「そうだ遠山、お前に渡すものがあるのだが」
どうも、遠山潤です。現在ジャンヌと合流して集合場所へ向かってるんだが、途中で渡されたものは――眼球型のアイテムとベルト?
「なにこれ、近未来型の
「このサイズを眼球に埋め込む気なのか……?
これは
「いや、手紙ならともかく金属爆発するのは洒落にならんやろ」
「念押しで『爆発しないから安心したまえ』と言われたのは以前あったからなのか……?」
「手紙爆発は意味が分からんかった」
あれ以来シャーロックに殺意を抱くようになったのは必然。というか念押しとか「爆発しないよ? 絶対しないよ?」ってフリにしか聞こえねえよ、アイツの性格から考えて。
(はあ!? アイツそんなとんでもないもの仕込んでたの!?)
何か頭の中に声が聞こえた気がしたが、とりあえず調べた限りでは爆発しそうにないので、ベルトと一緒に仕舞っておく。
「で、ジャンヌ。これから何があるんだ?」
「聞かなくとも分かることを言う必要はないと思うが?」
質問に質問で返された、嫌な感じの笑みを加えて。ふむ、それでは開発中の粘着型マスタード爆弾を――
「ヤメロォ私が悪かったからそれを仕舞ってくれ!? というかお前なら予測は付いているだろう!?」
「まーそうだけどさ」
ちょっとイラッとしたんだ、仕方ないネ。
空き地島から感じる、多数の気配。辿り着いたそこには予想通り尋常じゃねえ連中が集まっていた。
「
集まった面子を見てひとりごちる。どいつもこいつも『裏』の世界では有名な組織と人物だ、如何にも何か始まるって感じだな。
お、レキもいた。……この状況でもイラスト書いてるお前の胆力は流石だよ。
あとは姉貴とパトラ、仲良さそうにじゃれていたがこっちに気付くと手を振って……何か隣のパトラがウキウキした目でこっちを見てるんですけど。嫌な予感がするなあ、具体的には俺を女装させようとする時の理子みたいな感じで(遠い目)
まあそれは置いとこう、あとは……お、懐かしい奴発見。向こうもこちらに気付いたのか、視線を向け――黄金のルガーP08を問答無用で抜き撃ちしてきた。それに対しこちらもUSPを抜いて『
「な!? カツェ、いきなりどういうつもりだ!?」
「あージャンヌ、いつものことだから気にしないでくれ。ようカツェ、腕上げたみたいだな」
「よう潤、お前も腕は落ちてないみたいだな」
「そこはお前も腕を上げたなって返すところじゃね?」
「お前がこれ以上強くなることあるのか?」
「ないな、違いない」
ハハハとお互いに笑う。相変わらずクソ真面目な輩が多いドイツ人の中では、取っ付きやすい陽気なキャラである。
「カツェ、遠山と知り合いだったのか?」
「おう、ジャンヌも久しぶり。まーウチの方で知り合ったダチさ」
魔女帽に黒ローブ、左目に逆卍のマークが施された眼帯を付けた
「なんにせよ久しぶりだな。最近は派手にやってるみたいじゃねえか、教授を殴り倒したりとかよ」
「殴り倒したのは俺じゃなくて理子だけどな」
可能なら俺も
「あいつは一年半で色々変わったよなあ……暴れすぎじゃねえか? 特にお前の女装画像とか」
「オイマテ何でお前が知ってるんだよ」
「直メで毎回送られてくるけど」
ほれ証拠、とご丁寧にスマホ(最新式)から証拠写真を見せてくれた。あの野郎……
『死ぬ覚悟しておけ』
『Σ(・ω・ノ)ノエエッ!?』
まあ
「なあカツェ、シャーロックのクソ野郎が送りつけてきたもん持ってるか?」
「ん? あーあれか。あるぜ、教授が絶対持ってくるようにって言ってたし」
ウチでも扱いに困るんだよなー、と懐から取り出し見せてきたのは、銀色の輝きを放つ長方形の金属。
「これは、まさか、色金……!?」
「……正確にはそれを参考にした模造品、だな」
驚くジャンヌに力なく補正を入れる。マジで造ったのかよシャーロック……
手紙に書かれた最後の一文が頭の中に蘇ってくる。
『実は少し前に緋々色金を元にした
数は全部で七個、誰が持っているかは……まあ、君なら予想が付くだろう。
余談だがこの色金は人に結びつかないが相応の力は持っている。暴発させれば小国くらいは吹き飛ぶんじゃないかな? まあ、頑張って回収してくれたまえハッハッハ』
「ホンット、何考えてるんだアイツはぁ!!?」
「おお、潤の奴が珍しく荒れてる」
「そりゃ荒れもするわ!? 確かにあの野郎超常世界の核物質とは例えてたけど、誰がその通りのものを作れと言った!? 実質
間違って過激派組織にでも渡ったらリアルに国が吹き飛んで最悪全面戦争だぞ!? 『第三次大戦だ』ってか、やかましいわ!
……まあそんなもんを渡された以上、大抵の組織は慎重に取り扱うだろうが。冷戦時のアメリカとソ連による核保有の応用で、自分がいなくなった後の抗争に対する牽制だろうが、押し付けられた側からすればたまったもんじゃねえよ。
「これ全部回収しねえといけねえのかよ……」
「潤に渡っても似たり寄ったりって全員考えるんじゃねえの?」
「うっせ、だから頭痛いんだよ。……回収したら封印処理して宇宙にでも捨ててこようかなあ」
「なんだその斬新過ぎる処分方法は……というか似たり寄ったりなのは否定しないんだな」
そりゃこんなもんあれば誰だって悪用すると思うだろ常考。まあ、それはさておき時間である。気付いたジャンヌが慌ててお立ち台(らしき場所)に向かう。しかしよくフルアーマー姿を見られなかったもんだ、その場合コスプレとかで適当に誤魔化すけど。
……それと、こっちに歩み寄ろうとしてたシスターが睨んでるんだが。原因はまあ考えるまでもない、カツェと親しげにしてたからだろうな。
「では始めよう。各地の機関・組織・結社の大使たちよ。
『Go For The Next!』
バラバラながら唱和する面々。レキ? 応じずイラスト描いてるよ、お前何しに来た。
イ・ウー崩壊とシャーロックが配った核超能力により起きた今回の抗争、名は
さて、この戦役のルールを簡単にまとめると。
・各組織の代表は『
・いずれかの連盟が全滅、または降伏することで終了。
・相手人材の引き抜き、奇襲、裏切りなどなんでもあり。ただし全面戦争のみ禁止とする。
なるほど、聖杯大戦か(違)
そうして宣言が終了し、各々がどちらの勢力に付くか宣言していく。
師団:バチカン、玉藻
眷属:パトラ、鬼、藍幣、魔女連隊
中立:リバティー・メイソン、フェイスペイントの傭兵集団(正確には無所属)、LOO(としか言わないから実際分からん)、姉貴
師団少なくね? まあバランス配慮なんて気にしないんだろうな、ゲームじゃあるまいし。
「で、お前さんはどうするんだ? 他人の影に潜む物好きさん」
俺が声を掛けると、背後からズズズと音を立てるような速さでゴスロリ姿の少女が出てくる。何そのポーズと演出。
「気付いていたの遠山、お父様を倒すだけあって鈍くはないようね」
「鈍かったら俺の居場所は棺桶の中だわな」
彼女――ブラドの娘である同じ吸血鬼、ヒルダに肩を竦める。
「お前ごときが吸血鬼と同じ棺桶の中に入れると? 中々際どいジョークね。
ああジャンヌ、私は当然『眷属』よ。バチカンの狂信者共と肩を並べるなんて死んでもごめんですもの」
ついでのように己の所属を告げると再度こちらに向き直り、
「それで、遠山。
「理子? あー元気元気、無駄に無駄を重ねて無駄すぎるくらい元気」
寧ろアイツがしょぼくれてる顔なんて早々拝めねえよ。
「そう」とヒルダは一つ頷くと、また俺の影に潜んでいった。え、出番終わりでいいのかよ。
そうなると最後、未だ所属を宣言していない俺とレキに注目が集まるわけで。というかレキ、お前いつまでイラスト書いてるんだよ。
『今いいところなんです、潤さんにお任せします』
なんて瞬き信号で伝えてきやがった、マジで何しに来たお前。
「では最後に遠山、所属を宣言してもらおう。シャーロック・ホームズを倒した立役者、どこに入るかでパワーバランスも大きく変わるだろう」
お前は何を言ってるんだ。ここにいる魑魅魍魎の連中に、平々凡々の俺が加わったところで変わる訳ないだろうが。ほら、無駄に緊迫した空気になるし。
とはいえ、俺の答えは最初から決まっている。
「チームバスカービルは『中立』だ。今のところ、俺は誰の味方でもねえ」
きっぱり告げると、他の何人かは驚いたのかざわつき始める。そんな意外かねえ。
「つまり、最初は様子見するってことか?」
代表なのかカツェが質問してくるが、俺は首を横に振る。
「逆だ逆、積極的に攻め立てるんだよ。核クラスの超能力アイテムなんぞ、さっさと回収して封印なり廃棄するに限る。
だから俺の味方はいない、少なくとも非々色金を持ってる連中に対してはな。例外として、色金を全部譲ってくれるならその勢力に無条件で味方するが」
その言葉に、何人かが殺気立つ。まあ欲しいものの前提条件と矛盾するんだから当たり前か、舐めた口聞くんじゃねえぞクソガキってのもあるんだろうが。
「まあ現実にそんな勢力はいないわな。というわけで――
持っている奴等、交渉なり暴力なりで強引にでも頂くからな?」
宣戦布告にも似た言葉に対し、殺気が更に一段階上がる中、
「ハハハハハハハハハ!!!!」
離れたところでつまらなそうな顔をしていたフェイスペイントの傭兵が、バカでかい笑い声を上げ始めた。おおうなんぞ、ツボるところあったか?
「ハ、でかい口叩くじゃねえか遠山潤! この面子相手にバカな宣言できるなら殺り甲斐があるってもんだ!」
「誰がバカか、バカは理子の専売特許――いてっ」
足元から軽く電流が流された。何、ヒルダの超能力? 何故バカ呼ばわりさせないし。
「『全員敵に回す』なんてやり方を選ぶ奴がバカ以外のなんだってんだよ、普通はどっちかの勢力に属して機会を窺うもんだろうによお!!」
「いや普通に考えれば足元を掬われる確率の方が高いだろ常考」
チラリと藍幣代表で先日箱詰め郵送したココ共の上司、諸葛静幻を見やる。苦笑で返された。こいつはまともっぽいな。
「ハハ、足元の代わりに両手両足千切られそうだってのによく言うぜ!
おもしれえ、俺はGⅢ。その内喧嘩売りにいくから待ってろよ!」
「色金忘れんなよー」
上機嫌に去っていく傭兵、GⅢにそれだけ言っておく。戦闘狂の類か、怖いねえ(←煽ったやつ)。
「……では、最後にレキ」
「私たちウルスは『中立』、正確には潤さんの味方になります」
「その味方は今ここにいる全員を敵に回しているのだが……いいのか?」
「潤さんは勝てない戦いはしませんから大丈夫です。なんやかんやで最終的にどうにかしてくれます」
大雑把過ぎね? あと任せる気満々かいレキさん。
「……では、これにて宣戦会議を終了する。各々存分に闘い、欲し、奪い合え!」
何か決闘っぽいジャンヌの締めで今回の会議は終了した。そのまますぐ戦闘――にはならず、何人かはこちらに交流も兼ねてか挨拶をしてくる。
「先日はウチのココ達が失礼しました」
「いやいや、こちらこそ急に送りつけて申し訳ない。で、ちゃんと届いた?」
「ええ、ご丁寧に空気穴も開けてきっちり密封されたものが。貴方、人攫いに向いてるんじゃないですか?」
「いや、あのチンチクリン共趣味じゃないし」
「趣味の範疇ならやるんですかね……?」
などと先日の一件について話したり、
「なんだこっちつかねえのかよ潤、師団の連中を囲んでリンチにしてやりたかったのによ」
「もう既にリンチ寸前な状態について。今なら友情価格で色金一個くれるなら味方するが?」
「誰がお前みたいなトンチンカンにやるかっての。ボコボコにして眷属の使いっ走りにしてやるから覚悟しとけよ!」
トンチンカンな友人にパシられそうになったり、
「潤は相変わらずねえ、まあ死なないように気をつけなさいよ?」
「ぶっ飛んでるのは姉弟そっくりじゃのう。では妾が勝利した暁には……ぬっふふふ」
「おうこっちを変態的な目で見るな」
姉貴に苦笑され、パトラにニヤニヤされたり。別の意味で身の危険を感じるが、まあ戦闘にならないだけマシだろう。
で、問題は最後。リバティーメイソンの代表が接した時のことなんだが(ちなみに師団は警戒してか近寄りもしなかった)。
「初めまして、トオヤマジュン。言うのが遅くなってしまったけど、イクスカリヴァーンを英国王室に返却してくれて本当に感謝するよ」
「どうも、モノがモノなんで無事に届いたなら何よりですよ」
「……そうだね、無事に届いたよ。日本の一般的な宅配会社経由で他の荷物に紛れてね。あの時は偽者なんじゃないかって大騒ぎになったものだよ」
「無事に届いたからいいじゃない」
「一般物に紛れさせて奪われるリスクを減らす君の考えは理解できたけど、どういう頭をしていたらこんなことが出来るんだと丸一日悩まされたよ」
「ちゃんと包装と擬態用の魔術は掛けてますけど」
「うん、それのせいで余計騒ぎが大きくなったのを理解してくれるかな? ご丁寧に差出人も不明だったし。
と、自己紹介が遅れたね。ボクはエル・ワトソン。アリアの婚約者だ」
「………………」
「どうかしたのかい? アリアに婚約者がいても不思議ではないと思うが」
「……いや、まさかアリアが一族公認で百合娘だとは思わなかったので。何、イギリスは貴族階級まで同姓婚を薦めるようになったのか?」
「随分素敵な世界になったわね」
色々な意味でな。というかヒルダ、なんでそこだけ口挟むんだよ。
「ちょ、ちょっと待ってくれ! 僕が女だと何故分かっ、じゃない、ボクは男だ、間違えるなんて失礼だぞ!!」
「え、体型や歩き方とか見れば丸分かりじゃん。そもそもモノホンの男なら女と言われても『頭にウジでも湧いてんのかコイツ』って反応するだろ」
「う、ぐ……リバティー・メイソンの誰にもばれたことなかったのに……い、いや、しょ、証拠は! ボクが女だという証拠はあるのか!?」
マジかよリバティーの皆さん目に風穴でもあいてんのか? もしくは全員ホ――いや、流石にねえか。
「証拠って言われてもねえ……スリーサイズでも当てればいいか?」
「HENTAIだ!?」
「最低ね」
何その反応、解せぬ。ところでワトソンくんちゃん、あーた大声で騒いでるから周りにバレてるの把握してる?
おまけ
「というかいつまで着いてくるんだよヒルダ」
「私は理子に会いに来たのよ、なら向かう場所は一緒でしょう。ほら、キリキリ豚のように歩きなさいトオヤマ」
「俺二足歩行なんですがねえ……自分で歩けばいいだろうに、何でわざわざ魔力の無駄遣いするんだか」
「貴族は自分の足を使わないものよ」
「俺は馬車代わりですか」
「いいえ、豚車よ」
「豚に拘りすぎじゃね? ただいまっと(小声)」
「すぅー……くぅー……」
「……ソファーで思いっきり寝てるわね、神崎・H・アリアが」
「ゲームやってて寝落ちしたんだろ。アリアの奴、いっつも十二時には眠くなるし」
「宣戦会議の場所に来れば母親の罪状も減らせたでしょうに……見た目通り子供なのね」
「だぁれが昨今の小学生にも劣る超ミニマム体型よ!!?」
「誰もそこまで言ってないわよ!? というか起きてるじゃない!?」
「むにゃ……すぅー」
「え、今の寝言なのかしら……?」
「寝ながらツッコミは稀によくある」
登場人物紹介
遠山潤
まさかの中立宣言をしたバスカービル代表。お陰で師団から睨まれる羽目になっているが、本人曰く「アリアの殺気の方が怖い」とのこと。
王室の宝剣を宅急便で返すイカレた感性の持ち主。ちなみに返却理由は「俺は使わんし、持ってても諍いの種になるからいらん」とのこと。
神崎・H・アリア
寝ながらでもツッコミは忘れないツッコミの鏡。不憫。
レキ
本当にいただけの
カツェ・グラッセ
魔女連隊隊長にして潤の友人。即座に撃ち合ったり肩を並べたりする仲らしい。
潤が味方にならないのを残念がっていたが、それならそれで面白いという物騒な思考の持ち主。
ヒルダ
潤の影に潜んでいたブラドの娘。理子に強い関心があるようだが……?
エル・ワトソン
初見で女と見破られた女装男子。カイザーの代わりに出席したのは、武偵校にそのまま編入予定のため。
ちなみにイクスカリヴァーンの開封をしたのは彼女で、送り主を調べたのも彼女。それ故潤に会う前の印象は『計算高いけど頭がおかしいかとてつもないバカ』。特に間違ってはいない。
後書き
先に一言を。原作では宣戦会議で勢力に属さないのは本来『無所属』ですが、主人公の立ち位置から『中立』に変更させていただきました。単に語感の問題ですが、無所属だと本当にやりたい放題しかねないので……
しかしシャドウバースはマジで時間泥棒。新パック追加だけど……小説書けなくなるんで大人しくしてます(泣)
はいどうも、そろそろ展開が原作から離れてきたなーと思ってるゆっくりいんです。え、元々おかしい? ははは、ナンノコトヤラ。
とりあえず次回は新キャラのヒルダ、ワトソンくんちゃん+アリアの裁判について語るかと。それと文化祭の前準備……かな? 正直、仮想喫茶のことしか覚えてないんですよね(汗)
感想・誤字訂正・評価・批評・質問・リクエストなど、良ければ付けてくださるとこれ以上なく嬉しいです。では読んでいただき、ありがとうございました。
ぶっちゃけ中学時代の話って見たいです?
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読みたい!
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いいから続きを書け
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各ヒロインとのイチャイチャを……
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エッチなのはいいと思います()