パァアアアア……。
「ワシはユル神。君は中々見所があるな。どうじゃ? ワシの後を継いでユル神にならんか?」
「そうですねぇ~~。……ん?」
インフィニット・ストラトス12巻 4月25日発売
「……面倒臭ぇえええええええええええッ!!(カタカタカタカタカタカタ)」
「何ィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイッ!!」
そんな訳で、今回は三話連続投稿です。何? どう言う訳か分からない?
……最終回の後書きで話すって事で。
IS学園の一角に建つ『NEVER』の拠点。『NEVER』のメンバーにとっては自分達が帰る家であり、活動拠点であり、重要施設であるこの場所に、今回のIS学園襲撃の主犯であるシュラウドが、ユートピアメモリの力を身に纏った状態で頭から突っ込んだ。
屋根が破壊され、各々の私物が無残に粉砕される中、シュラウドは土埃と粉塵の舞う部屋の向こう側から、宿敵の接近を感じ取っていた。
「大分派手にやってくれたねぇ……。ねぇ、分かってる? ここは束さんとゴッくん達が帰るお家なんだけど?」
「壊れるのが早いか遅いかだけの違いよ。大体、貴方にとって此処は少し羽根を休める程度の止まり木でしかないでしょう?」
「……まあ、確かにずっと此処に居られるとは思って無かったケドね」
篠ノ之束とシュラウド。本来ならば暗躍する筈だった者と、今この世界で暗躍している者が、お互いに不穏なオーラを纏いながら対峙していた。
「前に来た時の事をゴッくんが言ってたよ。『どう考えてもメモリの出力がおかしい』ってね。私の考えだと、そのドライバーが“メモリの最大出力を常時発揮できる仕様になっている”のが原因だと思うけど、それなら何でそんな仕様にしたのかって疑問が浮かんでくる訳で……まあ、ちょっと考えれば答えはすぐに分かるよね。単純に『残された時間が少ない』。つまり『もう身体が保たない』んだよね?」
「………」
「ボロボロの身体に無茶な改造をして、残された時間で何とか目的を完遂しようとしてる。だから急ぐ必要があるんだよね? 気持ちは分からなくも無いよ? 私だって昔同じような事したからね」
「貴方と私が同じ? ……反吐が出るわ。あの時の貴方は命なんて賭けていなかった。でも私はこうして命を賭けている。貴方とはこの戦いに賭ける覚悟が違うわ」
「……そうだね、確かに違う。でも、だからって私はアンタの思い通りにはならないよ。だってそうでしょ? 長年憎んだ怨敵がお坊さんみたいに悟ったよーな顔で『分かってますよ。さぁ、どうぞ』なんて言って差し出した命を奪うのって、仇討ちとは違うよねぇ? そんなの私なら、正直ふざけるなって思うよ。
それこそ罪悪感に責められつつも未練タラタラで、『死にたくない』って命乞いでもしてくれなきゃ、仇討ちのし甲斐が無いと思うのですよ束さんは。だから……」
『UTOPIA!』
「徹底的に抵抗させて貰うね?」
『UTOPIA!』
奇しくも同じガイアメモリに選ばれた二人。もっとも、束はガイアメモリ対応型ISを介してユートピアメモリを使っており、おおよその特徴こそシュラウドと似通っているが、バイザーの下半分は顔が露出し、腰にはロストドライバーが巻かれ、その手には『玉座の謁見【キングス・フィールド】』と言う魔法少女チックな見た目の杖が握られている。
「フフフ、同じメモリ同士の戦い……。正に『運命』と言うべきかしら?」
「そうだね。それじゃあ、思う存分……」
「「潰し合おうか/潰し合いましょう」」
○○○
「当たって……っ!!」
「La……」
「ハァアアアアアアアアッ!!」
簪が放った無数のミサイル攻撃を、翼から発射した無数のエネルギー弾で打ち落とし、その爆炎に紛れて接近したマドカの『青騎士』による剣劇の嵐を、猛獣の様な形のクローで防ぎきる。
それはズーメモリによって強化された『銀の福音【シルバリオ・ゴスペル】』が、『オーズ』と同等の能力を持っている証左に他ならない。
「……成る程、大体分かった」
「マドカちゃん、どいて!」
楯無はマドカの相手をする『銀の福音』の動きを先読みし、未来位置を予測する事で罠を張っていた。マドカが追撃を止め、『銀の福音』がマドカから距離を取ろうとした矢先、『ミステリアス・レイディ』の「クリア・パッション」が発動。
ナノマシンを用いた水蒸気爆発が『銀の福音』を襲うが、『銀の福音』は大きな翼で自分の身体を包み込む様に防御していた。
「……お姉ちゃん。アレ、効いてると思う?」
「流石にダメージ0って事はないと思うケド、殆ど効いてないと思うわ。本当にガイアメモリって厄介ね」
「いや……全体的に見ればそれほど脅威とは言えない」
「「え?」」
「今回ベースになった『銀の福音』の戦闘スタイルは射撃に特化していて、広範囲殲滅攻撃を得意とするISだ。それに対して挿入された『ズーメモリ』は、肉体を様々な動物のモノに変化させる能力を持ったガイアメモリ。
そして今までの戦闘から、中・遠距離ではISの武装を、近距離ではガイアメモリの能力をと言った具合に分けて使っている。つまり、ISの長所とメモリの能力が合致してない。『ISの弱点をメモリの能力で補っている』と言えば聞こえは良いがな」
「……成る程ね。つまり、中・遠距離戦なら普通のIS戦と変わらないって訳ね」
「ああ、だからお前達は遠距離攻撃に終始してくれ」
「了解よ! 簪ちゃん!」
「うん!」
討ち取る為の隙を作るべく、簪が纏う『打鉄弐式』に搭載された「山嵐」による全方位からの物量攻撃。それに対して、またもや翼を展開しての広範囲攻撃で振り払おうとする『銀の福音』が、突然その動きを止める。
楯無が操る『ミステリアス・レイディ』の単一仕様能力「セックヴァベック」によって、『銀の福音』は空間に沈み、高出力ナノマシンのAICを遙かに凌ぐ拘束力によって、動きを封じられたのだ。
「簪ちゃん! 今よ!」
「うん! お姉ちゃん!」
そして、身動きの取れない『銀の福音』に、荷電粒子砲と水蒸気爆発が炸裂。その後、煙の中から現われた『銀の福音』は空間拘束結界から抜け出したものの、防御に翼を使う事が出来なかった為、今度の攻撃はボディに直撃しており、先程よりも有効打を与えられた事を姉妹は確信する。
「レベル2……ッ!」
『NASCA・LEVEL-UP!』
そして、このチャンスを逃がすまいとしたマドカの意志によって、魔改造を施されたライダーマシンとの地獄の様な戦いの日々をこなす事で到達した、ナスカメモリのレベル2が発動する。
それによって『青騎士』の由来となった青一色の機体は一瞬でオレンジに染まり、背中からは青紫のエネルギーで形作られた翼が発生する。
マドカは『銀の福音』を見据えながら一振りの刀剣を握りしめ、ナスカメモリを右腰のマキシマムスロットへ装填すると、即座にタップしてナスカメモリの最大出力を発揮させる。
『NASCA・MAXIMUM-DRIVE!』
最大出力を告げるガイダンスボイスが流れた刹那、音を置き去りにする速度によって入る事が許される世界に突入したマドカは、その動きに全く対応できない『銀の福音』の懐へ容易く接近する。
「せいやぁあああああああああああああああああああああああああああああああッ!!」
一刀両断。ISの装備を用いた遠距離攻撃から、メモリの能力を用いた近接攻撃に移行する間も無く、マドカの一撃は『銀の福音』に埋没したズーメモリを完全に捕らえた。
一撃必殺の攻撃をまともに受けたズーメモリは、衝撃によって『銀の福音』から排出されると、その狼を模した外装パーツが砕け散り、その中から綺麗なクリアボディの純正ガイアメモリが姿を現した。
「……チッ。レベル2の力でも砕けないのか」
「おっとっと! ちょっと、ちょっと、マドカちゃん! パイロットの方もちゃんと確認する!」
「そんなのはお前でも出来るだろう。それよりも私はゴクローの方に向かう。後は頼んだぞ」
「え!? ちょっと、待って! 私も……」
「お姉ちゃん! その人宜しく!」
「簪ちゃあああああああああああああああん!?」
ISが解除され、気絶しながら落下していたナターシャ・ファイルスを、とっさに受け止めた楯無に任せると、さっさとゴクローの方に向かって行くマドカと簪。
妹キャラ二人によって貧乏くじを引かされた事に気付くも既に遅く、楯無は気絶したナターシャ・ファイルスを応急室に運ぶのであった。
○○○
一方で、ファングメモリが挿入された『ファング・クエイク』と戦うアリーシャ、箒、セシリアの三人は苦戦を強いられていた。
マドカ達が戦っていた『銀の福音』と違い、此方は元となったISと挿入されたガイアメモリの相性が良く、その戦闘能力が単純かつ強力に増強されていたからだ。
「GUUUUUU! GAARRRRRRRRRR!」
「つ、強い……」
「ええ、操縦者の意識は殆ど無い筈ですのに……」
「多分『野生の本能』ってヤツだと思うのサ……」
近距離では大幅に底上げされた高い格闘能力と、闘争心を剥き出しにした野獣の様な戦闘スタイルで此方を攻め立て、中・遠距離ではブーメランの様な投擲用のブレードを生成して飛ばしてくる。
これだけでも厄介だが、防御面でも多少の攻撃はモノともせず、更には『ブルー・ティアーズ』のあらゆる角度から放たれるレーザー攻撃を、全身から生やしている近接攻撃用のブレードで反射させると言う芸当までやってのけている。
「光学兵器が防がれる以上、物理攻撃以外に手は無いが……」
「今はこの場の誰も、アレを突破するレベルの強力な物理攻撃が出来る装備はありませんわ。それと人間と戦っている様な気がしません」
「そうサ。アレは人の形をした獣サ」
『篠ノ之さん! オルコットさん! アリーシャさん! 聞こえますか!?』
鋼の魔獣と化した『ファング・クエイク』を相手に有効打を撃つことが出来ない状況に三人が歯噛みする中、山田先生からの通信が三人に入った。
三人の応援に来たと思われるが、ガイアメモリに対応していないISを使っている以上、生半可な装備では目の前の魔獣を相手に戦う事は難しいと言わざるを得ない。
その事を箒は伝えたが、それに対して山田先生は自信満々にこう返答した。
『大丈夫です! アリーナの中央にターゲットを何とか誘導して動きを封じて下さい! そうすれば力になれます!』
「中央に……? やってみますが、そんなに長い時間は拘束出来ませんよ?」
『構いません! 数秒でも拘束できれば、何とかなります!』
「フム……まあ、このままでもジリ貧サ。此処は一つやってみようじゃないカ」
「……そうですわね。やってみましょう!」
「ああ、それならセシリア。コレを使え」
箒がセシリアに渡したのは、『黒柘榴』の頃から愛用していた「無双セイバー」。渡された武器の情報を見て、箒の意図を察したセシリアは小さく頷くと、黒い「ソニックアロー」を構える箒と共に動き出す。
「さあ、鬼さんコチラッ!」
「GUGAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」
アリーシャが『テンペスト』の単一仕様能力で精製した風の分身と共に、囮となって魔獣をアリーナの中心に誘導する。そして、風の分身が切り裂かれ、『ファング・クエイク』がアリーナの中心に位置取った瞬間、箒の持つ『ソニックアロー』から放たれた矢と、セシリアの持つ『無双セイバー』の銃口から発射されたエネルギー弾が命中。
その瞬間、黄色いエネルギーネットが魔獣の体を拘束し、赤い球体状のエネルギーが魔獣の周りを包み込む。もっとも、強化された『ファング・クエイク』が相手では大した足止めにはならない。しかし、この短い拘束時間こそが、山田先生“達”が欲したものだった。
「今です!!」
『了解です!』
『了解だよ!』
そして『ファング・クエイク』が拘束を解こうと足掻く中、アリーナに続く四つの地上ゲートの内二つから、轟音と共に無数の砲弾が『ファング・クエイク』に殺到する。
その正体は、束の手によって魔改造が施された「クアッドガトリングパッケージ」が搭載された『ラファール・リヴァイブ』を纏う、山田先生とシャルロット・デュノアの二人による十字砲火だった。
「GYUUOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!」
重量と反動制御故に機動力を完全に失った事と引き替えに、最強の物理攻撃を獲得した2機によるクロス・ファイアは、『ファング・クエイク』に与えられた恐るべき牙を、見る見る内に破壊していった。
そして、自力で拘束を引き千切り、必殺の弾幕から抜け出した時、流石の魔獣も甚大なダメージと消耗を隠すことは出来ず、もはや「手負いの獣」と言う言葉では生易しい程にボロボロで、エネルギーも底を尽きかけているのは明白だった。
「GUAAA……GYAAAAA……」
「今だな!」
『ENGINE!』
箒はエンジンブレードを手元に召喚すると、即座にエンジンメモリを装填し、満身創痍の魔獣の元へ一気に接近する。
『ENGINE・MAXIMUM-DRIVE!』
「おおおおおおおおおおっ!! せいやあああああああああああああああああっ!!」
反撃の隙を与えることなく、箒が『ファング・クエイク』をA字型に三度斬り付けると、その体に紅く輝くAの軌跡が残される。
「絶望が……お前のゴールだ!」
箒が決め台詞を言った直後、『ファング・クエイク』は爆発。飛び出したファングメモリの恐竜の形をした外装パーツは砕け、ゴクローが持っているモノと同じ形になったファングメモリが地面に落ちた。
「……モップちゃん。別にコーリングは悪気があってこんな事やってる訳じゃないんだから、その台詞はどうかと思うのサ」
「し、仕方ないでしょう! それが決め台詞だとゴクローに言われたのです!」
「と、兎に角、メモリも回収できましたし、取り敢えずこの場は解決ですわ」
「それじゃあ、引き続きそこら辺で暴れてる雑魚は任せて、モップちゃんはボスの所に行くと良いのサ。ロールパンちゃんは、ちょっとアタシに付き合うのサ」
「ロール!? それって私のことですか!?」
「デュノアさんも、パッケージを外したらセシリアさん達と一緒に行って下さい。気絶したイーリスさんの方は私が何とかしますから」
「わ、分かりました」
こうして、魔獣『ファング・クエイク』は撃破され、箒は一人先んじる形でゴクローの元へと向かった。
○○○
前回のIS学園襲撃の際と同様、京水は『コマンダー』のメモリを使い、IS学園の至る場所にマスカレイド・ドーパントとコマンダーの仮面兵士が混ざったような姿の分身体をばらまき、施設の破壊を行わせていた。
「く~ねく~ね~。ぬ~るぬ~る~。あたッ!?」
そして、IS学園中を飛び回る京水を襲う二つの光輪。その正体は『黒柘榴』を纏った鈴音による、『キウイ撃輪』を模した二枚の円盤カッターだった。
「あら、お久しぶり~~~。あれから体の調子はどう? おっぱい大っきくなった?」
「……体の調子はすこぶる良いわ。それと胸なんて飾りよ」
地味に鈴音の逆鱗に触れる様な事を言う京水だが、当の鈴音はイラッとしつつも冷静に言葉を返した。これには京水も少し意外に思ったが、気を取り直して鈴音と向かい合った。
「それで何? アタシに何の御用?」
「用? そうね、用はあるわ。罪の清算って言う大切な用事がね……」
そう。鈴音は過去に決着をつける為に、京水の元へ単身で向かったのだ。かつてバイオレンスメモリを手にした時とは違う、覚悟と決意を秘めた瞳で京水を見つめる鈴音は、過去を振り返りながら静かに語り出した。
「一つ。あたしは力さえあればどんな事でも許されて、全部自分の思い通りになると思ってた」
そう言いながら鈴音は、かつて中国の代表候補生に選ばれた頃を思い出していた。そして、そう語る鈴音の腰にロストドライバーが装着される。
「二つ。その為に力を求めて、あたしはその力に心を奪われた」
そう言葉を紡ぎながら、専用機としてIS『甲龍』を国から渡され、その力を存分に振るっていた時を思い浮かべる鈴音。その右手には、一本のガイアメモリが握られている。
「三つ。その所為で取り返しのつかない事をした……」
そして、敗北と挫折を受け入れられず、バイオレンスメモリを手にしてからの自分の行動を、そして自分の欲望の為に傷つけた人達の事を思いながら、鈴音はガイアメモリの起動スイッチを押した。
『W!』
「変身」
『W!』
それは、束が作成したライダーメモリの試作品。『ミレニアム』が対オーズを目的として作成したライダーメモリのデータを基に作成された、「仮面ライダーW」の記憶を秘めたガイアメモリは、ロストドライバーと合体する事で旋風を巻き起こし、風の中で鈴音が纏っていた『黒柘榴』の姿を瞬く間に変えていく。
その姿は『青騎士』等と同じく顔の上半分にバイザーが加わり、首からは一本のマフラーが風を受けてたなびいている。そして機体のカラーは、緑から緑と黒による2色のツートーンカラーに変化していた。
「私は罪を数えた……さあ、京水。アンタの罪を数えなさい」
「おだまりぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいッッ!!!」
無数に放たれるミサイルに対して、鈴音は即座にトリガーマグナムを手元に召喚すると、トリガーマグナムにWメモリを装填し、必殺のマキシマムモードに移行させる。
『W・MAXIMUM-DRIVE!』
「トリガー・フルバーストッ!!」
無数のミサイルと無数の光弾が激突し、二人の間を凄まじい爆発が連続する。そして、この必中の遠距離戦を制したのは、ミサイルを相殺しつつ京水に3発の光弾を撃ち込んだ鈴音だった。
「いやぁああああああああああああああああああんッ!!」
「止めよ!」
『W・MAXIMUM-DRIVE!』
攻撃を受けてよろめいた隙を突き、今度はWメモリを腰のマキシマムスロットに装填し、マキシマムスイッチをタップする。
「ジョーカーエクストリームッ!!」
全身に旋風を纏い、宙を舞った鈴音は両足を京水に向けて思いっきり突き出した。ダブルドライバーではなくロストドライバーを使用し、一本のガイアメモリで変身している所為か、肉体が正中線を境に半分になる事は無かったが、その両足の威力は京水の機械の体を粉砕し、コアである京水メモリに炸裂した。
「アーーーーーーーーッ!! ライトちゃんッッ!!」
壮絶(?)な悲鳴を上げて、京水は爆発。その瞬間、コマンダーメモリとガイアメモリ強化アダプターが飛び出し、京水が爆発して生まれた炎の中心に、粉々に砕け散った京水メモリが転がっている。
すると、鈴音が使ったWメモリの方にも異常が現われた。Wメモリから緑と紫の電流が走り、変身が強制解除されたのだ。
「……所詮は試作品のライダーメモリだから……かしらね。でも助かったわ。ありがとう、『W』」
表面が焼け焦げ、そこから中身が見えているWメモリに対し、鈴音は感謝の意を伝えると、彼女もまたゴクローの元へと向かった。
しかし、彼女達は知らない。自分達のボスが今、どんな事になっているのかを。
○○○
「おっと、ちんちくりんも上手い具合にやってくれたみたいだね。これで残ってるのはアンタ……と、もう一人だね?」
「ええ、もう一人いるわ。私の息子が今、ゴクローと戦っている筈よ」
「……確かにそうみたいだね。でも、今のゴッくんは甘くはないよ」
「ええ、勿論知っているわ。ゴクローが一筋縄でいかないこと位はね……」
味方の戦力が次々と倒され、確実に追い込まれているにも関わらず、シュラウドは動揺する素振りを見せない。その様子から、シュラウドが何か切り札を隠し持っている事を確信した束だったが、現時点ではその正体までは分からない。
「貴方も知っての通り、私は『基本世界の情報』を、つまりは『ゴクロー・シュレディンガーが存在しない世界の情報』を持っている。
そしてそれは、これから起こる出来事を前もって知っていると言う事でもある。だからこそ、織斑一夏に“『第三形態』に至った白式”に該当するモノを与えようと思っていた」
「でも、それはゴッくんに倒された」
「そうね。でも、私はある事に気付いたのよ。他にも“『第三形態』に至った白式”に該当するモノがあるって事を」
「? ……! まさか、お前……」
「気がついたようね。“レッドフレア”、“レッドフレアエクストリーム”、そして“ブルーフレア”。三段階の進化を遂げ、『白騎士』と『暮桜』のデータを元に創りだした『エターナル』もまた、“『第三形態』に至った白式”に代わり得る。そして、その『エターナル』は今、織斑一夏に装着されている」
「……もしかして、最初からそのつもりで、いっくんに『紫のコアメダル』を……」
「ええ、ゴクローなら必ずそうすると思ったわ。死にかけている織斑一夏の命を助ける為に。そしてこれも“決まっていた事”よ。本来よりも早い時間で、その配役と脚本家が異なるだけで」
「……幾ら未来を見通せても、その通りに進むとは限らないでしょ?」
「そうね。でも、今の所私の計画は順調に推移している。そしてコレは本来、貴方が織斑一夏に対して行う筈の事だった。私は貴方がやる筈だった事を、私なりの方法で実行しているに過ぎない」
「……黙れよ、お前」
「いいえ。言わせて貰うわ。そもそも貴方は『織斑一夏がISを使える理由』に心当たりがあったのでしょう? だから貴方はその仮説を実証する為に、織斑一夏に“織斑千冬にしか使えない筈の『白騎士』のISコア”を搭載した『白式』を与えた。そして織斑一夏は『零落白夜』を使用し、貴方の仮説が事実だと言う事を証明した」
「………」
「諦めなさい、篠ノ之束。『他人の掌の上で弄ばれ、その欲望を満たすための玩具になる』……それが織斑一夏の運命よ」
「……そうだね。そうだったね。でも、だからって私は、それで諦めるような聞き分けの良い女じゃないんだよ」
「知ってるわ。だからこそ、私は貴方に絶望して欲しいのよ。そして、その為だけに私は此処にこうして立っている。今に分かるわ。心から愛する者を失う苦しみを……。痛みを……。この私の憎しみを……ッッ!!」
再び「理想郷の杖」を構え、憎悪を燃やしながら束と相対するシュラウド。束の顔には焦りからか、一筋の汗が流れた。
キャラクタァ~紹介&解説
織斑マドカ&更識簪&更識楯無
対『銀の福音』組。作中で語られている通り、此方の方は「ベースとなっているISと、使用しているガイアメモリの能力が適合していない」と言う、今までに無いパターンを相手にして貰った。仮にルナやトリガーのメモリを挿入していたら相乗効果により苦戦は必至だったと思うが、苦手な近距離戦闘を補う事が出来ているので、まるっきり無駄と言う訳でもない。
篠ノ之箒&セシリア・オルコット&アリーシャ・ジョゼスターフ
対『ファング・クエイク』組。此方は今までと同じく「ベースとなっているISと、使用しているガイアメモリの能力が上手く適合している」と言うパターン。当初は『赤騎士』を纏った箒にトライアルメモリを使わせる予定だったが、結局は下記のシャルロットと山田先生を加える事に。
ちなみに箒は『黒柘榴』時代から使っている武器を『赤騎士』でも継続して使っており、それが原作における『紅椿』の各種武装の代わりになっている。
シャルロット・デュノア&山田真耶
初めは参戦させる予定は無かったが、両方とも「ラファール・リヴァイブ」を専用機として使っている事と、原作8巻の「クァッド・ファランクス」を使わせて、色々と辻褄を合わせたいと言う作者の欲望により参戦。
束の手によって魔改造された対IS用ガトリング砲4門✕2によるクロス・ファイアとか、普通のIS相手にはまず使えないと言うか「相手は死ぬ」的な戦法だろうけど、相手がファングメモリで超強化された専用機なので問題ない。多分。
篠ノ之束&凰鈴音
タイマン組。「因縁のある相手を当てる」と言うスタンスで、それぞれシュラウドと京水を相手に戦って貰った次第。鈴音に関しては作者の欲望から下記の『Wメモリ』を使わせる事は決まっていたが、束に関してはどんなメモリを使わせるか……と言うか、相性の良さそうなメモリは何だろうかと結構悩んだ。
最終的に、原作10巻で束が重力制御を可能とする魔法少女的なステッキ『玉座の謁見』を使っていた事もあって、ユートピアVSユートピアと言う形に落ち着いた。まあ、性格的にも束とユートピアメモリは相性が良さそうではあるのだが。
ナスカメモリ・レベル2
レベル2の能力はマキシマムで使える為、此方は原作「W」で言うところのレベル3に該当する状態。単純に戦闘能力が増大するが、操縦者に与える負担も大きい。見た目がもう『青騎士』ではないのだが、パワーアップすると色が変わるのはは『紅騎士』も同じなので気にしないでもらいたい。
Wメモリ
半分こ怪人の記憶を宿したガイアメモリ。束が『ミレニアム』が用意した対オーズ用ライダーメモリのデータを基にして造った試作品。他のガイアメモリよりも出力が高い関係もあり、作中ではマキシマムドライブの連続使用によって、T1のエターナルメモリよろしく、あっさり使えなくなってしまった。
元ネタは実際に市販されているライダーメモリから。え? なんで鈴音に渡したのかって? そりゃあ、『戦国MOVIE大合戦』で龍玄が「Wロックシード」を使っていたらからさ。