DXオーズドライバーSDX   作:トライアルドーパント

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この小説を連載して一年になりました。本来ならこの作品は一年位で完結させる予定でしたが、最低でも更に一年位は延びそうな予感がプンプンします。

そして、お気に入り登録が1000件を突破しました。ご愛読ありがとうございます。

また、ヒロアカの二次小説である『怪人バッタ男 THE FIRST』の第2話と第3話。そして、遂に決定した「B組の21人目」にスポットを当てた番外編の2.5話を同時に投稿しますので、興味があればそちらも宜しくお願いします。


第29話 Sな戦慄/ジョーカーで勝負

神に代わり剣を振い、ありとあらゆる頂点に立つ事を目指した男はこう言った。

 

「美味しい料理とは『粋【すい】』なもの、煌びやかで最高の素材を使わなければならない」

 

天の道を行き総てを司る男を自称する、中の人もリアルに完璧な超人はこう言った。

 

「美味しい料理とは『粋【いき】』なもの、さり気無く気が利いていなければならない」

 

存在証明を求めて彷徨い続け、青き『騎士【ライダー】』となった少女は、青い血を引く少女の作ったBLTサンドを食べてこう言った。

 

「セシリア! お前の料理はマズ過ぎる! 言葉で表現するなら『お手軽感覚で楽しめる味覚のテロリズム』だ!」

 

……どうしてこうなった。

 

 

●●●

 

 

午前の授業が終了してお昼休みに突入した訳だが、本日は久し振りに学食ではなく、各々で弁当を持参して、校舎の屋上で食べる事になっていた。集っているのは、俺・クロエ・マドカ・箒・セシリア・鈴音の6人だ。

ちなみにシャルルは一夏に連れられて、二人で学食の方に行った。今頃の食堂は学園中の女子生徒でごった返し、さぞやエライ事になっているだろう。

 

「生徒会副会長なのに、あの騒ぎを放置していいのか?」

 

「あれは生徒会じゃなくて、風紀委員の管轄だ。生徒会が出張る必要は無い」

 

もっとも、その騒ぎを止めるべき風紀委員も騒動に加わっていると言う点が問題なのだが、俺としてはそれよりも楯無のサボり癖の方が痛い。今日も楯無は騒ぎに便乗する形で仕事をサボり、虚と二人で大量の書類を処理する事になるだろう。

 

「それなら今の内に体力を付けた方が良いな。そっちは午後の授業も結構大変なのだろう?」

 

「まあな。そっちはどうだった? 具体的にはラウラの様子だが」

 

「……何と言うか、他を寄せ付けないオーラを纏っていたな。お蔭で誰とも話していないぞ」

 

「私も一応話しかけたのですが、何とも……」

 

「そうか……」

 

マドカとクロエの方は、ラウラに関してかなり難航しているようだ。ドイツ軍人であるラウラもまた、何かしらの命令を受けてIS学園にいると容易に予想できた。だから命令を遂行する為に、ラウラはマドカやクロエに対して積極的に接触するだろうと思っていたのだが、蓋を開けてみればラウラは花の女子高生時代を、初っ端からバリバリ全開でボッチ街道を驀進すると言う形をとっているらしく、クロエやマドカ以外の他のクラスメイトともコミュニケーションを全くとっていないとか。

 

「……放課後に俺もラウラに会ってみるかな?」

 

「止めた方がいいと思います」

 

「ああ、リベンジマッチでも仕掛けてきそうだ」

 

「ああ、もう! 何時までも駄弁ってないで、早くお昼にしましょう! そのラウラって転校生の事は食べてからでもいいでしょ?」

 

「そうだな。何時までも談笑していられるほど、昼休みはそう長くない」

 

それもそうか。鈴音と箒の言う通り、ラウラの事は弁当を食べてしまってからでも遅くは無いし、昼休みの時間はそう長くない。

 

そして、いよいよ各々が自分の弁当の蓋を開け、お互いの戦果(?)を見せ合う時が来た。料理とは味は元より、その見た目も重要。「食べてみれば意外に……」と言う事も有るには有るが、「見た目が良い料理が作れる」と言うのは、どうしても高評価に繋がる。

 

「マドカは箒とクロエに教えて貰った感じか?」

 

「あ、ああ……。それなりに上手くできたとは思うのだが……」

 

「何を言う。ちゃんと上手くできてるんだから、堂々と胸を張れ」

 

「そうだ。頑張った分、結果は必ずついて来る。私だってそうだった」

 

「そうですよ。昔の私なんて良いトコ、消し炭かゲルでしたし」

 

「……クロエはクロエで久しいモノを作ったな」

 

「はい。『きんぴらゴボウ』ならぬ、『金ピカごぼう』です!」

 

((この性格が少し羨ましい……))

 

そもそも今回の昼食会の発端は、箒がマドカとクロエの二人に対して、「既成事実の作成」と言う邪道ではなく、「男心を掴むには先ず胃袋を掴む」と言う、箒視点での正攻法を教えようとした事から始まる。

 

「なるほど。そうして薬の一つでも盛って強制的に発情させるのだな?」

 

「違う! いい加減にそっちから離れろ!」

 

箒はそれなりに料理の経験を積んできた手前、料理の腕はかなり達者になっていたのだが、マドカは料理等まともにやった事が無いので悪戦苦闘していた。それでも箒とクロエのお蔭で、とりあえず何とか形にはなっている。

ちなみにクロエは、久方ぶりに料理限定のドジッ子スキルを発揮し、「きんぴらごぼう」を作るつもりで「金ピカごぼう」を“またもや”作っていた。これでも味は良いので、むしろクロエはオリジナル料理と言う事にして開き直っていたりする。

 

しかし、その光景は偶然通りがかった、セシリアにしっかりと見られていた。彼女達が料理をした場所が『NEVER』の拠点ならば見られなかっただろうが、そちらではゴクローが束と自分の分の弁当を作っており、今回の弁当がある種のサプライズを視野に入れて作っていた関係もあって、使用出来なかったのだ。

そして、金粉を使ったわけでも無いのに、金色に輝く「金ピカごぼう」を作ったクロエのお料理スキルに驚きを隠せないセシリアは、その場をそそくさと立ち去った後に、これまた廊下で偶然出会った鈴に協力を仰いだ。

 

「クロエさんが『金ピカごぼう』なら、わたくしは『銀ピカごぼう』で対抗しますわ!」

 

「いや、普通のにしときなさいよ!」

 

結果から言えば、鈴音は得体の知れない料理を作り出そうとするセシリアを何とか止めることには成功した。しかし、セシリアが作り出したサンドイッチは、ある意味でそれ以上に性質の悪い代物だった。見た目は実に綺麗で美味しそうなのだが、その味わいは壊滅的で冒涜的で犯罪的だった。

これはセシリアが「料理は完成品が本(写真)と同じになれば何でも良い」と言う考えの下、味よりも色合いを重要視した為に、レシピを完全に無視して様々な調味料や食材をガンガン投入して作っていたからだ。そして、それが致命的な間違いだと気付く為の味見を、セシリアが全くしていない上にするつもりも無かった為、セシリアがその事に気付く事は無かった。

 

その一部始終を見ていた鈴音はと言うと、この詐欺としか言いようの無いサンドイッチを喰わなければならないゴクローの未来を案じ、癒しと憐憫と贖罪の意味を込めて酢豚と白米の弁当を用意した。ちなみに中国でお弁当と言えば、「ご飯とおかず一品のみ」と言うのがスタンダードである。

 

「? 今日は何時もと弁当箱が違うな?」

 

「ああ、何か束も弁当を作っていたらしくて、それと交換する事になった」

 

「え!? ね、姉さんが作ったのか?」

 

「……待て、私達が居る間にアイツが一度でも料理をした事があったか?」

 

「少なくとも私は記憶にありません」

 

束が料理を作った所を見た事のある人間はこの場にはいない。これはとんでもないゲテモノを作り出したのではないかと、多くの不安と少しの期待を持って三人はゴクローの持っていた弁当を覗いたのだが――。

 

「……可愛いな」

 

「ええ、何だか裏切られた気分です……」

 

「ああ、世界はとても理不尽だと思い知らされるな……」

 

束が作ったのは、彼女達の想像以上に可愛らしいお弁当だった。中でも印象的なのは、ハートマークに形を整えたオムライスに、ケチャップで『I LOVE TABANE』と書かれている事。

人は「天は二物を与えず」と良く言うが、実際の所この“天”と言う存在は、時として一人の人間に二物も三物も与えやがる、極めて理不尽な存在である。

 

ちなみにゴクローが自分の分として作った弁当は、束の手によって最近一緒に食べるようになった千冬と真耶の二人に、自分に作ってくれたオーズのキャラ弁を自慢しながら恵んでやろうと束は考えていた。

 

「と、とりあえず、食べよう! 話はそれからだ!」

 

「そ、そうだな! 重要なのは味だからな!」

 

「お、美味しいのが一番ですよね!」

 

「……そうだな」

 

予想外の束のお料理スキルを目の当たりにしてキョドる三人娘に、何か悲しいものを感じるのは気のせいだろうか? まあ、気持ちは分からなくも無いが。

 

そして、お互いの弁当のおかずを交換したりしながら和気藹々と食べていたのだが、セシリアのサンドイッチを食べた時、事件が起こった。

 

「!?!?!?!?!?」

 

「いかがですか? おいしいですか? お気に召しましたか?」

 

選択肢が限られている気がするが、俺にその質問に答える余裕は無い。吐き気をぐっと堪えて、何とか咀嚼して飲み込む作業に集中するが、砂利を噛み締めるようなエグイ食感と、甘味と酸味と苦味のエキスが出てくるBLTサンドの猛攻によって、背中を滝の様に流れる嫌な汗が止まらなかった。

 

「? どうしたんだ? どれ、私も一つ…………!? ブファアアアアアッ!!」

 

「ちょっ! な、何をなさるのですか、マドカさん!」

 

「何だこれは!! 今までで食った物の中でも、群を抜いて酷いぞ!」

 

馬鹿正直なマドカは、殺人的なサンドイッチを素直に噴出し、セシリアに対して思った事を素直に言った。

 

「セシリア! お前の料理はマズ過ぎる! 言葉で表現するなら『お手軽感覚で楽しめる味覚のテロリズム』だ!」

 

「な、何を馬鹿な事を! 貸して御覧なさい……ゴファアアアアアアッ!!」

 

「うわぁ……」

 

「これは……」

 

「……兄様、これを」

 

今度はセシリアが盛大に噴き出した。そしてさっきから二人の攻撃は、何故か俺に全て直撃している。この間の溶解人間事件よりはマシだが、結構酷い事に成っている事は間違いない。クロエが差し出してくれたハンカチが非常に有り難い。

 

「こ、これは……そんな……ちゃんと、本の通りに作ったのに……」

 

「……いや、あれは『本の通り』じゃなくて『写真の通り』って言うべきよ」

 

「!? 鈴さん! 分かっていたなら、どうして仰ってくれなかったのですか!?」

 

「いや、アタシはちゃんと言ったけど、アンタ全く聞かなかったじゃない……」

 

「うぅ!? …………ううっ……」

 

その事に対して覚えがあったのか、セシリアは涙目になって俯いてしまった。膝の上で握りしめた両手に、水滴がポタポタと滴り落ちている。

 

いけない。セシリアはきっと深く絶望している。

 

チーム・カリメロの一人であるスティールなおっさんは「失敗する事は決して恥では無い。失敗を恐れて行動しない事こそが恥なのだ」と言っている。ただ、致命的な失敗は時として、人の心に強烈な後悔と呪いを齎し、その後の人生において“トラウマ”と言う名の大きな障害となる事がままある。

 

このままではセシリアにとって「料理する事」がトラウマとなってしまう事は明白。それを回避する為には……。

 

「く……」

 

「「「「く?」」」」

 

「食い物は粗末にしねぇ!!」

 

どこぞの天の道を司る男は言っていた。「“食べる”という字は“人”を“良”くすると書く」と。きっとセシリアも、そうなる事を願ってこのサンドイッチを作っていただろう事は想像に難くない。あの涙がその証拠だ。その思いだけは、絶やす訳にはいかないのだ!

 

「!! 飲むな! 吐き出せ! 『拒絶反応【リゼクション】』を起こしているぞ!」

 

「ぐふっ……心配するな。……俺は、不死身だッ!!」

 

誰がどう見ても毒物を食っているとしか思えない、ゴクローの紫色になった顔面を心配したマドカが、サンドイッチを食べるのを止めるよう促したが、ゴクローはそれを無視して食べ続けた。

そして返答を聞いたマドカは「それは不死身じゃなきゃ食えない代物だと言う事か?」と言いそうになったが、流石にそれを言う事は憚られた。マドカは素直で馬鹿正直だが、それなりに空気が読める子だった。

 

「……ええい! ならば私にも寄越せ! 私も手伝ってやる!」

 

「わ、私も食べます!」

 

「くっ! 仕方ない! まだ、一つ位なら……!」

 

「ああ! もう! 本当にこのお人良しの馬鹿は!」

 

「わ、わたくしがなんとか……」

 

少しでも負担を軽減するため、箒が先陣を切ってオルコットサンドに挑む。他の面子も次々と手を伸ばすが、一口食べるだけでも相当な体力を摩耗し、一切れを食べ切るには尋常ならざる精神力を要した。

その結果、箒は前のめりに倒れ、クロエは地に伏せ、マドカは頭から突っ伏し、鈴音が胸を押さえて横たわった。製作者であるセシリアはダウンこそしていないものの、青い顔をしながら号泣している。その視線の先には、兵器と化したサンドイッチを消化するべく、孤軍奮闘する戦士がいた。

 

そして、戦士は遂に全てのオルコットサンドを食い尽くし、それと同時に大の字になって倒れた。

 

「ご……ゴクロー……さん……」

 

「……せ……セシリア、聞いてくれ……」

 

「はい……」

 

「諦めないで欲しい……人は変わる、変われる……だから……」

 

ゴクローの頭を胸に抱いたセシリアの手を握り締めながら、涙に濡れる青い瞳を真っ直ぐに見つめて、ゴクローは最後の力を振り絞った。

 

「また……作って……」

 

「ご、ゴクローさん……うぐぅ!?」

 

遂にゴクローとセシリアも力尽きた。胸に戦士の頭を抱いて倒れた少女の顔は酷く青ざめていたものの、どこか安らかな表情をしていた。

 

 

 

午後の授業が始まった時、相川清香は誰もが疑問に思った事を山田先生に質問をした。

 

「あの~、シュレディンガー君達がいないんですけど、どうしたんですか?」

 

「ええっと……シュレディンガー君と、篠ノ之さんと、オルコットさんの三人は早退です。急に具合が悪くなったそうで……」

 

結局、オルコットサンドを食べた全員が仲良く保健室のお世話になり、放課後の生徒会ではゴクローの予想通りに楯無が仕事をサボりまくり、虚が全ての仕事を消化する事になるのだが、それはまた別のお話である。

 

 

●●●

 

 

瀑布を髣髴とさせる俺の壊滅的だった腹具合は、ぐっすりと一晩寝たらすっかり治っていた。流石はクローンをベースとしたナノマシン系改造人間。回復力は常人のそれとは比べ物にならない程高い。

ちなみに普通の人間である箒とセシリアと鈴音は、束特性の胃薬と治療用ナノマシンで、俺と同じ人造人間であるクロエやマドカは胃薬のみで回復したらしい。本音を言えば俺も飲みたかったのだが、飲んだらセシリアに悪いと思って飲まなかった。

 

そんな英国紳士も真っ青な精神力(笑)を持つ俺は、今日も朝から元気に授業に出て、昼食に楯無を筆頭とした生徒会のメンバーに誘われてご馳走になり、放課後に生徒会の仕事をこなした後で、『NEVER』の拠点から夢で少佐に教えて貰った座標の場所へと向かった。

 

『夢で教えて貰ったとか、正直ふざけてんのかと思ったが、本当に有ったな。あのデブの事だから罠の可能性も否定できないが』

 

「それよりも問題はパスワードだ。やはり少佐から聞きそびれてしまったのは痛い」

 

少佐に教えて貰った座標だが、その場所がなんとチベットだった。そして隠されるように立てられた施設の扉を開錠する為には、入力画面にキーボードでパスワードを打ち込む必要があるのだが、「チベット」で「最後の切り札」とくれば、もう『仮面ライダー剣』のネタ以外ありえないだろう。

 

「取り敢えず『Double Joker』っと」

 

『ぱすわーどガ、チガイマス』

 

キーボードでパスワードを打ち込んでエンターキーを押すと、G3-Xの武器のケルベロスみたいな音声が聞こえた。しかし、これではないのか、ならば……。

 

「なら『Black and White』っと」

 

『ぱすわーどガ、チガイマス』

 

これでもないらしい。では、一体なんだ? まあ、いずれにせよ『剣』ネタである事は確実だろうと思った俺は、次から次へと思いつく言葉を入力してみる事にした。

 

“MASKED RIDER BLADE”

 

“Round ZERO ~ BLADE BRAVE”

 

“ELEMENTS”

 

“覚醒”

 

“rebirth”

 

“take it a try”

 

“MISSING ACE”

 

“NEW GENERATIONS”

 

“BOARD”

 

“永遠の切り札”

 

“DAY AFTER TOMMOROW”

 

“オンドゥル語”

 

“ケンジャキ”

 

“ムッコロ”

 

“ダディヤナザン”

 

“ムッキー”

 

“ヒロシザン”

 

“ナズェミテルンディス!”

 

“オンドゥルルラギッタンディスカー!”

 

“オデノカラダハボドボドダー!”

 

“ウゾダドンドコドーン!”

 

“ダリナンダアンタイッタイ”

 

“オレァクサマヲムッコロス!”

 

“もずく風呂”

 

“バーニングザヨゴォー!”

 

“だが私は謝らない”

 

“これ食ってもいいかな?”

 

“ギャレン・弱フォーム”

 

“最弱にして最強”

 

“最強(笑)”

 

“はぶらレンゲル”

 

“フロート”

 

“畳”

 

“たいやき名人・アルティメットフォーム”

 

“ウェーイ”

 

“タカラミ剣”

 

“ロリコンデブ”

 

“小錦ラブ”

 

“辛味噌”

 

“敵裸体”

 

『おい! さっきから何を入力してんだ!! 真面目にやれ!』

 

「やっとるわ真面目に! さっきから必死こいて思い出してんだろうが!」

 

ちなみに日本語は『W』の翔太朗みたいにローマ字打ちをしている為、「ムッコロ」なら「MUKKORO」となり、「だが私は謝らない」なら「DAGA WATASIHA AYAMARANAI」と表示される。ちょっと笑える。

 

『ウソをつくな! ウソを! なんだこの「たい焼き名人・アルティメットフォーム」ってのは! どう考えても有り得ねぇだろ!』

 

「俺は冗談を言う事は有るが、ウソをつくことはしないぞ! それと『たい焼き名人・アルティメットフォーム』を舐めるなよ! コイツは『クウガ』以外で唯一アルティメットフォームの名を冠する上に、スペシャルターボっつー更なる変身を残しているんだぞ!」

 

『知ったことか!! 兎に角、軌道修正しろ! 何かおかしくなってきている!』

 

むむ、確かにな。取り敢えずアンクの言う通りに、軌道と言うか路線を変更して入力してみる事にした。

 

“カードキャプターさくや”

 

“ワルトラセブン”

 

“ザ・ブレイダー”

 

“ウェンディーヌ”

 

“ギャレン・ナイトフォーム”

 

“仮面ライダーケタック”

 

“ライダーイーティング”

 

“鈴木一馬”

 

“過去と未来の鎌田が一つに!”

 

“ブレイド食堂”

 

“チーズ!”

 

“ニーサン”

 

“感動的だな。だが無意味だ”

 

“まさに辛味噌ワールド!”

 

“速水校長”

 

“ワタシノタチバハボドボドダー!”

 

“私は我が身を守る為なら何でもする!”

 

“リブラショック”

 

“ベール所長”

 

“キュアソード”

 

“キュアダイヤモンド”

 

『ぱすわーどガ、チガイマス』

 

『………』

 

「駄目か。ええっと、次は『キュアハート』っと……」

 

『もういい! もう止めろ! 解ける気配が全然しねぇ!』

 

遂にアンクが完全にブチ切れた。やはり、少佐から何とかして聞きだすしかないのか? 取り敢えず今日の所は諦めて帰ろうと思ったその時、ふと閃いた事があった。

 

「もしかして……」

 

『何だ!? また訳の分からん事を――』

 

『カイジョシマス』

 

「『!?』」

 

コレまでとは違うメッセージを受けて驚愕する俺達を尻目に、重厚な金属の扉の鍵が遂に解かれた。開いた扉の向こう側から冷たい風が吹きつけてくる。

 

『何だ! やれば出来るじゃねぇか!!』

 

「……ああ」

 

『ところで、パスワードは何だったんだ?』

 

「……顔文字」

 

『顔文字!?』

 

そう、俺が入力したのは言葉では無い。そして解けたのは良いのだが、何か釈然としない奇妙な気持ち悪さを抱えて、俺は扉を潜って地下へと向かった。

 

 

(0w0) (<::V::>) (0M0) (0H0)

 

 

ゆっくりと罠を警戒しつつ進んでいくと、その先で俺達を待っていたのは、視界を埋め尽くさんばかりに積まれた、無数のセルメダルで出来た山だった。

 

「!! 凄いぞ!! コレだけあれば、もうセルメダルの心配をする必要は無い!」

 

その光景を目にしたアンクは、ドライバーから飛び出して狂喜乱舞していた。確かにコレは凄い。これは『オーズ』の鴻上会長が言う所の、「無限のセルメダル」を遥かに上回る量だろう。

 

「これがデブの言う切り札か? 確かにセルメダルの心配をしなくていいのは、精神的にもデカイな!」

 

「……いや、それだけじゃ無さそうだ」

 

銀色のメダルで埋め尽くされた倉庫の奥。そこには黒マントを羽織った、金色の人型が透明なケースに入った状態で安置されていた。静かに横たわっているソレは、どうみても『仮面ライダーSPIRITS』の大ボス「大首領JUDO」。もしくは金ぴかカラーのゼクロスだ。

流石に『ミレニアム』の脅威の科学力といえども、「大首領JUDO」の馬鹿げた戦闘力を再現出来ているとは思えないが、何かどこか神々しいものを感じるのは確かだ。

 

「ふむ……どうやらコレは、お前の為に造られたボディらしいな。お前の脳味噌をこの体に入れれば完成する」

 

「ZXボディなのか、JUDOボディなのか判断に困るんだが、ハカイダーよりはマシだな。どうして少佐はこんなものを……」

 

「お前、少しは考えてみろ。アイツ等は全員が肉体を機械化したサイボーグだぞ? つまり本来はコッチの方が得手分野だ。ぶっちゃけ、『平成ライダー』とか言う連中よりも『昭和ライダー』の方が造りやすかったんじゃないか?」

 

確かに。そう考えると、もしかしたら改造兵士レベル3に改造されて『ミレニアム』の鉄砲玉となったり、キングストーン的なナニカを授かった上で脳改造を施されて「世紀王」になったりするルートもあったのかも知れないな。いずれにせよ禄でもない結末しか待っていないだろうが。

 

「しかしコレを使わないとしても、コレが包帯女の手に渡ったらそれこそ最悪だ。破壊するか回収するか。いずれにせよ放って置くのは不味い」

 

「……それなら回収だ。使わないとも言い切れないし」

 

「使いたくはなさそうだがな」

 

そりゃ当然だ。可能なら生身で死んでいきたいが、場合によっては機械の体になってでも生きる必要に迫られる事態も有り得る。だからこそ、コレは最終手段として取っておきたい。取り敢えずJUDOボディは、ゾーンメモリの力で束の元へと転送する事にして、

後はこの「無限のセルメダル」の回収だけだと思い、再びセルメダルをジャラジャラいじって遊んでいるアンクの元に行こうとしたのだが、ふと俺の目に止まったモノがあった。

 

それはセルメダルとは違う輝きを放ち、此方に自分の存在を知らせている「銀の髑髏」だった。もしかして女性型の銀ぴかゼクロスボディもあるのかと思い、俺がしゃれこうべに近づいた瞬間、足元の床に魔法陣の様な物が展開された。

 

「な、何だ!?」

 

「!? ゴクロー!?」

 

只ならぬ展開に困惑する中、異常に気付いたアンクが此方に近づいてくるが、魔法陣の光はどんどん強くなっていく。

 

「あ、明るくなるぅ! 限界まで明るくなるぅうううううううっ!!」

 

「割と余裕だな! 兎に角、捕まれ!」

 

俺は伸ばしたアンクの手を掴もうとしたが、アンクの手は魔法陣の光に弾かれ、俺は一人光の中に消えた。

 

 

●●●

 

 

恐る恐る目を開けると、俺は何も無い真っ白な空間の中に居た。そう、本当に何も無い。ただただ無機質で真っ白な世界が無限に広がっているのだ。

 

「何だココは……『精神と時の部屋』か?」

 

『それは違う』

 

「!?」

 

明らかにアンクとは違う声が聞こえた事に驚き、声の聞こえた背後を振り返ってみると、そこには契約していないイマジンみたいに上半身だけの、銀ぴかゼクロス(男性型)がいた。……もしかしなくても、コイツは「ツクヨミ」か? となるとこの場所は……。

 

「……ココは何処だ?」

 

『ココは暴走した「オーズ」を現世から隔離し、幽閉する為に用意された“存在するが存在しない”空間だ』

 

俺の質問にツクヨミ(仮)が想像通りの答えを言った瞬間、景色が目まぐるしく変わった。何も無かった空間は広大な砂漠と化し、灼熱の太陽が地面を照りつけている。暑い。

 

しかし、変わったのは景色だけでは無い。突然、何も無かった場所から現れたのは、一本のメモリと三枚のコアメダル。それが何セットも出現した上に、メモリを中心にして三枚メダルが空中で高速回転を始めたのだ。

それは『仮面ライダーコア』が顕現する時の光景にそっくりだったが、ここに現れたメモリはメモリーメモリではなく、コアメダルも甲殻類系コアでは無い。

 

それらよりも、もっと恐ろしいモノだ。

 

『ライダー……変身!!』

 

『変身!』

 

『変身! ブイスリャアーッ!』

 

『いくぞっ!』

 

『セッタァーップッ!』

 

『アーマーゾーンッ!!』

 

『変身! ストロンガーッ!!』

 

現れたのは『仮面ライダーコア』ではなく、栄光の七人ライダーだった。その後もスカイ・スーパー1・ゼクロス・BLACK・BLACK RX・シン・ZO・Jが登場し、合計15人の昭和ライダーが勢揃いしてしまった。

ただ、彼等が実体ではなくエネルギー体だからなのか、全身から何か熱気の様な物が立ち昇っている。

 

この光景を見て、俺の脳裏に少佐の言葉が浮んだ。

 

――全ての“試練”を乗り越えて、誰も手にした事の無い高みへと至り、只一人の王として君臨する。その時君は、全ての世界を制するんだ――

 

違う。これは“試練”なんて、そんな生優しいものでは無い。そして少佐から「『ミレニアム』の“最後の切り札”がある」と聞いた時、俺は一つ勘違いをしていた事に気が付いた。

 

『そうだ。此処はお前の記憶を元にして造られた場所であり、彼等は「オーズ」の滅びを加速させる為に用意された伏兵だ』

 

そう、コレは“俺が使う”切り札ではなく、“俺に対して使う”切り札。それを確信させるツクヨミ(仮)の台詞が終わった瞬間、これまでに経験した事の無い死闘が幕を開けた。

 

 

○○○

 

 

「さあ、遂に始まったぞ。我等『ミレニアム』が用意した『オーズ』に対する『鬼札【ジョーカー】』。その名も『ライダーリンチ』の幕開けだ」

 

元々「兵器開発」と言うものは、強大な力を持つモノを作り出すと同時に、いざと言う時はそれを抑える為の対抗手段を考えておくもの。その筆頭が自爆システムだが、シュレディンガーとアンクは自爆システムに関しては非常に警戒心が強かった。

 

しかし、その警戒心の高さ故に、最も単純な対策に関しては完全にノーマークだった。それは『オーズ』よりも強い存在を造り出してソレをぶつけると言う、至極単純で実に分かりやすい方法だ。

 

「……紫のメダルの力で暴走した『オーズ』を用いて、全てのISを破壊し尽くした後の世界。徐々にエネルギーが枯渇し、器となる肉体も限界を迎えようとする『オーズ』を、『無限のセルメダル』と『機械の体』を餌に誘き寄せて『虚無の牢獄』に封印。その後で『オーズ』の死亡を確認した後でドライバー一式を回収する……と言うのが、我々が描いたシナリオの一つでしたな」

 

「そうだな。しかもあの仮面ライダー達の核となっているライダーメモリとライダーメダルに込められているのは『シュレディンガーの記憶と欲望』だ。言うなれば、『シュレディンガーの考えた最強の昭和ライダー』が相手と言う訳だから、倒すのは困難を極める。現にシュレディンガーは恐ろしく苦戦しているしな」

 

それは戦闘開始直後、即座にタカトラーターに変身した上でイエーガーユニットを召喚し、シュレディンガーが高速の空中戦を展開しようとした矢先、その作戦が泡と消えた事からも分かるだろう。

 

『ネットアームッ!』

 

『なにぃいいっ!?』

 

最も効果的な捕縛道具と呼ばれる「網」を用いたライダーマンによって出鼻を挫かれ、もがきながらも飛行を続けようとするシュレディンガーに、二人の仮面ライダーが急接近する。

 

『V3……マッハキィイイイイーーーーーーーーーーーーック!!』

 

『スカイ……キィイイイイイイイーーーーーーーーーーーーック!!』

 

『うごおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッ!!』

 

ふむ。やはりアンクと言うサポート役がいないと言うのが一番痛いな。ものの数分で、ライダーマンと仮面ライダーV3とスカイライダーの三人の連携によって、背面のイエーガーユニットは容易く破壊されてしまった。

 

「さてドク。シュレディンガーはどこまで戦う事が出来ると思うね?」

 

「……楽しそうですな少佐。最悪、このままシュレディンガーが死んでしまっては、元も子もないのでは?」

 

「そうは言っても、せっかく作ったモノを活用しないのもアレだろう? なあに、暴走状態では無い、通常の『オーズ』なら何とかなるだろうさ。それに外側から必死こいてるアンクの救援が何とか間に合うと私は思うぞ」

 

「それもそうですが……」

 

「それにシュレディンガーは嘗て、私にこんな事を言っていた。『負傷、復元、そして更なる進化。それこそが“仮面ライダー”と言う戦士の本質。そして人間の持つ可能性』……とね」

 

そして、再びモニターに視線を戻す。モニターの中では巨大化した仮面ライダーJによって、ガタキリバコンボの『オーズ』が文字通り羽虫を叩き落すかのように、次々と吹っ飛ばされている。ハハハッ。セルメダルの無駄遣いだったな。

 

「……本当にコレでよろしいのですか?」

 

「ああ。少なくともシュレディンガーは『強くなろうとしない生物』ではないよ。それよりも、私は紅茶が欲しいな」

 

私はどこか確信にも似た期待をもって、『切り札』と『鬼札』の戦いを見続けていた。

 

 

●●●

 

 

正直な話、これは嘗て無い程の超・絶・大ピンチだ。

 

数の利を覆すための「ガタキリバコンボ」も、巨大化したJによって呆気なく敗れた。何となく、『進撃の巨人』みたいだと思った俺はきっと悪くない。

まあ、そうでなくてもこの昭和ライダー達はアホかと思うほど強いので、時間稼ぎにしかならなかったとは思う。ダメージのキックバックも考えると、「ガタキリバ」は悪手だったと言わざるを得ない。

 

「超……変、身ッ!」

 

『ライオン! トラ! チーター! ラタラタ~! ラトラーター!』

 

猫系メダル3枚で『ラトラーターコンボ』にコンボチェンジすると同時に、パッケージを『トライド』へと変更し、一番近くにいた1号ライダーに向かって突撃する。

 

トラクローを用いた突きと切り裂く腕の動きと、チーターレッグを利用したダッシュによる撹乱。それに加速を加えた強力な蹴りをもって攻め立てるが、そんな俺の攻撃を嘲笑うかのように、1号ライダーは数度の打ち合いで俺の攻撃を見切り、いとも容易く俺の首を掴んだと思ったら、即座に持ち上げて高速回転を始めたのだ。

 

「ライダーーー! きりもみシューーーーーーーーーーーーーーート!」

 

小さな竜巻が発生するほどの高速回転から繰り出された投げ技は、天高く俺の体を放り投げた。そこから追撃としてやって来たのは、1号ライダーと2号ライダーの合体技だ。

 

「「ライダーーーーーーダブルキィイイイーーーーーーーーック!!」」

 

「っ!! うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッ!!」

 

生命の危機を感じた俺はフルパワーのライオディアスを発動し、その場に居る全員を一挙に殲滅しようとしたその時、不思議な事が起こった。

 

「キングストーンフラッシュ!!」

 

「!? くそッ!!」

 

『ZONE・MAXIMUM-DRIVE!』

 

そうだ。コイツが居た。昭和ライダー最強といわれるチートの塊「キングストーン」を持つ『世紀王・ブラックサン』こと『仮面ライダーBLACK』。

ライオディアスをキングストーンフラッシュで無力化され、やむを得ずゾーンメモリのマキシマムでその場を離脱。ライダーダブルキックをギリギリのタイミングでかわしたが、移動した先に居たのは……。

 

「ケケーーーーーーーッ!!」

 

「SHYAAAAAAAAAAAA!!」

 

アマゾンライダー。そして、仮面ライダーシン。どちらも切り裂き攻撃を得意とする仮面ライダーであり、その攻撃を受けた者は洒落になら無いレベルの生々しい最期を遂げる。現にこの二人は、さっきから俺の首を執拗に狙って攻撃している。

 

「大・切・断!」

 

「ちぃ……っ!」

 

『METAL・MAXIMUM-DRIVE!』

 

上段から振り下ろされるアマゾンライダーの右腕を、メタルメモリを装填したエンジンブレードで受け止める。このまま反撃に移ろうとしたが、アマゾンライダーの左腕に装着されたギギの腕輪の隣に、対となるガガの腕輪が光と共に出現した。まさか……!

 

「ガァアヴヴヴヴーーーーーーーーッ!!」

 

「!! ガァアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」

 

ギギとガガの腕輪の力によって繰り出されるアマゾンライダーの「スーパー大切断」は、拮抗していたメタルメモリのマキシマムを容易く上回り、エンジンブレードのブレード部分とトライドの装甲、そして『オーズ』の鎧を紙の様に切り裂いた。斬られた部分で火花が飛び散り、真っ赤な血が噴水の様に噴出する。

 

「グ……ァア……」

 

しまった、完全に意表を点かれた。そして大ダメージで怯んだ隙を突き、至近距離まで接近していたシンさんが、右手で俺の首を強く握り締めた。

 

「FUUUUUUUU……」

 

「く……そっ!」

 

『OCEAN・MAXIMUM-DRIVE!』

 

首を抜かれる! 脊髄ごと! そう思った俺の決断と行動は早かった。

 

オーシャンメモリのマキシマムで液状化し、取り敢えず砂の中に入って撤退する。ここが『虚空の牢獄』を模しているなら、何処まで言っても同じ場所に戻るだろうから、過剰適合しているメモリとは言え、ゾーンメモリの力は大して効かないと考えていいだろう。

とりあえずは時間を稼いでコアメダルを変えておきたい。適当な所まで逃げて液状化を解いたら、即座にコアメダルを――。

 

「エレトリックファイヤー!」

 

「エレキハンド!」

 

「うごおおおおおおおおおおおおおおッ!!」

 

ストロンガーとスーパー1の容赦ない電撃攻撃に怯み、強制的に液状化が解除された上に地上に引きずり出された。強烈な電撃で体が痺れている俺に、今度はXライダーとゼクロスが迫る。

 

「ぐっ……こんの……っ!」

 

『コブラ! カメ! ワニ! ブラカ~ワニッ!』

 

何とかブラカワニコンボにチェンジし、取り敢えず負傷を治す。そしてトリガーマグナムを手元に召喚してから、ベルトのメモリスロットをルナに変更。トリガーマグナムにトリガーメモリを装填する。

 

『TRIGGER・MAXIMUM-DRIVE!』

 

「トリガー……フルバースト!」

 

放たれた無数の黄色と青色の光弾は、全てXライダーとゼクロスの二人の体に命中……したと思ったら、二人の体ををすり抜けていった。

 

ゼクロスのホログラム! そうなると本体はどこに……。

 

「電磁ナイフ!」

 

「! 舐めるなッ!」

 

背後から逆手に電磁ナイフを持って襲い掛かってきたのはゼクロス。電磁ナイフをメダジャリバーで受け止め、俺とゼクロスの剣戟が展開された。

 

『トリプル・スキャニングチャージ!』

 

「セイヤァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」

 

セルメダル3枚を消費して繰り出される次元斬。ゼクロスは巧みにかわしたが、電磁ナイフの切断には成功した。しかし「忍者ライダー」と称されるゼクロスは、他にもマイクロチェーンや十字手裏剣と言った豊富な武装を備えているので、全く油断できない。

ところがゼクロスは俺の予想と違い、素手での格闘戦で俺に向かってきた。不思議に思いつつも、此方もメダジャリバーを捨てて素手でゼクロスに挑む。

 

「ZXパンチ!」

 

『JOKER・MAXIMUM-DRIVE!』

 

「ライダーパンチ!」

 

……やはり何かがおかしい。そんな違和感を抱えたままで、ゼクロスと素手での攻防を続けていたのが、ゼクロスが突然俺から距離を取った。その事を不思議に思っていると、回転するX字のエネルギーを右足に纏ったXライダーが上空から迫っていた。

 

なるほど、ゼクロスはこの為の時間稼ぎか。Xキックを防ぐ為に両腕を合わせ、オレンジ色のエネルギーシールド「ゴーラシールデュオ」を張るが、その時に気がついてしまった。左腕の「ゴウラガードナー」に、先ほど切断した電磁ナイフの刀身が突き刺さっている事を。

 

「Xキイイイィーーーーーーック!!」

 

「うがぁああああああああああああああああああああッッ!!」

 

上空から繰り出されたXキックは、「ゴウラガードナー」に突き刺さっていた電磁ナイフの刀身を更に深く押しこんだ。鋭利な刃は楯と一緒に左腕を貫通し、Xキックはエネルギーシールド諸共「ゴウラガードナー」を完全に粉砕した。

 

「ハァ……ハァ……流石に、ヤバイ……な……」

 

超回復によって傷こそ治るが、流れた血が戻る事は無い。貧血で意識が朦朧とする中、最も聞きたくない単語が力強いてつをボイスで聞こえてきた。

 

「リボルケインッ!」

 

RXが腰のサンライザーから精製するのは、仮面ライダーシリーズはおろか、特撮界でも屈指のチート武器。「抜けば勝利確定」とさえ言われる、キングストーンと太陽のエネルギーが凝縮された『光子剣リボルケイン』。

 

「リボルクラッシュッ!」

 

俺に止めを刺すべく、RXはリボルケインを手に真正面から突進する。

 

喰らえば確実に死ぬ。でも、この「突き」を繰り出す前のめりの構えは、確かどこかで……。

 

『ギギ……ッ』

 

『……もういい……もういいだろッッ!!』

 

「ッッ!!」

 

『JOKER・MAXIMUM-DRIVE!』

 

「ウ……オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!」

 

紫色のエネルギーを纏った両手で、突き出されたリボルケインの刀身を掴む。刀身と接触している両手から、激しい閃光と火花が生まれていた。

 

「なッ!!」

 

「ライダァアアアアアアアアア!! パァアアアアアアアアアアアアアアンチッッ!!」

 

両手で掴んだリボルケインごとRXを引き寄せ、渾身の右ストレートを叩き込む。極限にまで追い詰められた状態で発揮させた『切り札の記憶』が齎すパワーは、一撃で昭和ライダー最強と名高いRXを吹っ飛ばした。

 

「……嫌な事、思い出させ、やがって……」

 

しかし本気で不味い。RXに渾身の一撃を叩き込んだのは良いが、文字通り最後の力を振り絞っての一撃だ。正直もう立つことさえままなら無い。それでも、やるしかないんだろうけど……。

 

「……どうした、かかってこいよ。俺はまだまだイケるぞ……」

 

俺の姿は誰の目にもやせ我慢のハッタリで、限界をとっくに超えている様にしか見えないだろう。しかし、残り14人の昭和ライダーは誰一人として向かってこなかった。

 

……何だ? どうして、襲ってこない?

 

『……恐怖している。プログラムに過ぎない筈の彼等が』

 

朦朧とする意識の中、ツクヨミ(仮)が何か言っているが、上手く聞き取る事が出来ない。そして遂に意識を失ってしまうと思った瞬間、この場所に来た時と同じ様に、俺の足元に魔法陣が展開された。

 




キャラクタァ~紹介&解説

ツクヨミ(偽)
 漫画『仮面ライダーSPIRITS』に登場する、スサノオこと「大首領JUDO」を裏切った銀ピカの従者。「虚空の牢獄」で村雨良と対面した姿をして、契約してないイマジンみたいだと思ったのは作者だけでは無い筈。
 この世界では「虚空の牢獄」の番人にして、暴走した『オーズ』の最期を見届ける役目を担っていた。つまり『ミレニアム』のウォッチメン。

大首領JUDO
 漫画『仮面ライダーSPIRITS』及び、『新・仮面ライダーSPIRITS』における大ボス。別名スサノオ。馬鹿げた戦闘能力を持つ全知全能の神……と思いきや、実は知らない事もそれなりにある様で“それ”が弱点らしい。最近ではイレギュラーの仮面ライダーであるライダーマンと『虚空の牢獄』でタイマンを張り、最後には「心臓の鼓動」によって勝利した。一体、何を言っているんだって? 作者もそう思う。
 この世界では、『ミレニアム』が用意した、5963専用の機械の体として製作された。『鎧武』の戦極ハカイダーみたいに、頭の中に5963の脳味噌を入れれば起動する。99%の「同質化【シンクロ】」と、1%の「抵抗【リゼクション】」で構成されている訳ではない。多分。



仮面ライダー剣
 オンドゥル語を筆頭としたネタ要素と、後半戦の怒涛の展開が素晴らしい平成仮面ライダー第五作目。今回作中で展開された全てのネタが分かる人は、間違いなく生粋の剣ファン。多分。

虚空の牢獄
 元ネタは『仮面ライダーSPIRITS』で、上記のツクヨミが大首領JUDOを幽閉する為に作り出した“光速で無限の距離を飛ぼうが、何億トンの破壊力を繰り出そうが、現実世界に影響を与える事が無い”別次元の異空間。この世界では「白騎士」と戦ってプトティラコンボを発動し、全てのISを破壊した後の「暴走状態のオーズ」に対する、『ミレニアム』が考えた最終手段。情報提供者は勿論5963。
 囮を使ってこの別次元に「オーズ」を封印し、そのまま兵糧攻めにする……と思いきや、ライダーメモリとライダーメダルの力で顕現した歴代の仮面ライダーが次から次へと現れて「オーズ」を死ぬまでボコり、「オーズ」が死んだ後で残されたドライバーを回収すれば万事OKと言う、所謂「釣り野伏」に近いかなりエゲツナイ作戦。

ライダーリンチ
 劇場版なんかでよく見る光景。基本的には一人のライダーでは敵わない敵が現れた際に、複数人のライダーで挑んだ結果そうなる。特殊なケースとしてはスカイライダーが栄光の7人ライダーから受けた『友情の大特訓』が挙げられるが、平成の世で特訓と言えば「バッティングセンターで動体視力を鍛える」のが関の山だろう。多分。
 今作では少佐が考えた『オーズ』打倒の切り札として、秘密裏に作ったライダーメモリとライダーメダルの力でこれを再現。昭和ライダー全員で『オーズ』を袋叩きにした。……え? 誰か足りないんじゃないかって? そんな馬鹿な。

ZO「………」

ライダーメモリ/ライダーメダル
 仮面ライダーの記憶や欲望が込められているアイテム。中には玩具として販売されてない奴もいるケド、細かい事は気にするな。1本のライダーメモリと、3枚のコアメダルが揃えば、仮面ライダーコアの様に実体化して襲い掛かってくる。その性能は5963が持つ『仮面ライダーSPIRITS』の記憶等も混じっている為、恐ろしく強い。
 正直今回のライダーリンチに関しては、様々な二次小説でも殆ど出番が無い「ライダーメモリ」や「ライダーメダル」に対して、何とか活躍の場を与えたいと言う作者の欲望に起因する所が大きかったりする。
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