DXオーズドライバーSDX   作:トライアルドーパント

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三話連続投稿の三話目。これにて今回の分の投稿は終了です。

この後『怪人バッタ男 THE FIRST』でも一話投稿しますので、興味があったらそちらも御覧下さい。


第37話 MISSING ACE

対IS用高エネルギー収束砲術兵器『エクスカリバー』。

 

表向きにはイギリスとアメリカが極秘に開発していた、衛星軌道上に存在する攻撃衛星であるが、その正体は生体融合型のISであり、現在ではシュラウドの手によって持ち主であった『亡国機業』の元を離れ、更には大量のコアメダルとセルメダルを投入された事で、『メダルの器・暴走形態』を彷彿とさせる正八面体の巨大兵器と化している。

この強化されたエクスカリバーによる、「成層圏からの砲撃」と言う絶対的な制空権を誇る攻撃によって、IS学園は為す術も無く壊滅。各国の最新鋭機が揃い、一国を凌駕する戦力を保有する教育機関の陥落は瞬く間に世界を駆け巡り、大きな社会問題へと発展した。

 

更に、この事件が終わった直後、インターネット上の動画サイトへ投稿された、ある事実を告白した動画が、現在の女尊男卑の社会を根底から揺るがし、世の中を更なる混沌へと追いやる事となる。

 

それは「織斑一夏が何故ISを使えるのか?」と言う、全世界の人間が最も注目していたであろう謎の解明。

 

もっとも、コレはIS学園でライトが披露したキャラ崩壊も甚だしい、超ハイテンション暴露ではなく、シュラウドが「どうして織斑一夏がISを使える」のか、「どうして他人の『単一使用能力【ワンオフ・アビリティー】』が使えるのか」と言う疑問を、科学的かつ合理的に分かりやすく解説したものであり、コメディ要素皆無の決して笑えるようなモノでは無い。

もっとも、もしもゴクローがこの動画を見たのなら、即座にネット版『仮面ライダーW FOREVER AtoZで爆笑26連発』の「シュラウドの私が仮面ライダーアカデミーを開いたら…生徒、亜樹子」を思い出しただろう。

 

これによって「織斑一夏がISを使えるのは、過去に誘拐された際に移植された『織斑千冬の細胞』に適合した為である」と言う事と、織斑千冬が発現させた『単一使用能力』である「零落白夜」を使えるのは、「『織斑千冬の細胞』に適合した事で、『白式』が織斑一夏を織斑千冬と認識していた為である」と言う事が判明。

そして『白式』に使われたISコアは、元々は『白騎士』に使用されたISコアであり、それがコア・ネットワークを通じて『暮桜』と情報のやり取りをし、“再び織斑千冬に使って貰う為に「零落白夜」を自らの能力として開発した”とも、シュラウドは動画で発表した。

 

これによって一夏がISを使えるのは、一夏が持つ先天的な素質等が理由なのではなく、後付けされた後天的な要因によるモノであると周知され、更には『白騎士』の正体が織斑千冬であると言う事も世間に暴露される事となった。

 

これらの事実が明るみになった時、瓦礫の山となったIS学園に国際IS委員会の人間達が踏み込んだが、首領を失った『NEVER』のメンバーと、国家代表や代表候補生を含めた数人の生徒が、意識不明の織斑千冬と共に、一足早くIS学園から姿を消していた。

彼女達の去ったIS学園には、束からの置き土産として5個のISコアがメモと共に残され、それぞれがメモの通りに日本・イギリス・フランス・ドイツ・ロシアの5カ国に送られる事になった。

 

一方で『NEVER』を追求する事が出来なくなった国際IS委員会だが、その一部と各国の上層部の一部が結託し、秘密裏に国家代表操縦者を筆頭とした優れたIS操縦者の細胞を移植する計画を考案していた。

何せ、理論的にはIS操縦者の細胞を移植し、それに適合しさえすれば誰でもISが使える上に、他人には絶対に使えない筈の『単一仕様能力』まで使えるのだ。これを実践しない者はいないだろう。

 

かくして、ISの「女だけが使える超兵器」と言う前提が覆され、必然的に現役のIS操縦者が持つ社会的な優位性や価値観も一変し、世界の情勢が目に見えて変わっていく中で、IS学園壊滅から一週間が経過した頃、『ヘキサポセイドン』が再び世に姿を現した事で、世界は一つの時代の終末へと向かって行く事となる。

 

 

○○○

 

 

上空1000メートル。東ヨーロッパ境界線上を、一人の女性がISを纏い飛行していた。

 

彼女の名前はログナー・カリーニチェ。専用ISは『ロシアの深い霧』のプロトタイプであり、かつて更識楯無によってロシア代表操縦者の座を奪われた女でもある。

 

「……此方ログナー。目標、発見出来ません」

 

『了解。しかし油断はするな。相手は“悪魔”だからな』

 

「言われなくとも……ッ!?」

 

ログナーが通信を切ろうとした刹那、雲に紛れてログナーを上回る速度で接近する未確認機を捕捉し、瞬時に警戒態勢を取った。

そして、雲の切れ間から所々見える未確認機の姿は、かつて太古の地球を飛翔していた天空の覇者である、巨大な翼竜を思わせるフォルムをしていた。

 

「目標発見! これから戦闘行動に……」

 

『COMANDER・UPGRADE!』

 

幾度となく映像資料で見た、ガイアメモリの強化を告げるガイダンスボイス。それに伴ってギザギザの歯車の様な形のファンネルが出現したのを目にし、ログナーは自分の周囲に起爆性ナノマシンを散布する。

 

『COMANDER・MAXIMUM-DRIVE!』

 

そして、ログナーに向かって放たれる無数の誘導ミサイル。それらは全てログナーが散布した起爆性ナノマシンのカーテンによって爆発し、一発もログナーに着弾する事はなかった。

 

「よし! 取り敢えず此処から……」

 

『プットッティラ~ノ・ヒッサ~ツ!』

 

爆炎と黒煙によって視界が遮られ、それに紛れて距離をとろうとした最中、そんなログナーの動きがしっかりと見えているかの様に、黒煙の中からピンポイントで放たれた紫のエネルギー砲がログナーを直撃。

セルメダルのエネルギーを抽出・高密度化する事で出力を約3倍にまで引き上げ、発射された「ストレインドゥーム」の一撃はログナーを戦闘不能に追い込み、ISが破壊されて空中に放り出されたログナーを『ヘキサポセイドン』はしっかりとキャッチする。

 

「うぅ……くっ……」

 

「さて……残るは取るに足らない有象無象か。いずれにせよ現存するISは全て破壊する。僕の創る新世界にISは必要ない。僕一人だけが“力”を持っていれば良い……」

 

この日、ロシアのISに関連する施設はたった一人の男の手によって全て破壊され、ロシアが保有するISコアは全て失われた。

 

そして、制空権を失ったロシアに放たれる夥しい数のレーザー攻撃と、全てを灰燼に帰す灼熱の炎に包まれる首都モスクワ。

この光景もまた動画サイトに即座にアップされ、IS学園壊滅から続く最悪のテロ事件として、全世界に報道される事になる。

 

 

○○○

 

 

IS学園が壊滅してからおおよそ二週間が経った現在、一夏は政府が用意した新しい自宅にいた。現時点において「世界で唯一『織斑千冬の細胞』に適合した人間」である彼がこうしている最大の要因は、日本に現在ISコアが無い事が上げられる。

 

ロシアのISが全て破壊され、モスクワが焦土と化した翌日、『ヘキサポセイドン』は日本に現われた。

 

手始めに日本の代表操縦者を含めた、専用機を持つIS操縦者を一人残らず叩きのめし、それぞれが纏っていた専用機のISコアを破壊すると、今度は研究用のISコアが保管されている研究所を次々と襲撃。日本が保有する全てのISコアを一つも残さず破壊した。

そして、止めとばかりに放たれるのは、成層圏から発射される高出力高威力のレーザー砲。それによって東京は壊滅的な被害を受け、日本は恐怖と混乱に包まれた。

 

ロシアに引き続き、ISの研究開発において世界でも最先端の技術と知識を持つ国家の防衛戦力をたった一人で無力化し、絶対的な火力で首都を燃やし尽くす所行を余す事無く映した動画が人々に与えた影響は極めて大きく、「次はどの国がターゲットになるのか?」と世界を震撼させた。

 

それから『ヘキポセイドン』は、中国、イギリス、フランス、アメリカ、ドイツ、イタリア、イスラエル、タイ……と、ISコアを保有する国を手当たり次第に襲撃し、最後は必ずその国の首都をエクスカリバーで砲撃した。

そして今日、ギリシャに出現した『ヘキサポセイドン』の手によって、ギリシャの代表操縦者を筆頭とした実力者達が為す術無く次々と倒され、保有するISコアが全て破壊された後、首都アテネが炎に包まれる様子が動画サイトにアップされると、世界中のテレビ局によってその光景は全世界のお茶の間に流された。

 

そんなISによって成り立っていた世界が……あるいは、織斑千冬と篠ノ之束の二人によって創造された世界が崩壊していく様を、一夏はどこか他人事の様に眺めていた。

 

「何でだよ……」

 

一夏には政府から「安全を確保する」と言う名目で重要人物保護プログラムが適用されているのだが、コレは現在行方不明となっている『NEVER』とその仲間、もしくはシュラウドからの連絡や接触を期待するモノであり、かつての箒と同じように、その実態は一夏の身の安全を考慮したモノでは無い。

 

そもそも、一夏に専用機が与えられたのは、「一夏がISを使える理由を解明する為」であり、そのISを使える理由が解明された以上、一夏にISを渡す意味は無い。

また、現時点で日本にISが一機も無いので、日本が一夏を『織斑千冬の細胞に適合した人間』として研究や実験をする意味も皆無である。

 

そうでなくとも、東京が火の海と化した今の日本は、政府もマスコミも一夏に構っている余裕はない。もはや第三次世界大戦の幕が上がっていると言っても過言ではない状況の中、今の一夏にとって「ISを使って戦う事が出来ない」と言う事が、どうしようもない程に自分を蝕む苦痛となっていると言うのは、何とも皮肉な話である。

 

「何でだよ……」

 

一夏の呟きが自宅のリビングに木霊するが、それに返事をする者は居ない。そしてその呟きは、今見ていたテレビの映像に対するモノでもない。

今の一夏が思いを馳せているのは、天空からのレーザー攻撃によって破壊されたIS学園での救助活動が終わった後、自分に何も言わずにIS学園から去っていた、本来ならば自分の隣に居る筈だった者達の事だった。

 

篠ノ之束。

 

クロエ・クロニクル。

 

織斑マドカ。

 

篠ノ之箒。

 

鳳鈴音。

 

ラウラ・ボーデヴィッヒ。

 

セシリア・オルコット。

 

シャルロット・デュノア。

 

更識簪。

 

布仏本音。

 

更識楯無。

 

布仏虚。

 

そして――織斑千冬。

 

誰も何も言わずに、一夏の元から去って行ってしまった。ゴクローに致命傷を与え、そのゴクローが庇った相手である一夏を、彼女達は誰一人として責めなかった。……いや、正確には誰も一夏に何も言わず、見向きもしなかったと言う方が正しい。

そんな一夏に話しかけたのは、一夏の腰に巻かれているロストドライバーとエターナルメモリを回収する為に近づいたアンクだけだった。

 

『ゴクローはお前を助けた。正直、俺はお前の事は殺したいと思っているが、それはゴクローの意志に反する事になる。だからお前は生き続けろ。生きて生きて、生にしがみつけ。そして、これから始まるだろう旧世界の終焉をその目に焼き付けろ。それが、生き残ったお前がやるべき義務だ』

 

「何でだよ……」

 

そして、一夏の精神に負担を与える要因が、もう一つあった。

 

それは、親身になってくれたダリル・ケイシーが実は秘密結社『亡国機業』のスパイであり一夏を狙っていたと言う事。そして、フォルテ・サファイアがギリシャを裏切り、専用機を持って彼女と共に『亡国機業』に与したと言う事を、一夏は日本政府から知らされた。

この両名と一夏はIS学園で面識があり、更にシュラウドのメモリーメモリの力で『基本世界』を疑似体験した際、一夏は彼女達と仲良く京都駅で記念撮影をしていた事もあり、彼女達がテロリストであった、そしてテロリストになったと言う事実は、一夏に「裏切られた」と言う気持ちを強く抱かせた。

もっとも、これはシュラウドが「京都駅で記念撮影をした所までしか体験させていない」事が原因なので、シュラウドが事の顛末を最後まで見せていたならば、二人に対する一夏の感想も変わっていただろう。

 

「何でだよ……」

 

何度目になるか分からない「何で」を呟いた後、シュラウドから渡された“『基本世界』の京都駅で撮影した集合写真”を手にしながら、一夏は「何で」の答えを探し始めた。

 

――何でこんな風になったのか?

 

――何で皆、あんな風に変わってしまったのか?

 

――何で俺は、こんなに遠ざかってしまったのか?

 

「何でだよ……」

 

『お前は遠ざかったのでは無い。お前はずっと同じ場所にしがみ付こうとして、立ち止まっていただけだ』

 

そんな一夏の問いに答えたのは、一夏が千冬を倒してから現われる様になった、もう一人の千冬だった。

 

『皆は変わったのでは無い。そんなお前を置き去りにして、先へと進んでいっただけだ。ある者は自分の罪と向き合い、ある者は自分に課せられた使命を自覚し、それぞれが困難に立ち向かう道を選んだ……』

 

「……そうやってアンタは、何時まで俺を馬鹿にしていれば気が済むんだ?」

 

『お前こそ、何時までそうやって私の影に縋り付くつもりなんだ?』

 

「え……?」

 

『何も成し遂げられなかった屈辱。思い描いた未来が訪れなかった絶望。何も出来ない無力感。だが、そんな痛みは取るに足らない。今に世界の命運を背負う羽目になるアイツ等に比べれば、役目を降ろされたお前は、どれだけ恵まれている事か……』

 

そう一夏に告げる千冬の姿は、徐々に薄くなって見えなくなっていた。まるで、本当は最初から其処に存在して居なかった様に……。

 

『“お前は何者にもなれなかった”……。もう一度その意味を、よく考えてみろ……』

 

「待てよ! 待てったら! ……千冬姉ッッ!!」

 

リビングに響き渡る一夏の絶叫。しかし、一夏の前に千冬が現われる事は二度と無かった。

 

 

○○○

 

 

その頃、此方はチベットに潜伏している『NEVER』のメンバーと、それに追従したIS学園の生徒達。彼女達は彼女達で、重要な一つの決断を迫られていた。

 

「『亡国機業』との共同戦線!?」

 

「そうだ。あのアバズレ、とうとう他に打つ手が無くて、俺達に打診してきやがった」

 

アンクが告げた『亡国機業』からの提案にざわつく一同。特に『亡国機業』に関しては悪い思い出しか無いマドカと箒は、苦虫を噛み潰した様な顔をしている。

 

「……どう考えても罠だろう」

 

「同感だ。とてもじゃないが、背中を預ける事も向ける事も出来ん」

 

「でも正直な話、出来る限り人手と戦力は欲しいわよね。少なくとも『ヘキサポセイドン』と『エクスカリバー』の二つを相手にしなきゃいけない訳だし」

 

「そうですわね……『亡国機業』からの戦力は?」

 

「全部で3人。アバズレと女郎蜘蛛。そして、アリーシャ・ジョゼスターフだ」

 

「! イタリアが襲撃された動画に彼女が映っていなかったからおかしいとは思っていましたが……『亡国機業』に居たのですね」

 

「ああ、何でもIS学園が壊滅した時のどさくさで、フォルテ・サファイアとほぼ同時に『亡国機業』から勧誘されたらしい。誘いに応じた理由は不明だが……」

 

「フォルテ・サファイアの方なら理由は明白よ。彼女、ダリル・ケイシーと付き合ってるから」

 

「……だろうな。それ以外に理由はないだろ」

 

アンクとしてはどちらかと言うと、アリーシャ・ジョゼスターフが『亡国機業』の勧誘に応じた理由の方が知りたい所だったのだが……テロリストに与すると決めた以上、碌な理由ではあるまいと結論づけ、それ以上考えないことにした。

 

「それで、その3人の内、何人が『ヘキサポセイドン』と戦うのだ?」

 

「アリーシャ・ジョゼスターフだけだろうな。そもそも『亡国機業』は『ヘキサポセイドン』の撃破よりも、エクスカリバーの奪還に重点を置いている筈だ。元々エクスカリバーは『亡国機業』の管理下にあったISだからな」

 

「……成る程。それでコッチに厄介なヤツを押しつけようとしている訳か」

 

「ああ。だが、既にエクスカリバーの奪還に失敗して、ダリルとフォルテの二人がエクスカリバーに取り込まれたらしい。それで俺達に協力を要請しにきたって訳だ」

 

「……まあ、何処かの国に味方するよりはマシかもね」

 

「……そうね。お互いに国よりはマシでしょうね」

 

もはや背に腹は変えられない。正直な話、同盟相手に対する懸念材料は多いものの、現状ではどの国家の味方をしても碌な事にならないのは明白なので、それなら国家ではない『亡国機業』と共闘した方がマシと言うのが、此処に居る面々の総意だった。

 

「かつての『ミレニアム』との取引で使い潰されたISコアと、馬夏と千冬がぶっ壊したISコアを引いて、この間ウサギ女が渡した新しいISコアの分でプラスマイナスゼロと考えると、ウサギ女が世界にばら撒いたISコアは441個ある事になる。

但し、その全てが実戦に投入されている訳ではないし、中には凍結処分を下されたISコアもある訳だから、まともに動かせるISはそれより少ない。そして、世界の表側で使われているISコアが全て破壊されれば……」

 

「次は世界の裏側……具体的には国家ではなく、『亡国機業』の様に組織が保管しているISのISコアを破壊しに来るでしょうね」

 

「そうだ。そして、昨日で残りのISコアの数は211個。既に全体の半数以上のISコアが奴の手で破壊されている。世界の裏側に手を伸ばすのは時間の問題だ」

 

「「「「「「「「「………」」」」」」」」」

 

「でもでも~、弱点もあるんだよね~?」

 

「正確には“ある筈”と言うべきだな。セルメダルの体で復活したデメリットだと思うが、これらに関してはゴクローの右腕を取り込んだ奴の体が、今どんな状態になっているのかが分からんから何とも言えん」

 

「そっか~~」

 

「他に弱点と言えそうなのは、『タイムメモリの時間停止は連続使用出来ない』って事位だな。仮に連続使用が可能だったなら、もっと簡単にゴクローを倒せていた筈だ」

 

「……そうね。連続して使えたら、私やラウラの攻撃も避けた筈よね」

 

「ちょっと思ったんですが、何故戦ったIS操縦者を誰も殺さないのですか? わざわざ撃墜したパイロットを回収すると言うのは、少々不自然な様な気がするのですが……」

 

「……確かにそうだよね。むしろISとは無関係な一般人を無差別に攻撃してるけど、復讐が目的ならむしろIS操縦者の方を殺す筈だよね」

 

「決まってるだろ。ワザと生かして苦しめる為だ。ISの国家代表操縦者ってのは、殆どが軍に所属している『国家の防衛力』そのものだ。それが肝心の有事で役に立たず、国と国民に甚大な被害が出るのを防げなかったとなれば、当然その責任を取らされる。そして、今までチヤホヤされていた分、国民から向けられる憎悪も半端じゃあない。

仮に戦って死んだなら、殉職って事で『英雄』にもなれるが、生きていれば役立たずの『敗残兵』にしかなれん。それに憎まれ役ってのは、生きているからこそ叩きがいがあるモンだろ?」

 

「「「「「「「「「「………」」」」」」」」」」

 

「でぇ~~~~~~きたッ!! ささやかな武器だけどね~~~~~っ!!」

 

アンクの推測によって、敵の抱える憎しみの深さに戦慄するする一同。そんな彼女達の空気を払拭する様に、束が元気よく彼女達の輪の中に入っていく。

 

「じゃじゃ~ん! くーちゃんの『黒鍵』と、ラウラちゃんの『シュヴァルツェア・レーゲン』の二つのISを融合させて、『ロストドライバー』の発展系である『ダブルドライバー』を加えた、二人で一人のガイアメモリ対応型IS『ダブル・ボイルド・エクストリーム』と、束さんが新規作成した『エクストリームメモリ』だよ~~~♪」

 

「二人で一人のIS……」

 

「見たことも聞いたこともないわね」

 

「ってか、これの何処が“ささやかな武器”なの?」

 

「つまり、これで『ヘキサポセイドン』に対抗できる……と?」

 

「ま~~、すぐには無理だね。二人で一人って仕様の関係上、エクストリームに至るには時間が掛かるんだよ。勿論、これの装着者になって貰うくーちゃんとラウラちゃんの相性は抜群だから、比較的短時間でエクストリームに至れるとは思うケド……」

 

「奴がISコアを全て破壊する前に……て所が、難しい所よね」

 

強大な敵に対する対抗手段が出来た事で戦意を高揚させる一同。そんな彼女達を見て、アンクは彼女達に覚悟を問う言葉を投げかけた。

 

「言わなくても分かっていると思うが、相手はたった一人で世界中のISを破壊して周り、防衛力と軍事バランスを滅茶苦茶にしている怪物だ。たとえ逃げたとしても、俺はお前達を責めたりはしないが……どうする?」

 

「……私は戦うぞ。例え一人でもな」

 

「私も同じだ。仇は必ず取る」

 

「そうね。少なくとも逃げるって選択肢は無いわ」

 

「……ま、やるしかないだろう」

 

「ええ、やるしかありません」

 

「………」

 

まあ、これはアンクにとって予想通りの返事である。

 

束、クロエ、マドカの三名にしてみれば、ゴクローが居たからこそIS学園に滞在していたのであって、そのゴクローが居なくなった以上、IS学園に留まる必要は全く無い。

また、代表候補生でも何でも無い箒や鈴音に関しても、IS学園に残る義理もそれぞれの国に尽くすつもりも無かったし、ラウラに関しては名も知らぬ姉達の事で『NEVER』に借りがある上、死んだ姉達の死体を使った実験によって祖国に不信感を持っていた為、唯一生き残っている姉のクロエと一緒に行く事に決めたとの事で、この6名がゴクローの仇討ちに向かうのは必然と言える。

今も尚、意識不明の織斑千冬に関しては、それこそ説明不要。束がどさくさに紛れて回収した訳だが、そのまま残しても碌な目に遭わない事は明白である。

 

そうなると問題は、残り6名が何故この場に居るのかと言う事。

 

確かに、仮にセシリアやシャルロット、そして簪が代表候補生として国家に忠誠を尽くし、楯無が国家代表としてロシアに向かい、現地のIS操縦者達と協力したとしても、神出鬼没にして天下無敵の『ヘキサポセイドン』には到底叶わないとは思う。

しかし、彼女達は国家代表操縦者、もしくは代表候補生であり、それぞれが複雑な事情を抱えて、その立場に収まっている筈だ。『ヘキサポセイドン』に対抗するにはどうしてもガイアメモリやコアメダルに精通しているアンクや束の力が必要不可欠であるが、それを加味しても『NEVER』と行動を共にするデメリットを考えれば、明らかにその後の人生ハードモードは免れない。

 

「……と、アンク君は思ってるんでしょうケド、私から言わせて貰うと『一夏君がISを使える理由』が後天的な要因だって判明した時点で、世界中のIS操縦者は全員、これまで通りに人生イージーモードって訳にはいかないわよ?

それに『ヘキサポセイドン』の力を考えれば、“世界からISが消える”って事位、簡単に予想できるわ。ぶっちゃけた話、国家についても、『NEVER』についても、私達は茨で出来た人生を歩くしかないわ」

 

「IS操縦者が優遇されていた最大の理由は『替えが効かない事』ですからね。それを解消する方法が周知された以上、最悪今のIS操縦者達は『ISを使うのに必要な細胞を生産する為の道具』に成り下がるでしょうね」

 

「……うん。それに戦ってISコアを壊されたってなれば、絶対にISの操縦者が弁償しなきゃいけないと思うし……」

 

「ま~~、そうなったら更識家も布仏家も無事じゃ済まないよね~~」

 

「現実に大半のIS操縦者が、ISコアの破損によって自己破産に追い込まれているでしょうね。私の場合は何とかなりそうですが、どのみちイギリスが何かしらの理由を付けて実家の財産を没収しに掛かるでしょうから、結局は詰んだも同然ですわ」

 

「僕の家は……まあ、元が武器商人らしいから、世界からISが無くても何とかなりそうだけど、少なくとも僕に利用価値は無いかな……。てゆーか、それって今更だよね? 僕に『NEVER』に来ないかって誘ったのはアンクだよね?」

 

「少しでも戦力が欲しかったからな。出来れば、山田真耶も欲しかったが……」

 

「……おっぱいちゃん、『自分がやらなきゃ誰がやる』って言ってたよね」

 

「……凄い人だ。一番辛い仕事を、自ら率先して引き受けたんだからな……」

 

そう。山田先生はアンクの誘いを蹴り、IS学園の後始末をする為に残った。多数の死傷者を出し、守れなかった命を思って涙を流しながらも、彼女はその強い責任感から、敗北者を励ますどころか責め立てる「理不尽な悪意」に晒される事を選んだ。

 

「……背負わせてしまったな。私達の所為で」

 

「いや、元はと言えばライトとシュラウドの所為でしょ?」

 

「……そうね。だからこそ、私達に負けは許されない」

 

「……全部終わったら、また皆で宴会しない? 山田先生も呼んで、歌なんか歌ったりして……」

 

「……ああ、それが良い。出来ればゴクローの好きだった歌を歌ってくれ」

 

「「「「「「「「「「「………」」」」」」」」」」」

 

かくして、戦乙女達は改めて決意を固め、最終決戦への準備を進めた。最強の聖剣を手に入れた最悪の悪魔を討ち取る。ただ、それだけを目指して。

 

 

●●●

 

 

ライトの攻撃を避けきれず、四肢を走る凄まじい激痛によって失った意識が回復した時、俺は真っ暗な部屋の中でベッドに横たわっていた。口には酸素吸入の為のマスクが装着され、ふとアンクが掴んだ右手を見てみると、俺の右腕はアンクとそっくり……と言うか、アンクの腕そのものになっていた。

 

「これは……?」

 

「目が覚めた?」

 

聞き覚えがない。しかし、何処か安らぎを感じる声が左側から聞こえたと思えば、其処には白髪を腰まで伸ばした老婆が俺を見下ろしていた。

 

「まだあまり動かない方が良いよ。せっかく、元通りにくっついたんだから。まあ、右手はどうしようもなかったからそうなっちゃったけれど……」

 

「あ、あんた、は……?」

 

「フフフ……やっと会えたね。ゴッくん」

 

ゴッくん。俺をそう呼ぶ人間は一人しかいない。そして、改めて老婆の顔を観察してみれば、そこには確かに俺のよく知る人物の面影があった。

 

「束……か?」

 

「そうだよ、ゴッくん。ずっと待ってたんだ。会えるかどうかも分からなかったケド、きっと何時か会えるって信じてた。アンくんと一緒に、60年もずっと……」

 

「……ちょっと待て。お前、今なんて言った?」

 

「フフフ……そうだよね。普通は驚くよね。でもね、ゴッくん。信じられないかも知れないけど、今はゴッくんがIS学園でライトと戦ってから、60年の時間が過ぎてるんだよ?」

 

「!?」

 

どうやら、一筋縄ではいかない展開に、俺は陥っているらしい。




キャラクタァ~紹介&解説

ライト
 新世界の神となるべく行動開始。全てのISを破壊すべく、世界中を飛び回る。作中で語られる通り、彼と戦ったIS操縦者達は怪我を負ってはいるものの、死亡した者は一人もいない。但し、それ以外の人間は容赦なく下記の強化された『エクスカリバー』で攻撃しており、その被害は極めて甚大。作中で語られる通り、これは彼なりの復讐であり、一種のヘイト・コントロールでもある。

ログナー・カリーニチェ
 原作11巻に登場したロシアの元国家代表操縦者。チョイ役にして『ヘキサポセイドン』の噛ませ犬。ちなみに、IS学園に5963と戦う目的で集められた5人のIS操縦者達の内、アリーシャ・ジョゼスターフ以外の4人は専用機が修理・改修作業中だった為に『ヘキサポセイドン』と戦っておらず、全員が手元から離れていた専用機のISコアを無残にも砕かれてしまっている。

織斑一夏
 世界でたった一人のオンリーワンではなくなった男。前回のライトの言葉通り、ISを使える理由が後天的なモノであると暴露され、それが全世界に流布された事でISを与える理由がなくなり、その恐るべき可能性を断たれてしまっている。
 実はシュラウドから渡された『ハデスドライバー』と『ゼロメモリ』は、一夏が密かに隠し持っているのだが、変身に必要なコアメダルを失っている為に、変身する事が出来なくなっている。

NEVER+α
 正直、全員が人生ハードモード所か、ルナティックモードに突入している女達。復讐に燃えているが、現段階では絶対に『ヘキサポセイドン』に勝てないので、勝つ為の手札を揃えながら潜伏している状態。一応、家族に対しては、各々がちゃんと対策を取った上でこの場に居合わせているが、世界中の国家が「内閣総辞職ビーム」を食らって滅茶苦茶になっているので、政府としてはそれどころではない。
 5個のISコアを残してIS学園を去って行ったのは、勿論5カ国との後腐れを無くする為だが、束としては「すぐに『ヘキサポセイドン』に破壊されるだろうな」と思っていて、事実その通りになってしまった。

5963
 前話で「ガオンッ!!」されたが、しっかりと生きていた男。そして「40年後じゃないんかい」と、心の中で地味にツッコミを入れている。一夏によって刺された心臓の調子が悪いのか、現在は『オーズ』の泉信吾の様に右腕にアンクが取り付いて、生命維持と義手を兼ねている状態。つまり、アンクが右手から離れれば死ぬ。



エクスカリバー
 基本世界と言う未来を知るシュラウドの手によって、『亡国機業』から奪取された生体融合型のIS。コレに新規作成したヤミー系コアメダル12枚と、複製した鳥系・昆虫系・猫系・重量系・水棲系・爬虫類系・甲殻類系・魚類系・偶蹄類系・害虫系・寒冷生息系のコアメダル33枚を、大量のセルメダルと共に投与する事で、ウヴァさんの如く『◇』に造り替える事に成功。成層圏から「内閣総辞職ビーム」を世界中に問答無用でぶっ放した。
 この作品を書いてから、コンセレで未来のコアメダルが発売される事になったが、当時はそんな事は知らないで各種のコアメダルの設定を勝手に想像して書いていた。正直、アリコアメダルは予想外であったが、本作品のゴキブリコアメダルでも、名称としてはちゃんとムカチリコンボにはなる。

ダブル・ボイルド・エクストリーム
 クロエとラウラが二人で操作するガイアメモリ対応型ISで、原作11巻に登場するシャルロットの『リィン=カーネイション』に相当する機体。『黒鍵』と『シュヴァルツェア・レーゲン』が融合し、二つのガイアメモリを使用する『ダブルドライバー』を搭載している。
 元々は束が、自分と箒の二人で使うつもりで『ミレニアム』のデータを元に開発していたモノだが、人手の関係から箒は『紅騎士』で戦わせた方が良いと考え、最終的にクロエとラウラが操縦する仕様に変更した。名前の元ネタは『仮面ライダーW』のOPのタイトルだが、束も5963のお陰でこの歌を知っているので問題は無い。

エクストリームメモリ
 5963が持っていたエクストリームメモリと、シュラウドが造った鳥形のエクストリームメモリのデータを元に束が造った『ダブルドライバー』専用のエクストリームメモリ。要するに『仮面ライダーW』で翔太郎とフィリップが使っていたヤツの完全再現。



後書き

 次回からいよいよ、本作品における最終決戦に入ります。完結まで残り3話を予定しており、次の投稿で本作品は漸く終末を迎える事となります。
 出来れば、劇場版『アマゾンズ』の「最後ノ審判」までには終わらせたい所ですが……今年もGWの休みが少ないから、難しいかなぁ……。
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