お気に入り件数300件達成しました、ありがとうございます! これも偏に読者の皆さんのお陰です。
以前予告したとおり小説のリクエストを受け付けようと思いますので、興味のある方は後書きを読んでいただけると幸いです。
「ふっ」ドス
「ぐえっ」ドサリ
肘討ちを喰らった男が意識を奪われ、路地に倒れる。それを見てメヌが一言、
「ああ、緊張するわ……」
「いや、言動が全く合ってないんだけど。何でオフ会相手をぶちのめしてるのよ」
「『女子の』オフ会なんだから当然でしょう? ネカマ死すべし慈悲はない」
「それを有限実行するあんたが怖いわ……」
「ほらほたて、喋ってないでこの死体を捨ててきなさいな」
「誰も死んでないでしょうが、殺人幇助と誤解される発言はよしなさい。あと名前呼びはやめて」
理不尽な要求に溜息を吐きつつ、倒れた相手を引き摺っていく。何でこうなったんだったか。
時間は戻り、2日前の昼過ぎ。
「人捜し?」
「ええ」
台場の喫茶店、鸚鵡返しに尋ねる俺の言葉に頷くのは――元イ・ウー所属の夾竹桃。男の俺に興味のないこいつが頼みごとなど珍しいことだ。
……まあ実際は拉致られたんだけどな。上野あたりを剛達とブラブラしていたら背後から角材で殴られ(毒使えよ)、「協力しないと理子達に媚薬を盛って、女装姿の貴方を密室に放り込むわよ」とトンデモな脅しを付けられて。脅迫まで同人誌のネタにするとか流石だわ、というか女装の俺には肯定的だなお前。
「貴方、そういうのは得意でしょう? 勿論報酬はきちんと払うわ」
「まあ
武偵ランクも実績も、あいつの方が高いんだし。
「……あの子、腕は確かだけど余計なものまで拾ってくるから。いつもなら構わないけど、今回は目的物だけに絞りたいのよ」
「あー……それなら納得」
微妙に信用のない同期である。まああいつは信用していい部分とアウトな部分がハッキリしてるから、ある意味楽なんだが。
「それで、嫌々男だけど腕の確かな貴方に頼んだわけ」
「嫌なら拉致ってまで頼むなよ」
「急を要するし重大なことなのよ、凄く嫌だけど」
「よし、俺帰るわ」
「貴方にも媚薬を盛っていいのよ?」
「よしさっさと要件を済ませよう、それがお互いのためだ」
「ええそうね、それが賢明だわ」
淡々と頷いてるけど、目が
夾竹桃は鞄を開き、そこから何枚かの用紙を渡してくる。
「チャットログ?」
口に出したとおり、何かのゲームにおけるログをプリントしたもののようだ。
「ええ、『ソニックファンタジー 反逆の乙女による乙女のための戦い』というオイラインゲームなのだけど」
ツッコミ入れればいいのか入れなくていいのか分からないゲーム名だな。
「そこにある『メズ』というユーザーとコンタクトを取りたいの」
「……
「断られたというか逃げられたわ。「嫌だ、私はもうお前の実験台(強制)にはなりたくない!」って叫んで」
「うん、大体予想付くけど聞いとくわ。何したし」
「ちょっと同性媚薬の実験台にしただけよ、定期的に」
予想の斜め下で酷かった。拷問よりマシ、なのだろうか。とりあえずジャンヌには心の中で合掌しておく、まあこれからも似たような目に遭うんだろうが(マテ)
「まあユーザー名も載ってるし、特定は然程かからない筈だ」
「期限は今日までで」
「お前常識の意味知ってる?」
「貴方と貴方のお仲間には言われたくないわ」
ごもっともで。とはいえ急な話なので、条件をクリアするには今からやらんとだな。
「で、アカウント特定したらどうするんだ?」
「後でメッセージを送るから、それをコピペして送って頂戴。私名義だと分かるようにね」
「ん、了解」
とりあえず剛達に急な依頼が入ったとの断りを入れ、夾竹桃と別れてから適当なネカフェに入って作業を開始する。環境は自室の方が整ってるが、理子とかに見付かって騒がれると面倒だし、一応プライバシーの捜査になるからな。
そもそも、この程度なら特定は容易い。とはいえ何故か一般レベルとしてはやたらセキュリティが固かったので、夾竹桃がわざわざ依頼してきたのも納得だ。
作業終了の旨をメールで送ると、『速いわね、有名無実じゃなくてホッとしたわ』と序文が入ってから(島さんもだが、男に厳しすぎね?)、下に本題のメールが書かれていた。
「しかし、これはどうなんだ……?」
確認の際にメッセージの内容を見たのだが、
『女子限定オフ会『
と、見出しに書かれていた。うんまあ……幾らアイツ――メヌでも、これは来るのかなあ。
そして翌日、メヌからメールの件で問い詰められ(ゲームは実家でプレイしていたが、最近は別の遊びでご無沙汰だったらしい)、悩んだ結果参加することに決めた。女子限定なのが参加する動機になったようだ。まあ男苦手だしな(←男)
とはいえ、不安だから俺にも着いてきて欲しいってのはどうかと思うんだが……そもそも女だけという条件を、おまけ程度の存在とはいえ破るのはよくないだろうし。
不安顔のメヌに対してどうすんべと思考していると、「話は聞かせてもらった!」と理子が天井裏から出てきた。普通に玄関から入って来いよ。
で、後は皆さんお察しの通り、いつものパターンです。女装した俺とメヌが二人、集合場所で待機している状態である。
ちなみに俺の女装姿は……うん、
「それにしても、理子の変装術には驚かされるわね。あのジュンがこんな可愛くなるなんて、体格を弄ってるのもあるのかしら?」
「一応ある程度はね、今回は肌見せてるから四肢は特に。隠せないところはどうしようもないけど」
「つまり脱いだら凄いと」
「悪い意味でね。で、ホットパンツに手を掛けるのは何故かしら」
「どこまで本格的になっているのか確認しようかと」
「やめなさい」
手刀で変態行為を止める。メヌは不満そうに頭をさすりながら「もう、乱暴ね」などと言っているが、好奇心で社会的地位を崩壊させられかけてる方の身にもなれっつうの。
……よく考えなくても、白雪とかリサを同伴させれば良かったな。理子は「くふふーユーくんの露出大作戦でりこりん大興奮ですよ!」などとのたまっていたので却下としても(無論その後〆た)。
「それにしても、暑い……日本の夏はホントにうんざりするわね」
「湿度も高い分外国人には余計きつく感じるらしいわ」
木陰に入っているとはいえ、普段家の中が多いメヌには尚更だろう。飲み物を渡しつつ二人で雑談しながら待っていると、左手からドサリと倒れる音がした。
「あ、が、が……」
そちらに目を向けると、痙攣しながら倒れている男が一人。そしてそれを見下す、というよりゴミを見る目で立つ、二人の女性を伴い武偵高の夏服を纏った少女が一人。いわずもがな、夾竹桃だ。
「ネカマ死すべし慈悲はない」
驚いたメヌの前で放つ言葉は、一字一句同じものだった。お前等気が合いそうだな、ていうか俺も処刑対象にならない?
オフ会には15人参加予定だったが、その内モノホンの女子は四人だけだった。女子向けのゲームと聞いていたんだが、ネカマ多すぎだろ。あれか、少女漫画を買う男子のノリか。
なお、倒した野郎はメヌが四人、夾竹桃が七人だ。死体(死んでないけど)の事後処理は全部俺がやった。まあ熱中症にはなるかもしれんが、こいつ等を騙して命があるだけマシだと思ってもらおう。
メヌと夾竹桃は思わぬ所で出会ったことに驚いていたが(『知らないほうが面白い』と言われたので、相手については黙っていた)、他二人も含めて楽しそうに談笑している。
却って少人数で良かったかもしれんな。そんなことを考えながらチーズケーキを食う俺。ちなみにメヌの付き添いで中身男だということも話したのだが、他の女子二人(生粋の男嫌い)含め全員から「可愛いから許す!」と同席を許可された。いいのかそんなんで、処刑されずには済んだが。
「次に全員で参加出来るのはいつかしら?」
「直近のスケジュールだと……」
「ふえー、武偵さんって夏休みでも忙しいんだね」
「見て見てー、私のキャラ課金装備で可愛さマシマシにしたんだー」
ふむ、このモンブランもいいな。
「一部だけど描いてる作品よ」
「あら、モモコは器用なのね。ストーリーは……ちょっと過激、かしら」
「というかこれ、メズちゃんに見せて良かったのかな……あわわ」
「あ、このネコちゃんカワイイー」
すいません、コーヒーとショートケーキ追加で。あ、こっちのパンケーキも。
「じゃあ私がキャラ作成かしら」
「設定と世界観構築は私ね」
「背景とPC作業は任せろバリバリー」
「私は~……動物描けばいいのかな~?」
…………
「新しいジャンルに挑戦ということで、これはどうかしら」
「それならちょうど手頃な人材がいるわね」
「これもまた神秘の探求……ゴクリ」
「よし、脱ぎ脱ぎさせちゃおー」
オイちょっと待て。
おまけなのでケーキ食いつつ聞き役に徹していたが、話が妙な方向になってきたので一度顔を上げる。全員こっちを見ていた、こっち見んな。
「で、あたしを見て何なの? あげるものなんてジト目くらいしか無いわよ」
「話は聞いてたでしょう? とりあえず脱いでもらえるかしら」
「そんな痴女紛いの要求誰が受けるのよ」
そもそもそれで一番嫌がるのはお前だろうよ、モモコちゃん。
「私達を救うためと思って、お願い!」
「真摯に頼み込んだからってOKする訳ないでしょうが」
冬コミ目標にして自作ゲーム(ジャンルは百合ADV)を作ってみようというのは聞いてたが、何故そこで俺が関わる。
「モモコも新しいジャンルに手を出そうと考えてるのよ、ほたて。だからこれは尊い犠牲による進歩よ」
「進歩も何も、女装とそれは違うものでしょうが。あとほたて言うな」
「いやいや、カワイイ女の子に付いてるって意味では、男の娘も(風穴ァ!)も一緒だよ」
「そもそも性別が違うことに気付いて、お願いだから。あと公衆の面前で堂々と言うんじゃないわよ」
このおっとりマイペース娘、平気で爆弾発言するから怖いわ。
「ふう、仕方ないわね。山海堂さんは強情だし、外堀から埋めていくことにしましょう」
「極めて真っ当な意見でしょうが」
ツッコミはスルーされ、夾竹桃はどこかに電話をかけ始めた。しばらくすると「ええ、ありがとう」と言って電話をこちらに差し出してくる。何ぞと思って受け取り耳に当てると、
『ユーくんがモデルの(天誅ゥ!)ヒロイン、有りだとりこりん思います!』
「あんたこういう場合肯定意見しか言わないでしょうが」
よりにもよっての奴に賛同を求めたよコンチクショウ。
「……というわけで、理子の説得が成功すれば戦略室を貸してくれる約束よ」
「何時から戦略室は部外者も受け入れる作業場になったのよ」
「溜まり場よりはマシなんじゃないかしら」
大差ないわい。まあレキはともかくアリアと白雪は流石に反対だろ。とか思ってたら早速メールが来た。白雪からだ。
『そ、そういう恋愛も知るべきだと思うよ! 別に潤ちゃんがヒロインになったら攻略したいとかじゃないから!』
……次、アリア。
『面白そうだからアンタ犠牲になりなさい』
……最後、望み薄だけどレキ。
『イラスト関係でしたらお手伝いします』
寧ろノリノリじゃねえか。まさかの全滅という――ん、もう一件メール?
『
売り上げに関してはリサにお任せください!』
リサェ……八方塞がりじゃねえかこれ。夾竹桃のドヤ顔(無表情)ウゼエ、そして喜ぶなそこの
「愛されてるわね、ほたて」
「これっぽっちも嬉しくないわ……あとほたて言うな」
その後、予行演習と称してリサと一緒に女装姿で夏コミの売り子をやらされたり(相場よりかなり高く売れたらしい、リサ様々である)、モデルとして女装姿で散々呼び出されたりと色々あったが、まあそれは別の話……にしたい、ホントに。
おまけ
「ねえジュン、じゃなかったほたて」
「何よ、あとほたて言うな」
「アンタ普段からその格好でいなさいよ」
「……頭が沸いてるか変態としか思えない発言だけど、その真意は?」
「アンタがその姿ならアタシのツッコミ回数が減るからよ」
「そう言われて素直に頷くと?」
「アタシは日々のストレスで辛いのよ」
「あたしだって女装とツッコミのストレスであんた以上に辛いのよ」
『……』
「分からず屋は拳で聞かせるしかないみたいね」
「やってみなさいよ脳筋娘」
『…………』ゴゴゴゴゴゴゴ
「たっだいまー! って、なんでほっちゃんとアリアんが今にも殴り合い空を始めそうな勢いなの?」
ちなみに結果は引き分けだったので、結果は有耶無耶にしておいた。口先八丁は俺の特技やで。
登場人物紹介
山海堂ほたて(遠山潤)
女子オフ会に参加させられた女装男子。なお、その時の食べたケーキは六切れに及び、更に理子達へのお土産も購入したとか。甘味は命。
この姿だと完全にツッコミ役。口調もアリアっぽくなるが、手を出すことは基本ない。苦労人。
メヌエット・ホームズ
後に設立されるサークル『
『メズ』は本名を縮めたハンドルネーム。原作のものを使っても良かったが、呼びにくいのでこっちにした。
これ以降、ちょくちょく三人の友人と戦略室に入り浸ってる姿が見られるようになったとか。楽しそうな姿を見て、密かに嬉しがっている姉の姿が見かけられている。
夾竹桃
サークル『
野郎はサーチ&デストロイ対象だが、擬似百合ならOKな模様。遠山潤の女装はカナ同様、彼女が認める数少ない例外の存在である。
オフ会メンバー女子1・2
それぞれPC、印刷担当。1が好奇心旺盛で2がマイペース。双方武偵に対する偏見はない。
一般高の人間だが、それぞれ担当する分野のスペックは高い。また双方男嫌いだが、ほたての存在は許せる模様。どんだけだよ。
後書き
どうしてこうなった(小並感)
とりあえず、メンバー1・2は今後出番があれば名前を付けようと思います。多分一発キャラだろうしないでしょうけど……というか今回地味に難産でした、投稿も遅れてしまいましたし(汗)
さて前書きに記したとおり、お気に入り登録300件を記念してリクエスト小説を募集したいと思います。
内容はそれぞれ、
・各キャラとの日常orギャグ
・潤と理子を中心とした一年生編
・潤や他キャラとのIF展開
などを予定しています。詳細は下記のURLに記載しますので、そちらで希望のコメントを書いてくださればありがたい限りです。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=118451&uid=74852
感想・誤字訂正・評価・批評・質問・リクエストなど、良ければ付けてくださるとこれ以上なく嬉しいです。では読んでいただき、ありがとうございました。
ぶっちゃけ中学時代の話って見たいです?
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各ヒロインとのイチャイチャを……
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エッチなのはいいと思います()