この作品を書くにあたって、執筆スピードが遅くなって中々完結に向かうことが出来なかった事は、結構精神的に負担が掛かっていたのですが、その分後続の仮面ライダーのネタを使う事が出来ると言うメリットもありました。何が幸いするか分からないモノですねぇ……。
時間は、マドカ達が、箒達が、そして鈴音がそれぞれの敵を打倒した時より少し遡る。
「さて……これでもう、君に戦闘手段は残されていない。それとも織斑一夏からロストドライバーを回収するかい? 死人から武器を剥ぎ取るように」
「………」
確かにメインウェポンの『DXオーズドライバーSDX』が破壊され、サブウェポンのロストドライバーは今、一夏の腰に巻かれている。そしてコイツの言う通りにすれば、一夏は間違いなく助からないだろう。
だが、俺もこうした事態を想定していなかった訳ではない。こんな事もあろうかと、事前に用意していたモノを取り出した時、ライトの視線が少し揺らいだ。
「それは……」
「これか? これは束に頼んで複製して貰った、予備のロストドライバーだ! アンク!」
「おう!」
そう。束がガイアメモリの複製や、ガイアメモリに対応したISを造れるなら、ロストドライバーの複製だって簡単に出来る。そんな経緯で誕生した『NEVER』製のロストドライバーを腰に巻くと、アンクから二本のメモリを投げ渡され、その内の一本のメモリのスイッチを押した。
『SKULL!』
「変身!」
『SKULL!』
エターナルメモリ以外で俺と比較的相性が良い、「骸骨の記憶」を宿したスカルメモリをメモリスロットに挿入し、メモリスロットを斜めに傾けると、一陣の旋風と共に骸骨を模した装甲が俺の体に装着される。
そして、クリスタル状の頭部にS字の模様が火花と共に刻まれ、その色がメタリックシルバーに変化する。
「『スカル』か……それでこの僕と対等に渡り合えると?」
「いや、思っていない」
『DAMMY・MAXIMUM-DRIVE!』
『タカ! トラ! バッタ! タ・ト・バ! タトバ! タットッバ!』
そう、コイツの言う通り、スカルメモリで幾ら骨格と中心に身体能力が強化されたとしても、コイツを相手に対等に戦えるとは思っていない、そこでもう一本のガイアメモリ……俺にとって過剰適合であるダミーメモリの力を使い、その姿を『スカル』から『オーズ』へと変えた。
「……ああ、成る程。確かにそれなら『オーズ』と同等の力を発揮できるし、コアメダルを砕かれる心配も無い。だが、幾ら過剰適合のガイアメモリだとは言え、ガイアメモリ2本の出力とコアメダル6枚の出力の差は、決して軽いモノではないッ!!」
その言葉を合図に両刃剣を振るうライト。その斬撃をトラクローで受け止め、カウンターを仕掛けるが、それは盾で防がれた。
「フッ!!」
「オラッ!!」
素手では分が悪いと踏んで、今度はメダジャリバーとエンジンブレードの二刀流で対抗する。この二本はどちらも破壊されているが、ダミーメモリの力なら容易く複製が可能だ。
「ムンッ!!」
「セイッ!!」
ライトの剣と盾を使った攻防一体の戦法に対し、二刀流による攻撃に重点を置いた戦法でライトを攻め立てる。そして、ガードが下がった一瞬を逃さず、ライトの胸に一撃を入れる。
「むっ! 強い……ッ!」
「……当然だ。俺がこれまで、どれだけの数の修羅場をくぐり抜けてきたと思っている?」
「成る程。戦闘経験の差か……ぐッ!」
俺にあってライトにないモノを知って尚、余裕と冷静さを感じられる態度を取っていたライトだったが、突然胸を押さえて苦しみだした。
「うがぁ……ッ!! ああ……ッ!! んん……ッ!!」
「……やはり体に何かしらの不調を抱えているのが弱点か。その点で言えば……俺はタフだぜッ!!」
やはりと言うかなんと言うか、コイツがセルメダルで構成された体で復活したホムンクルスである以上、コイツの体にはノブナガと同様のデメリットが存在するとは思っていた。
その上、コイツが今使っているのは、最も出力が高い恐竜系コアメダル6枚からなるコンボ形態。単純に計算してその負担はプトティラの倍であり、幾ら装着者が人造人間とは言え、タダで済むはずが無い。
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラッ!!」
「ぐああああッ!! 相手が弱っている所を攻めるなんて、君は恥ずかしくないのか!?」
「戦闘にベストコンディションなんて望むべくもねぇ! ちゅーか、こうでもしなきゃ勝てねぇだろうが!!」
実際の所、コイツの言う通り、俺とライトの使うライダーシステムのスペック差は決して無視する事が出来ない。弱っている内に叩かなければまず勝つことは不可能だろう。
『シャチ! ゴリラ! タコ!』
「行くぞッ!!」
『スキャニング・チャージ!』
「セイヤァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
「ぬぅううううううううううううううううううううううッ!!」
基本形態のタトバコンボからシャゴリタにチェンジし、即座に必殺技を発動。水を纏いながら発射されたゴリバゴーンは持っている武器ごとライトを吹き飛ばし、地面を転げ回る。
「どうだッ!」
「……成る程、確かに強い。スペックの差をものともしない技量と、豊富な戦闘経験。どちらも僕が持ち得ないモノだ。だが、それでもこの勝負は……」
『PRISM・MAXIMUM-DRIVE!』
「僕の勝ちだ」
そのガイダンスボイスが背後から聞こえた瞬間、強い衝撃が背中から胸を突き抜け、俺の胸から一本の剣が生えていた。
「……え?」
最初は何が起こったのか分からなかった。だが、その剣には見覚えがあった。
プリズムソード。俺がレッドフレアのまま、エターナルのエクストリームに至った時に手に入れた武器の一つ。つまり……。
「一、夏……?」
「やった……! やったぞ! これでこの世界は……!」
『ETER! ETER! E、ETER! ETERNAL……』
俺の後ろに立っていたのは、青い炎を刻んだ腕を血で赤く染め、赤い涙のラインが入ったエターナルだった。
そして、その事実を認識した直後、ロストドライバーに装填されたエターナルメモリから青い稲妻が走り、壊れたラジオの様にガイダンスボイスが流れ、それが鳴り終わった瞬間、エターナルの変身が強制解除された。
「!? な、何だ!? 何で……?」
「やはりそうか。『エターナルメモリ』は長い間ゴクロー・シュレディンガーに使われてきたガイアメモリ。そしてその進化は、使い手がゴクロー・シュレディンガーであるが故に起こったイレギュラーだ。
今回はゴクロー・シュレディンガーの意志と、織斑一夏の持つ素質故にエターナルに変身できたが、織斑一夏が織斑千冬やゴクロー・シュレディンガーが超えなかった最後の一線……つまりは『殺人』に踏み切った事で、エターナルメモリは織斑一夏に使われる事を拒否したんだ」
「ハァ……ハァ……、クッソ……が……ッ!」
『コブラ! カメ! ワニ! ブラカ~ワニッ!』
取り敢えず、胸に突き刺さったプリズムソードを引っこ抜き、ブラカワニコンボに姿を変える。プリズムソードで刺されはしたが、まだダミーメモリの力は生きている。
しかし、今の「一撃・イン・ザ・シャドウ!」は流石に不味い。俺の胸から流れ、口から溢れる赤い液体が作る水溜まりの中、俺は堪らずに両膝をついていた。
「……へぇ。本当に反則的なメモリだ。過剰適合と言う事を踏まえても、即座に別のライダーに変身でき、しかもその性能はオリジナルとそう変わらない。でも、プリズムソードならその能力ごと中身を斬る事が出来る。今の君を倒すにはうってつけと言う訳さ」
「ゲフッ……。分かり。切った……事、を……」
「ああ、済まない。いくら回復するとは言え、心臓を刺されたんだから質問に答える余力なんて残って無いか。
しかし、本当に良くやってくれたよ、織斑一夏。君のお陰で『紫のコアメダル』は成長し、こうしてゴクロー・シュレディンガーに致命傷を与えられた。これは『世界の中心』であると同時に、『世界の破壊者』でもある君にしか出来ない事だろう」
「『世界の破壊者』……? な、何言ってんだよ。『世界の破壊者』はゴクローなんじゃないのか!?」
「うん? 君は自分の事を客観的に見る事が出来ないのかな? 考えてもみたまえ。『ミレニアム』が造ったライダーシステムも、篠ノ之束が生み出したISも、そして母さんが与えたベルトも、そのどれもが世界の覇権を手にする事さえ可能な、極めて強大な力だ。そして使い方を誤れば、使い手が容易く滅びへと至る『諸刃の剣』でもある。まさかそんな大それた力を、君は“只の便利な道具”だとでも思っていたのかい?
つまり“女にしか使えない筈のISを使える”時点で、君はこの世界における法則を逸脱した、違反者であり侵略者だ。人々にとっては恐怖の対象でしかなく、いずれは『世界の運命を覆す者』として、君はこの世界の外側に立つしかなくなる。つまり、君の本質はゴクロー・シュレディンガーと同じく、『世界の破壊者』と言う訳さ」
「そ、そんな……だって、俺は、誰かを傷つけようとした訳じゃない!! 皆を守って幸せにする為に……!!」
「ハハハハハハハ!! 最も大切な姉をその手にかけておいて何を言う。それに幸せにするだって? 笑わせてくれるね。君は唯、お気に入りのお人形を取り戻したかっただけだろう? 少なくとも、君の抱える感情はLIKEであってLOVEではない。
大体、君は、その姉から傷つけ合わないでトラブルを解決する方法を教えられた筈なのに、君はいざトラブルに出くわすとどんな手段を選んでいた? 何時だって、争い傷つける事を咎める者達の言葉を無視し、自分の欲望の赴くままに自分の持つ力を振るい、自分の意志を貫いてきただろう?
ああ、誤解の無いように言うが、君のやった事を否定するつもりはない。確かに君のやった事は“正しい事”だ。でも、その“正しさ”こそが正に曲者だ。正しいが故に、“守る為に戦う”と言う矛盾から目を背ける事になってしまう。
でもまあ、君みたいに『全てを守ろうとして力を求める人間』って言うのは此方としては実にやりやすかった。それに君は、普通に考えれば分かるような違和感や矛盾も、全て自分にとって都合良く解釈してくれたからね」
「ち、違う! 俺は皆を元に戻そうとしたんだ! だってそうだろ! 皆があんな風になったのは、全部ゴクローの所為じゃないか!! だから俺は、元の『正しい世界』に戻そうと!!」
「確かにその通りだ。でもそうなるとおかしい所がある。それなら何で君は篠ノ之箒、セシリア・オルコット、鳳鈴音、シャルロット・デュノア、更識簪の5人には積極的に正そうとしていたのに、どうして篠ノ之束やクロエ・クロニクル。そして織斑マドカに関しては正そうとしていなかったんだい?」
「え……?」
「だってそうだろう? 君の言う通りなら、彼女たちはIS学園に居るべき人間じゃないし、鳳鈴音の両親だって離婚していなければ、“正しくない”じゃないか。それなのに君はその事には全く触れていない。これはどう考えても奇妙な話だ」
「そ、それは、家族が一緒に居るのは当たり前だから……」
「でもそれは君が行動したからじゃない。勿論、彼女たちが勝手にそうなった訳でもない。ゴクロー・シュレディンガーが行動した結果そうなった。もっとも、基本世界を知る君はそれが分かっていたからこそ、その事には一切触れていなかったんじゃないかな?」
「そ、それは………」
「突き詰めれば、君はゴクロー・シュレディンガーに対して嫉妬していたんだろう? 基本世界の自分や、この世界の自分に出来なかった、知人の家族関係の修復したこの男に。そして、自分に向けられる筈の、いやそれ以上の愛を享受しているこの男に。
そして、君はその激しくも醜い嫉妬心を隠し、かつ正当化する為に、ゴクロー・シュレディンガーが『世界の破壊者』である事を利用し、“『特異点:オリシュ』の排除”と言う大義名分を掲げていた。違うかな?」
「ぐっ……で、でも、俺は俺の手で必ず皆を守る事が出来るんだ! 俺だけが皆を幸せに出来る存在なんだ! その事は絶対に変わらない事実だろ! それなのに皆が俺を選ばないなんて、絶対に何かあるに決まって――」
「それは少なくとも半分は君の自業自得じゃないか」
「……え?」
「基本世界にしろこの世界にしろ、彼女達は共通して心に隙間を抱えていた。そして『ちゃんと“自分”を見てくれる存在が欲しい』と思っていた。しかし、君は彼女達のアプローチや行動の全てを、自分にとって都合よく解釈して、中途半端に対応していた。それが彼女達の望むモノではないとも知らずに。
それでも基本世界の彼女達が君の傍に居たのは、『君以外の選択肢を見ていなかった』事が大きい。追い詰められた人間と言うモノは、総じて視野が狭まるモノだからね。それに加えて君は爽やかなイケメンだ。それこそ彼女達は『王子様に助けられるお姫様』の気分に浸っていて、だからこそ彼女達は良い夢を出来るだけ長く見たいが為に、君のそーゆー都合の悪い部分には目を瞑っていた。
現に、基本世界の篠ノ之箒は周囲から『篠ノ之束の妹』として扱われる事を心底嫌がっていたのに、君が彼女に『篠ノ之束の妹だからISに詳しいだろう』と言っても、彼女は怒るどころか喜んでいただろう?」
「そ、それは……」
「まあ、中途半端ではあったが、君は彼女達を誰一人特別視する事なく、平等に接していた。基本世界の彼女達にとって、それはそれで幸せだろうさ。だけどその本質は、どこぞのオッパイ大好きなハーレム王と違って、『全員を愛している』んじゃ無くて、『誰も愛していない』からこその平等だ。もっとも、それに気付いたとしても彼女達はその事を絶対に指摘しないだろう。都合が悪いからね。
しかし、この世界ではそんな彼女達の前に二つ目の選択肢が現れた。そしてその選択肢は、彼女達自身も気づいていなかった『本当に欲しいモノ』を……つまりは『家族からの愛を求めていた』事を自覚させ、彼女たちの心情を本当の意味で理解していた。だから彼女達は君ではなく其方の方に惹かれた。それは至極当然の話だろう?」
お互いに、何もかもが一夏の望む通りに事が進む『基本世界の一夏』の人生を知るが故に、ライトの言葉は一夏の心を容赦なく抉っていた。
もっとも、そのご都合主義の大半が篠ノ之束の仕業であると言う事を一夏は知らない。あくまで基本世界の自分の人生を疑似体験……つまりは主観で見ていたからだ。これに対してライトは基本世界を客観的に見ていた為、二人の間では物事に対する認識がまるで異なっている。
「そして、基本世界の彼女達が君に守られて満足していたのは、本当に欲しいモノの代わりに君を求めていたからだ。失ってしまった、或いは初めから持っていなかった『家族愛』の代わりに、『君を愛する事』で心の隙間を埋めようとしていたんだよ。恐らくこの条件に合致しない人間は、五反田蘭くらいなんじゃないかな? 彼女は極々普通の一般家庭で、極々普通に育った人間だからね。
だが、この世界ではその『家族愛』が、ゴクロー・シュレディンガーの手によって与えられている。だからこそ、君に対する執着心や依存心が基本世界のソレよりずっと薄いのさ。もっとも、好感度が低いどころか、心の奥底から憎んでいる相手に地雷を踏み抜かれたり、過激なボディタッチをしても結果的に許されてしまう基本世界こそがオカシイ様な気もするけどね」
「で、でも……そうだとしても、ゴクローはもう終わりだ! これで皆も元通りに……」
「それは無い」
「え……?」
「彼女達の誰もが、君が望む『基本世界の自分』の様にはなりたくないからさ。だってそうだろう? 他人を顧みず、自らの欲望と力に溺れる。そして『そっちの方が正しいから、そんな人間に戻ってくれ』なんて言われたって、真っ平御免だろう。
何より『世界の破壊者』とは、生きていようが死んでいようが、その世界に何らかの影響や変化を与える事を宿命づけられた存在だ。それこそ、世界を平和にする様な大人物だったとしても、凡人以下の才能しかない無能だったとしても“ソレ”は変わらない。つまり、ゴクロー・シュレディンガーを排除しても、彼女達も世界も元には戻らない。
もっとも、この世界は“基本世界から独立した、お互いに干渉する事が出来ない平行世界”だから、『元に戻る』と言う発想自体ナンセンスだけどね」
「そ、そんな……ッ!」
「さて、悪いけどおしゃべりはここまでだ。そろそろ君にも退場して貰おう」
『スキャニング・チャージ!』
スキャナー無しで発動する、コアメダル6枚からなる必殺技のコール。無の欲望から生まれたエネルギーが全身から立ち昇り、尋常では無い破壊力を予感させる。
「今こそ審判の時……!」
絶体絶命の窮地の中、大量の血を流した所為で朦朧とする頭で策を考える俺に、天啓とも言えるアイディアが浮かんだ。そしてこの策がバレない様に、ライトがマキシマムスイッチを叩いた瞬間の絶妙なタイミングで、俺もマキシマムスイッチを押した。
『TIME・MAXIMUM-DRIVE!』MAXIMUM-DRIVE!』
「shi……審判の時は、厳粛でなければならない」
「………」
「………」
「何か考えがあったみたいだが……無駄な事だ。この時を操る『タイムメモリ』の前では全てが無力。そして、さよならだ、織斑一夏。これがこの世界を終焉に至らせる……新世界の神の一撃だ」
そして、停止した時の中で、ライトの手から紫色の6枚のメダル状のエネルギー弾が放たれた瞬間、俺は後ろを振り向き、思いっきり一夏を突き飛ばした。
「何ッ!?」
「グオオオオオオオオオオオッ!!」
「!! ゴクロー!!」
一夏に当たるはずだった終焉の一撃が俺に当たった瞬間、タイムメモリの効果が切れたらしく、隠れていたアンクが飛び出して俺の右手を掴んだが、四肢に走る激痛によって俺は意識を失い、そのまま黒一色の世界に飲み込まれた。
〇〇〇
ゴクローがライトの放った必殺技によって生まれた黒い渦に飲み込まれ、四肢が切断されて渦の中に飲み込まれた後、残されたのはゴクローに突き飛ばされ尻餅をついた一夏と、予想外の展開に落ち着きを失っているライト。そして、切断面から血が滴っている右腕を掴んだアンクの三人だった。
「……ゴク、ロー?」
「馬鹿なッ!! どうして、止まっていた時の中を動けたんだ!? 時間操作の能力を持つメモリは持っていなかった筈なのに!!」
「……ダミーのメモリだ」
「何?」
「ダミーメモリの能力は『複製』。その力を使ってお前のタイムメモリそのものを『複製』した。だから時間の停止した中でもコイツは動くことが出来た。お前ほど長くは動けなかったみたいだが……」
ゴクローが時間停止を攻略した方法を説明するアンク。しかし、その口調はとても寂しげで、切断されたゴクローの右手を強く握りしめていた。
「馬鹿な! そうだとしても、何故この男を助けた! 『誰かを守りたい』と言う欲望故に、平和を作らず戦いに明け暮れる! 他人を傷つけ、犠牲にする事でしか、自分自身さえも手にする事が出来ない! 強さを求め、戦いを求めたコイツを、どうして自分の命を犠牲にしてまで守ったんだ!」
「……守る価値があったから助けたんじゃねぇ。この馬夏が、『愛を失い、愛に彷徨う人間』だったから助けた。それだけだ……」
「……分からない。言葉の意味が全く分からない。そんな事で……そんな事で、僕は……僕は……ッッ!!!」
『APPLE・MAXIMUM-DRIVE!』
「フンッ!!」
「ぐわぁあああああああああああああああっ!!」
両刃剣から放たれたエネルギーによって、思わずゴクローの右腕を手放してしまったアンク。そして、ゴクローの右腕を手にしたライトは、部分的に右腕の装甲を解除すると、自分の右腕にゴクローの右腕を取り込み始めた。
「クソ……ッ、クソ……ッ!! セルメダルの体では不完全だから、ゴクロー・シュレディンガーの体を使って、『完全な存在』になろうと思っていたのに……う、腕一本しか残ってないじゃないかッ!!
ううううう……あんまりだ……!! こんな、こんな事になるなんて……ッ!! ああああんまりだぁあああああああああああああああああああああッ!!」
『落ち着きなさい、ライト。少なくとも目下の目的は達成されている筈でしょう? 体の方は私が何とかするわ。それにしても織斑一夏……やはり彼が「この世界の中心」である以上、その存在はこの世界に必要不可欠と言う事なのかしらね……』
「……母さんか。そうだね。確かに目的は果たした。後は……」
『NASCA・MAXIMUM-DRIVE!』
『ACCEL・MAXIMUM-DRIVE!』
シュラウドからの通信によって、落ち着きを取り戻したライトに、背中からエネルギー体の翼を生やし強襲するマドカと、炎を纏った箒が高速で迫る。しかし……。
「愚かな」
『TIME・MAXIMUM-DRIVE!』
「………」
「………」
「不意打ちか……コレは、お仕置きが必要だ」
停止した時の中を自由に動くことの出来るライトは、不意を突いた二人の攻撃を容易く避けると、手元にメダガブリューを召喚し、それぞれに強烈な一撃を叩き込んだ後、時間停止を解除した。
「うわああああっ!!」
「ふぐううううっ!!」
「ふん。所詮はこの程度……ッ!!」
時間の流れが正常に戻った瞬間、大きく吹き飛ばされるマドカと箒。それを眺めるライトに無数のミサイルと、二枚の円盤カッターが迫る。するとライトは即座にリンゴの形をした盾と両刃剣を召喚し、これらの攻撃を捌ききった。
「クッ……なるほど。君達は囮……ッ!?」
そして、それによって生じた隙を狙っていたかの様に背中が爆発。これには攻撃を仕掛けたマドカ、箒、簪、鈴音も想定していたモノでは無かった為に驚いたが、ライトを背後から攻撃した人物の顔を見た時、彼女達はもっと驚いた。
「ラウラ・ボーデヴィッヒ……!!」
「ずっと意識がなかったんじゃ……」
そう。ドイツの代表候補生、ラウラ・ボーデヴィッヒである。そしてその身に纏うのは、一夏によって破壊されたはずの専用機『シュヴァルツェア・レーゲン』であり、足元には大型レールガンから排出された薬莢が転がっている。
「……変な夢を見たんだ。夢の中でシュレディンガーと話をした後、私は何も見えない暗闇の中を、一人でずっと歩いていた。すると光が見えて、織斑教官に会ったんだ。それで『何処へ行くんだ、ラウラ』って、教官が私に聞いたんだ。私は『教官について行く』って言った……教官は何時だって頼りになったし、教官の決断には間違いが無いから安心できるからな……。
そうしたら教官は、『ラウラ……行き先を決めるのは、お前なんだぞ』と言ったんだ。私は少し考えてから、『IS学園に行く』って答えたら目が覚めたんだ……。とても、寂しい夢だった……」
「「「「………」」」」
「……まさか、ここに来て君が復活するとはね。でも、君のISは織斑一夏の手でコアを破壊されていた筈だ」
「私が意識を失っている間に、姉が予備のパーツを使って直してくれていたんだ。そしてこの『シュヴァルツェア・レーゲン』に新しく組み込まれたISコアは、『VTシステム』の実験に使われた亡き姉が使っていたISのISコアだ。私との適合率が低い訳がない」
「……なるほど。理解した」
「そして『NEVER』以外の連中には警戒心が薄くなると思っていた。ガイアメモリにはガイアメモリでしか対抗できないらしいからな」
「まあね。だから攻撃した内には入らない」
そう言いながら、体に着いた埃を払うような動作をするライト。不意打ちは成功したものの、確かに大してダメージを負っている様には見えない。
「ふむ。やはり、ガイアメモリかコアメダルの力を使わなければ、コイツを倒しきる事は出来ない……と言う事か?」
「それでも倒せる保証は無いがな……」
単純に考えて相手の出力は『DXオーズドライバーSDX』の2倍。そして、ゴクローやアンクの話では、『オーズ』の持つコアメダルは3枚で1個のISコアに相当するらしいので、目の前の敵はISで例えるなら「二つのISコアを持った機体」であり、更には『単一仕様能力』を複数同時、或いはそれらを合成させて使う事が出来る可能性さえある。
「君達が此処に居ると言う事は……人形は全て敗れたと言う事か」
「ああ、間も無く増援もやって来る。お前達はもう終わりだ」
「仇は取らせて貰う……ッ!!」
「覚悟しなさい!!」
「………」
「ふむ……憎しみと怒りに満ちた実に良い眼だ。さぞや僕が憎い事だろう。感動的だ。だが無意味だ」
傍目から見れば5対1の不利な状況だが、ライトの余裕が崩れる様子は無い。事実、ゴクローがIS大戦において、『オーズ』に変身して36機のISを撃破している事を考えると、それ以上の性能を持ったライダーシステムを使うこの男にとって、この程度の数の利など無いに等しいのかも知れない。
その事を知っている彼女達は警戒レベルを最大以上に引き上げてライトを睨んでいるが、当のライトからは戦意というモノが感じられない。それが余裕な態度と併せて、得体の知れない不気味な印象を抱かせた。
「正直、君達の事は大して問題視していない。しかし、『特異点:織斑一夏』の持つご都合主義としか言いようのない可能性の芽は、僕にとっても決して無視する事の出来ない懸念材料だ。だからその憂いを、此処で完全に断つ……ッ!」
「な、何を言って……」
「織斑一夏ぁッ!! 何故、君がISを動かす事ができるのかッ!! 何故、君に専用機として『白式』が与えられたのかぁッ!! 何故、君が織斑千冬と同じ『単一使用能力【ワンオフ・アビリティー】』を使えるのくわぁあッ!!
その答えは……ただ一つ……ッ! 織斑一夏ぁッ!! 君がこの世界で唯一、“『織斑千冬の細胞』の適合手術に成功した男”だからどぅわぁああああああッッ!! ウワハハハハハハハハハハハハハハハハハアアアアアアアッッ!!!」
「え……?」
「!! 上から来るぞ!!」
ライトの口から一夏にとって衝撃の事実が告げられた直後、IS学園の上空から極太の高威力レーザーが降り注ぎ、IS学園は無差別に焼き払われ、誰もが等しく紅蓮の炎に包まれた。
キャラクタァ~紹介&解説
5963
ダミーメモリの能力を使って時間停止を破ったが、『ジョジョ』第三部のアブドゥルの如く、暗黒空間に飲み込まれた。尚、この時に『オーズ』のドクター真木が「ロストブレイズ」を喰らって体がバラバラになった様に、四肢が切断された達磨状態になっていて……。
ライト
コウガネやらクロノスやら、色んな敵キャラ要素が混じった悪いフィリップ。実は初めから一夏の手によって5963に致命傷を負わせ、更にエターナルメモリを一夏には使えない状態にする事が目的だったので、5963との戦闘ではそれほど本気は出していない。
なお、彼が作中で一夏をボロクソに貶したのは、一夏を絶望させてファントムを生み出すため……ではなく、彼なりの親切心である。勿論、「冥土の土産」的な意味でだが。
ラウラ・ボーデヴィッヒ
長い夢から目覚めたドイツの眼帯娘。彼女が見た夢に関しては、意識不明の千冬にするか、廃棄処分と言う形で死体まで利用された亡き姉達にするかで悩んだが、最終的には「ラウラが安心できる相手」と言う事で、千冬に決定した。
元ネタは『ジョジョ』第四部の虹村億泰。この小説を初めの頃は、もっとジョジョネタをバンバン入れていた様な気がするのだが……ま、良いか。もうすぐ終わるし。
仮面ライダースカル
ちょっとだけ登場。元ネタとの違いは帽子をかぶっていない事と、『仮面ライダーSPIRITS』の滝ライダーの要素が入っている事。元々は滝ライダーの要素を含めた「スカルVSヘキサポセイドン」の戦いを展開する予定だったが、ダミーメモリあれば問題はない事に気づき、結局没になった。
一夏がISを使える理由
本作第9話の伏線回収……と言うか、この時点でネタバレしていた作者の独自解釈。そしてこの世界の束は、この時の仮説を実証する目的もあって、一夏に専用機として『白式』を与えていた。
原作では『白式』の「零落白夜」については、『白騎士』が『暮桜』と交信して独自の能力として開発していた……と語られているが、そうなると『白騎士』のISコアが“織斑一夏が使う事”を理由に開発していたとは考えづらく、むしろ『白騎士』の使い手であった“織斑千冬が再び『白騎士』を使う事”を考え、「零落白夜」を『単一仕様能力』として開発していた……と考えた方が、理由としては妥当だと作者は考えている。
元ネタはご存じ『エグゼイド』の「宝生永夢ゥ!」。もっとも、原作を基準に考えると、「全部、篠ノ之束って奴の仕業なんだ」で説明がつきそうな気もするのだが、その辺はあまり気にしないで貰いたい。