「んあ? 何よメヌ唐突に、欲しいルルブでも出たのか?」
「それは通販で確保してるから問題ないです。私が言うのはもう一つ、サーク「よーし俺ちょっと家出するわ」理子、かなめ」
「うっうー! ユーくん、お着替えから逃げちゃダメだよー?」ガシッ
「ふふーふ。メヌちゃんに声をかけられた時点で逃げなかったから負けだよお兄ちゃん」ガシッ
「HA・NA・SE! 何が悲しくて用もないのに女装するんだよ!?」
「お前に拒否権があると思って? そもそもあのゲームでキャラモデルにした人が会いたいって言ってたのは伝えたじゃない、忘れたの?」
「覚えてるから抵抗してるんですよねえ!? せめて女装しない権利を主張する!」
「却下です。二人とも、さっさと連れてっちゃって」
「「イエッサー!!」」
「マジで夾竹桃関連の案件ロクなのがねえなあ!?」
あ、時系列は適当です。
「あ、こっちやでー! こんちは|茉凛《まりん)さん、お会い出来て嬉しいで!」
「初めまして乙葉まりあさん、早速ですが帰っていいですか?」
「なんやツレないなあ……でもそういうとこがモノホンの茉凛ちゃんみたいでええわあ! ウチ、あなたの大ファンなんやで?」
「それはどうも、あとさっきの発言は本心からですのであしからず」
「ジュン、逃げたらわかりますよね?」
分かってるから逃げてないんだよ、逃げたら確実に、
メヌがウソ泣きでチクる→キレたアリアにフルボッコされる→追い討ちでメヌに抉られる
という、地獄コンボが成立するの分かりきってるし。俺だって命は惜しい、なのでプライドは捨てる(白目)
というわけでどうも、現在乙山茉凛の遠山潤です。女装姿の名前は、いつぞやの(連行された)冬コミでやらされた男の娘シークレットヒロイン(公開されている)のものな。
で、目の前にいるのはこのキャラのモデルとなったピンク(さすがにアリアとは違う人工色)ツーテールの髪と華奢な体格を、アニエス学園の制服に身を包んだアニメキャラみたいな美少女ーーっぽい愛嬌のある転装生《チェンジ》、乙葉まりあさん。俺みたいなパチモン女装とは違う、ガチで女子力の高い男の娘である。
「わあ、改めて近くで見るとホンマにキレイやなー。メイクさんの腕もええけど、素材もええ感じやねこれ」
「あの、そんな触られても困るんですが」
集合場所が都内の駅前だし、車椅子のメヌを押してて両手が塞がってるから触られ放題+(い見た目は)美少女の三人組だから目立つんだよ。そこの女子、ハアハアしながらこっち見ーーいや女子かい(今更)
「えー? 減るもんやないし別にええやろ? メヌエットさんには茉凛さんを好きにしてええって聞いとるし!」
「……オイ、メヌ」
「作品のための尊い犠牲です。……その目をやめてください、さすがに怖いです」
「にゃははは。じょ、冗談やから落ち着いて、な? ウチもつい嬉しくて、初対面の人相手にふざけ過ぎたわ」
「……。何だ冗談か、驚かせんなよ」
久々に『最合理性』で動くとこだったわ、アリアの折檻も忘れて。メヌが冷や汗かいてるし乙葉さんも青い顔してるし、ちょっと悪いことしたかね。
「すまんな。俺はそっち方面じゃないから、身の危険を感じるとつい身構えちまうんだ」
「そういえばジュン、これと記憶干渉だけはダメでしたね……かなめに感情を弄られても怒らなかったのに、変なの」
「お前目の前で自作シナリオを破られたらどう思う?」
「殺します」
即答、そういうことだよ。
「二人とも、殺し屋もビックリな目をしてるんやけど……いや、ウチも茉凛さんに興味はあるけど、好きなのは女の子やから心配せんといて」
「「「!!」」」ガタッ
オイそこの知らないおねーさん達、落ち着け。それはあなた達の望む百合空間ではないから。
というかエルなど目じゃないレベルの完成度と感性なのに、好きなのは女子の方なのか。
「カワイイは正義やからね!」
「どこかで聞いたことありますね、それ」
「理子と会わせたらどうなりますかね、これ」
決まってる、(ネタ的な意味で)爆発事故が起きる。
「……なんかジュンにバカにされてる気がする!? なんでだ!?」
「私はチョコケーキをお願いしますね、マリン」
「では私はこのショートケーキを」
「「ホールで」」
「んえ!? ちょ、二人とも食べ過ぎとか太るとかそういうレベルを超えてない!?」
「「?」」
「え、なにその普通でしょ? みたいな顔。カワイイけど、カワイイけど普通にエグイ量やないの!?」
寧ろ控えてるレベルなんだけど、特にメヌは。店員さんが微妙に引きつった営業スマイルになってるけど、女子の甘味への胃袋は無限大なんだから気にしちゃだめですよ(←女装男子のセリフ)
「これが茉凛ちゃんの元の姿なんかあ。このイケメンさんがこんなキレイとカワイイ系を合わせた姿になるなんて、どんな魔法なんや?」
「魔法なんて単語を軽々しく使うものじゃありませんよ。私のは乙葉さんと違って体格を魔術で変えていますし、メイクは人にやってもらってますから」
エルに施したこともあるし、自分でも出来なくはないが、腕前では変装の達人である理子の方が遥かに上だ。あいつの場合、魔術面さえ弄れれば本気でバレないレベルだからな。
「まりあでええよー茉凛さん、苗字よりも名前で呼ばれる方が好きやから。いやでも、やっぱりここまでなれるのはーーあれ、じゃあ声とか仕草は?」
「それは純粋にマリンの技能と記憶力ですね。服装に合わせた動きを心掛けているとか」
「……茉凛さん、毎回そんなことしてるん?」
「外見に反した動きをして怪しまれてしまっては、変装としては二流でしょう」
「いやまあそうなんやけど……茉凛さんを毎回こういう格好にさせたがる理由分かったわ。職人のこだわりというか、着せ替えがいがある感じやねえ」
「全く嬉しくないです」
「大丈夫です、そのうち女装を自分からするように洗脳(布教)しますから」
「……」
不穏な言葉が隠れてると思うけど、敢えて突っ込まないでおこう。「ウチもこの格好ばかりに甘えてないで、色々カワイイのに挑戦せんと……」とかまりあさんが言ってるけど、対抗しないでいいから。圧倒的にそっちの勝ちでいいから。
「……それにしても」
「? なんですかマリア。そんなに見ても、お代わりは止めませんよ」
「それは別にいですよ。私だって好きに食べてますし」
「え、ホール平気で平らげて更にまだ食べるん……!? そんな暴飲暴食でなんで太らないんや……!?」
「「? 頭使った分補給してるだですよ?」」
「お、女の敵、いや理想形やー!!」
騒ぐと追い出されるぞ、というかなんだ理想形って、片方男だぞ。
(メヌが積極的に人と会う……ですか。変わるものですね)
アリアは感動で目を潤ませていたし(オメーも似たようなもんだったじゃんって言ったら殴られた、解せぬ)、「お嬢様が!?」「人と会いに!?」ってサシェさん、エンドラさんも二人で一人のリアクションしてたな。
普通にしてたのは「子供は成長していくものなのよ」って微笑んでいたかなえさんくらいだったな。母は強し。
まあ、ある意味一番変わったのはコイツなんだろうな。まりあさんとオススメの作品(百合か疑似百合)について話している姿なんて、初めて会った時からは想像も付かんかったし。
「……何ですかマリア、その親戚の小さい子の成長を見るお姉さんみたいな目は」
「具体的過ぎてどんなものを感じたんですかと言いたくなりますね」
「なーなー茉凛さん! 今メヌちゃんに聞いたんやけど、茉凛さんの知り合いにすっごい美人の人がおるって本当?」
「美人? ああ、原田のことですか。写真見ます?」
「うん、みーせーて」ピシッ
……なんか見た瞬間固まったけど、一体どうした。
「……なあ茉凛さん。これ、変装とかメイクしとるん?」
「いえ、これが普段着でノーメイクですね。写真写りは悪い方なので、実物はもうちょっと綺麗ですよ」
「……」プルプル
「……まりあさん? 大丈夫ですか?」
「……茉凛さん、ちょっとお願いしてもええ?」
おまけ 後日
「急に次の休みに呼び出すなんて、どうしたんですかね遠山君は?」
「……思い付かないな。まあ用事もなかったし、いいだろう」
「そうですね」(思いがけず、凍刃君と二人で出てこれましたし……遠山君、ナイスです!)
「……ん、来たか。……?」
「…………」ジッー
「……どちら様だ?」
「始めまして、ウチは乙葉まりあ言います! 初対面で言うことやないんやけど、あなたに惚れ込みました! お友達になってください!」
「……は?」
「は、はあ!? 遠山君、何とんでもない人連れてきてるんですか!?」
(またライバルが増えてーー)
「いや、そいつ原田や俺と性別同じだぞ」
「ーーえ!? ……ああ、凍刃君と同じタイプですか。それだったら納得しました」
「それで納得するのか」
あとがき
はい、というわけで思い付き小話です。なんでこれ書いたかって? 4月4日は男の娘の日ってことを思い出して、アリア界隈からこの娘(♂)関連でネタが思い浮かんだので。
というわけでどうも、ゆっくりいんです。連載完結からお久しぶりですね、お待たせしております。
……四日しか経ってない? ハハハ、ナンノコトヤラ。
さて、今回はここまでです。今後もこんな感じのゆるっとぐだっとな感じで書いていくので、よろしければ読んでやってください。
ぶっちゃけ中学時代の話って見たいです?
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読みたい!
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いいから続きを書け
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各ヒロインとのイチャイチャを……
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エッチなのはいいと思います()