遠山潤は楽しみたい   作:ゆっくりいんⅡ

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 修学旅行の続きです。今回は潤君の過去に触れるかも?
 あ、活動報告に思いつきでSS書いたので、良かったら読んでやってください。アリアとは何の関係もないFGOのですが……
 


第四話 目的なくふらつくと大抵何かトラブルが(漫画にあらず、前編)

 

 

「にゃー」「にー、にー」「ふみゃー」

「こ、これは夢……? それとも天国なのかしら……」

「至ってこの世だよ、モチツケ」

「ね、ねえジュン、この子達触っていいのよね?」

「そのために連れてきたから大丈夫だよ、こいつら人懐っこいし。ほれ、餌の猫缶」パカッ

「にゃー」

「わ、一斉に集まってきたわ!?」

「音に反応する辺り一杯ご飯貰ってるんだろうねー。アリアん、ワンワンと違ってにゃんこは撫ですぎると嫌がるから気を付けてね?」

「わ、分かったわ。ほ、ほーら、おいでおいでー……」

「にー、にー」

「ほわあー……ああ、可愛いわぁ……」ナデナデ

「アリアんは猫の魔性に陥落したようです。くふふ、これはシャッターチャンス」

「にゃっ」

「おお? りこりんに餌を催促するとはふてえにゃんこですなあ……だが許す! 代わりにもふらせろー!」

「お姉様を横取りするとは、幾ら愛らしくても許されざる所業」

「にゃー」

「私の膝がいいの? ふふ、贅沢な子ね。いいでしょう、特別に許してあげます」ナデナデ

「メヌちゃんまで陥落した……!? で、でも犬派の私はこれくらいで屈したりは……!」

「にー?」ウワメヅカイー

「すいません無理です! ああ、可愛いなあ……」

 約二名何やってるんだ。あ、どうも遠山潤です。

 現在俺達は一通りの観光を終え、今日最後の観光場所、哲学の道に来てる。チョイスした理由の一つに人間失格の殺人鬼と虚無な女子大生が出会った場所ってのがあったんだが……うん、猫天国でどーでも良くなってるなこりゃ。

 あの後それぞれ和服に着替え(理子に危うく女装させられかけたが、今回は無事阻止)ここまで舞鶴鎮守府跡、護王神社(重巡『高雄』に積まれてた御神体が祀ってある)、由良神社(名前まんま)、壬王寺(新撰組の沖田総司と斉藤一が稽古に使用した場所)等色々回り、はしゃぐ一行(俺含む)のブレーキ役になっていたせいでアリアは死に掛けていたのだが……今は寧ろツヤツヤしてるな。

「ご、ご主人様……私も触っていいでしょうか?」

「出来れば俺の足を引っ掻いたり齧り付いてる奴を頼む」

「え、ああ!? ネコさん、ご主人様から離れてくださーい!?」

 リサが慌てて足元にじゃれつく猫達を引き剥がす。なあんで俺に来る動物達はこうなるの痛い痛いリサ爪刺さってるから無理矢理引っ張らないで。

 まあ満足してくれてるようで良かった、あとは宿に入って感想文(多分テキトーなのでも大丈夫)書くだけだな。

 と、そこで携帯から着信音(『甲賀忍法帖』)が。番号は、予約してた宿からか。

「はい、もしもし。はい、そうです。

 ……え? ああはい、分かりました。ああいえ、お気になさらず」

 電話を切る。横でアリアが「ちょっと、にゃんこが逃げるでしょ!」とか言ってるが、ぶっちゃけそれどころじゃない。というかにゃんこって。

「潤さん、どうしました?」

 横で文字通り群がられてるレキが聞いてくる。横でハイマキが嫉妬の唸り声を上げてるけど、今だけなんだから我慢しなさいって。

「宿が燃えた」

『え?』

 全員が一斉に声を上げる。嘘だと言えないんだよバーニィ。

「数時間前に近隣三軒を巻き込む火事が起こったんだと。不幸中の幸いで死者はなし、現場の状況と出火の原因から警察は放火と断定、犯人はまだ逮捕されてない」

 ニュースを読み上げながら情報を集めていく。泊まる予定だった宿は――あーダメだな、全焼してるわ。

「で、さっきの電話は予約客へのお詫び。まだorzしててもいいだろうに、大した支配人さんだよ」

「では……夕食のバイキングは?」

「当然ない」

 宿が燃えたんだから出るわけねーべ。あ、レキが今までの中で一番分かりやすい絶望の表情してる。傍から見ると微量だけど。

「……ねえユーくん、犯人はまだ捕まってないんだよね?」

「ああ、警察から情報リークしてる限り逃走中」

「目撃者は?」

「数件。火災の三十分くらい前に眼鏡を掛けた細身で長身の男が不審な動きをしてたとか」

「ふ、ふふふ……なあるほどお、サークル○ーサンクスユーくん」

 ゆらりと理子が立ち上がる。本人の陽気さを表すような黄色の単衣から漏れる怒気に驚いてか、猫達が逃げていく。

「潤、ナビ頼む」

「おk」

「風穴どこまで空けられるか試してやるわ」

「悪人に人権はないと言いますし、どこまで壊せるか試してもいいんですよね?」

「見敵必殺(サーチアンドデストロイ)です」

 理子に続き、食いしん坊三人も順に立ち上がる。笑顔が最早狂気である(レキは無表情だが)。

「あ、あのご主人様、皆様何をするおつもりなのでしょう?」

「犯人探して野郎ぶっ殺してやらあ!! 以上」

「文字通りの事態になりそうなんですが……」

「多分大丈夫、だと思うよ? いざとなったら私と潤ちゃんが止めるし、うん」

「え、俺も加勢するけど」

「潤ちゃん!?」

 食い物の恨みは死より恐ろしいのだよ、白雪。

 

 

 その後の顛末産業

「うん、凄く好きなんだ……火事」

「へえ、じゃあもう満足したわよね? 生きるのに」

「大好きな炎に包まれる幻想を抱いて死になさい、マザーファッカー(クソ野郎が)」

「いっぺん死ね、氏ねじゃなくて死ね!」

「心臓と眼球と脳髄、撃たれたくない場所を選んでください。そこにしてあげます」

 四行どころか五行になったし。ちなみにこいつ等武偵です。無論、犯人がキルされたのは言うまでもない。※生きてます

 

 

「うーん、ダメか」

 犯人を成敗(隠喩)した後幾つかのホテルを探してみたが、シーズン真っ盛りなのもあって空いている場所が少ない。そもそも手頃な値段で食べ放題も付いてる好条件な場所、あそこくらいしかねえわな。

 もう食材買って適当な宿に入るか、ビジネスホテルでいいんじゃ

「そんなことになったら」

「分かってますよね?」

 うん、ホームズ姉妹に殺されそうなんだけど。とはいえどうしようもないんだが、誰かの権力使って良さげなホテルを無理矢理空けるとか?

「ホテルがないなら家を使えばいいのでは?」

「突如どうしたレキ」

 いつからアントワネットになったんだお前。最近では本人の発言じゃないことが一般的になってきてるが。

「処刑される趣味はありません。潤さん、昔住んでいたのなら京都での拠点があるのでは? あちこちに持っていますし」

「何気に金持ちだよねユーくんって」

「お前みたいに貸し出してるわけじゃないから維持費掛かるけどな。

 あー……あるにはあるが、場所が郊外だし、三年前から使ってないから確実にボロ家だぞ?」

「ご主人様が昔住んでいた場所、リサは興味あります!」

『私(理子)も!』

 白雪、メヌ、理子の三人も同意した。最後にアリアの方を見ると『まあいいんじゃない?』と目で告げてきた。え、マジですか……

「住めるかどうかも怪しい可能性が高いんだがなあ……じゃあ、車借りるか」

「どのくらい掛かるんですか?」

「約一時間、バスとか電車のルートも外れてる真性の田舎で、政府の治外法権」

「それ違法建築じゃないの!?」

 サア、ドウダロウネー?

 

 

 というわけで車を飛ばして約一時間、道路以外何も存在しない京都の端。

『でか!?』

 着いてから俺以外の全員が家を見て一言。そんなに大きいかねえ? アリアの実家や星伽神社に比べれば大したことないが。

「いや比べる対象がおかしいでしょ!? 庭も入れてどんだけ広いのよ!?」

「庭合わせて1740坪だけど」

「うわーいユーくん家江戸下屋敷のちょうど半分だー」

「アンタよくそんなの覚えてるわね!? というかもう屋敷じゃないこれ!? 何ジュン、アンタ実は結構なお坊ちゃんだったの!?」

「いや、ここ住んでたの俺と相棒の二人だけど」

「幽閉でもされていたのですか、潤さんとその相棒さんは」

「自分達で作った家に閉じ込められるってなんだよ」

『作った!?』

 またも一同驚いてるが、もう反応メンドイのでさっさと家に向かう。部屋汚れてるだろうしまずは掃除だなーなどと考えていると、

 

 

『このような場所に何用だ、人間達よ』

 

 

 頭に直接声を響かせ、入口の前に佇むのは巨大な狐――もとい、九の尾を持つ巨大な妖である。

 全長約3メートル、陽炎のように揺らめく姿は神秘的で、漏れ出る魔力と威圧感が人間より圧倒的に格上の存在であることを感じさせる。

「嘘、九尾の狐……しかも玉藻様より格上の存在……!?」

『……緋々の巫女か。ならば分かるだろう、人と妖の境界線に無断で踏み入る意味を? 見逃してもらえるなどと思うな』

「強制負けイベクラスのボスが突如出てきたよこれ――なんて、ふざけてる場合じゃないな」

「銃弾が通じればいいのですが……」

「メヌ、リサ! アンタ達は下がってなさい! ヤバイわ、アタシの直感が圧倒的にヤバイって囁いてる……!」

 戦闘組が危機感から武器を構える中、俺はというと――

「いや、人の家で何やってるんだよ玉陽(ぎょくよう)の姉さん……そんなキャラじゃないでしょうよ」

 溜息を吐きながら名前を呼ぶ。すると妖狐――玉陽はニタアと顔を笑みの形に変え(こえーよホセ)、全身から光を発し、

「三年も帰ってこない弟分を、ちょっと脅かしてやろうと思っただけよ」

 そう言いながら前に出てきたのは、動きやすく改造した単(ひとえ)(平安時代の公家女性が纏う着物みたいなの)を纏い、妖艶な笑みを浮かべる金髪黒目の美しい女性。頭部に狐耳、背から突き出る九尾が人でないことを示している。

『……え?』

 臨戦態勢だった連中が、そのまま固まる。お前等今日はよく合うな、普段はどれだけ練習してもタイミングずれるのに。

「脅かすならせめて殺意と敵意をぶつけろよ、まあ他の連中には効いてるが」

「貴方に効かなければ意味ないでしょう。あ、ごめんなさいねお嬢さん方。ようこそ元氷条邸へ、歓迎するわ」

「何故に家主気取り」

「放置してた家なんだし、誰が住んでようと自由でしょう?」

 なるほど道理だ、でも住んでるなら庭の整理くらいしてくれよ、歩きにくい。

「……ジュン、その方は?」

 未だポカンとしてる戦闘組(いい加減武器仕舞えよ)に代わり、メヌが質問してくる。案外立ち直り早いね。

「あっちの山に住んでる霊獣の玉陽姉さん。ここに居た時は世話になったり世話してた仲で、姉呼びは流れでなんとなく」

「あら、素っ気無い紹介ね。私、これでもずうっと心配してたのよ……?」

 しなだれかかり、腕を絡めてくる玉陽姉さん。上目遣いに見上げてくる瞳には涙が溜まっている。「ど、泥棒猫ならぬ泥棒狐……!?」と白雪が戦慄しているが、このタイミングで復帰するのか。

「三年で大きくなったわね、人の成長は速いものだわ……女を待たせたんだし、どうすればいいか分かるわよね?」

「いやそういう関係じゃねえだろ」

 大抵の男を問答無用で堕としそうな妖艶さは流石玉藻の前の娘と言ったところだが、俺からすればふざけてるの丸分かりである。

「ふふ、相変わらずそういうのはさっぱりね。変わってないようで安心したわ」

「何がしたいんだよホント」

「ちょっと確かめたかっただけよ、弟分が連れてきた娘とどんな仲なのか、ね」

 相変わらず隅に置けないわねえ、などと離れて肘を突いてくる姉さん。変わらずってなんだよいやマジで。

「……なんなのよ、ホント。本気で逃げる気だった自分がバカらしくなってきたわ」

「あっはっは、ちょっとビビリすぎですよアリアん」

「逃走のタイミングと作戦提案してたアンタが言えたセリフか!!」

「べべべべべ別にビビッてないし、ヴィヴィッドないですよ?」

「わざとらしいくらい震えるのと言い間違いヤメロ、なんかウザイわ!!」

「なんかって流石に酷くないですかねえ!?」

「いえ、妥当な評価かと。私もそう思いましたし」

「レキュが辛辣辛辣ぅ!?」

 緊張の糸が切れた反動でギャーギャー騒ぎ始める連中を見て、姉さんは微笑ましい表情になる。

「賑やかな子達ねえ」

「ありゃ騒がしいって言うんじゃねえかな」

 まあ変に敵対的な態度よりいいのだろうが。

「ところで潤ちゃん、この人とは本当にそういう関係じゃないんだよね……?」

「深刻かつヤバイ瞳で見るんじゃねえよ、本当だから」

 白雪病んじまったじゃねえか、どうしてくれんだ姉さん。いやサムズアップされてどうしろと。

 

 

おまけ 氷条邸庭にて

「ワン!」、「にゃー」、「キュー」、「プギー」、「ピー」、「メー」、「ペーン」etc……

「こ、ここは天国、それとも夢……? ジュン、アンタ天国への案内人だったの?」

「ここは現実で俺は人間だよ、モチツケ。というか反応が哲学の道の時と一緒」

「うふふ、モフモフ、モフモフがいっぱい……」

「うひょーりこりんにもモフモフさせろー!」

「聞けよオイ、あと荷物置いてからにしろって」

 

 

 




登場人物紹介
遠山潤
 昔はでかい家に住んでいた元京都人。なお京都弁は喋れるが喋らない、通じにくいから面倒とのこと。
 動物には噛み付かれたり引っ掻かれたり、変な好かれ方をする模様。家への移動中も兎に足を噛まれて「いてえ!?」となっていた。
 

神崎・H・アリア
 今回は彼女の癒やし回(多分)。日々のストレス(ツッコミ)からか、動物が異様なほど好きになってしまった。大体相棒と妹のせい。


峰理子
 一瞬だけマジモードになったおふざけキャラ。なお玉陽がふざけて近寄った時、ちょっと頬を膨らませていたとか何とか。
 

星伽白雪
 新たな恋敵出現か!? と感じて久々に病みかけた巫女。立場上(多分)高位の妖には逆らえないので、内心焦りまくっていたのは乙女の秘密。
 

メヌエット・ホームズ
 猫の魔力にはさしもの名探偵も勝てなかった模様。
 

リサ・アヴェ・デュ・アンク
 主に引っ付いてた猫をひっぺがそうとしたら、皮膚ごと取れた模様。この後めちゃくちゃ謝った。

 
レキ
 ハイマキ(お供)の嫉妬を煽るほどのビーストマスター。歩くだけで数多の動物が近寄り、アリアに「羨ましい……!」と嫉妬ビームを浴びせられていた。


玉陽
 氷条邸近くにある山を住処とする妖狐。弟分の魔力を察知し、からかいついでに妖狐の姿で出現した。
 玉藻の前の娘とか昔鬼の旦那がいたとか色々設定はあるが、多分使われることはない(オイ)


後書き
 師匠来たあああぁぁぁ!!! 100連目ジャストで来てくれたイヤッフウウウゥゥゥ!!
 うわあああああキングハサン、キングハサンだああ!? 破産する前に来てくれたあああぁぁぁ!!!
 ……というのが8日と25日の夜中、SNNでガチャの結果に荒ぶっていた作者です。あとで見て知り合いに引かれたなこりゃ、と自分で引いてました。
 という訳で京都修学旅行編、第二話をお送りしました。……うん、何も進んでないなこれ。というわけで次回に続きます(マテ)
 それでは今回はここまでで。感想・評価・誤字指摘などお待ちしております。お読みいただきありがとうございました。

 

ぶっちゃけ中学時代の話って見たいです?

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  • いいから続きを書け
  • 各ヒロインとのイチャイチャを……
  • エッチなのはいいと思います()

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