そして、書きたい事を骨組みとして書く→そこから辻褄合わせに肉付け→きりの良い所まで書く→結果、18,000字を超える→二分割する。
よって、申し訳ありませんが、クロエは次話に登場です。
「キタァアアアアアアアアアアアッッ!! ひっじょ~に身体に染みますね~」
「何言ってんだお前は」
アジトから脱出し、デウス・エクス・マキナ号をインビジブルメモリで隠して、治療用ナノマシンが入った薬を身体に注入する。スコール戦の傷はこれで癒える。
インビジブルメモリ。
干柿鬼鮫……じゃない、井坂先生が対テラードーパントを想定していたであろうガイアメモリで、これは4年掛けてレベル2へと至り、相手の盲点に入り込む能力がメモリに追加された。透明化と盲点に入り込む能力を得た事で、肉眼ではまず分からない。但し、違和感から手当たり次第に攻撃すれば流石に分かる。
しかし、ナチスの残党の残党なんて笑い話にもなりやしない。別に仕えるに値する主人を裏切ったわけでも、ろくでもない外法で吸血鬼になった訳でもないが、そんな台詞が口から出そうになる、不思議な喪失感や虚無感がある。
「帰る家も、仲間も無くなっちまったな。なんだかスカスカした感じ」
「これからの事を考えて動かないとな。幸い、貯えはそれなりに有る。しばらくは何とかなるだろう」
「どこへも行くアテがないよな……ミレニアムの支援者も知らないし」
「俺は一応知っているが、行かない方がいいな」
現在、南米のジャングルで焚き火して気絶したウサギを観察しながら過ごしている。夜明けまであと5時間と言ったところ。
ミレニアムの支援者は世界中の至る所にいる。
政治、宗教、軍部、経済界、エトセトラ、エトセトラ……。
しかし、そのミレニアムが壊滅した今、支援者が俺達を見てどう思うか。
ノーリスクハイリターンを望む、醜悪な笑顔を貼り付けた欲望の怪物どもが俺達に求める物事を考えると寒気がする。碌でもない事になるのは想像に難くない。
アジトに戻ってメンバーの遺体や遺品を探さないかとアンクに提案したが、アンクが言うにはミレニアムのメンバーには証拠隠滅の為に身体を灰にする装置が体内と各自の武器に組み込まれており、基地も一通り爆破された為、遺体も遺品もめぼしいものはないだろうとの事。
一応、怪物マシンの中に少佐の私物が一つだけあったが、少佐がネコ耳モードの時に使っていたネコ耳カチューシャが遺品だと思うと……ねぇ?
「その装置は俺にも?」
「いや、お前には埋め込まれていない。埋め込む必要が無いと判断されたのか、埋め込まない方がいいと判断されたのか分からんがな」
考えてみれば有機ナノマシンの注入とかは受けたが、改造手術も脳改造の類も受けた覚えが無い。イマイチ、少佐の判断基準が不明だが、それはそれで良いとしよう。
「墓位は作ってやりたかったんだけどな」
「塵は塵に還る。人間も死ねば只の肉の塊。俺が只のメダルの塊であるように」
厳しい事を言うアンクだが、回収した少佐の体はアンクが一人で処分した。何だかんだでアンクは俺に気を使ってくれている。
しかし、惜しい人を亡くしたと思う。
生きながらえるだけなら他にも方法はあった。しかし、少佐はそれらにより自分が自分で無くなる事を何よりも恐れていた。
『私は私として生きて、私は私として死にたいのだ。私は私なのだから』
その点で言えば、俺の提案したものは大半が凶暴化するものや、自我を失うものばかり。
ネクロオーバー然り、セルメダル製ホムンクルス然り、戦極ハカイダー然り。
でも、京水とレイカは死んだ後の方が、よっぽど善人っぽい気がする。生前はヤクザと死刑囚だからな……。
「ところで登録は終わったか?」
「ああ、取り敢えずな。見るか?」
アンクからディスプレイを渡される。こうして改めてみると凄まじい魔改造が施されている『仮面ライダーオーズ』だ。
コアメダルはドライバーに最大27枚まで格納可能。
鳥系・昆虫系・猫系・重量系・水棲系・恐竜系・爬虫類系・甲殻類系。
これにアンクのコアメダルを含めた、イマジンメダルとショッカーメダルの怪人系。
合計27枚が登録されている。
コアメダルの選択権と管理権は基本的にアンクのものらしい。
他にも『MOVIE大戦MEGAMAX』のコアメダルもある。
サメ、クジラ、オオカミウオは勿論のこと。鴻上会長の会長室に描かれていたコアメダルもある。一通り見る限りでは、他にはムカデ、ハチ、ペンギン、シロクマ、セイウチ、ウシ、ガゼル、シカのコアメダルがある。
しかし、リストにはイラストとして描かれていた筈のヤドカリが無く、代わりにゴキブリのコアメダルがある。
「……なあ、ヤドカリ無くてなんでゴキブリ?」
「800年前の王のヤミーがゴキブリなんだろ? あと、これは『コックローチ』のメモリを参考に作ったらしいぞ。ムカデ・ハチ・ゴキブリで害虫コンボの誕生だ。喜べ」
「害虫コンボってお前……」
絶対に使いたくない。キンチョーと言う名の死のニワトリに対して致命的に弱くなりそうだ。
「今はコアよりもセルを考えないと」
「ああ、死活問題だ。都合よくISが攻めてくるのを待つのもアレだな。適当にどこかの基地を襲うか?」
「それは最終手段って事で」
オーズはISと同じ様にエネルギーを補給し、そのエネルギーを活用してセルメダルを自己生産する事もできる。しかし、一日当たりの生産量は固定されており、1日で24枚まで。ウヴァさんのヤミー金融の生産量よりは多いと思うのだが、やはり生産量としてはかなり少ない。それよりだったらISと戦った方が多くのセルメダルが手に入る。
後付装備に該当するガイアメモリはドライバーに26本まで格納可能。
内容はT2ガイアメモリの『AtoZ』をベースに、他にも幾つかメモリがある。
使用の権限は基本的に俺にあり、手で一々抜く必要が無い。メモリチェンジの隙を無くす為に自動的に装填される仕様だ。
「ところで、ガイアメモリは無くてもいいとか思っていたようだが、無かったらどうやってさっきの状況を切り抜けるつもりだったんだ?」
「………」
「そもそも、お前は5年もガイアメモリを使って戦っていたんだ。幾ら知識があっても、いきなりコアメダルを自在に使えるわけが無いだろう。ピンチになったら慣れている方を使うに決まっている」
返す言葉もありません。ガイアメモリが無ければ多分やられていました。今後は可能な限りコアメダルの方を使って切り抜けることを考えないと。
しかし、Bのメモリが「バード」じゃ無くて「ボム」になっている。シュラウドの好みだろうか?
お、「アイスエイジ」もちゃんとあるな。井坂先生曰く拍子抜けのメモリらしいが。
「ところでアンク、『自分の砕ける音を聞きな!』って言いながら止め刺すのってカッコイイと思うんだけど、どう思う? 台詞的にはオーズよりエターナルの方が似合う気がするけど」
「俺にそーゆー質問はするな」
「……あ、Vが『バイオレンス』じゃなくて『バイラス』になってる。万が一の為の自爆装置か?」
「それはコンピューターウイルスらしい。『スカイネット』とか言うのを参考にしたとか」
町一つ滅ぼすバイオハザードどころか、核攻撃ボタンよりも凶悪な世界崩壊のスイッチだった。死ぬときは世界を道連れにする事になりそうだ。
「いや、そこまで凶悪な能力じゃない筈だが」
「そうか……『CAS』は四つまでか。一気に減ったな」
「ま、そっちはオマケみたいなものだからな」
『CAS』は武装兼飛行ユニット。所謂パッケージであり全部で5種類ある。でも、このバーサークって明らかにプトティラコンボ専用だろ。
ドライバーに四つまで登録でき、アニメの『ライガーゼロ』と違ってわざわざドラム缶……もとい、ホバーカーゴに戻るように、一々デウス・エクス・マキナ号に戻るような事にならないのは助かる。
「この『パンツァー』は飛行ユニットじゃないな。それどころかこれ動けるのか?」
「桁外れの防御力と超高火力を両立する事に成功したが、重量故に身動きが殆ど取れない変態装備だ。クァッド・ファランクスの要素も取り入れたらしい。まあ、強化人間のお前は無理をすればなんとか動けるだろ」
成程、ガトリングも装備されているのはその所為か。殆ど実弾装備なので重量はとんでもないことになっている。パンツァーユニット+リノンスペシャル状態じゃないかこれ?
しかし、全弾ぶっ放せば絶頂を覚えそうな装備ではある。
「今にして思えば、少佐は金属生命体の話の食いつきが半端じゃ無かった気がする」
「確かにな。ちなみに『ミレニアム』はISコアを生産する事に成功していたぞ」
「打倒する敵も作れるようになっていたと」
「それまでに相当数を犠牲にしたらしいがな」
そのままアンクと語らいつつ、ディスプレイを見続け、装備を確認し続け、そのまま一睡もする事無く夜が明けた。
「何も起こらなかったな」
「それよりも、このウサギ女をどうするんだ?」
目の前で毛布の中に包まってグースカピーと眠っているこの女。ISの開発者である篠ノ之束の事だが、実際どんな人物なのか。正直、少佐達から聞いた一元的な情報でしか彼女を知らない。
「聞いた限りでは、さらりとは生きていない……って感じだったな」
「お前の言っていたドクター真木やプロフェッサー凌馬って奴に近いんじゃないか?」
「破壊の後で再生する新世界を求めているなら錬金術師ガラって奴に近い」
初めに白騎士事件の内容を聞いてとんでもないマッチポンプだなと思った。
しかし、経緯を考えると『吐き気を催す邪悪』や『自分を悪だと自覚していない最もドス黒い悪』と言うよりは、『自分の心の弱さを攻撃に変えた人間』といった感じがした。
諦めない事を諦めたか弱い女。だから少佐は認めなかった。他の大隊のメンバーはどうだったかと言えば、白騎士事件がキッカケで世界が女尊男卑の世の中になったことで逆恨みしていた奴。ISを使ったテロで家族を亡くした奴。死に損なって死に場所を求めていた奴。
ミレニアムに居た連中は色んな事情があって、なんだか寂しそうな目をした連中だった。
だが、俺はとても恨むような理由が無い。
劇場版『ビギンズナイト』において、初めて翔太郎と会った時に、フィリップが「銃を作る人間は皆犯罪者なのか?」と翔太郎に言った台詞は実に的を射ている。
確かにISは、俺がこの世界に来た原因でもあるが、意味不明なメールに「ウホッ! いいマトリックス!」とホイホイ従った俺にも責任はある。
シュラウドはどうしても俺が篠ノ之束に対して憎しみを持って欲しかったようだが、憎む気持ちは沸いてこなかった。何時だったか、寝ている俺の枕元でボソボソと、どす黒い感情を込めた声で『憎め……憎め……』と洗脳しようとしていた。相当な過去があったのだろうが、シュラウドの憎しみや復讐はシュラウドのものだ。
しかし、その行動にゾッとした事は間違いない無く、しばらくの間は寝る時に自分の部屋に戻らず、少佐達の部屋を点々とする事になった。
「それならそいつ等の恨みはどうする? どう決着を着ける?」
「……全てのISを打倒して頂点に立つ。そこら辺が落とし所かな」
「ほう、何時だったか言った『世界を自分の色に染め上げる』って奴か」
禁断の果実は手に入らない上に、『始まりの男』どころか『世界の破壊者』とか『悪魔』とか言われるかも知れないがな。
「目下の問題はコイツだが、世捨て人同然の他人が自覚できない狭い世界で生きている様な女だ。まともな会話は期待するだけ無駄だぞ」
「それは本当に自覚できないのか?」
「あん? どう言う事だ?」
アンクの質問に答えようとした所で、篠ノ之束が遂に目を覚ました。
「うん? アンタ誰?」
「ゴクロー・シュレディンガー。こいつはアンク」
「おい! ゴクロー! 起きたんだからもういいだろ! さっさと行くぞ!」
「……へぇ」
篠ノ之束は田村ゆかりボイスだった。実に興味深い。ゾクゾクするねぇ……。
しかし、当の本人は俺では無くアンクをロックオンしている。機械のウサ耳もピコピコ動いている
「変だね。その赤い鳥からISコアによく似た反応があるんだけど、どう言う事なのかな? 喋れるみたいだし、束さんに教えて欲しいな~」
「アンクは……」
「君には聞いてないよ。誰に質問しているのかも分からないの? 頭悪いなぁ。それとも目が見えないのかな?」
「………」
篠ノ之束は予想以上に腹の立つ奴だった。そして、ムカつくほど綺麗な良い声だった。
○○○
我々、誇り高き黒ウサギ隊は現在、南米のジャブローに向かっていた。
「ドイツ第三帝国最後の敗残兵『ミレニアム』が創り出した対IS最終兵器……ですか」
「隊長。本当にそんなものがあるんですか?」
「それを確認する事が今回の任務だ」
『ミレニアム』。またの名を最後の大隊。ラストバタリオン。第二次世界大戦中にヒトラーが存在を仄めかしながらもその正体は全くの不明……と言うのは表向きの話だ。
『ミレニアム』とは、部隊名であり計画名。極秘物資人員移送計画とその実行者。
彼らは第二次世界大戦初期から総統特務666号を受けて行動を開始。ドイツの占領地で書類を改ざんしながら、必要な物資と有能な人材を集めて南米へ移送した。ユダヤ人から没収した財産。貴金属。宝石類。美術品。紙幣。有価証券。小さいものは金歯から、大きなものは潜水艦までと言った具合だ。
彼らの目的である総統特務666号とは、ナチス第三帝国の権力を如何にして永遠のものとするかと言うものだったらしい。
それらの模索は多岐に渡り、医学、薬学、生物学、化学、科学。果ては超能力などのオカルトと云われるモノまで。それらの研究により得られたモノをエサに、世界中のあらゆる業界からコネクションを獲得し、資金提供を受けて秘密裏に活動していた。
そんなミレニアムが、ここ10年近く密かにISに対抗する兵器を研究・開発する目的で、あらゆるところからISコアを奪取しているのだとか。そのミレニアムに奪われたISコアを回収する事が任務だが、同時にある事も任務に入っている。
ミレニアムが開発している対IS最終兵器の回収もしくは破壊。
この時点で疑問に思うことが有る。普通に考えればISを奪取する目的と言えば、相手が表の組織だろうと裏の組織だろうと、自軍の戦力強化だろう。
それをミレニアムに奪取されているにも関わらず、何故その目的が対IS最終兵器の開発だと知っているのか。流石に奪取した際に馬鹿正直に教えたとは考えにくい。
考えられるのは、ドイツ軍はミレニアムと裏で繋がりがあり、ISコアは奪取されたのではなく、なんらかの取引で渡したのではないか……。だからこそ、その目的を知っていると考えるのが妥当だ。
しかし、最強の兵器であるISはISでしか倒せない事は常識であり、IS以外のパワードスーツも確かに開発されているが、それらは到底ISと戦えるような代物ではない。
正直、私を含めた隊員達の頭はISコアの奪取だけを意識していた。
「ここが『ミレニアム』の拠点か?」
座標の位置についてみれば、完全に崩壊し、夥しい破壊の後がそこかしこに刻まれている施設があった。ISや人手を使って瓦礫を除去していくが、激しい戦闘の痕跡が見てとれる。明らかに何者かに襲撃された後だ。
人間が燃えたと思える焼け跡が幾つもあったが、床が焼け焦げた後しかなく遺体らしい遺体が無い。遺体が全て骨も残さず燃えたという事だろうが、それが機密保持のためだろう事は想像に難くない。
「ここか? 奇妙な場所と言うのは」
「ええ、他が瓦礫の山になっているのに此処だけが無事なんです」
「中には何かあったか?」
「いえ、空っぽです」
部下が瓦礫の山から発見したもの。施設が軒並み破壊されているにも関わらず、無傷で残っている部屋があった。部下が言う様に中には何も入っていない。しかし、これほど頑丈な部屋に中身が無いと言うのはかなり奇妙だ。一体何が入っていたのか。
「ココが研究施設だとすれば、中で保管されていたモノの予想は出来ます」
「なんだ? 言ってみろクラリッサ」
「研究者が何よりも頑丈に作るのは保管庫。そして保管庫に入れるものは、高価な実験器具でも、夜通し書いた論文でもない。世界中からかき集めた研究材料です」
研究材料……か。
となると、ここにISコアが保管されていたと言う事か。対IS最終兵器。その研究となれば、当然ISを確保して研究する必要があるとは思うが……。
「私とクラリッサは周囲を捜索。残りはココに残って探索を続けろ」
『了解!』
まだ周囲にミレニアムの生き残りか、襲撃者が潜伏している可能性を考えて、二手に別れて周囲を捜索する事にした。
私とクラリッサが周囲を索敵して30分ほど経った頃。プライベートチャンネルに、クラリッサから褐色の軍服を纏った金髪の男と、何故か篠ノ之束博士を発見したと連絡が入り、私は現場に急行した。
○○○
どうしたものかと考えていたら、突然嫌な予感がした。
篠ノ之束とアンクを引っつかんで大きく飛び跳ねると、さっきまで居た場所にワイヤーブレードが地面に突き刺さっていた。上空に目を向けると黒いISに乗った女が此方を見ている。奇襲が失敗したと見て、地上に降りてきた。
財団X……じゃなかった、亡国機業の追っ手かと思ったが、見覚えがある顔だった。
ドイツの国家代表にして、ドイツ軍『シュヴァルツェ・ハーゼ』の副隊長クラリッサ・ハルフォーフ。使用するISは専用機『シュヴァルツェ・ツヴァイク』。確かAICが搭載されている機体だった筈。
「ドイツ軍のクラリッサ・ハルフォーフだな?」
「そう言うお前は『ミレニアム』のメンバーだな?」
……何か可笑しいやり取りの様な気がする。そう思ったら、速攻でアンクがAICに拘束された。
「な、何するだぁーーーーッッ!! 許さん!!」
「そこの赤い鳥からISの様な奇妙な反応がするのでな、一応拘束させてもらった」
……まあ、膝蹴りよりはマシだな。
「我々『シュヴァルツェ・ハーゼ』は現在、『ミレニアム』が奪取したISコアの回収、そして開発したという対IS最終兵器の回収、もしくは破壊する任務についている。
そして『ミレニアム』の破壊された拠点で保管庫と思われる場所を発見。しかし、中身は空っぽだった。保管庫にはISが保管されていたのでは無いかと睨んでいるが、どうなんだ?」
目的を語り、有無を言わさぬ視線と物言いでクラリッサが迫るが、その言葉に篠ノ之束が反応した。
「ねぇ、保管庫に何も無かったって本当?」
「……ええ、全く何も」
「束さんはね~。ここに『白騎士』と『暮桜』のISコアを奪取した連中がいるって聞いて飛んで来たのだよ~」
この篠ノ之束の発言にクラリッサが驚いた。
『白騎士』に『暮桜』と言えばどちらも伝説と言っていいISであり、片やIS伝説の始まり。
片やブリュンヒルデこと、織斑千冬が使った第1世代型IS。その二つのISのコアを求めて来たと言うのだから。
「……知ってるぞ」
「へぇ? どこにあるのかな? 教えてよアンくん」
「アンくん? まあ、いい。それなら俺達に協力しろ。この女はゴクローが倒す。その後で俺達に協力するなら『白騎士』と『暮桜』のISコアについて俺が教えてやる。言っておくが、ゴクローは知らないぞ」
「ふ~~ん? まあ、いいよ。束さんもこのまま軍隊のお世話になんてなりたくないし、『白騎士』と『暮桜』をこれ以上誰にも渡したくないし」
「交渉成立だな。ゴクロー、ここで奴を倒してとっとと逃げるぞ」
勝手に話を進めて篠ノ之束に協力を取り付けたアンク。AICに拘束されているにも関わらず余裕だな。とりあえず、アンクに掛かったAICの拘束を解くか。
エターナルエッジを召喚し、取り敢えずクラリッサに向けて投擲。続けてスタッグフォンとバッドショットを起動してクラリッサを攻撃させる。
意識を他に向けたことで、AICから解放されたアンクが腰に装着されているドライバーに入っていく。ドライバーには、タカ、クジャク、チーターのメダルが装填される。しかし、なんだってこうも次から次へと厄介事が舞い込むのやら。
『ま、楽して助かる命が無いのは、どこも一緒ってやつだ!』
確かにその通りだが、お前がその台詞を言うのかアンク。
「変身!」
『タカ! クジャク! チーター!』
「何!?」
今回は初めから亜種形態のタカジャーターに変身。メモリスロットにはジョーカーメモリ。パッケージは『Type-ZERO』。右手にメダジャリバーを召喚する。
「なるほど、その全身装甲のISがミレニアムの最終兵器か?」
『違う。これは「オーズ」。どれ程のものかは……今に分かる』
アンクの台詞が終わると同時に、即座に対AIC用の行動に移る。AICは特性上タイマンなら殆ど無敵の能力と言えるが、常に意識を対象に集中させなければならない。
ここで取るべき戦法はヒット&アウェイ。IS戦においては『砂漠の逃げ水【ミラージュ・デ・デザート】』と呼ばれる戦法らしい。
チーターの高速で移動しつつ、メダジャリバーで接近戦を挑んだと思えば、離脱してタジャスピナーの火炎弾を撃ちこむ。かと思えば、火炎を纏った打撃をすれ違い様に叩き込む。盾と射撃、更に火炎を纏った打撃を兼ねるタジャスピナーはかなり便利だ。
向こうも近距離はレーザーブレードで対抗し、ワイヤーブレードを射出して多角的な攻撃を繰り出してくるが、全て回避するか、タジャスピナーで受け止めて防御、もしくはメダジャリバーで切り裂いている。AICも発動しているが、タカの目ではしっかりとソレが見えており、見てかわしている。
『悪くは無いが、コレじゃセルメダルがなかなか貯まらんな』
それなら最後の締めはタトバキックにしないかアンク。AICの対策も考えている。
『ほう、それなら試してみるか』
ヒット&アウェイを繰り返してシールドエネルギーを大分削った頃、ドライバーのメダルがクジャクとチーターから、トラとバッタに変更され、スキャンしてコンボチェンジする。
『タカ! トラ! バッタ! タ・ト・バ! タトバ! タットッバ!』
「!? 姿が……いや、武装が変わった!?」
「タトバタトバ? 変な歌だね~?」
歌は気にするな!
アンクが突っ込みを入れず、俺が心の中で突っ込みを入れつつ、タトバキックを発動する為にメダルを再スキャンする。
『スキャニングチャージ!』
バッタレッグをバッタの足の様な逆関節に変形させて、上空高く飛び上がる。赤・黄・緑の三つのリングが空中のオーズからクラリッサに向けて真っ直ぐに出現した。
オーズが赤いリングを潜ると背中から赤い翼が出現し、黄色のリングを潜ると周囲に黄色い爪状のエフェクトが出現する。
原作においては不遇な扱いを受けたが、演出がかなりカッコイイ必殺技である。
「セイヤァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」
「! 貰ったぁッッ!!」
そして、緑のリングを潜り蹴りつけようとするが、やはりAICで止められる。タトバキックを止めたクラリッサは勝利を確信した表情をし、レールガンの銃口を此方に向けた。
しかし、この俺がこのタトバキックの特性を考えていないと思うなら大間違いだ。
「アンク! セルを二枚だ!」
『チッ! さっさと決めろ!』
『セルバースト!』
セルメダル2枚で発生する『セルバースト』でタトバキックの出力を上げる。AICで止められる事を前提に、単純にタトバキックの威力を上げて突破すると言う実に分かりやすい作戦だ。セルメダルの力を、瞬間的に通常出力の290%ものエネルギーを解放することで得られる出力は、レールカノンが発射される前にAICの拘束力を上回り、不可視の壁を突き抜ける。
これで決まりだ。
そう思っていたら今度は横から何者かに撃たれて吹き飛ばされてしまった。多少の手ごたえはあったので、完全に外したわけではないが、決める事が出来なかった。
クラリッサに目を向けるとISの右半分の装甲とレールガンが破壊されているが、戦闘不能かと言われれば微妙。
「クラリッサ。無事か?」
「助かりました、隊長」
「そうか。しかし、アレは何だ? 停止結界を振り切ったぞ」
「分かりません。しかし、『ミレニアム』の構成員に間違いないかと」
「ほう……貴様が『ミレニアム』の対IS最終兵器とやらか。眉唾物だと思っていたのだがな」
何かブツクサと言っているが、そんな事はどうでもいい。しっかりと対策を立てておきながらもタトバキックが失敗に終わるというこの屈辱。少佐はタカキリーターのバズーカ誤当を凌駕したと言うのに。
おのれディケイドォォォォ!!
「ドイツ軍『シュヴァルツェ・ハーゼ』隊長、ラウラ・ボーデヴィッヒだ」
劇場版では悪堕ちから始まる大首領のもやしに八つ当たりしたら少し落ち着いた。
新たに現れた銀髪の少女。彼女も見覚えがある。いや、よく知っていると言うべきか。
ラウラ・ボーデヴィッヒ。
少佐から教わったドイツ軍が造った遺伝子強化試験体。
IS配備特殊部隊「シュヴァルツェ・ハーゼ」隊長。
実質的にドイツにおける最強のIS操縦者。
そして、ブリュンヒルデこと、織斑千冬の教え子。
話には聞いていたが実際にお目にかかるのは初めてだ。
「お前がラウラ・ボーデヴィッヒか。俺はゴクロー・シュレディンガーだ。初めましてと言うべきかな――兄妹?」
「兄妹?」
「お前は戦う為に、俺はISを打倒する為に造られた人間。目的は違うが、お互いに狂気の科学によって生み出された戦う為の生物兵器。言ってみれば俺とお前は同じ、人間の欲望から生まれた科学の怪物。何も間違ってはいない」
「……ふざけるな。私はお前とは違う」
「……そうか。俺は出来ればお前とは戦いたくは無かったのだがな……」
もっとも、作られた順番で言えばゴクローの方が後なので、むしろラウラが姉でゴクローが弟である。
ラウラのISが戦闘態勢に入り、腕からレーザーブレードを発生させる。『シュヴァルツェア・レーゲン』と『シュヴァルツェア・ツヴァイク』は姉妹機と聞いていたが、今回二機の装備は同じようだ。
『面倒な事になってきたな。メダルをコレに変えろ!』
『ライオン! カマキリ! チーター!』
アンクの指示でタトバコンボからラキリーターへとコンボチェンジ。即座にライオネルフラッシュを発動させる。
「また変わった!?」
「チッ! 目晦ましか!」
ライオネルフラッシュの目晦ましと、チーターレッグによる高速移動を繰り返し、すれ違い様にカマキリアームで切り裂いていく。
「ちぃ! ちょこまかとッ!」
「隊長!」
先ずは援護しようと起き上がるクラリッサを仕留める。素早い動きで死角へ回り込み、加速をつけたチーターレッグのキックがクラリッサに炸裂する。
「セイヤァアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」
「がぁッッ!!」
ダメ押しに加えられた攻撃で、メダルを撒き散らすウヴァさんの様に、装甲の破片を撒き散らしながら吹っ飛んだ。クラリッサのISが今度こそ戦闘不能になり解除される。
相手が任務優先の軍人相手ならココまでやっても油断は出来ないが。最悪、自爆特攻なんぞ仕掛けてくるかも知れんし。
「クラリッサ! 貴様ァアアアッッ!!」
残るはラウラだが、ワイヤーブレードとAICで捕らえようとするが、全てかわすか、カマキリソードで切り裂いて処理していく。だが、段々攻撃の命中精度が上がってきた。流石に、篠ノ之束に当たる可能性を考えてレールカノンは俺を拘束しない限り撃たないようだが。
『そろそろ相手もこっちの動きに慣れてきた。コイツに変えろ!』
『ライオン! カマキリ! バッタ!』
ラキリバにコンボチェンジし、バッタレッグを変化させて周囲の木や岩を足場にして飛び跳ねる。ラウラは先ほどまでの、線の動きの高速移動と全く違う、上下左右からの三次元的な動きと逆手に持ったカマキリソードの攻撃に戸惑っている。
「やっぱり使いやすいなコレ」
普段からよくコンバットナイフを逆手持ちで使っているせいか、アドリブではなく本当にカマキリは使いやすい。再びライオネルフラッシュを放って接近する。
「ふっっ!!」
「ふん! そう何度も通用すると……」
「TAKO~♪」
「うわぁ!?」
今度はライオネルフラッシュ発動と同時にタコカンを一体起動させた。ライオネルフラッシュを予想して光から目を守ったラウラだが、タコカンはラウラの顔面に墨を吐きかけ両眼を塞ぐ。
『スキャニングチャージ!』
「セイヤァアアアアアアアアアアアアアッッ!!」
タコカンの墨を受けて怯んだ隙を逃さず、バッタレッグで跳躍しカマキリソードでISの装甲だけを刺し貫く、ラキリバの必殺技を叩き込んだ。目の見えない状態でまともに必殺技を受けたラウラのISもダメージにより解除された。
「決まったな」
「よし、今の内に早く脱出するぞ」
アンクがドライバーから飛び出し、デウス・エクス・マキナ号へと向かい、篠ノ之束はアンクの後ろをひょこひょこと付いて行った。
大丈夫だとは思ったが、一応『オーシャン』のメモリで水を出してラウラの目を洗ってやった。多少抵抗されたが無視した。墨が一通り落ちたところで変身を解除する。ラウラは悔しそうな、そして憎しみを込めた目で俺を睨んでいた。
「……また会おう、ラウラ・ボーデヴィッヒ」
振り返る事無くデウス・エクス・マキナ号へ乗り込むと、俺達は篠ノ之束の指定する座標の場所へ行く事になっていた。この女のアジトか……警戒するに越した事は無いな。
○○○
負けた。負けてしまった。
しかも、『白騎士』と『暮桜』のISコアを持っているというミレニアムの残党を相手に。敬愛する織斑教官のISコアを奪取していたと言う許せない相手に。
篠ノ之束博士と言う予想外の存在により、最大火力の武器をおいそれと使う事が出来なかった。しかし、それでも負けてしまった事は事実。
だが、それ以上に私が気になったのはその後。
ISが解除され、目潰しによって目の見えない私の目を洗い、墨を落した後で変身を解いた装着者の姿が顕になる。金髪に黒のメッシュが入った20代位の若い男だった。
「……また会おう、ラウラ・ボーデヴィッヒ」
睨みつけていた私に向かって、そう言った男はとても深く哀しい目をしていた。
違う。
勝者はそんな目をしない。勝者は敗者をそんな目で見たりはしない。
現に私が『出来損ない』の烙印を押された時、転落して敗者となった私を見る周りの目は、侮蔑や優越感、嘲り、或いは憐れみと言った感情が表れていた。織斑教官に出会い部隊最強の地位に返り咲くまで、誰もが当時の私をそんな目で見ていた。
お前はISを打倒する為に生まれたと言ったではないか。
それならこの結果はお前にとって喜ばしいことではないか。
打倒すべき敵を倒したのだから嬉しいに決まっているではないか。
それなのに、何故そんな目をしていたのだ。
施設を探索していたIS操縦者の隊員に連絡を取り、私とクラリッサの負傷とISのダメージもあって、これ以上の任務続行は不可能と判断し、ドイツに帰還する事となった。
任務失敗。上層部にその事を告げ、損傷したISを整備の方に回し、『オーズ』との戦闘データを提出した後、謹慎を言い渡された。
これからきっと肩身の狭くなる毎日が待っているだろう。だが、私はあの男の深く哀しい眼差しの意味をずっと考えていた。
キャラクタァア~紹介&解説
シュラウド
正確にはシュラウドもどきの科学者。死んだ息子の名前がライトだったりする。ISや篠ノ之束に対する憎しみはミレニアムメンバーでもトップクラス。目的達成の為になりふり構わない所があり、その所為でゴクローはテラードーパント以上の恐怖を体験する破目になった。
少佐と共にこの作品にアンチ・ヘイトタグを着けた理由になった人。ぶっちゃけ、アンチって何処までがアンチなのか悩む。
クラリッサ・ハルフォーフ
おかっぱ頭とオタク趣味が素敵な黒ウサギ隊のお姉さま。専用機の『シュヴァルツェア・ツヴァイク』の描写が原作に無いから姉妹機の『シュヴァルツェア・レーゲン』と同じ装備に設定。仕方ないんだ。ほんの数行でイマイチ機体のイメージが出来ないんだ。
ラウラと同じ現場に居た事で、ラウラから悩みを相談された結果、ラウラに『北○の拳』全巻と、ラ○ウ伝のDVDを渡した。『出来れば君とは戦いたくない!』『戦う事でしか、俺とお前は分かりあえない!』的な事の顛末を、クラリッサの主観による若干の脚色が入りつつも他の黒ウサギ隊員にも話し、原作よりも早くラウラと黒ウサギ隊の仲が良くなっていたりする。
ラウラ・ボーデヴィッヒ
ブラックラビッ党の銀髪眼帯娘。眼帯をしている時点で『NARUTO』カカシ先生の様な写輪眼の使い手だとゴクローは思っていたりする。
対オーズ戦の後、ゴクローがふと見せた深く哀しい眼差しに劇場版『AtoZ~運命のガイアメモリ~』のフィリップ以上に戸惑っている。信頼する副官に相談した結果、渡されたものを全てきっちり鑑賞し、ゴクローの眼差しが愛を知った○オウや、ケンシロ○のそれだと考え、愛を知り強くなる為に副官のアドバイスの元で、全力で間違った方向に努力している。
原作ではイマイチ搭載理由の不明なVTシステムは、本作ではこの時の戦闘がキッカケで秘密裏に搭載される事になる。
インビジブルメモリ
不可視の記憶を持つガイアメモリ。本家『W』においては変態と名高い井坂先生が過剰適合者のマジカルレディに与えた改造メモリ。死ななきゃ取り出せないなら、死ぬことを前提に考えればいいって言ってのけるフィリップ君マジパネェ。
本来の能力はシュシュっと参上な透明化だが、『HUNTER×HUNTER』を読んだゴクローは相手の盲点に入り込むレベル2まで成長させた。もしも、井坂先生が知ったら大歓喜し、速攻でテラードーパントに挑戦したであろう仕上がり。
タトバキック
本家『オーズ』にて基本形態であるタトバコンボの必殺技。単体使用では初使用の補正が掛かっているはずのネコヤミー戦でも、真のオーズとして覚醒した主人公補正が掛かった最終回でも決まりきらない。もはや呪いか様式美であり、ぶっちゃけ『MOVIE大戦MEGA MAX』で雑魚をまとめて爆殺したときが唯一の単体使用での成功ではなかろうか?
別の世界のコピー商品でもその恐るべき因果は健在。如何なる努力や策を講じても単体では成功しない。そう、大戦が起こらない限りは……。