遠山潤は楽しみたい   作:ゆっくりいんⅡ

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 とある魔女からの苦情
?「作者、私の扱いがここまで悪いのは何故だ!? 恨みでもあるのか!」
作「いや、恨みあるのなんて精々ブラドくらいですけど……」
?「ならどうしてこうなった!? 説明しろ!」
作「デュランダル向けんでくださいよ……強いて言うなら、ノリ?」
?「成敗いぃ!!」
作「え、ちょ、ま」

 ( ゚д|| ゚)←作者
 
 ……というわけで、今回ジャンヌは出ません。
ジ「どういう意味だ!?」



小話 覗きは男でも女でもアカン

 

 

 武偵指定研修村、というのがある。要約すると武偵の育成を外部で長期間行う施設のことで、プロ野球のキャンプとかと同じようなものと思ってもらえばいい。

「『かげろうの宿』、ここか。おーいお前等、着いたぞ」

 車を駐車場に停め、同乗者達に呼びかける。いやあ長かった、僻地だから遠いし行きにくいでメンドクセーの何の。

『スヤァ…』

 同乗者――理子・白雪・レキ(+ハイマキ)の三人は全員寝ていた。直前まで騒いでた(レキはいつも通りイラスト描いてた)んだがな、間が悪い。

 レキは一声掛けるとすぐに起きたが、他二名は起きる様子はない。「くふふ、ユーくんいいカッコですなぁ……」とか寝言ほざいてる理子の寝顔が妙にイラッとしたので、

 パァン!!

「ふおおぉぉ!? 何々、敵襲、エマージェンシー!?」

「ふひゃあ!? ばば爆発!? 潤ちゃん大丈夫!?」

 うぉーにんうぉーにんうるさい理子とキョロキョロオロオロする二人の出来上がりである。お前等本当に寝起き?

「おはよう二人とも、もう着いたから荷物降ろすぞ」

「ユーくん普通に起こしてくれないとか、ぷんぷんがおーだぞ!」

「もう、潤ちゃんビックリしたよ」

「理子の寝顔がウザかったから仕方ない」

「じゃあしょうがないね」

「そうですね」

「ユキちゃんどころかレキュんにも肯定された!? みんなひーどーいー!!」

 言いながら何故レキに抱きつく。そしてどさくさに紛れて胸を揉む――「ドライセン!?」あ、ドラグノフのケースでど突かれた。

「降りて早々何やってんのよ理子は……」

「セクハラ」

「つまりいつも通りですわね」

「否定したいけど出来ないのが嫌なところね……とりあえずジュン、メヌの荷物お願い」

「ああ、了解。……女の荷物は多いのが相場だけど、それにしても重すぎねえか?」

「TRPG道具一式の持ち歩きは私の嗜みですわ」

「メヌ、ここに何しに来たか分かってる?」

「湯煙殺人事件的なシナリオある?」

「場所に合わせて要望する辺りノリノリね!? だから遊びに来た訳じゃないでしょうが!」

「息抜きは基本」

「生き方そのものが息抜きみたいなくせに何言ってんのよ」

「アチャー、一本取られた気分」

「お姉様、座布団いりますか?」

「要らないわよ、〇天司会変わったばかりだからって無理矢理ネタに入れるな! あとジュンはちょっとくらい否定しろ!」

「流石に冗談だよ、半分は」

「オイ残り半分」

「ナンノコトヤラ。ところで剛の奴はどうしたんだ?」

 いつもなら「女の子の荷物なら幾らでも持ってやるぜ!」とかアホなこと言いつつ大量の荷物抱えてそうなもんだが、今は精神を喰われた廃人のように真っ白くなっている。何やらかしたコイツ。

「ああ、ゴウキなら車の中でデリカシーのないこと言いまくるもんだから」

「私と綴先生で『ちょっと』責めてあげたのよ」

「途中から真っ白になってたけど、それでも運転は安定してる辺り流石武藤君だね」

 最後は亮の発言。まあなんだ、つまりまとめると、

「コイツの自業自得か」

「二人の言葉責めは自業自得でまとめていいレベルなのかな?」

 いやいいだろ。確かにあの二人から同時に責められたら精神がどうにかなりそうだが、んなもん言わせる方が悪い。寧ろそれだけ言わせるとかマジで何口にしたんだ。

「おーい剛、起きろー」

「……」

 へんじがない、ただのしかばねのようだ。

「起きないと綴先生に頼んでもう一回責め立ててもら」

「よう潤、ようやく着いたな!」

 死体蹴りしたら蘇生したでござる。軽くトラウマになってねえか。

 まあふざけるのはここまでにして、旅館に入るとしよう。今日は研修や旅行じゃなく、依頼で来たんだし。

 

 

「というわけで温泉です、イエーイ!」

「イエーイ」

「……イエーイ」

「全体的にテンション低!?」

「いややらないから」

「タオル一枚で騒ぐのはちょっと……」

「峰うるさいぞー……はあ、ダリー」

 どうも、りこりんこと峰理子です! 温泉でハイになったテンションに乗ってくれるのがローの二人だけだけど、別に悲しくはないよ! いつものことだし!(泣)

 さてそれはそうと、待ちに待った温泉シーンですよ温泉シーン! 普段はたまにアリアんとかのお風呂にちょっと乱入するくらいだし、こういう時によく見ておかないとねえぇ……

「こいつが何考えてるのか手に取るように分かるのが嫌だわ……とりあえずゆっくりしたいんだから、騒ぐんじゃないわよ」

 溜息吐いて身体を洗うアリアんは予想通り見事なツルペ「ナンカイッタ?」スレンダーだね! 大丈夫、そっちの需要もあるよ!

「あの、女同士でもジロジロ見られるのは恥ずかしいんだけど……め、メヌちゃん行こうか?」

 ヌエっちを引っ張ってそそくさと湯船につかるユキちゃんは、うーん流石のナイスバデー。属性的には大和撫子なのにこのアンバランスさ、男の子にゃ辛抱なりませんな!

「理子がイヤラシイのはいつものことですし、気にしないほうが得ですよ二人とも」

 スパッと酷いこと言うヌエっちは小柄なのに合わせて色々控えめ、しかし理子には分かる、姉より優れたスリーサイズを有していると……!

 アリアん(姉)もそれに気付いたのか、「私よりある、だと……!?」と、温泉の床でorzしていた。現実は残酷なんだよ……(遠い目)

「……」

 打ちひしがれるアリアんををクールにスルーしてハイマキと一緒に身体を洗い始めるレキュんは、おっきくはないが出るとこは出てる。これは脱ぐと中々のもんですなあ……

「あー……しまった、女将から酒貰ってくれば良かった……」

 額に手を当てている綴先生は――ほほう、ユキちゃんには及ばないまでも中々のワガママボディ。世の紳士諸君と百合の方々、放っておくには勿体無い逸材ですぜ? 理子は勿論年上もオッケーだからありがたく見させていただきます、ありがたやありがたや。

 とと、観察も重要だけど温泉に入るんだった。理子も座って身体を洗い始めましょー。

「というかさ……」

「ん? なにかわひゃあ!?」

 な、なにごとー!? 突然近付いてきたアリアんに理子のお胸を揉まれたのですが!?

「他人の事ジロジロ見てるけど、アンタも随分立派なもの持ってるじゃないの」

 ムニムニ、ムニムニ。

「や、ちょ、アリ、ア……」

「やっぱ大きいわねえ、そして柔らかい……男が大きい胸好きなの、ちょっとだけ分かる気もするわ」

 後ろに回ったアリアんが溜息吐いてるが、首に当たってこそばゆい。というか揉みながら冷静に呟かない――ちょ、場所動かしてる!?

「だ、ダメ! そこは、ホントにダメ!」

「あ、ごめん」

 理子が叫ぶとアリアんは素直に離れてくれた。あ、危なかった。

「……案外責められると弱いのね、アンタって。普段は自分から行く癖に」

「不意打ちでくれば理子だってああなるよお……」

「あ、あわわ……女の子同士なのに、女の子同士なのに……」

「あらあら、お姉様も口で言うほど嫌ではないんですね?」

 湯船に浸かってるユキちゃんが顔を真っ赤にし、ヌエっちはニヤニヤしながらこっちを見ている。やべえ、これは出た後弄り倒される!?

「理子さん」

 そしてレキュんはいつもの無表情で仕切り板を指差し、

「男子の皆さん、あちらにいますが」

 …………

「にゃーーーーーーーーー!?」

 

 

 何でこっちに移した、遠山潤だ。ちなみにアリアと理子のやり取りは……まあ、壁一枚だしバッチリ聞こえてるわな。これ出て鉢合わせたらどういう顔すればいいんだよ。

「向こうは楽しそうだね」

「それで済ませるお前がすげえわ」

 並んで湯に浸かっている亮はいつものイケメンスマイルだ。こいつ精神的に滅茶苦茶タフだわ。対し剛は――オイ、どこ押さえてんだお前。

「だって女の子同士が乳繰り合ってんだぜ! 声だけとはいえこれで興奮しない奴がいるのかよ!?」

「どっちかっつーと気まずい」

「気にしないであげるのが一番いいんじゃないかな?」

「お前等ホントに男か!?」

 どーいう意味だオイ。単純にお前ほど欲求に忠実じゃないだけだよ。

『ふ、ふふふ、中々テクニシャンですなあアリアん! もう少しでりこりんもその気になるところだったよ!

 ではお返しに、アリアんも気持ちよくなっちゃいましょうねえ~!』

『いやいきなりしたのは悪かったけど、顔真っ赤なの誤魔化せてな――ちょ、や』

『あれ? アリアんちょっと胸大きくなった?』

『それ本当? 嘘だったら風穴開けるわよ』

『怖い、怖いよめっちゃ真顔なんですけど!? う、嘘じゃないよ、おっぱいソムリエのりこりんには直に触れば即座に違いが分かるのですよ!』

『うん、要らないスキルと称号だってのは分かるわ。そういえばジュンのとこに住み始めてから、下着のサイズがきつくなってきたような……』

『そういえば私も……』『私も、図ったら成長してましたね……』『理子もそういえば……』

 何か板越しでもこっち見られてるの分かるんですけど。こっち見んな。

『『『『まさかユーくん(潤ちゃん、ジュン)が何か……?』』』』

 なんかとんでもない冤罪押し付けられそうなんだが、俺関係ねえから。いや剛「GJ!」じゃねえよサムズアップすんな。

「うおお、ここまで聞いたら俺は、俺はもう我慢できない! 待ってろ俺のユートピアー!」

 叫びながら、剛は仕切り板を昇ろうとする。おーい、待ってるのはユートピア(楽園)じゃなくてヘブン(天国)だぞ、ぶち殺される敵な意味で。

「遠山くん、止めないの?」

「言っても聞かねえだろアイツは……流石に温泉でバカやる気はない」

 大体、アレだけデカイ声出してんだから気づかない訳が「ギャアアァ!?」ほらやっぱり。

 理子あたりに爆弾でも投げつけられたのか、剛は黒焦げのアフロヘアーになっていた。殺傷力低いので良かったな、木っ端微塵にされても文句言えなかったぞ。

「いい湯だね」

「そうだな」

 ドタバタしてる向こうと違って、こっちはゆったりしたもんである。温泉くらいゆっくりすりゃいいのに、女三人寄ると姦しいっつってもここくらい例外でいいだろうに。

「ユキちゃんユキちゃん、ユーくんの後姿はセクシィだと思いませんか?」

「ああ、なんで防水カメラ持ってこなかったんだろ――ひゃう!?」

 ……あとそこ二名、覗きは女でも犯罪だからな? 減るもんじゃないし見てどーすんだとは思うけどよ。あと、白雪は変な声上げてたが……

 なお、出てから女子達とエンカウントした際、理子の奴はいつも以上にハイだったが――顔が赤いし、誤魔化そうとしているのがバレバレである。薮蛇なんで追求はしなかったけどな。

 

 

 旅館に『幽霊』が出て困っているので、対処して欲しい。女将さんから頼まれた今回の依頼である。何でも物が浮いたり部屋を散らかされたりということが度々あるらしく、シーズンの外れた今のうちに終わらせておきたいらしい。

 この依頼は教務科(マスターズ)から白雪(と何故か俺)が指名され、どこからか聞きつけた理子が「温泉いきたーい!」と騒いで付いてくることになり(白雪は舌打ちしてた)、話を聞いたホームズ姉妹が日本の温泉に興味を持ち、人が多くなったので剛に運転を頼み、亮も面白そうだからと同行を申し出た。まあ、結果的にいつもの面子である。

 ちなみに綴先生は旅館の女将さんと知り合いで一緒に飲むため、レキはハイマキと一緒にいつの間にか車に乗っていた。諜報科(レザド)の人間かお前は。

 余談だが、超能力(ステルス)関係ということでジャンヌに白雪が声を掛けていたらしいが、「またろくでもない目に遭うんだろう!? そんなこと、させる訳にはいかない!」と叫んで逃げたらしい。何と戦ってるんだよお前。

 という訳で、俺と白雪は幽霊の痕跡を探して旅館内を回っている。他の連中? 卓球してるけど。

「喰らえりこりん必殺、ロッソ・〇ァンタズマ!」

「残像作ってそれっぽく見せてるだけでしょうが!」

 人が仕事してる中、こいつら楽しそうである。着いた時の注意勧告どこいった。

「喰らえ風穴スマッシュ!」

「ノブシ!? あ、ユーくんユキちゃんお帰りー。どうだった?」

「うん、収穫はあったよ。あとは夜まで待つだけだね」

「で、理子、卓球ボールがボクシングのストレート喰らったみたいにめり込んでるんだが」

「一瞬意識持ってかれそうになった」

 ナニソレコワイ。しかもボールに凹みが一切ないのが恐ろしい。どういう力加減で打ったんだよアリアの奴。

「おーいお前等、女将がそろそろ夕食にするだと。アタシも腹減ったからさっさと来いよー」

 と、顔だけ出してさっさと消える謎の美人――もとい綴先生。いやあれ先生なのか?

「何か、魔女から魔法少女に戻ったくらい邪気の払われた人を見た気分なんだが……」

「お風呂出てからずっとあんな感じですよ。ここの温泉の効果かしらね?」

 いやメヌ、それどんな効能だよ。綴先生が真人間に見えるとか怖すぎるわ。

 その後女将さんの作ってくれた夕食に舌鼓を打ち、白雪の提案で大部屋の一つに全員が集まって菓子を食いつつ(主に女性陣の食いしん坊ども、夕飯が全然足りないらしい)遊びに興じている。

「うおお、唸れ俺のダイス! ってここでファンブルかよォ!?」

「はい、じゃあ敵の攻撃が自動で入ります――あ、即死圏内ねこれ」

「ギャアアアまた死んだああ!?」

「これで三人目ね」

「む、武藤くんドンマイ! 次は大丈夫だよ!」

「理子は次の戦闘に一票!」

「俺は探索中に余計なもん触って死亡で」

「お前等他人のキャラが死ぬのでトトカルチョしてんじゃねえよ!?」

「まあ、それくらい死にやすくなってるよね、武藤君のキャラ」

 二時間いらずで三人とかある意味快挙だぞ、無論ネタ的な意味で。そりゃ賭けもしたくなるわ。

 そんな風に遊んでいると、いきなり部屋の電気が消えた。

「ってなんだ、停電? これじゃキャラシ書けねえぞ!」

「変だね、ブレーカーが落ちたにしては妙な感じだし」

 亮が言うとおり、電気の消え方は普通と違う感じだった。

「ま、まさか……幽霊?」

「おー、こりゃ真っ暗だねー。さあアリアん、お化けが怖いのならりこりんの胸に飛び込んで」

「レキ、ちょっとごめんね……」

「はい、構いません」

「視界にすら入れない!? うう、せめてツッコミくらい入れてよお……!」

「日頃の行いでしょう。まあ折角ですし、理子には私がくっつきましょう。ちゃんと守ってくださいね?」

「ヌエっちが女神に見える……! うー、らじゃ! 守るよ、超守っちゃうよ!」

 女の子座りしているメヌを理子が嬉しそうに抱きしめる。今日はいつにも増して百合成分が多いな。剛はさっき爆弾投げられたからか、口を開こうとはしない。驚いた、こいつでも学習するんだな。顔はアレだが。

「あ、あの、潤ちゃん! 私も怖いから、その!」

「いや、SSRの人間が幽霊怖がってどうするんだよ」

 まあ結局腕に抱きついてきたんで、好きにさせてるけど。剛が血の涙流してる気もするけど、気のせいじゃないかな(適当)

 

 

 理子達を置いていって白雪と二人、廊下を挟んだ障子を開ける。先にあるのは先ほど夕食をご馳走になった大広間、その一番奥にある襖を二人で開く。

『……』

 出て来たのは、先が暗くて見え辛い正方形の小部屋。本来なら廊下に出るはずなのだが、明らかにおかしい。

 暗がりの襖を開けると、またも同じ部屋に出る。試しに来た道を戻ってみるが、大広間に出ることはなく延々と小部屋に出るのみだ。

「異界化、か」

「正確には絶界かな。相手の領域とはいえここまでのことが出来るなんて、かなり強い亡霊みたいだよ」

「やってることはしょぼいのにな」

 会話しながら先へ進んでいると、小部屋の一つに見覚えのない少年が立っていた。十前後くらいで、不自然に体が透けている。

 そいつは酷く濁った目でこちらを見詰め、口を開こうとする。その瞬間!

「喰らえ白雪謹製清めの塩(物理)!!」

 塩を相手の顔面にシュウウウーート!!

『ギャアアアァァァァ!!?』

 超、エキサイティング!!

「今だ白雪!!」

「うん、確保ー!!」

 刑事ドラマの捕り物みたいに手際よく縄(霊体も捕縛できる星伽仕様)で犯人? を縛り上げていく白雪。何か妙に手慣れてね?

『ちょ、いきなり何!?』

「ドーモ、ユウレイ=サン。ブテイデス。罪状――はいいか、大人しく成仏されろや」

『お兄さん理不尽すぎない!? 僕子供、無害な幽霊! イジメヨクナイ!』

「風呂場で覗きにセクハラもした幽霊のどこが無害ではないと?」

『ナ、ナンノコトカナー?』

「じゃあこっちのお姉さんに見覚えは?」

『お尻がめっちゃいい触り心地だった!! ……あ』

 あ、じゃねーよあじゃ。とんだエロガキじゃねえか、この分だと余罪も腐るほどあるんじゃね?

 とりあえず親指を下に向けて「ギルティ」と告げてやった。

「エロガキに慈悲はなし。というわけで白雪……白雪?」

「潤ちゃんなら良かったのに、子供とはいえ他の男の人に……男の人に……」

「……白雪ー? 白雪さーん?」

 ブツブツ呪詛を呟きながら顔を上げた白雪は――あ、これアカン奴や。ハイライトが消えた瞳でニッコリ満面の笑みを見た少年は、「ヒッ」と怯えきった表情になる。

「ねえボク。女の子のことは気軽に触っちゃいけないって、先生に言われなかった?」

 普段子供と接する時みたいに優しい声音だが、目が死んでるのでめっさ怖い。

『はははハイ、昔それで怒られました!』

 あんのかい、やっぱエロガキだよ。

「そっか、じゃあ何でこんなことしたのかな?」

『そ、それは……ごめんなさい、出来心です! もう二度としないので許してください!』

 縛られたまま頭を下げる幽霊少年。手が動いたら土下座してたな。

「うんうん、悪いことしたらちゃんと謝る、いい子だね。だから――」

 少年の表情が安堵したものになり、

 

 

「死ぬほど痛い目にあわせるだけで許してあげる」

 

 

 炎を纏った色金殺女を構える白雪を見て一転、絶望に染まった。

「おーい白雪さーん、ここ室内、室内」

「大丈夫、全部燃やしちゃうから!」

 何が大丈夫なのだろうか。これ完全にエロガキ絶対殺すマンになってるな。

『ちょ、お兄さん助けて!!』

 少年は縛られたままこちらに助けを求めてくる。まあこいつのことはどうでもいいが、宿を燃やされると困るんだよな。

 なので俺は両手を水平に持ち上げ、

「南無」

 冥福を祈っておいた。

『おいいいいぃぃぃぃ!!?』

「星伽候天流――火々人柱神(ヒヒジンチュウノカミ)!!!」

 この日、耳を劈くような悲鳴が宿全体に響き渡った。幸い直後に俺が消火活動をしたので、火はボヤ程度で済んだ。

 余談だが、この日使った火々人柱神は、パトラ戦より倍以上の威力はあった。セクハラダメ、絶対。

 

 

「ヒグ、グス……潤ちゃん、私汚されちゃったよお……」

「よしよし。白雪はどこも汚れてないし、仮に汚れてても俺は気にしないからな?」

 で、旅館からの帰り道ではずっと慰めました。運転? 理子が変わった。ハンドル握るとめっちゃフリーダムな走り方するから、しょっちゅう隣の白雪とくっついたりぶつかったりで大変だったけど。まあ本人はちょっと顔赤らめてただけだからいいのかね。

 

 

「ジュン、ほんっとーに何もないのね?」

「隠すと自分のためになりませんよ、ジュン?」

「だから何もしてねえって」

 更に帰ってから、ホームズ姉妹のスリーサイズ(特にBの部分)について追及がうるさいの何の。そんな男にとって都合のいい状態になるような生活させてないっつの、計画立てた場合ならともかく(それ言ったら二人が目の色変えてたけど)。

 

 

 




登場人物紹介
遠山潤
 温泉ではのんびりしたいので、今回はそんなにボケてない(気がする)野郎。その分幽霊相手にはふざけていたが。
 風呂では覗くのではなく覗かれる方。何かおかしい気もするが、面倒なので放置していた。
 女子メンバーの成長に関しては本当に関与していない。そもそも胸のサイズに拘りがない。

 
神崎・H・アリア
 妹に敗北した小さい姉。今回何もしていない人その1。
 いつもは揉まれる側だが今回は唐突に揉んでカオスを生み出した。その結果育っているのを知れたのは僥倖、なのだろうか。
 余談だが、温泉でゆっくり休めたためその後数日は機嫌が良かった。
 

峰理子
 攻めると強いが受けに回ると途端に弱くなるタイプ。今回何もしていない人その2。
 珍しく色々やられてしまってテンションがおかしくなっていた。だが反省しない、帰ってからも皆にスキンシップしてはぶっ飛ばされる毎日である。


星伽白雪
 今回一番にして唯一の被害者。まさかの男に対して修羅モードを発動することになった。
 とはいえ、今回は潤の裸(後姿だけだが)を見たり、帰りに慰めてもらったりと本人にとって役得なことは多かったが。無論そういう問題ではない、セクハラダメ絶対(命の危機的な意味で)。

 
メヌエット・ホームズ
 遊び道具には妥協しない道楽至上主義。今回何もしていない人その3。
 実は宿内で車椅子を使わず歩いて過ごし、疲れたらアリアや潤に背負ってもらっていた。その姿を見て姉が密かに涙ぐんでいたとか。
 

レキ
 湯治目的で無断同行してきた奴。今回何もしてない人その4。寧ろ働いてる奴のほうが少ない。
 

武藤剛気
 我等が思春期の具現化。出てくると大抵ろくでもない目に遭っている。大半は自業自得だが。
 本人としては白雪や理子を車に乗せたかった。理由はまあ……大きいは正義、らしい。そりゃメヌエットにしばかれる訳である。
 
 
不知火亮
 メンバー中恐らく精神耐久が一番高い男。その笑顔が崩れることはまずない。
 女性の好みに関しては不明。聞いてもはぐらかすし、読心を試みてもよく分からない。
 
 
綴梅子
 監督役という名目で同行し、女将と酒を飲んでいた教師。温泉に入ると自身の何かが浄化され、アニメ版のような澄んだ顔つきになる、らしい。
 
幽霊少年
 見た目は子供、中身は武藤と同等かそれ以上のエロ男子。幽霊になって調子に乗っていたら焼き滅ぼされた。
 ちなみに当初は女子全員から袋叩きにされる予定だったので、まだマシな結末、かもしれない。
 
 
ジャンヌ・ダルク
 元ネタのアニメでは出てたのにこちらでは不参加になった不遇の子。まあ出たらまた酷い目に遭う未来しか見えないが(オイ)
 
 
後書き
 おっかしいなあ……幽霊のシーンもうちょい細かく書くつもりだったんですが、温泉シーンが大半を占めてる気がする。どうしてこうなった。
 そんなわけでどうも、ゆっくりいんです。今回はOVAの温泉回を元に書いてみましたが、如何でしたでしょうか? まあ色々省いてはいますが……ぶっちゃけ女子達の交流が書きたかっただけな気もする(マテ)
 さて、次回は原作前半一番の盛り場、『教授(プロフェシオン)』編です。オリキャラも登場させる予定なので、(多分)シリアスです。(多分)シリアスです。大事なことなので二回言いましたよ?(フラグ)
 とりあえず、今回はここまでで。感想・誤字訂正・評価・批評、あのキャラのことが知りたい、こんな話を書いて欲しいなどの質問・リクエスト、お待ちしています。

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