ミレニアムVS亡国機業。傍から見れば悪VS悪。
それでは、読者の皆様。よき週末を……。
残るISは6機。両膝と左腕にダメージがあるが、まだまだいける。アンクに変更するメダルを指定する。
『ああ、何を考えているか分からん組み合わせだが、いいだろう』
『コブラ! ウナギ! タコ!』
サゴリタからブラウタにチェンジし、メモリスロットにルナメモリが装填される。このルナメモリはレベル2にこそ至っていないが、その性能はオリジナルを超える。異常に体が柔らかくなり、足や腕だけでなく全身がこれでもかと伸びる。リアル妖怪クネクネと言えば分かりやすいだろうか。
「く~ねくねくねく~ね~♪」
「ひぃぃいいいいいいいい!!」
「う、うろたえないぃぃぃッッ!! ドイツ軍人はうろたえないぃぃぃッッ!!」
恐怖に顔を歪ませつつ放たれる銃弾を巧みに避ける。避ける。避ける。その姿は人間とはココまで伸びるのかと思わずにはいられないくらい伸び~る。伸び~~る。伸び~~~る。見たか、これが753ならぬ、5963の遊び心だ!
しかしコイツ等、ラウラやクラリッサの代わりに来たようだが、随分と見劣りするな。ウナギウィップで打ち据えながら接近し、タコレッグから発生する8本の触腕で雁字搦めに拘束する。
「戴きますッ!」
必殺『億怒端数煩流奴【オクトパスホールド】』! ラップは出来ないし、タコ墨の分身でもないが。腰の辺りから生えている8本のタコ足が、ISと操縦者に絡みついて離さない。ついでに間接も極めておく。
「隊長! 今、行きます!」
助けるために接近する打鉄が一人に、遠距離から援護するラファールが一人。トリガーマグナムを右手に、メタルシャフトを左手に召喚する。
「お前等などラウラの足元にも及ばん」
『TRIGGER・MAXIMUM-DRIVE!』
「トリガーフルバースト!」
トリガーマグナムにトリガーメモリを装填し、マキシマムモードを発動。どこまでも相手を追尾する誘導する青色と黄色のエネルギー弾を大量に一斉に発射する。
自分に向けられたと思い、防ごうとした打鉄を自由に湾曲するエネルギー弾が避けて、援護しようとしていたラファールに全弾命中する。
「『編光制御射撃【フレキシブル】』!? くっ! こんな事まで出来るのか!?」
斬りかかる打鉄の葵をメタルシャフトの棒術で対応し、先端部で打ち据える。メタルシャフトにメタルメモリを装填し、必殺技を発動させる。
『METAL・MAXIMUM-DRIVE!』
「セイヤァアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」
メタルシャフトから生まれた四つの黄色い円形カッターが、これまた複雑な軌道を描いて打鉄を翻弄しながら次々と命中し、撃破した。
『……おい、一つだけいいか?』
何だアンク。随分と歯切れの悪そうな声色だな。
『これ……傍目から見たら触手系モンスターが女を襲っている様にしか見えないんじゃないか?』
…………ははは、何を言うのだアンク。そんな訳無いだろう。俺は触手系のAVは射程外なんだぞ。
「や、やめろぉぉ、そ、そんなに、締め付けたらぁぁ」
!!
『UNICORN・MAXIMUM-DRIVE!』
「セイヤァアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
即座に拘束を解いてメモリを変え、ユニコーンのマキシマムである螺旋状のエネルギーを纏ったコークスクリューパンチを叩き込んだ。気のせいだ。絶対に気のせいだ。誰がなんと言おうとも気のせいだ。
『いや、どう考えてもさっきまでのお前の姿は女を無理やり陵辱する触手のエロ怪人……』
そうそう俺は触手のエロ怪人……って、エロ怪人!? 言ったな! 仮面ライダーに対して言ってはいけない最大の侮辱を! 誰がキメラ系お寝取り触手モンスターだって! ムッキィィイイイイイイイッッ!!
『いや、そこまで言ってねぇだろって、おい聞いているか? っておい!』
『コブラ! ウナギ! バッタ!』
怒りのままに強制的にアンクからメダルの支配権を奪い取り、レッグをタコからバッタへチェンジ。しかし、膝にキテいるので奇妙な走り方になって転んだ。地味に痛い。だが、痛みよりも屈辱の方が遥かにデカイ。頑張れ、敵はまだ健在だ。立たなくっちゃ! 立たなくっちゃ! ビンッビンに立たなくっちゃーーーーッッ!!
「イ゛ッ゛ドゥワヴァ゛ブェエエエエエエエエエエエッッ!!」
『落ち着け! 俺が悪かった! ホント、本当に悪かった!』
オンドゥル語になりつつも、とりあえず叫んでトチ狂いそうな精神を落ち着かせる。それもコレもショッカー首領……じゃない、乾巧って奴の仕業なんだと思いこんだ。
『落ち着いたか? 落ち着いたよな? だからコレに変えてくれ、頼むから』
『タカ! トラ! エビ!』
アンクの懇願もあり、レッグをエビに変えて残り3機の討伐に挑む。
エビレッグはタイヤがついており、足を動かす事無く動くことができる。ここは砂漠だが「タイヤコウカーン!」する必要は無い。と言いつつも、元ネタは仮面ライダーコアだ。しかも、ディティールは仮面ライダーアクセルのそれに近い。
エンジンブレードを召喚し、エンジンメモリを装填。一番近くにいた奴にジェットの光弾を撃ち込みながら接近し、エレクトリックの電撃を纏ったエンジンブレードで斬り上げた衝撃で上空へと飛ばす。
『ENGINE・MAXIMUM-DRIVE!』
「セイヤァアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」
「うわぁあああああああああっっ!」
エンジンブレードから発射されたAを象ったエネルギー弾が直撃し倒れた。エンジンブレードから薬莢の様にエンジンメモリが排出される。
残るISは2機。メダジャリバーを左手に召喚し、エンジンブレードの二刀を構えて近づいくが、相手は完全に戦意喪失していた。
「あ、あれだけの数のISをたった一人で……」
「ば、化物……」
「よく言われる。それと相対するお前等は何者だ? 人か? 狗か? 化物か?」
ナイスな台詞で軽くいなしたつもりなのだが、相手は余計に怖がった。解せぬ。二人の内一人が恐怖から背を向けて逃げ出した。ヘタレが。
「逃がさん」
『BOMB・MAXIMUM-DRIVE!』
エンジンブレードにボムメモリを装填し、マキシマムドライブを発動。敵前逃亡をかましたヘタレの背中に向かってエンジンブレードを投げつける。エンジンブレードは命中と同時に爆発し、ヘタレは撃墜された。
「あ、あ、あ……」
『シングル・スキャニングチャージ!』
「これで終わりだ」
メダジャリバーにセルメダルを一枚投入し、オースキャナーでスキャン。セルメダルから生まれるエネルギーに包まれた刀身で、恐怖に顔を歪めた最後の一人を一閃する。
終わった。流石に疲れた。だが……。
「おっと、そこまでだ! 大人しくしてもらうぜぇ!」
深く息を吐いた矢先、チンピラの様な女の声が聞こえる。新手か?
『確かに新手だが、かなり面倒な連中が来たみたいだな』
声の方向を向くと、蜘蛛としか表現できない全身装甲のIS。ヘッドギアを付けた青を基調としたISを纏った少女と、縛られ猿轡をして引きずられるポニーテールの女の子がいた。
即座に人質と判断するが、この戦場に居る誰かの身内なのか、はたまたそこらへんから適当に見繕ってきた可哀想な人か。いずれにせよ、救出しないと言う選択肢は俺には無い。
「その子は何者だ?」
「なんだ? 知らないのか? コイツは篠ノ之箒って言ってな。篠ノ之束の妹だよ!」
妹? そう言われてみれば束に似ているような気がしないでもない。
「人質とは卑怯だぞ! 財団X!」
「私らは『亡国機業』だ! 誰のこと言ってんだテメェ!」
そうか。適当に言ってみたんだが、『亡国機業』か。連合軍の人間じゃないわけね。
『黄色い方はアメリカの第二世代IS「アラクネ」。青い方はイギリスの第三世代IS「ブルー・ティアーズ」のプロトタイプだ。イギリスの研究所に保管されている筈だが』
プロトタイプね。試験用のプロトバースみたいな物で、『プロト・ティアーズ』って所か。流石に実戦用に改造されているとは思うが。
「おっと、動くんじゃねぇぞ! 武器を捨てな! 武装を解除してそれをこっちに寄越せ!」
プロト・ティアーズの操縦者が、人質の箒の耳にナイフが突きつけている。首ではなく耳だ。逆らえば死なない程度に切り刻むってか。人質の耳を削ぐ、鼻を削ぐ、目を抉る。しかし命は取らない。最も厄介な活用方法だな、おい。
「………」
『……相変わらず甘いな。だが、きっちり生き残れ』
メダジャリバーを捨てて、オーカテドラルの傾きを戻して変身を解除し、『DXオーズドライバーSDX』をプロト・ティアーズの方に投げた。投げられたドライバーは操縦者の手に収まった。
「これで満足か?」
「あ? んな訳ねぇだろ。このままコイツを餌にして本命の篠ノ之束を引きずり出すんだよ」
やはり、束が目当てか。妹は束に言う事を聞かせるための首輪って所か。しかし、人質を解放しないことを承知の上でドライバーを渡したのだ。後はどれだけ時間を稼げるか、どれだけ怪我を負わずに凌げるかだ。
「それにテメェにも用がある。一応、確認するがスコールをズタボロにしたのはテメェか? 全身装甲のお蔭で中身が誰かイマイチ分からなくってよ。声は幾らでも変えられるだろうし、万が一にも別人だったら面倒だからよ」
「……あの全身サイボーグのアバズレがどうかしたのか?」
そう答えた瞬間、火山の噴火の様に蜘蛛女が激昂した。
「やっぱりてめぇかああああああああああッッ!!」
顔は見えないが、憤怒の形相で此方に向かってくるのが分かる。機械仕掛けの蜘蛛が、ブレードが備えられた八本の装甲脚を使って俺に襲い掛かる。だが、これでも7年間は生身での対IS戦闘も習ってきたのだ。八本の装甲脚をかわし、かわせない所はコンバットナイフで受ける。
「はっ! いいねぇ! 少しくらい抵抗してくれねぇと面白くねぇ!」
「オータム。遊んでないで仕事をしろ」
「うるせぇぞエム! てめぇは黙ってろ!」
コイツがオータムで、あっちがエムね。偽名っぽいが覚えた。しかし、手数が違いすぎる上に膝を痛めている所為で、攻撃に対応しきれない。徐々に徐々に体に切り傷が増えていく。すると、今度は糸の様なモノを両手から作り出し、俺の左腕に絡めた。
「チェーンデスマッチって奴だ! オラァ!!」
左腕に絡まった糸を巧みに使って引き寄せ、容赦なくパンチを入れてくる。流石にこれは痛い。骨の折れた音と感触がする。
「ハハハハハハ! ザマ見ろ&スカッと爽やかな笑いが腹の底から込み上げて仕方ねぇぜッッ!!」
今度は地面に叩きつけられ、頭を蹴り上げられた。頭から血が出てきた。傷口が痛いというより熱い。鼻血も出てきやがった。
「ああ? 何だその目はよ? まさかまだ、勝てると思ってんのか? 無駄無駄無駄、諦めろ。テメェはここでこのオータム様の気が済むまで、死ぬまで殴られんだよ」
「……はっ。諦めろ? 諦めろだと? なるほど。世界の残酷さに屈服した、自分の弱さに耐えられなかったお前達らしい台詞だな。俺を舐めるなよ、卑劣な弱者が。来いよ。戦ってやる!」
鼻で笑ったことと、その台詞にイラついたのか、今度は腹に蹴りを入れて俺の体がサッカーボールの様に砂漠を転がった。
「何気取ってやがんだクソが! 正義の味方のつもりかテメェ! 知ってんだぜ、テメェが悪の組織が試験管で造ったクローン人間だってよぉ! まともに生まれてねぇ奴が生意気言ってんじゃねぇ!」
この野朗、言ってくれるじゃないか。『普通に生まれたこと』を『当然の権利』だと誤解した馬鹿が。それと、『正義の味方』は少なくとも、俺に言うべきじゃなかったな。
「……お前は勘違いしている」
「あん!?」
「俺は正義の味方なんかじゃない。正義の為に戦うんじゃない。どんな国でも正義を謳って戦争するんだ。そんなものの為になんて絶対に戦ってやるものか」
オータムにとって俺の答えが意外だったのか、首を傾げて今度は攻撃せずに聞き入っている。
「どんな立派な大義名分を掲げていても、人間の自由を奪う奴が。誰かの未来を奪う奴等は例外なく悪だ」
腹も頭も痛むがなんとか立ち上がり、オータムを見据えて言い放つ。
「例え、俺が悪と同じ存在なのだとしても、俺が悪から生まれたものなのだとしても、俺は誰かの自由を、未来を守るために戦う! それが、俺が目指した『仮面ライダー』だッッ!!」
「はっ! それがこのザマじゃねぇか! 死に損ないが笑わせんな!」
「俺だけじゃない! 例え、悪と同じ存在から生まれても、『仮面ライダー』になる奴が必ず現れる! 諦めない限り――『永遠に』!」
直後、エターナルメモリを入れているポケットから赤い光が溢れ出す。エターナルメモリの発光だと思うが、今まで見たことの無い現象だ。少佐が使ったときでも光った事なんて一度も無いのに。
「!? なんだぁ?」
「赤い、光?」
『ようやく隙を見せたなぁ……』
何をするのかと、人質から赤い輝きに意識を集中していたエムは、手にしていたドライバーから声が聞こえた事を不審に思い、視線を移すとドライバーから赤い腕が飛び出した。
「オラァッ!!」
「!?」
エムの顎に強烈なアッパーをお見舞いした右腕は、箒と掴むとドライバーからあふれ出した大量のセルメダルと一体化し赤い羽根に包まれた怪人の姿となった。
今のアンクの姿は鳥でも右腕でも無い、オーズドライバーを巻いた怪人態の姿。これで戦う事も出来るが、体が大量のセルメダルで構成される関係上、鳥の姿の時とは段違いにセルメダルを消耗する。攻撃を受ければその分更に消耗は加速する。
正直、稼いだ大量のセルメダルを多く消費するこの人質救出作戦はアンクとしては絶対にやりたくない作戦だった。しかし、人質が束の妹なので恩を売るのも悪くないと考え協力した。
「なんだありゃ!? 痛ッ! 今度は何だ!? って何だコイツ等!?」
『KUJAKU~♪』
アンクが遠隔操作で起動した大量のカンドロイドがオータムを襲う。タカ、タコ、プテラのカンドロイド達がオータムを攻撃。クジャクが左腕に絡まった蜘蛛の糸を切断し、チェーンデスマッチから解放された。
「ゴクロー! 受け取れ!」
アンクは人質となっていた箒をこっちに放り投げた。ちょっと乱暴すぎやしないか!?
「か、彼女キター?!」
「ッ!?」
こんな時に何言ってんだ俺。なでしこを受け止める弦太郎の様に、落下してくる箒を受け止める。見る限りでは傷一つ付いていない。驚いた顔はしているけど。だが、敵もさるもの。直ぐにエムがビットを展開し、俺の足を狙ってレーザーを撃ってきた。
この作戦で問題となるのはアラクネよりもBT兵器が搭載されたプロト・ティアーズ。4機のビットをどうにか攻略する必要があった。
その為にバイラスメモリの使用権をアンクに譲渡し、システムを狂わせて貰おうと思ったたが、バイラスメモリの力は本家のバイラスが精神体ではその真価を発揮できないように、俺が使わなければその力を充分に発揮できないらしい。
だが、その小さな力も要は使い方次第。アンクはその小さな力を最大限に発揮できる方法を考え、実行してくれた。
エムがゴクローの足を狙って撃ったレーザーは、何故か空に向かって湾曲した。不思議に思ったが、それならとビットそのものを向かわせるが、ビットの軌道が大きくずれる。外れたというよりもワザと外したと言う様な感じだ。
「なんだ!? どうなっている!?」
「BT兵器の標準の設定を弄ったからな! 設定を書き換えない限り、フレキシブルもビット自身もあいつ等に絶対当たらないんだよ!」
「貴様ぁああッッ!!」
激昂したエムが近接ブレードを手にアンクに襲い掛かる。攻撃を受ける度に、アンクのセルメダルで出来た体が削られていく。
「ああ、ウゼェ! てめぇ、ソレを狙ってあんなにあっさり渡したのか!?」
「二対一は卑怯だろ」
「ふざけてんじゃ……うがぁあああッッ!!」
36対1で戦っていた奴がどの口で何を言っているのか。カンドロイド達を破壊しながらオータムが箒を取り返そうとした所で、見えない何かに吹き飛ばされた。
オータムを吹き飛ばしたものは、インビジブルメモリで透明化した全長20mを超える怪物マシン『デウス・エクス・マキナ号』。本来脱出用に用意していたものだが、アンクが呼び寄せたのだ。オータムと一緒に数十体のカンドロイドは犠牲になったのだ……。
インビジブルが解除され、その姿を現した怪物マシンに腕の中の箒が驚いている。箒を抱えて怪物マシンの扉のロックを解除する。しかし、認証システムってこういう時物凄く面倒なシステムだな。
「ここで待ってろ。直ぐに終わらせてくる」
「え、あ、ああ。わ、わかった」
猿轡と縄をコンバットナイフで切り、箒にここで待つ様に言ってから扉を閉めた。しかし、抵抗すると思ったが素直だったな。
アンクはセルメダルを消費しながらもエムを足止めする為に戦っている。立ち上がったオータムからは苛立ちが伝わってくる。
ロストドライバーを腰に装着し、エターナルメモリを起動させる。赤い輝きは既に収まっている。
『ETERNAL!』
「変身!」
『ETERNAL!』
エターナルメモリの力で、仮面ライダーエターナルレッドフレアへと変身する。しかし、この時の変身はそれだけで終わらなかった。エターナルの表面を赤い稲妻が走り、背中から黒いマントが出現。胸部にはメモリスロットが付いたコンバットベルトが新たに装着される。しかし、その腕に宿る炎のラインは赤いまま。
『仮面ライダーエターナルレッドフレアエクストリーム』ってトコか。長いな、うん。
新たに出現したエターナルローブ。胸部にメモリスロットを備えたコンバットベルト。しかし腕や脚、背中には装着されていない。設定を確認すればブルーフレアの半分以下の出力しか出せない上に、防御能力も少佐のデブルーフレアと比べて低い。しかし、本家エターナルにも、デブルーフレアにも無いものが二つある。
一つは装着者の生体再生機能。これは本来、『白騎士』が持っている機能だったはず。エターナルが『白騎士』と『暮桜』を模倣して作られたことが原因だろうか。ただし、怪我が治っていくだけで痛みは消えない。体力も回復しない。更に血も抜けたままで、頭がちょっとクラクラする。
「隠し玉ってやつか……それならコッチも持ってんだよ!」
『SPIDER!』
そう言うオータムが取り出したのはなんとガイアメモリ。ギジメモリのスパイダーではない。スパイダーメモリを起動させたオータムはメモリをISに突き挿す。
スパイダーメモリの力を取り込んだアラクネは装甲の黄色の部分が紫色に変色し、頭部のヘッドギアが蜘蛛の様な形に変形、腕の装甲もより大型の物に変化していく
「ハハハハッッ!! そうだ、最初からこうすりゃ良かったんだ!!」
アラクネの指先から無数の子蜘蛛を模した小さいメカが大量に発射される。もしも、コレが俺の想像通りならとてつもなくヤバイ。飛んで此方に向かってくる子蜘蛛をエターナルローブとエターナルエッジで防ぐ。子蜘蛛は交戦しているアンクとエムにも向かっていく。
「! コレは!」
「なんだオータム。なんのつもり――」
瞬間、エムのプロト・ティアーズに取りついた子蜘蛛が赤く発熱し、搭乗者のエム諸共爆発した。アンクは危険に気が付いたようで子蜘蛛を炎弾で焼き払い、エムから距離を取ったが爆発に巻き込まれてしまった。
「がはっ……オータム、貴様ぁ……」
「生きてやがったか。ああ、ISが操縦者を守ったお蔭か」
爆発から放り出されたエムは、憎憎しい顔でオータムを睨むが、当のオータムは涼しい顔をしている。アンクもボロボロだが、ダメージはエムの方が大きいだろう。
「アンク、無事か?」
「ああ、前に聞いていたからな、『マイザーボマー』だっけか?」
言われてみればそうかも知れない。アレは『仮面ライダーカブト』のマイザーボマーとスパイダードーパントのハイブリットと考えた方がいいかもな。
「この子蜘蛛は取り付いた機械を自由に操れる。そして取り付いた機械を爆弾に変えられるんだよ。このクソガキのBT兵器も奪ってやった。クソウゼェ鳥のメカもだ。形勢逆転だなオイ」
そう言うオータムの周りに、蜘蛛の糸でグルグル巻きになったビットが四つ浮遊している。破壊されなかった数体のカンドロイドにも蜘蛛の糸が絡み付き、オータムへの攻撃を止めている。
「ゴクロー、お前このままで戦えるのか?」
「ああ、このまま突っ切る。この『エターナル』で終わらせる」
未だに怪人態を維持しているアンクの右手がエターナルに触れる。エターナルの情報を読み取っているようだ。
「……なるほどな。それならこれも必要だろ」
アンクの手から、6本のガイアメモリを受け取る。オーズドライバーに搭載されていたガイアメモリだ。内容はジョーカー、メタル、トリガー、サイクロン、ヒート、ルナだ。
「第二ラウンドだ。直ぐに片をつけてやる」
「ああ、そうだな、直ぐに片が付く。このオータム様の勝利と言う形になぁあああああああああッッ!!」
八本の装甲脚の実弾と四機のビットからのレーザー。更にカンドロイド爆弾。エターナルローブで実弾とレーザーを防ぎ、相手の飛び道具を一気に殲滅する為に、新しく追加された武器を左手に召喚する。
「プリズムビッカー!」
もう一つの追加された装備。盾であるビッカーシールドと、必殺剣のプリズムソードが合体した武器プリズムビッカー。ビッカーシールドのメモリスロットが本家の4つではなく6つになっているが、基本的には同じだ。
『CYCLONE・MAXIMUM-DRIVE!』
『HEAT・MAXIMUM-DRIVE!』
『LUNA・MAXIMUM-DRIVE!』
『TRIGGER・MAXIMUM-DRIVE!』
ビッカーシールドに4本のメモリを装填し、4本同時にマキシマムドライブを発動させる。四本のメモリの力がシールドの中心で一つに混ざり合い、七色に輝くビームを発射した。
「ビッカーファイナリュージョン!」
放たれた光線は激しい嵐の様に渦を巻き、幾重にも分かれて湾曲しながら、アラクネの八本の装甲脚と、スパイダーの力で奪った4つのビットとカンドロイド達に命中し、爆発した。
「な、なにぃ! クソッ! 他に何か使えるものは……」
「無理だオータム。お前では勝てない」
「黙れガキが! ん? そう言えば……」
「なんだ?」
「……テメェの体には監視用のナノマシンが入ってるんだったよなぁ」
オータムが何をやろうとしているのか察したエムは青褪めた。体内のナノマシンを介する事で、子蜘蛛の能力でエムの体を自由に動かす事ができる可能性に気が付いたオータムは、迷わず指先から子蜘蛛をエムに放ち、子蜘蛛はエムの体に食らい付く。エムの体は先程奪われたビットの様に蜘蛛の糸でグルグル巻きになっていく。
「ハハハッ! いいマリオネットが手に入ったぜ!」
「あ、あ、がぁぁ、いっぐぁぁぁ」
「てめえも『亡国機業』の端くれなら、ちゃんと戦わせてやらなきゃなぁ!」
銃を片手にオータムに操られたエムが此方に向かってくる。発射される銃弾は問題ないが、子蜘蛛が問題だ。エムに取り付いている子蜘蛛が段々と赤くなってきている。
「オラ、どうする! どうするんだ、『仮面ライダー』!」
「ゴクロー! 『プリズムブレイク』だ!」
アンクがプリズムソードの必殺技を使うことを促すが、相手はドーパントじゃない。ISも纏っていない生身の人間だ。成功するかどうか……。
「誰も死なせたくないのがお前の欲望だろうが!」
「! そうだな……それが俺の欲望だ!」
『PRISM!』
起動メモリのプリズムを柄に差し、プリズムソードを引き抜く。マキシマムスイッチを押して、プリズムメモリが最大出力を発揮する事を示すガイダンスボイスが流れる。
『PRISM・MAXIMUM-DRIVE!』
「セイヤァアアアアアアアアアアアアアアッッ!」
プリズムソードから放たれたエネルギーでエムを切り裂く。糸と服が切り裂かれ、一糸纏わぬ姿になったエムを抱きとめる。……駄目だったのか?
「気絶してるだけだ、子蜘蛛は消えてる。ついでにナノマシンもな」
触媒になっていた監視用ナノマシンも子蜘蛛と一緒に消してしまったらしい。エターナルローブで少女を包み、アンクに託す。エターナルエッジを右手に構え、オータムを見据える。
「……何だってんだ畜生、人質も見捨てられねぇ甘ちゃんだからイケると思ったのによぉぉ。せっかくクソムカつくガキも都合よく始末できると思ったのによぉぉ……」
ブツブツと独り言を言うオータム。……もしかして、ガイアメモリをドライバーに介さずにISへ直挿しした影響か?
「あああ、イラつくぜぇぇ! てめぇはさっきから、邪魔ばかりしやがってよぉおおおおおおおおッッ!!」
発狂した様に叫ぶオータムが飛ばす無数の子蜘蛛を、エターナルエッジから発生する赤いエネルギー波で全て切り裂いて突撃する。エターナルエッジにエターナルメモリを装填し、初めてエターナルのマキシマムドライブを発動させる。今までは相手を殺しかねない恐怖から、使用しなかったし出来なかった。しかし、今ならこのエターナルで出来る気がする。相手を殺さない、『メモリブレイク』が。
『ETERNAL・MAXIMUM-DRIVE!』
「ぐ……な、なんだ、いきなり!?」
スパイダーメモリの力がエターナルのマキシマムドライブにより動きを封じられる。右足に赤い炎を模ったエネルギーが集中する。ジャンプして∞の軌跡を描くように回転し、アラクネにスピニングキックを叩き込む。
「セイヤァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」
『エターナルレクイエム』を受けたアラクネは装甲を空中に散らしながら、凄まじい勢いで蹴り飛ばされた。左手を掲げ、スッと倒れるオータムに指を差して、決め台詞を言った。
「さあ、お前の罪を……数えろ!」
直後にアラクネが爆発。スパイダーメモリが排出され、パキンと音を立てて壊れた。しかし、オータムは意識を保ち、しっかりと生きていた。
「クソ……テメェみてぇな奴に……」
「そこまでよ、オータム」
戦場になんの前触れも無く現れたのは、忘れもしない黄金のIS『ゴールデン・ドーン』。スコール・ミューゼルだ。
「左腕の調子は随分と良さそうだな」
「……ええ、おかげさまでね」
既に体の修理は完了しているようで、少佐の前に立っていた時と同じ姿だ。
「次の相手はお前か? 30人以上相手にしたが、俺はまだまだイケるぞ」
「……やめておくわ。貴方の相手は私の体が持ちそうに無いもの」
ちらりとアンクに抱かれるエムを見た後で、腕に抱かれたオータムを見てそう答えるスコール。正直体力の限界でこれ以上の戦闘は厳しい。タフな台詞でハッタリをかました……つもりだったのだが、イマイチだったな。逆に上手く返された気がする。
「また会いましょう、『仮面ライダー』のボーヤ。勿体無いけど、エムはあげるわ。とても飼いならせるとは思えないけどね……」
オータムを回収してスコールは去っていった。付近にISの反応が無いことを確認して気絶したエムを抱えてアンクと共に箒が居る、デウス・エクス・マキナ号へ向かった。
○○○
結論から言うと私の目論みは外れた。
「まさかレッドフレアのままでエクストリームに到達するなんて……」
本来の計画では最低でもオータムは確実に死ぬ筈だった。
仮面ライダーエターナル。オリジナルの変身者である大道克己は徐々に記憶が失われていくネクロオーバーであり、ブルーフレアへの変身は加頭と大道のエターナルメモリの適合率の違いからくるものかと言われれば、そうとは言い切れない。
ブルーフレアについてこんな解釈があると彼は言った。『エターナルのレッドフレアの赤は人間としての感情の表れであり、それが大道の狂気を得て青い炎になった』のだと。『ネクロオーバーの大道は人間として大事な物を欠落するが故に、青い炎を纏い完全燃焼した』のだと。
そこで、少佐が変身したエターナルが初めからブルーフレアだったのは、エターナルメモリが少佐の狂気を飲み込んだ結果、少佐自身が完全燃焼するために青い炎を纏ったのではないかと推測した。
ゴクローの場合はどうか。仲間を皆殺しにされ、自分一人が生き残った。打倒すべき敵として『亡国機業』を認識したようだが、少佐の様な狂気も、私の様な復讐心も生まれていなかった。
そこで一計を案じた。ゴクローが誰かの為に戦うならば、それに準じて相手の命を奪う非情の覚悟をさせ、本来の人間性を失わせれば良いのだと。
その為に初期型のガイアメモリをISに挿す事で使用出来るように改造し、出来るだけ凶暴な性格をした、ゴクローを憎んでいる人間を選んで接触し、ガイアメモリを渡した。使用者であるオータムの手によってスパイダーメモリは独自の能力を開花した。
人質を助けようとゴクローは動くだろう。その際にアンクに協力を求め、オーズドライバーを手放す筈。となれば、エターナルの力に頼らざるを得ない。そして、エターナルメモリの能力を使えば切り抜けることはできる。
しかし、その為にオータムを犠牲にするしかない。そんな状況を作り出し、他人の命を奪い、犠牲にして生き残ることを実感させる。敵を救うべき弱者と考えていながら、敵を殺す事でしか止められない現実が、彼の理想を破壊する事によって、ブルーフレアへと覚醒させる予定だった。
それがどうだ。エターナルは予想外の進化を遂げて、オータムは生き残った。エターナルに刻まれた赤い炎のラインこそが、彼が相手の命を奪う非情の覚悟などしていない証拠だ。予測を超えた事態に腹立たしさが募っていく。
「どこまで私の思い通りにならないの……ゴクロー・シュレディンガーッッ!!」
○○○
スコールにオータムを回収されてしまったが、何とか誰一人死なせる事無く戦い抜いた。エムを抱えて怪物マシンの中に入ると、箒がエムを見てやたらと驚いていた。
「な、なんでそいつを連れてきてるんだ!?」
「人間爆弾にされかけたのを助けた。そんで仲間から見捨てられたから拾った」
「仲間と言うより手駒って感じだったがな」
人質にされて、ナイフを突きつけられていた箒の気持ちも分からなくは無いが、放って置くわけにも行かなかった。あげるって言われたし。とりあえず、ラボに居る束とクロエに向けて連絡を取る。
「これでどうだ? 束? クロエ?」
『うんうん! 大・大・大・大・大満足だよゴッくん!』
『兄様! 怪我は大丈夫なんですか!?』
「ああ、『エターナル』のお蔭で大体治った」
「……待て、ISの反応だ……『テンペスタ』!? アリーシャ・ジョゼスターフか!」
「! 世界第二位のIS操縦者か!」
ここで出してくるか! 出撃のタイミングを考えると連合軍の『最後の切り札』って所か。
「……ん? 俺達じゃない。アバズレの方を追って行ったぞ?」
スコールの方を追った? 俺達に向かわないで? 理由は分からないが、もしかしてチャンスか? そろそろ体の方も限界だ。思わず膝を床について崩れてしまう。
「だ、大丈夫なのか?」
「大丈夫……とは言えないな。正直辛い」
「ちっ! 脱出するぞ、ウサギ女! 今しかねぇ!」
『あいあいさー!』
『HEAT・MAXIMUM-DRIVE!』
『ROCKET・MAXIMUM-DRIVE!』
ラボからは人参型ロケットが飛び出し、デウス・エクス・マキナ号が空を飛んだ。後はアンクに任せる。今回のセルメダルの収支計算がどうなっているのか考えると後が怖いな。俺は安堵感から横になると直ぐに意識を手放した。
『仮面ライダー』がIS大戦の前に撃破したISは5機。このIS大戦で撃破したISの数は37機。合計42機のISを撃破している。この世界に存在するISは全部で467機。その内、24個はミレニアムが研究の過程で使い潰した為、世界には現在443機が存在する。
つまり、この世界のISの約11分の1を一人で倒したのである。この事実にゴクローが気づくのはもう少し後のお話。
キャラクタァア~紹介&解説
オータム
アラクネを使っているおかげで、本作初の敵ガイアメモリ使いに選ばれた悪の組織の女幹部。メモリは勿論スパイダー。実際はメモリの実験台兼、エターナルの踏み台になっていた不憫な人。でも、颯爽と現れたスコールにお持ち帰りされて大・大・大・大・大興奮。
人質、変身前の状態で攻撃、味方ごと攻撃、人間爆弾と、悪役がやるであろう悪行を全てやってもらうつもりで書いた。メモリの影響もあるけど。
エム(織斑マドカ)
織斑千冬にそっくりなイマイチ正体が不明な少女。実は試作品のプロト・ティアーズでフレキシブルが出来る、普通に規格外なすごい子。結果的に箒と一緒にお持ち帰りできて、マドカの正体を知る束は大・大・大・大・大歓喜。
その正体が二卵性の双子なのか、一夏の後から生まれた妹なのか、初代ブリュンヒルデの細胞から作られたクローン少女なのか。……まさか、一夏も実はそのクチと言うオチじゃなかろうな。
アリーシャ・ジョゼスターフ
ちょい役。IS大戦における連合軍の切り札。28歳。投入前に『亡国機業』が介入した為に不発。戦いで弱ったテロリストを捕獲する様に言われたので『ゴールデン・ドーン』を単身で追ったが撒かれた。「ヒーローとテロリストを間違えるなんて有り得ないのサ♪」と供述しているが、本当は何時か万全の状態の仮面ライダーと戦いたいだけ。
プロト・ティアーズ
マドカが使う、実戦投入を想定されていない『ブルー・ティアーズ』の実験機。流石に原作開始前に『サイレント・ゼフィルス』出すのは無理だろうと思って出した。原作でも『ティアーズ型』って言うくらいだから他にも同型があるはず。小説版『仮面ライダーオーズ』のバースの章を見た影響もあるけど。
仮面ライダーエターナルレッドフレアエクストリーム
ゴクローがレッドフレアのままで至った『エクストリィィィム!』なエターナル。全体的な戦闘能力は本家エターナルにも劣るが、代わりに生体再生機能とプリズムビッカーとプリズムメモリが追加された独自の能力と武装を獲得している。マントを羽織って剣と楯を装備し戦う姿は、とてもダークライダーには見えない。
ブルーフレアの解釈は大道克己役の松岡充さんのインタビューから。設定的には『仮面ライダークウガ』のレッドアイ・アルティメットフォームや、『仮面ライダーアギト』のエクシードギルスに近い。
一応、『白騎士』と『暮桜』を模倣して生まれた存在なので、もう一つの『白式』をイメージしていたりする。あと一回『白式』と戦わせて見たい。
プリズムビッカー
今作では最大で六本同時マキシマムが可能な盾と剣。『プリズムブレイク』はイエスタディドーパントの刻印を消せる事から、恐らくスパイダードーパントのリア充破壊爆弾である子蜘蛛も消せると予想。
もしも、鳴海壮吉がビギンズナイトで死んでいなかったら、翔太郎とフィリップの手で呪縛から解放され、最愛の娘の結婚式に出られたのかも……と、言う妄想を元に書いてみた。