン! ギン! ギガスキャン!』
『HEAT・MAXIMUM-DRIVE!』
『スキャニング・チャージ!』
『ROCKET・MAXIMUM-DRIVE!』
「「セイヤァアアアアアアアアアアアアッッ!!」」
一斉発射により多少なりとも回転が緩んだ『巨大甲龍』に、追撃のヒートのマキシマムで強化されたギガスキャンの火炎弾と、ロケットメモリで強化されたシャゴリタのゴリバゴーンが命中、空中で大爆発を起こす。
煙の中からフラフラになりながらも何とか飛行する『巨大甲龍』を見て、ブラカワニの分身体が必殺技の発動体制に入る。
『スキャニング・チャージ!』
『FANG・MAXIMUM-DRIVE!』
「セイヤァアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」
ブラカワニの分身は『巨大甲龍』に向かって出現した、三つのオレンジ色のリングを潜り抜け、牙の記憶によって強化された巨大なワニを模したエネルギーが、巨大な亀の甲羅に噛みついた。
「オオオオオオオオオオオッッ!! セイヤァアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」
そんなワニの顎から逃れようと必死に動く巨大な亀を、ブラカワニの分身は錐揉み回転で無理矢理押さえ込み、地面に向けて投げ飛ばした。ブラカワニ版デスロールだ。
巨大な亀は地面に叩きつけられ、アリーナは地震に襲われたかの様に大きく揺れ、尋常ではない大量の土埃が舞い上がる。
『滅茶苦茶だな。どっちにしろ、クラス対抗戦までに修復は間に合わないだろうが』
「気にするな。ガンガン行くぞ!」
『ICEAGE・MAXIMUM-DRIVE!』
逆さまになり、甲羅から首と手足を伸ばして起き上がろうとする『巨大甲龍』の首を、ウナギウィップで拘束しながら、アイスエイジのマキシマムドライブを発動。首が瞬く間に凍りつき、首を引っ込める事は出来ないだろう。
『スキャニング・チャージ!』
『セルバースト!』
「セイヤァアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」
鋏状に連結したシザースカリバーから生まれる、巨大なカニの鋏を摸したエネルギー体で首を挟み、『巨大甲龍』の首を切断。切断された巨大な首は地面に落ちた瞬間、バラバラに氷結粉砕されたと思ったら、セルメダルの山に変化した。さしずめ、部位破壊に成功と言ったところか。
『首を切断したら普通は討伐完了だろ』
……確かに。だが、相手は首をもがれてもまだ動いている。『彼岸島』の邪鬼並のしぶとさだ。この怪物を完全に倒す方法はあるが、その前に『巨大甲龍』の中で丸まっている凰を取り出さなければならない。幸い、ガメラもどきの体内に侵入する為のルートは今出来た。
『KEY・MAXIMUM-DRIVE!』
「ラララララララララララララララララララララララララァッッ!!」
キーメモリのマキシマムドライブを発動し、首の切断面から『巨大甲龍』の体内に侵入する。予想通り『巨大甲龍』の中は、大量のセルメダルが擦れる轟音とも取れる金属音に満ちており、視界もセルメダルだらけで最悪だ。
しかし、キーメモリは「解除能力と目標の対象物を探し当てる能力」を持っている。その能力によって、ある意味で『ガメラ3』のイリス以上に最悪な、ガメラもどきの体内でも視覚や聴覚に頼る事無く、凰の居場所を正確に把握することができる。
最短距離をトラクローでひたすらにセルメダルを掻き分けて進むと、ようやく凰の姿を捉えた。意識が無いところを見ると、まだ無限ループから抜け出せないみたいだが、ここで死んでもらっては困る。
「オオオオオオオオオッッ!! セイヤァアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」
今度は凰を左腕に抱えて、右腕一本でガメラもどきの体内をひたすらに掘り進む。そして、尻尾の部分を吹き飛ばしつつ、『巨大甲龍』の体内から脱出した。……俺自身の名誉の為に言っておくが、決して消化器官の出口から脱出した訳ではない。
「さあ、後は頼むぞ」
『『『『『『『『『『スキャニング・チャージ!』』』』』』』』』』
『『『『『『『『『『CYCLONE・MAXIMUM-DRIVE!』』』』』』』』』』
『『『『『『『『『『セルバースト!』』』』』』』』』』
「「「「「「「「「「セイヤァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」」」」」」」」」」
俺と凰が脱出すると、残ったガタキリバの分身全員が、『巨大甲龍』を取り囲む様に全方位から、緑色の風を纏った「ガタキリバキック」を次々と叩き込む。
集中攻撃を受けた『巨大甲龍』は大爆発を起こし、大量のセルメダルの雨がアリーナに降り注ぐ。『巨大甲龍』撃破と同時に分身達は消滅し、『オーズ』は俺一人となった。
「……どうだ? 俺……、ちゃんと一人に戻ってるか?」
『ああ。それよりもメモリが飛んできてるぞ』
「おお!」
巨大な敵を撃破して安堵しながらも、頭痛に苦しむ俺に飛んできたのは、T2メモリと同じ仕様のバイオレンスメモリ。綺麗なメモリだが、本当にメモリブレイク出来ないとは厄介極まりない。
そんなバイオレンスメモリを観察している中、機械的な鳴き声が聞こえた方を見ると、ライブモードのエクストリームメモリが、『巨大甲龍』の爆発で飛び散ったコアメダルを次々に取り込んで回収していた。目に付くコアメダルの枚数をぱっと見る限り、既に10枚以上が回収されている。
「オラァ!!」
ドライバーから飛び出したアンクがエクストリームメモリを攻撃し、コアメダルの回収を妨害。そのままコアメダルを3枚奪い取った。コアメダルの意匠から察するに、回収したコアメダルは、カブト、イトマキエイ、シャムネコだ。
「ふっ、コイツは儲けたなぁ……」
右腕だけの状態で顔は無いが、「包帯女を出し抜いてやった」と言わんばかりの不敵な物言いと抜け目の無さが、実にアンクらしい。一方のエクストリームメモリは、アンクに奪取されたコアメダルに執着する事無く、そのまま帰った。
「どうする……撃墜するか?」
「撃墜した所で、コアメダルはもう包帯女の所に転送されてる。それに包帯女なら幾らでも造れる」
「そうか……」
回収されたコアメダルは12枚。その内、このコアメダルも狙ってくるかも知れない。
しかし頭が猛烈に痛い。とりあえず『巨大甲龍』を撃破したことを、マドカと織斑先生にプライベート・チャンネルで伝え、凰を医務室に運ぶのだった。
○○○
一方の連れ去られた一夏は、京水と徒手空拳による死闘を演じていた。
京水は一夏を抱えたままでIS学園の脱出を試みたのだが、一夏は必死の抵抗によって京水の拘束から逃れ、第六アリーナに墜落した。そこから第三アリーナに戻ろうとするが、京水の一夏に対する執念は凄まじいもので、一夏をなんとしてでも連れ去ろうと必死だ。
余りにもしつこいので、一夏は仕方なく京水を撃破してから第三アリーナに向かおうとするが、唯一の武器である『雪片弐型』を落している所為で、一夏は京水に格闘戦を挑まざるを得ない。
「がっ! こんのぉ、うおぉっ!」
「天まで届けッ! やった! 当たったぁ!!」
しかしそれ以上に問題なのは、第三アリーナから聞こえる轟音によって、早く倒して行かなければと、一夏が焦りを覚えている事。
唯一の救いは、徒手空拳の一夏に対して京水も徒手空拳で対応しており、ミサイルやレーザーと言った飛び道具を使わない事だが、ありえないほど伸びる両腕に一夏は翻弄されっぱなしで、遂には伸縮自在でムキムキの巨腕に捕らえられた。
「うわっ! ちょっ! 放せっ!」
「照れなくても良いのよッ! わたしがッ! 抱き締めてあげるッッ!!」
京水の広い胸にジリジリと引き寄せられる……いや、引き摺られる一夏。万事休すかと思われた刹那、一筋の青い閃光が京水の腕を細切れにした。
「アーーーーッ! 切れちゃった!」
「おおっ!! な、なんだ!?」
「全く、なんで私がこんな事を……」
一夏を助けた青い閃光の正体はマドカ。専用武器「ナスカブレード」手にしたその姿に、一夏は誘拐事件の時に自分を助けに来た千冬を幻視した。
「……あ~、悪い、助かった」
「勘違いするな、助けに来たわけじゃない。私はコレを届けに来ただけだ」
そう言うマドカの手には第三アリーナで落した『雪片弐型』。一夏は放り投げられた『雪片弐型』を受け取ると、両手でしっかりと握り、改めて京水に向かって戦意を滾らせる。
「何だって良い。礼を言うぜ!」
「このお邪魔虫! よくも私と一夏ちゃんのムラムラ……もとい、ふわふわタイムを邪魔したわねッ! シメてあげるわッッ!! ブッ飛びぃぃぃいいいいいいいッッ!!」
京水は一夏との時間を邪魔された怒りをそのままぶつける様に、これでもかと言わんばかりの数のミサイルをマドカに向かって乱射する。
「危ねぇ!!」
「問題ない」
『NASCA・MAXIMUM-DRIVE!』
マドカはナスカメモリをメモリスロットから、右腰のマキシマムスロットへ装填。タップしてナスカメモリの最大出力を発揮させる。
「はぁああああああああああッ!! せいやぁあああああああああああッッ!!」
ミサイルの弾幕をマキシマムドライブで得られる超高速で全て回避し、ナスカブレードで京水を一閃すると京水が爆発。爆発の中から飛び出した、強化アダプター付きのコマンダーメモリも見逃す事無くキャッチする。この時点でIS学園に点在する京水が放った分身体は、全て同時に消滅した。
「ふっ、コイツは貰った」
「アァァアアアッッ!! メモリが抜けて力が出ないぃぃぃっっ!!」
「!? 何だコイツ!? 人間か!?」
コマンダーメモリが体外に排出された事で、元のルナ・ドーパントに酷似した姿に戻った京水。大きくパワーダウンし、残っているエネルギーも枯渇寸前。更には全身が焼け焦げ、中身の機械部分がショートしているのが見えている。
一方の一夏は、マドカが全身装甲のISを撃破した事によって、中からオカマのパイロットが出てくる事を予想していたが、中から出てきたのは明らかに人間では無い何か。これは正直予想外の展開だった。
「アンクの言う通り、人間ではなかったようだな」
「人間じゃない!? どう言う事だよ!?」
「つまり手加減無用と言う事だ」
「やったわね! でもどうして!? 貴方は一夏ちゃんが嫌いな筈!!」
「ふん、確かに私はそいつが嫌いだ。だがな……」
マドカは右手の人差し指で天を指し、堂々と京水に言い放った。
「ゴクローが言っていた。『ライダーは助け合い』だとな」
「仰る通りだわぁあああああああああああああああああああああああッッ!!」
京水が一夏への最後の攻撃として選んだのは、全速力の突進攻撃。第三アリーナの遮断シールドを破る力を持った攻撃だ。しかし、如何に速く、如何に攻撃力が高かろうと、直線的な攻撃はカウンターの餌食。セシリア戦でそれを自分の体で学んだ一夏にとって、今の京水はカモでしかない。
「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!」
「アーーーーーーッッ!! い、いっ……一夏ちゃんッッ!!」
『零落白夜』を発動した『雪片弐型』の一閃は、京水の体を左肩から右腰に掛けて斜めに切り裂き、真っ二つになった京水は爆発した。
「ふう。よし、それじゃ、早く鈴を止めないと……」
「問題ない。先程終わったと連絡が来た」
「そ、そうか。何にしてもこれで終わり――」
その時、京水を撃破して完全に油断していた一夏の首に、シュルリと黄色い触手が巻きついた。
「行かないで一夏ちゃんッ! 今夜の約束はッ!?」
京水だった。実は爆発したのは切断された下半身だけで、上半身は爆発していなかったのだ。そんな京水の体は赤く発熱している。
その様を見て、京水の自爆を悟ったマドカだが、体に激痛が走り思うように体が動かない。元々、ナスカメモリは「ナスカ文明の記憶」を宿した強大な力を秘めたガイアメモリで、ドライバーを使っていても、使用するだけで相当な負担が掛かる恐るべきメモリだ。
更にマキシマムドライブによって発動する「超高速」の使用は、体の成長が不十分なマドカの肉体へ予想以上の負荷を与えていた。この状態での「超高速」の使用は不可能。普通に近づいても間に合わない。
「ッッ!! ぐっ! ちぃっ! 後は自分で何とかしろ!」
マドカはナスカブレードを投げつけ、一夏に絡みついた触手を切断する。自由になった一夏は急いで京水から離れようとするが……。
「さあ、一夏ちゃんッッ!! 一つになりましょぉおおおおおおおおおおおおおっっ!!」
それでも一夏が京水から充分な距離を取る時間を稼ぐ事は出来ず、京水の自爆に一夏は巻き込まれてしまった。
キャラクタァ~紹介&解説
巨大甲龍
コアメダルとセルメダル、そしてガイアメモリを取り込んだ『甲龍』の暴走形態。見た目は完全にガメラ。ただしやっている事はイリスと同じ。
元々ガタキリバの対戦相手として、巨大な敵を出す事は決定していた。メズールと同じゆかなボイスのセシリアではなく鈴を選んだのは、単純に専用機の『甲龍』と言う名前が、作者にガメラを連想させたから。
青騎士(ナスカ・バージョン)
見た目的にはナスカ・ドーパントのIS版。白騎士の様に口元だけが露出しているのは束の趣味。マキシマムドライブで『W』におけるレベル2の超高速を発動。この世界では、原作のレベル3相当の姿と能力は、レベル2で習得。つまり、いずれは赤くなる……かも。
ガタキリバコンボ
昆虫系コアメダルの統一コンボ。登場回数が極端に少なく、作者はこのコンボで特撮におけるCG予算と言うモノを知った。この世界でも、金食い虫の名に恥じない致命的なレベルの燃費の悪さを発揮。ただし使えば確かに強い。作者は劇場版のオールコンボを見て、「ぶっちゃけ、コレが最強コンボでも良くね?」と思った。
ブラカワニコンボ
劇場版『将軍と21のコアメダル』に登場する限定コンボ。鴻上会長の台詞から察するに、二つ名は「失われたコンボ」か、「伝説のコンボ」だろうか。800年前の王は使わなかったが、もしもメダルがあったのならどんな風に使っていたのやら……。
N ナスカメモリ
ナスカの文明の記憶を持つガイアメモリ。『W』において、我等が尻彦さん専用と思いきや、彼の死後に彼の嫁が井坂先生の名前を呼びながら直挿しで使った。尻彦よりも嫁の方が使いこなせていのは尻彦おかげ。しかし、報われない……。
マドカの専用機『青騎士』に組み込まれているのは、5963の持っているナスカメモリの複製品。ドライバーで毒素はカットされているが、体への負担は変わらなかった。しかし、これをブラカワニコンボと併用すれば……。
X エクストリームメモリ
極限の記憶を持つガイアメモリ。他のガイアメモリの力を極限まで高める。今回はギジメモリの力を高める目的で使用。5963が所有するT2メモリ以外にも、シュラウドが所有する鳥型の個体が存在する。しかし、このメモリのT2ドーパントって、一体どんな奴なのか。ちょっと想像がつかない。