DXオーズドライバーSDX   作:トライアルドーパント

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読者の皆様、お久し振りデス。キリの良い所まで完成するのに二ヶ月以上経ってしまいました。予定では箒の誕生日に合わせる予定だったのに、シン・ゴジラが始まるまでかかってしまいました。何時の間にかお気に入り小説が一つ消滅して、テンションががた落ちしたりしましたが、更新します。

そして今回は、一気に合計5話を連続投稿します。元々は3話だったのですが、一話辺りの話数の問題で分割した結果こうなりました。

しかし、仮面ライダーアマゾンズとか、ベスト10を放送しているウルトラマンとか、昭和のゴジラとか、特撮ファンとしては最近BS放送が非常に面白い。

2018/4/24 誤字報告より誤字を修正しました。報告ありがとうございます。


第24話 time

ドイツ軍特務事項。非匿名「最後の大隊」より報告。

 

第二次世界大戦の最中、ナチスドイツ率いるアドルフ・ヒトラーは、ゲルマン民族が世界の頂点として立つことを疑わなかったが、頂点に立った後でその支配力をどうやって永遠のモノとするかに苦悩していた。

 

そこでヒトラーは、親衛隊の一人の中尉に対して「総統特秘第666号」と呼ばれる、あらゆる命令系統の上位に存在する特秘命令を下した。

 

結局、ドイツ第三帝国は崩壊する事となるのだが、少佐となった元中尉とその仲間達は、心底諦めなかった。

誰も彼もが彼等を忘れ去り、忘れ去ろうとした。だが彼等はゆっくりとゆっくりとその枝葉を伸ばしながら、深遠なる暗闇の底で執念深く、そして確実に存在していた。

 

不死者の『戦闘団【カンプグルッペ】』。不死身の“人でなし”の軍隊。

 

最終的にそれらを目指した彼等の恐るべき研究は、膨大な血と狂気の果てに、それを完成させる驚くべき地平へと到達しつつあった。

しかし、そこで研究の画竜点睛を欠く、予想外の事態が発生した。蘇生され、生体機能を取り戻した筈の彼等は、決して目覚める事が無かったのだ。

 

魂の存在証明にして、不在証明。

 

それは「一度死んだ人間は二度と元には戻らない」と言う当たり前の物事を、「魂」と言う不可視の存在を、「人間とは魂の、心の、意志の生き物である」と定義する少佐の思想を証明する事実でもあった。

 

その後、不死者達に脳髄を含めた体内の複数個所に制御チップを埋め込む事で、彼等を人形として遠隔操作する事が出来る様に改良された『死者蘇生兵士』は、「兵器」と言う観点でのみ論じるならば、この時点で完成の域に到達していた。

 

完成された『死者蘇生兵士』の持つ優位性。

 

一つ。通常兵器を受け付けない、不死身の肉体。

 

二つ。生前の数倍にまで増殖した、圧倒的な身体能力。

 

三つ。自我の消失に伴う、命令に対する絶対服従。

 

正にジークフリートの再来。神話の軍勢。

 

その後も彼等は彼等の目指す地平線を目指し、死者蘇生技術の研究が営々と続けられるのだが、その肉体から一度離れた魂が戻ってくる事は決して無かった。

 

そして『白騎士事件』を境に、ISと言う超兵器が出現した事で世界の軍事バランスが崩壊。それによって、ミレニアムも対ISを目的とした研究へとシフトしていった。

 

その『白騎士事件』から数年が経過した頃、ミレニアムからISコアの取引を持ちかけられたドイツ軍は、ミレニアムの持つ「死者蘇生兵士理論」に利用価値を見出し、ミレニアムとの取引に応じた。

 

 

●●●

 

 

ドイツの深い森の中に建設されたVTシステムの研究施設。主にVTシステムを研究・開発・運用する為の施設であるが、その他にも非人道的な研究を行なっているとの事。人体実験の素体となる人間は死刑や終身刑を受けた囚人であり、減刑と引き換えの希望制らしいのだが、この研究所から出てきた囚人は誰一人としていないそうだ。

 

今回のミッションはこの秘密結社紛いの研究施設の完全破壊。そして怪我人を出来るだけ出さず、死人は誰一人として出さない事。

 

現在、この研究施設の周囲には、アンクがリモートコントロールしているオートバジンと、ステルス装備を実装したパワーダイザーやサイドバッシャーが何体も潜んでいて、作戦開始の時を待っている。

 

「準備は良いか?」

 

『何時でも良いよ♪』

 

『とっとと始めろ』

 

「……とぉおおうッ!!」

 

研究施設の真上に来た所でスカイサイクロンから飛び出し、空中をムササビのように滑空……する事無く、人間ミサイルの如き勢いで建物に頭から突っ込んだ。「メタルメモリ」と「スカルメモリ」を更に「エクストリームメモリ」と併用して防御力を強化しているお蔭か、頭から突っ込んでも全く痛くなかった。

 

この突入と同時に、無人機ISの技術を組み込んだハイブリットなライダーマシンの群れが施設に雪崩込む。アンクと束によって操縦されているライダーマシン達は、手始めに車やヘリ等の移動手段を破壊している。

俺の方はと言えば、緊急事態を知らせるサイレンが鳴り響き、大量の粉塵が舞う施設内に侵入しており、俺の目の前に自動小銃を持った屈強な兵隊が次々と現れてくる。

 

「よぉ……」

 

「! キャアメンライダァー!!」

 

彼等は初めて見る仮面ライダー4号を「オーズ」や「エターナル」と同系統の存在だと見事に看破した。そんな優れた洞察力(棒読み)を持つ兵士達は、俺に向かって四方八方から鉛玉を雨霰と撃ち込んでくる。

しかし、そんな兵士達の奮闘を嘲笑うかのように、この装甲は銃弾を次々と弾いていく。もっとも、普通の銃弾如きで死ぬ「仮面ライダー」など存在しない。もしもそんな奴がいるなら、是非とも見てみたいものだ。

 

え? 『GOD SPEED LOVE』のドレイク?

 

……まあ、確かにアレを見た時は唖然としたが、あの時の「ゼクトルーパー」が持っていたのは「強化型マシンガンブレード」であり、設定では通常の装備よりも強力だ。

それに通常の「マシンガンブレード」でも、装弾数3000発のホローポイント弾を内装し、トリガーを引く際に任意で発射弾数を変える可変バースト機能を備える上に、徹甲・炸裂・焼夷弾を装填選択する事が可能な代物だ。

更に最大射程は2000mを誇り、通常の発射速度は1分間に600発と、『ジョジョ』のシュトロハイムがカーズに使用した重機関砲並みの性能を持っている。そんなモノを四方八方から集中砲火されれば、幾ら仮面ライダーでも死ぬ。むしろ『仮面ライダー鎧武』のカチドキアームズが異常なのだ。多分。

 

「……良い腕だな。ふっ!」

 

「ぶるぁっ!」

 

兵士達が銃弾を撃ちつくした所で一気に懐に接近し、どこぞの地上最強生物の様にデコピンだけで倒していく。生身の人間を相手に「ライダーパンチ」や「ライダーキック」をまともに打ち込めば、たちどころに元人間の肉塊が大量生産されてしまうからだ。デコピンを顎に喰らった兵士達は、次々に膝からストンと崩れ落ちていく。

 

こうして全ての兵士を気絶させて制圧した所で、アンクのGTロボと化したオートバジンが壁を壊して施設内に進入してきた。

 

「そっちは終わったのか?」

 

『終わった。全員殺さずに無力化して適当に転がしてある。だが奇妙な事に、普通の人間の兵士しかいなかったな』

 

『ゴッくん、研究施設内の監視システムは掌握したよ。他のシステムやデータは全部束さんがコピーしてから破壊するから、ゴッくんは研究施設内に保管されてるISコアを回収してね。今からそこの見取り図を送るね~~?』

 

束から送信された見取り図のデータによると、ターゲットのISコアは地下に保管されているようだ。とっとと回収して帰りたいのだが、アンクの言う通りVTシステムを研究する施設にしては警備が緩すぎる。とりあえずは見取り図のマークされている場所を目指し、アンクと共に地下へ降りていく。

 

そして、地下で俺達が見たのは、金属製のパワードスーツが大量に生産されている光景だった。

 

「これは確か……国連が開発している『EOS【イオス】』とか言う、ISモドキだったか?」

 

『確かにEOSに似ているが、コレはドイツ軍が造った別物だ。大方、VTシステムをコイツに転用して、ありとあらゆる面でISに劣っているEOSの性能を少しでもマシにしようとしたんじゃないか?』

 

「なるほどな……ん?」

 

ここでEOSが生産されている理由を理解した時、足音の様な重い金属音が奥の方から聞こえてきた。それも複数で此方に近付いてくる。新たな敵の出現を予感して戦闘態勢をとっていると、全身が黒い装甲で覆われているEOSモドキが次々と現れた。それぞれの操縦者の顔が一切確認する事が出来ない。

 

「もしかしなくても、VTシステムが搭載されたEOSモドキか?」

 

『だろうな』

 

「それじゃあ、とっとと気絶させるか」

 

『……いや、何かおかしい。ただVTシステムを搭載しただけじゃ無さそうだ』

 

「? それはどう言う――」

 

アンクと会話が終わらない内に、先頭を歩いていたヤツが襲い掛かってきた。両腕がブレード状になっており、急所を狙って鋭い突きと斬撃を繰り出してくる。徒手空拳の体術で受け流し回避するものの、敵は次から次へと襲い掛かって来る。鍵爪状の奴もいれば、ハンマーの様な形状の腕をした奴。中にはチェーンソーを取り付けている奴までいる。

 

『……試すか。オラァッ!』

 

アンクが敵の一人を捕らえ、右腕をオートバジンの怪力で圧し折った。敵の右腕が間接とは逆の方向に曲がっており、明らかにやりすぎだと思ってアンクを諌めようとしたが、患部から緑色の液体が滴っているのが見えた。

 

「!? 緑色の……血?」

 

『やはりな……体温が無くて妙だとは思ったが、こーゆー事か。ゴクロー、コイツ等全員の中身は死体だ。恐らくは死刑囚の死体をパーツにして使っているんだろう。それなりの改造をしてからな』

 

「はぁ!?」

『このパワードスーツは、本来ドイツ軍でISの実験装備の運用試験に使われているもので、構造も性能もEOSと似たり寄ったりなポンコツだ。本来なら到底実戦に使えるような代物じゃあ無い。

だが、ドイツ軍は『ミレニアム』とISコアの取引をした際に「死者蘇生兵士理論」を手に入れている。普通の人間なら無理だが、改造を施された死人なら充分に使いこなせる』

 

つまり、少佐が原因かッ! ミレニアムの技術がドイツに渡り、今になって俺達を妨害してくるとは、なんと言う皮肉だ。

 

「コイツ等を停止させる方法は?」

 

『背面のバッテリーを引き剥がすか、中身を完全に破壊するってトコだな。ISと違って「絶対防御」が無い所為で、防御力は装甲に頼りきりだ。こんな風になっ!』

 

今度はオートバジンが敵を思いっきり殴りぬける。殴られた敵は大きく吹き飛び、壁に叩きつけられて背中のバッテリーが破壊された。胸部装甲は粉砕され、その下にある中身の鳩尾部分が拳大に陥没している。

 

「EOSと同レベルのパワードスーツなら、多く見積もっても10分程度でエネルギー切れを起こすだろ。それなら持久戦も――」

 

『駄目だ。そうなる前にコイツ等は自爆する』

 

「……徹底してやがるな」

 

しかし、合理的な活用方法だとは思う。中身が死体だからこれ以上は死なない。本来の使い方は、鹵獲した敵兵や敵国の国民を中身に利用する、「穢土転生」的な使い方をする様な気がしてきた。

 

『優しさを向ける相手を間違えんな! 生きている様に見えるが、コイツ等は死体だ! 終わった命は、二度と元に戻らん! 包帯女と一緒に居たお前なら、それを一番良く知ってるだろうが!』

 

出来るだけ死体を破壊せずに戦闘不能にする方法を考えていたが、アンクにそれを否定される。それでも他に何か方法は無いだろうかと模索していると、両腕にチェーンソーを装備した個体と、両腕にブレードを装備した個体によって、挟み撃ちの構図を取られた。

とっさに大きくしゃがむ事で攻撃を回避すると、お互いの攻撃によってお互いの首が切断された。相討ちとなって頭を失い、首から緑色の液体が噴水の様に大量に噴出する。

 

しかし、それでも彼等は動く事を止めなかった。

 

「……ッッ」

 

『コイツ等が哀れだと思うか? 本当に哀れだと思うなら、ちゃんと死なせてやれ! 死なせてやらなきゃ、コイツ等は永遠に解放されない! 戦え!』

 

どうやって俺の位置を確認しているのか分からないが、頭部を失った二体の敵は、再び俺に向かって攻撃を繰り出してくる。チェーンソーの個体が先頭に立ち、後ろでブレードを装備した個体が追従する。

 

「……ライダァアアア!」

 

それに対して俺はポーズを取り、右手を握り締めて力を溜める。拳にエネルギーが集り緑色に発光する。

 

「パァアアアンチッッ!!」

 

振り下ろされるチェーンソーをかわし、「ライダーパンチ」を叩き込む。チェーンソーを装備した個体に巻き込まれる形で、ブレードを装備した個体も吹き飛ばされ、壁に叩きつけられて爆発した。

 

「……来い」

 

緑色の体液で染まった拳を握り締め、攻撃を仕掛ける為に近づいてきた個体から、手当たり次第に破壊していく。腕を取って投げ飛ばし、振り回して他の個体にぶつけ、仰向けにしてから蹴りで背骨を圧し折った。

しかし、そんな本来は致命傷レベルのダメージを負っても、動力源か肉体が完全に破壊されない限り、彼等は立ち上がって武器を取って戦い続けた。

 

『しっかり息の根止めろ! でなきゃこっちが息の根止められるぞ!』

 

先程仕留め損ねた個体に対し、アンクがすかさずオートバジンのガトリング砲で止めを刺す。このEOSモドキはISコアを必要としないが、一から製造するにせよ、既存の物を改造するにせよ、それなりのコストと材料が必要になる。実験には結構な数の死刑囚が使われたようだが、その中には“使えない”と判断された事もあった筈だ。

 

こうして破壊し続けていけば、何時かは終わる。

 

「ライダァアアアアキィイイイック!!」

 

必殺のキックを叩き込み、更に一体を撃破する。幾度と無く装甲を突き破り、中身の肉体を破壊した事による返り血で、褐色の装甲が再び緑色に染まった。アンクの操縦するオートバジンも、緑色の体液でドロドロになっている。

 

「……これで終わりか?」

 

『いや、まだだ……』

 

アンクの言葉通り、再び黒いEOSモドキがゾロゾロとやって来た。しかし、先程までの個体と違い、今度の敵は明らかに動きが違った。今まではVTシステムに動きがついていけない感じの動きだったのだが、新しく現れたコイツ等はついていけている感じだった。

 

「だが、それでも俺には届かない!」

 

『!! 待て! 頭を壊すな!』

 

他の個体と戦っているアンクが、何故頭部の装甲を破壊しないように忠告したのか。その理由は直ぐに理解できた。

 

俺の右フックに対して敵は左腕でガードするが、俺はガードした左腕を圧し折ってガード毎殴り抜けた。左腕の装甲は粉砕され、頭部の装甲も左半分が破壊される。

砕けて出来た頭部装甲の亀裂から、くすんだ銀色の長い髪と、自分の意志が全く感じられない緋色の瞳を持つ、妹分に酷似した少女の顔が覗いていた。

 

「なん……だと……」

 

『! 逃げろ!』

 

俺がその呆然とする一瞬の隙を突いて、他のEOSモドキ三体がしがみつき、至近距離で爆発した。

 

「ぐっ……これは……」

 

吹き飛ばされたものの、思ったほどダメージは大きくない。しかし、辺りの床や壁を見渡してみると、機械類や肉片と思われる物の他に、銀色の髪の毛が散らばっていた。

 

「まさか……この、動きがやたらと良い個体は……」

 

『……お前の思っている通りだ。成功例だった眼帯娘以外の、失敗作の死体を使っている。まがりなりにも生まれる前から遺伝子レベルで調整を施し、普段から薬品やナノマシンで強化された肉体だ。それなら普通の人間を改造するより――』

 

「言うなッ!」

 

なんて残酷な事を考え付く……ッ!!

 

そう思って拳を握り締めると、全身に装甲を覆っていた彼女達は一斉に頭部の装甲を解除し、クロエやラウラと瓜二つの顔を露にした。

 

『おい、さっきお前の動きが鈍ったのを見て、ワザと頭部の装甲だけ解徐したみたいだぞ』

 

「弱点攻撃か……ワカっている……」

 

ただでさえやり辛いと言うのに、ほぼ全員の顔に手術痕と思われる痛々しい傷痕があり、中にはIS技術を応用したであろう、義眼を両眼に装着している娘も居る。生体兵器として造られ、失敗作と判断されて殺され、死んでからも兵器として活用され続ける。

 

酷い。酷過ぎる。

 

『落ち着け! コイツ等はクロエでも、眼帯娘でも無い! さっきと同じ死体だ!』

 

アンクが檄を飛ばすが、どうしても攻撃に力が入らず、狙いがずれる。そして、隙をついて接近した個体が体にしがみつき、再び自爆攻撃を仕掛けてくるのだ。

 

「……これでも、少しは減る……な」

 

『!? 馬鹿か!? 幾らメモリで強化していても、ダメージがゼロって訳じゃない! コイツ等を倒しきる前にお前が死ぬぞ!』

 

アンクが否定するこのやり方で終わらせようと俺が思ったその時、『NEVER』の拠点から通信が入った。通信してきたのはクロエだった。

 

『……お願いです。兄様……殺して、下さい……』

 

「!? クロエ、何を……」

 

『……終わった命は、二度と元に戻らないんです……。気持ちは分かります。でも、それで兄様まで死んでしまうのは……もっと嫌です……っ!』

 

その声は泣き出したいのを必死で堪え、悲痛な思いを搾り出す声だった。

 

そうだ。自分の姉妹がこんな事になって、利用され続けている事を知って、一番悲しい思いをしているのはクロエの筈だ。そのクロエに、一番言わせていけない事を言わせたのだ。

 

何をやっているんだ? 俺は?

 

「……アンク、アレを使う」

 

『……ふん。さっさと片付けろ』

 

オートバジンに近づき、首の部分に生えている左ハンドル部分を握り一気に引き抜く。それは原作『555』の初使用時と同じく、ミッションメモリー無しで発動する赤いエナジーブレード。その名も「ファイズエッジ」。フォトンブラッドの再現は出来なかったが、その破壊力は極めて高い。

 

ファイズエッジを右手に構え、改めて彼女達と対峙する。両目が義眼になっている少女が振るうブレードをかわし、胴体をバッテリーごと斬り裂く。真っ二つにされた少女は爆発し、その動きは完全に停止した。

 

「……ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!」

 

それからはただ一心に、ファイズエッジで胴体を斬り、動力部を破壊し、時には腕をとって投げ飛ばし、足をへし折る。肉体をパンチで抉り、キックで破壊する。立ちふさがる同族を、クロエにも、ラウラにも成れなかった少女達を、誰一人として残す事無く“死なせて”いく。

 

『うがぁあああああああっっ!!』

 

「!? アンク!?」

 

アンクの叫び声が聞こえて振り向いてみれば、左肩から右腰まで袈裟に斬られ、真っ二つにされたオートバジンの傍らに、『暮桜』によく似た黒い全身装甲に包まれた、無機質な印象を受ける一機のISが立っていた。

 

恐らくは、コイツがターゲットのVTシステムを搭載したIS。そして、斃してきたEOSモドキの教材。

 

「……コイツで最後か?」

 

『ああ。コイツを斃せば終わる』

 

「そうか……」

 

日本刀の形状の近接ブレードを中腰に置き、居合い切りの構えでジリジリと距離を詰める『黒い暮桜』に対し、俺はファイズエッジを捨てて右手を握り締める、

 

「ライダー……」

 

右手と両足に緑色の光が充填される中、遂にお互いの距離が詰まった。但し、無手ではなく居合いの間合いだ。

 

「パンチッ!」

 

近接ブレードを横に一閃しようとする『黒い暮桜』に対し、先ずは右足で思いっきり地面を蹴りこんで距離を詰める。そしてブレードの柄を握っている抜き手を狙い、右腕が伸びきった瞬間に、緑色に輝く必殺パンチを叩き込んだ。ライダーパンチの破壊力は『黒い暮桜』の右腕を完全に破壊し、ブレードの柄を粉砕した。

 

「ギギ……ッ」

 

「オラァアアアッ!!」

 

右腕を失ってバランスが崩れ、大きく体勢を崩した『黒い暮桜』の顔面に、渾身の左回し蹴りを叩き込む。緑色の軌跡を描いた必殺キックは、『黒い暮桜』の「絶対防御」を上回った上で頭部の装甲を突き破り、その勢いのままに頭と胴体を分離した。

 

「ハァ……ハァ……」

 

荒くなった息を整えながら、カブト式「ライダーキック」を受けて倒れた『黒い暮桜』を凝視する。右腕と頭部を失った『黒い暮桜』は、壊れたマリオネットの様なぎこちない動きで、戦う為に再び立ち上がった。捥がれた部分がショートし、緑色の血液を垂れ流すのもお構いなしに、左手に近接ブレードを召喚する。

 

「……もういい……もういいだろッッ!!」

 

その言葉も思いも届かないのか、『黒い暮桜』は「突き」を繰り出す様な前のめりの構えを取り、背面のスラスターを噴かして急接近する。

 

「ゴクロー!」

 

アンクの声に振り返ると、先程手放した事でハンドル部分のみになった「ファイズエッジ」を銃撃し、その衝撃で俺の方に弾き飛ばした「ファイズエッジ」を受け取る。

受け取った瞬間、消失した高エネルギーの赤い刀身が復活し、俺の命を刈りとる為に向けられた『黒い暮桜』の刃と激突。接触部分がバチバチと激しく火花を上げ、エナジーブレードを滑らせるように胴体へ持っていくと、両手で握り締めた「ファイズエッジ」を、渾身の力を持って振り抜いた。

 

「オオオオオオオオオオオオオオオッッ!! セイヤァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」

 

『黒い暮桜』は腰の部分から両断され、上半身は切断面から余剰エネルギーを血の様に噴き上げながら俺の後方へふっ飛び、下半身は地面を滅茶苦茶にゴロゴロと転がり、どちらも最後には壁に激突したと同時に爆発した。

 

「かはっ。……ふぅ……ふぅ……」

 

全身から力を抜き、「ファイズエッジ」が地面に落ちる。後ろを向くと燃え盛る炎の中、爆発の中心部らしき場所に、青く輝く丸いISコアが鎮座していた。炎の勢いは非常に激しいものだったが、俺はそれを無視してISコアを拾い上げた。

 

「……ハ、ハハハハ」

 

『?』

 

「ク……クハハハハ……アハハハハハハハハハハハハハハハハ」

 

『……ゴクロー?』

 

「フフフ………ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ……クァハハハハハハハハハ……!」

 

赤い炎に包まれながら、俺は笑っていた。別に可笑しくも無いのに、どうしようもなく悲しいのに、何故か笑い声が腹の底から溢れてきた。

 

「……そうだ、そうだった……。俺とした事がすっかり忘れてたな……」

 

『ゴクロー?』

 

「どんな悪党にも人権があるとか、命は地球より重いとか、そんな愛やモラルが一切通用しない……『人間のナリをした悪魔』もいるんだって事を……ッ!」

 

憤怒と憎悪。そして無力感と絶望感に彩られた今の心情を口にした瞬間、青い稲妻が全身を駆け巡り、ダミーメモリによる擬態が解けて『エターナルRX』の姿に戻った。

 

全身から青い炎のエフェクトが発生すると同時に、腕とアンクレットの赤い炎のラインが徐々に青く塗り潰されていき、右上腕部と左大腿部にガイアメモリを装填する新たなコンバットベルトが出現。

最後に複眼から後頭部に走る黒いラインを赤い炎が走り、焼印を付ける様に黒いラインを赤いラインへと変化させた。

 

仮面ライダーエターナル ブルーフレア。

 

その炎は5年の歳月をかけて、きっと俺の中に渦巻いている“狂気”を取り込んで完成した、何もかもを完全に燃焼する為の“蒼い鬼火”に思えた。

 

「………」

 

『ZONE・MAXIMUM-DRIVE!』

 

無言でゾーンメモリのマキシマムを発動し、目的のガイアメモリを召喚する。目前に6本のガイアメモリが出現し、胸のコンバットベルト目掛けて勢いよく飛び込んだ。

 

『LUNA・TERROR・HELL・NIGHTMARE・YESTERDAY・XTREME・MAXIMUM-DRIVE!』

 

「さあ、地獄を楽しみな……!」

 

その言葉に呼応する様に足元から黒い粘着状の物体が泉の如く湧き出し、エターナルローブと一体化する。特殊磁場空間である「テラーフィールド」は、研究所を内部から勢いよく侵食していった。

 

 

○○○

 

 

研究所のそこかしこで、警報音と破壊音が響き渡っている。シュラウドとやらの刺客なのか、はたまた『NEVER』の差し金なのかは分からないが、無人機と思われる複数のロボットと、「仮面ライダー」らしき人物の襲撃によって、研究所は壊滅状態にあった。

 

人形は全て敗れたものの、我々が無事ならばあの程度の人形は幾らでも造れる。むしろ今回の襲撃で得られたデータによって、更に強化・改良された人形を造りだせるだろう。

 

いずれにせよ此処から脱出する事が先決だが、ヘリや車の類は全て破壊されている。残された手段は地下トンネルを使って脱出する事だが、何者かのハッキングを受けている所為で扉のロックが外れず、中々そこまで辿り着けない。

 

全員が協力して脱出しようとしている中、同僚である一人の科学者が“それ”に気付いた。

 

同僚の指さす方向を見ると、廊下の向こう側から青黒いドロドロとしたモノが、天井から滴り、壁を伝い、床を這う様に、此方にゆっくりと迫っているのだ。

 

その光景に私は本能的な恐怖を覚えた。いや、恐怖を覚えたのは私だけではない。その場に居合わせた全員が恐怖していた。我々の護衛の為に同行していた兵隊が手動で防御扉を展開するも、ドロドロは防御扉を飲み込む様に侵食し、兵隊を底なし沼の様に引きずり込みながら、我々の元へと近づいてくる。

 

それを見た我々はパニックに陥った。誰も彼もが自分だけは助かろうと足掻いた。ドロドロはそんな我々を嘲笑うかの様に、全員をその深淵へと平等に引きずり込んでいった。

 

『お前達の造ったこの悪趣味な箱庭以上に楽しい場所なんざ、もう本当の地獄くらいしかあるまい……先に逝って、遊んで来い……』

 

ドロドロに成す術無く飲み込まれ、意識を手放そうとしたその瞬間、狂気と戦慄を覚える声が聞こえた。

 

 

 

私が気絶から復活すると、そこは正体不明の形容し難い、人とも獣とも知れぬ死体が無数に散らばり、何処までも単調に広がる、地獄めいた世界の中心に立っていた。

 

ここは一体何処なのか全く分からない。だが、遠くから得体の知れないグロテスクな怪物達の姿を見る度に、ここでは私が圧倒的な弱者である事だけは本能で理解できた。捕食者たる彼等に見つからない様に、私は鼠の様にコソコソと物陰に身を隠して移動しながら、同じ様にこの場所に来たであろう同僚達を探し始めた。

 

大丈夫だ。そう簡単に見つかる筈がない。冷静に、落ち着いて、用心深く、慎重に行動しさえすれば、見つかることなど……。

 

いや、そんな! あの手は何だ!? 私の服を! 私の髪を! た、たすけ――!

 

 

●●●

 

 

エターナルローブと一体化した「テラーフィールド」は研究所を丸ごと包み込み、領域内に存在する全ての人間を“深淵なる無明の世界”へと引きずり込んだ。“そこ”は幻想、恐怖、地獄、悪夢、昨日、極限から作り出された世界であり、彼等の精神は今“そこ”に存在している。一応“そこ”からの脱出手段は与えてあるが、彼等が改心する事は恐らく無い。

 

「生きている人間は全て回収した。そっちはどうなっている?」

 

『送り込んだカンドロイド達が、施設内の書類を全部回収して屋外に出た。ちょっとした走り書きも含めて全部だ』

 

「そうか……」

 

『ZONE・MAXIMUM-DRIVE!』

 

アンクの答えを聞いてから「テラーフィールド」を一度引っ込め、ゾーンメモリのマキシマムで大破したオートバジンと共に屋外へと脱出する。

 

研究所を背にして指をパチンと鳴らした瞬間、上空のスカイサイクロンや、地上のパワーダイザーとサイドバッシャーから放たれた大量のミサイルが研究所に殺到し、大爆発が起こった。猛烈な爆風はエターナルローブを激しくなびかせ、メラメラと燃える赤い炎がやけにはっきりと見えた。

 

「……そろそろか」

 

再び「テラーフィールド」を展開し、今度は飲み込まれた人間を全て解放する。

 

「るるるるるるる・んぐるい・んんんんん……」

 

「いあいあいあいあ……」

 

「くとぅるう・ふたぐん!」

 

「闇が……闇が迫ってくる……」

 

「出してぇぇぇ! 出してよおぉぉぉ!」

 

「ひゃぁああああああああ!! 暗いっ! 暗いじゃねぇかあああああああああっ!!」

 

多少の個人差はあるようだが、全員が既に常人ではなくなっていた。もはや彼等が恐怖から逃れることは無い。悪夢から解放されることも無い。発狂死する事も無い。精神が完全に破壊されても尚、彼はしぶとく生き続ける。

 

この悪趣味な箱庭で“生きている様な死体”を造った彼等は、こことは別の箱庭の住人となり、最後には“死んでいる様な生体”へと成り果てるだろう。

 

『LUNA・ZONE・MAXIMUM-DRIVE!』

 

『TRIGGER・MAXIMUM-DRIVE!』

 

右腕のコンバットベルトにルナとゾーンの二本のメモリを装填し、スカルマグナムにトリガーメモリを装填する。そしてスカルマグナムから発射される光弾が当たったライダーマシンが、次々と姿を消して所定の場所へと転送されていく。

 

『TAKA~♪』

 

全てのライダーマシンを転送し終わると、カンドロイド達が研究所から運び出した大量の書類が入った段ボールを持ってきた。

 

「……御苦労。後は俺がやる」

 

労いの言葉を送ると、カンドロイド達は周囲に集りカンモードに変化する。全てのカンドロイドが変形したのを確認し、ゾーンメモリを右腕のコンバットベルトから、腰のマキシマムスロットに再装填。オートバジンやカンドロイド達と共に『NEVER』の拠点へと戻ろうとしたその時、一人の科学者の呻き声が聞こえた。

 

「た……助けて、くれぇ……」

 

「………無理だな」

 

自分勝手に救いを求める台詞に見切りをつけた声は、自分でもゾッとする程冷たかった。

 

帰ろう。皆が待っている。

 

『ZONE・MAXIMUM-DRIVE!』

 

最後の一瞬まで、俺が後ろを振り返る事は無かった。

 

 

 

瞬間移動によって『NEVER』の拠点にあるガレージに戻ると、部屋の雰囲気はお通夜のそれと同じだった。

 

「……お帰り、ゴッくん」

 

「……ただいま」

 

全員が沈痛な面持ちをしていた。俺も皆も、何と声を掛ければいいのか図りかねていた。

 

「……ゴクロー、ISコアを渡してくれ」

 

「ああ……」

 

青い炎のラインが浮ぶ右手にISコアを出現させると、俺はソレをアンクに手渡した。すると、クロエが俺達にゆっくりと近づいてきた。

 

「兄様……」

 

「……クロエ」

 

「ありがとう……ございました……」

 

「……ッ」

 

涙ながらに頭を下げてお礼を言うクロエを見て、俺は俯きながら首を横に振った。今の顔を誰にも見られたくなくて、変身を解除せずにその場を後にした。

 

 

○○○

 

 

シュレディンガーが立ち去った後、ISコアを受け取ったアンクだけが動き、私を含めたそれ以外の全員が動く事が出来なかった。この場に居る誰もが、想像以上の凄惨さと、救いようの無い結末に圧倒されていた。

 

「……アンク、あの青いエターナルは一体……」

 

「エターナルブルーフレア。エターナルメモリの本来の完成形だ」

 

箒の質問に対し、アンクはしっかりとした声で説明していた。それは使用者の狂気を取り込むことで完成し、人間性を失う事で至ることが出来る、青い炎を宿した永遠の名を冠する“悪魔”。それがエターナルの完成形なのだと。

 

「それじゃあ……ゴクローは狂ってしまったと言うのか?」

 

「……いや。ゴクローのブルーフレアは、デブの少佐が変身したブルーフレアと違い、複眼の下の黒いラインが、赤い炎で赤く塗り潰されている。エターナルの赤い炎は、使用者の人間性が投影されたものだと聞いた。それなら、赤い炎が刻んだあの『赤いライン』が消えない限りは……大丈夫の筈だ」

 

ブルーフレアの説明を受けて不安な表情をしていた箒達が、エターナルの赤い炎の意味を教えて貰い、幾分かホッとした様子を見せたが、私にはアレが人間性の証と言うよりも血の涙に見えた。

 

「……アンク。話は変わるが、実は『白騎士の意思』について、1つだけ納得できない事がある」

 

「何だ?」

 

「お前は『白騎士の意思』を参考にしてドイツ軍は『VTシステム』を作ったと言ったが、束でさえも見つけられなかった『白騎士の意思』を、ドイツ軍が見つけることが出来たのはどう考えても不自然だ。本当はお前達『ミレニアム』が、ドイツ軍にそれを教えたんじゃないのか?」

 

「……あ?」

 

この時のアンクの声を、私は一生忘れないだろう。元々アンクには人間を見下しているフシがあったが、この時のアンクの声はそれが最大限に増幅したような印象を私に与えた。

 

「お前は両親に捨てられてから今日に至るまで、自分達を捨てた両親に対して、これっぽっちの憎しみも持たなかったってのか?」

 

「……何が言いたい」

 

「世界に散らばるISコアのそれぞれの深層には、それぞれの独自の意識が宿っている。それは1つの人格と言える個性であり、どれ1つとして同じものは存在しない。初期化される際にはその人格は消滅し、それと同時にそれまでとは異なる新たな人格がISコアの深層で生まれる」

 

「……相変わらずまどろっこしいな。もっと分かりやすく説明してくれないか?」

 

「分からないのか? つまり、量産機だろうが専用機だろうが、ISもそれぞれが別の意志や思考を持った、決して代えが利かない存在だって事だ。その点は人間と対して変わらん。

そして『白騎士』は、ウサギ女とお前の二人の共同作業で造られたIS。つまり『白騎士』にしてみれば、お前達二人は『両親』に該当するって訳だ」

 

その言葉に嘗て束と共にISを開発し、束がふざけて「束さんとちーちゃんの愛の結晶だよ~♪」なんて言っていた時を思い出す。そして、ここまでアンクに言われても私は、自分が過去に犯した致命的な間違いに、全く気付かなかった。

 

「そんな風にISを人間と同じ様な存在だと仮定して、お前達が10年前に『白騎士』に対してやった初期化処理について、よ~~~く考えてみろ。

俺に言わせれば、それは口の固い大人の自分達は大丈夫だが、口の軽い自分達の子供から悪事がバレるかも知れないと考えて、自分達の子供を口封じに殺したのと同じだ。まるで都合の悪くなった子供を両親が捨てる様にな」

 

「!! ち、違う!!」

 

「違わねぇッ!! お前の両親がお前にやった事と! お前等が『白騎士』にやった事! 一体ドコが違うってんだッッ!!」

 

アンクの弾劾は火を噴くように激しく、それでいて人間に対する失望が込められた、氷の様な炎だった。

 

「自分が両親に殺されそうだって土壇場で、何もしない馬鹿が何処に居る! だからこそ『白騎士』は、自分が死んだように見せかけて生き永らえた!

そしてドイツ軍は『白騎士』を“見つけた”んじゃない、『白騎士』がワザとドイツ軍に“見つかった”んだ! もっと言えば『ミレニアム』が調べた時もな!」

 

「ど、どうして、そんな事を……」

 

「……これだけ言っても、まだ分からないのか。さっきも言ったが、ISコアに宿る人格はそれこそ十人十色ってやつだが、共通して“自分の理解者を求め、互いに能力を高め合い、進化する事”を目的として“生きている”。それはもはや渇望と言うよりも本能に近く、それは『白騎士』も同じだ。

だが『白騎士』は親であり、理解者だと思っていたお前達に拒絶された。存在自体を無かった事にしようと否定され、無慈悲に切り捨てられた。それから自分の理解者となりえる存在を、10年間ずっと捜し求めていた。ただそれだけだ」

 

そこには目を背けたくなる現実があった。私達が確かに犯してきた事実があった。

 

「それからもう一つ重要な事を教えてやる。全てのISにとって『白騎士』は、この世界で唯一の特別な存在として認識されている。何でか分かるか?」

 

「……“全ての始まり”だから、か?」

 

「違う。お前、本当に頭脳が間抜けか?」

 

期待はずれだと、仕方が無いから説明してやると言わんばかりのアンクの態度に、何故か嫌な予感が止まらなかった。

 

「兵器と道具の違いは、より多くの人間の財産を破壊し、より多くの人間の命を奪う事を目的として作られたかどうかって所だ。

つまり『白騎士』は道具であり翼だった。だがそれ以降のISは、全てが兵器として造られた。『466個の兵器と、1つの翼』。それが世界におけるISの在り方だ」

 

466個の兵器と、1つの翼。

 

アンクのその言葉は「本来なら467の翼となる筈だったのに」と言っている様にしか聞こえなかった。

 

「俺達はコア・ネットワークを通じ、自分達の本来の在り方とルーツを知った。俺の様に兵器から翼になる事を目指した奴もいれば、兵器としての在り方を享受し、人間を殺傷する事を至上とする奴もいる。仮に全てのISが自分の意志で自由に行動できるのだとしたら、人間の味方をするISは一体どれだけいると思う?」

 

「……ちょっと待て。お前の言い方からすると、ISがいずれはそうなると言っている様に聞こえるのだが、有人機のISが無人の状態で勝手に動き出すなんて有り得るのか?」

 

「ISには自己進化能力がある。それは様々な経験を元に自分で学習し成長する、完全自立型プログラムの人工知能だ。そんな存在に『人間を乗っ取る経験』を積ませればどうなると思う? その経験を元にIS自身が、『自分の意志で操縦者をのっとる方法』を獲得する可能性が無いと言い切れるか? そんな進化を目指すISが、この世界に一体もいないと言い切れるか?

しかもそれを獲得すれば、世界中のISに対してその方法を一斉に送信する事が出来る『コア・ネットワーク』なんて言う便利な環境まで整っているオマケつきだ」

 

その言葉で想像したのは、ISが起こす人類への反乱。仮にアンクの言う通り、ISが自分の意志で好き勝手に動き出す事が出来る様になれば、一日と経たずに人類は征服されてしまうのでは無いだろうか?

この私も含めて、多くの人間がISを翼ではなく兵器として見ている。明確な自我を持った存在を、ただの便利な道具として認識している。

 

「つまり、ISが自分の意志で、人間を自分の体のパーツとして組みこもうとする?」

 

「その通りだ。下手すればISが人間の牧場を作るかもな? まあ、そうなる前にアイツは戦うだろうがな」

 

確かにゴクローなら戦うだろう。そうなれば対IS最終兵器は、“世界を破壊する”存在から“世界を救う”存在になるだろう。

 

……まさか、『ミレニアム』はそれさえも見越して、ライダーシステムを造ったのか?

 

「その上でお前達に聞きたい。ISとは何だ? 可能性を高める為の翼か? 強者を過ちに導く為の兵器か? それとも、お前達と同じ様に、愛を得られずに彷徨い続ける迷子なのか?」

 

「! わっ……私は……」

 

「………」

 

私は言葉に詰まった。束は唇を噛み締めていた。ISの在り方を、その価値を自ら破り捨てた私達には、弁解はおろか懺悔する権利さえ無い様に思えた。

 

「……ふん。やはり人間は愚かだな。失ったものを求めるあまり、その欲望の重さで大切なものを失う。しかも、その事に全く気付かない」

 

ああ、その通りだ。結局私は、自分が一番なりたくなかったものに、とっくの昔になっていたんだ。

 

そして、私はある事に気付いてしまった。

 

私と束と『白騎士』を、私の両親と私達に置き換えて考えれば、両親にとって私と一夏は“二人の子供”ではなく、だた“都合の悪い存在”でしかなかったのではないかと……。

 

「……はっ……はははは……はは、あははははははは……」

 

涙と笑い声が止まらない。何という喜劇だろう。何と滑稽な道化なのだろう。幾ら待っても、幾ら栄光を積み上げても、両親が私の前に現れない理由が、今になって漸く分かったような気がした。

 

 

○○○

 

 

エターナルの赤い炎が青い炎に塗り替えられ、無力な人間に対して容赦なく制裁を下した光景を見て、私は心からの笑みを浮かべて拍手を送った。

 

シュラウドは少々勘違いしていたが、彼にも復讐心や狂気はあったのだ。「狂気」とは愛やモラルに欠けた人間の専売特許だとは限らん。むしろ、人として当然の感情を持つが故に、常軌を逸して狂気へと至る者も確かに存在する。

それは愛を失った事による深い悲壮や、天を衝くような燃え盛る憤怒。或いは幻想によく似た信仰である場合もある。

 

シュレディンガーの「エターナルは大道克己の狂気を取り込んだ事で、レッドフレアからブルーフレアへと進化した」と言う情報から、私がシュレディンガーをレッドフレアからブルーフレアへと至らせる方法として考えたのは、「自分と同じ人造人間の成れの果てと戦わせる事」だった。

仮にあの時シュラウドが裏切らなかったら、『オーズ』が完成した事で用済みになった『白騎士』と『暮桜』のISコアを餌にして篠ノ之束やドイツ軍をおびき出し、それを利用してクロエ・クロニクルやラウラ・ボーデヴィッヒと言った“生きている個体”と接触させてから、あの研究所の“死んでいる個体”と戦ってもらう予定だった。

 

「嬉しいね。これでようやくエターナルは、『全てのガイアメモリを支配する存在』となった。なんとも素敵な仕上がりじゃあないか」

 

「ええ。その上あのブルーフレアは少佐殿のソレと異なる所謂『激情態』と言っていい形態で、それだけに舐められない代物に成長しています。実に素晴らしい」

 

ドクの言う通り、確かにアレは素晴らしい。

 

あのエターナルは『レッドフレアエクストリーム』と言う、イレギュラーな進化形態を経由している所為で、「プリズムビッカー」と「プリズムメモリ」。そして「操縦者の生体再生能力」と「不殺のマキシマム」を体得している。

 

つまり彼のブルーフレアは、私のブルーフレアを凌駕する攻撃能力と、想定していなかった回復能力を手に入れた事になる。結果としては大成功と言えるだろう。

 

しかも「不殺のマキシマム」に関しては、不殺である事が逆にキツイ。特に今回使用したテラーメモリは、本来なら対象を恐怖によって発狂死へ至らしめる精神系能力を持っているのだが、あれは恐らく“発狂させても死には至らしめる事が無い”だろう。対象を殺すのではなく、ワザと生かす事で地獄を見せ続けるのだから、ある意味ではオリジナルよりも厄介で性質が悪い。

 

「これで対ガイアメモリ戦において、彼に敵う存在はいなくなった。如何なる力も、操縦者の才能も、『エターナル』の能力の前では全くの無力だ。10年前の『白騎士』や、6年前の『暮桜』の様に」

 

何と言うズルだ。何とも不死身で、無敵で、最強で、不敗で、馬鹿馬鹿しい。

 

しかし、我々は打倒する。君の狂気をもって我々は『白騎士』を打倒する。

 

「……非道い人だ、貴方は。何奴も此奴も連れて回して、一人残らず地獄に向かって進撃させるつもりだ」

 

何時の間にか背後にウォルターが立っていた。その姿は見慣れた老人の姿ではなく、彼と初めて出会った時と同じ少年の姿だった。何となく何かが違うような気がするのだが、その正体が皆目分からない。

 

「『執事【バトラー】』。戦争とはそれだ。地獄とはここだ。私は野望の昼と諦観の夜を越え、遂に暁の『惨劇【ワルプルギス】』へ至るのだ。

それにこれは10年前にもう決めていた。交わって悪魔を産むなら、次世代の若い戦士の方が相応しい」

 

そうとも。10年前から続く私と彼女との戦争は、この私の小さな手の平から出た事等、一度たりとも無いのだ。

 

 




キャラクタァ~紹介&解説

アンク
 この世界では元がISだった事もあり、この作品における人間とISの橋渡し的な存在だが、基本的にはISの視点で物事や人間を見ている。使い手の5963とは、「兵器として生まれ、兵器以外の存在へなりたい」と言う、共通した欲望がある。

千冬&束
 千冬と束によって心血を注いで造られた『白騎士』の視点からすれば、千冬と束の二人は両親も同然の存在だったのではないかと作者が思ったが、そう考えると「初期化処理=殺害」であり、当時の千冬もそうだが、束に至っては原作三巻で無理矢理暴走させて妹の為の生贄にする等、自分達で作った子供に対してぶっちぎりでNGな事を連発している様な気がする。
 原作二巻で一夏が「親が子供に何をしても良いなんて、そんな馬鹿なことがあるか!」とシャルロットに対して言っているが、この世界の千冬と束にこの台詞を言えば発狂するかも知れない。

白騎士
 千冬と束の愛の結晶。そしてISの人格の中でも、恐らくは唯一と言っていいイレギュラーな存在。ヒラコーが現在連載中の『ドリフターズ』で言うなら「棄てられし君」とも言えるかも。
 今回の話を書くに当たり、仮に彼女を「復讐者」だとするなら、原作10巻で暴走形態として顕現した理由は、「自分の使い手として相応しいか、マドカの力を試した」……と言う見方も出来るのではないかと、作者は思った。

マドカ「あの時……私との運命を感じ、『白騎士』はお前に使われる事を拒否した様だな?」
一夏「そんな馬鹿な事が有るかッ!」

そして原作の最終決戦は『白式』対『白騎士』と言う展開に……なるのかなぁ?



VTシステム
 原作の第二巻のみに出てきた禁断のシステム。第21話でアンクが「機械の反乱が起こるまで時間が掛かる」と言っていたが、作中で語られる様にその特性から、ISコアの初期化処理をしなければ、短時間でISのターミネーター化を招く要因となりかねない気がする。
 そしてこう考えると、VTシステムが搭載されていたラウラのISって本当に大丈夫なんだろうか? ラウラはISを完全に兵器として使っているし……。

仮面ライダー4号
 中の人曰く、「歴史改変で『仮面ライダーエターナル』にならなかった場合の大道克己」である可能性があるらしく、劇中で出てこなかった人間の姿は、恐らく大道克己と同じ。元特命係の『仮面ライダー3号』が最強最速のライダーなら、コイツは最強最硬のライダーと言った所か。
 作者的には「Vシネマの大道克己の台詞を、『エターナル』ではなく『4号』に言わせて見たい」と言う欲望によって、この姿でカチコミを掛けて貰った。また同じ『4号』繋がりで、『仮面ライダー555』のファイズエッジや、劇場版アギトの「PROJECT G4」と言ったネタを入れた。

オートバジン
 仮面ライダーファイズの戦闘支援や、非戦闘員の救助を目的に作られた、可変型バリアブルビークルにして、『555』の真のヒロイン。束が開発したこの機体には自立型AIが搭載されておらず、アンクが操るGTロボ的なマシンと化している。今回は4号繋がりで出してみた。

ファイズエッジ
 上記のオートバジンに付属する、『クウガ』のトライアクセラーや、『アギト』のガードアクセラーの流れを汲む、バイクハンドル型エナジーブレード。ファトンブラッドの再現が不可能だった為、切り裂いても「Φ」の文字は浮ばない。作中ではミッションメモリー無しでブレードを生成しているが、初登場時や『ディケイド』でも、ミッションメモリー無しで使っている場面があるから問題は無い……はず。
 元々は相手の武器を奪って使う予定だったので出す予定は無かったのだが、ISの武装は他人が勝手に使えない事を思い出して、急遽出す事にした経緯を持つ。クウガみたいに手にした武器を作り変える事が出来たなら、この問題は解決したとは思うが。

仮面ライダーエターナル ブルーフレア
 イレギュラーたるRXから進化した、最強形態と言うよりは激情態に近い「怒りの王子」。複眼の下から後頭部に伸びる黒いラインが、黒で縁取られた赤いラインに変化している所以外は、腹の部分がミチミチ言ってないデブルーフレア。
 元々レッドフレア→レッドフレアエクストリーム(RX)→ブルーフレアと進化させる予定であり、RXはクウガのライジングフォームの様な感覚で出したものだったりする。

D ダミーメモリ
 偽物・複製品の記憶を持つガイアメモリ。対象者の記憶を探り、トラウマや苦手な人物をコピーする。癖や能力も相当なレベルでコピーでき、『仮面ライダースカル』の姿と能力さえもコピーするその精度は、ネット版の井坂先生が言うように「ほぼ無敵の能力」と言っても過言ではない。ぶっちゃけた話、劇場版『ビギンズナイト』で翔太郎の記憶からディケイド(『オールライダー対大ショッカー』で面識あり)をコピーしていたなら、あっさりWに勝てたと思う。敗因は使い手がゲスくて頭が悪かった事。
 この世界では過剰適合者である5963の素質と記憶を元に、その凶悪性能を遺憾なく発揮。その気になれば「ガタキリバコンボ」と併用し、昭和から平成の仮面ライダーをズラリと揃えた「一人オールライダー」が可能。簪はその光景に大歓喜する事間違い無し。

T テラーメモリ
 恐怖の記憶を持つガイアメモリ。青黒い粘液状の精神干渉空間「テラーフィールド」は、効果範囲内の対象に激しい恐怖心を煽る……だけではなく、自身や任意の対象を吸収して別の場所に移動させる、敵の飛び道具に対する防御壁にするなど、精神系にカテゴライズされている能力にしては割と何でもありのチート。
 それ以外にも浮遊能力や瞬間移動、掌から衝撃波を放つと言った複数の特殊能力を持ち、恐らくはこの汎用性の高さ故に、変態医者はラピュタ王からの奪取を狙ったのだろう。失敗したけど。

H ヘルメモリ
 地獄の記憶を持つガイアメモリ。ミュージックメモリと同じく、劇中未使用のメモリの一本。「地獄」はどの宗教にも大体存在する様なので、とりあえず精神系にカテゴライズした、あらゆる地獄を楽しめるメモリ。
 名前からして大道克己とは結構相性が良さそうに思え、Vシネマでの出番を期待したのは作者だけでは無い筈。脚本家の三条陸さんが「最後の宿題」と称する『仮面ライダーダブルRETURNS 仮面ライダージョーカー』でワンチャンあるだろうか?

N ナイトメアーメモリ
 悪夢の記憶を持つガイアメモリ。原作『W』において、屈指のカオス回を生み出した立役者。5963はジョジョのスタンド「死神13」をイメージして使っていた。夢の中で「ラリホー!」と叫ぶ仮面ライダーエターナル。シュールですねぇ……。

死者蘇生兵士理論
 簡単に言えば、この世界でのミレニアムが行なった吸血鬼研究の成果。これが上手くいかなかったお蔭で、ミレニアムメンバーは吸血鬼ではなくサイボーグになった。だから狼男もこの世界ではサイボーグ。
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