ちなみにタイトルはリクエストの原文ほぼそのままです。……まあご想像通り某サークルの皆さんが元凶です、詳しく知りたい方は『閑話その五・近くのほうが基本分かりにくい』を見ると分かる……かも?(ダイマ)
あ、時系列等は気にしない方向でお願いします。
「『メズ』、『
「大丈夫よ」「うん、システムオールグリーン!」「おっけーだよー」
どうも、夾竹桃よ。本日は私達『咲かせよ百合の花』のメンバーでお送りするわ。ちなみに全員ハンドルネームで呼び合ってる、こうすると一体感が増すのよね。
場所はアリアとメヌエットが暮らしているVIPルーム。場所をどうするか話していたらメズが快く貸してくれたわ。ただ住んでいるアリアの母親、メイドの二人には悪いから一泊二日の旅行券を送っておいたけど。
さて、今回私達がわざわざ集まった理由なんだけど――今現在サークルで作成している同人ゲーム、『白百合の初体験』のためだ。このゲームは当然百合ゲームで同姓を好きになるのが初めてな主人公が「ももちゃん話長いよー?」ごめんなさい甘美、ちょっと熱くなりかけたわ。
まあ長々と語ったのだけど、要はゲームの資料集めね。本は色々読んだけど映像関係だけではイマイチだから、いつもの私がやるネタ集めを皆でやろうという話だ。ただ見るだけではつまらないので、ちょっとしたイベント込みだけどね。
『んっ……ここは、教室、いや結界の中? そしてこの格好……大体察してしまう自分が嫌ですね』
どうやらターゲットが目を覚ましたようね。この状況で焦らず役になりきれる判断力は素晴らしいわ。
「聞こえるかしら、遠山潤。まず言うことはゲーム中あなたのことを
『……夾竹桃ですか、この状況の元凶は。なんのつもりでこんな場所に閉じ込めたのですか?』
「私だけじゃないわ、サークルメンバー全員よ」
「おはようございます、コネコ」、「あはは、ごめんねおはよー」、「弧猫ちゃん相変わらずすごいクオリティーだねー」
『誰もそんなこと聞いてないです、さっさと出してください。さもないと全員殴りますよ』
ジト目で声のする方向を見上げてくる、白髪碧眼の見た目は少女、中身は男の娘の遠城弧猫。相変わらず理子はいい仕事するわね、あのむさい男がロリ美少女に大変身してるわ。
でも、そんな態度とっていいのかしらね?
「ふふ、でもあなたの
『力尽くなら、そうですね。でも解析すれば別です、すぐに術式を
「ちなみに内部から解くと散開している理子達が一気に集まる仕組みになってるわよ」
『……この状況では助けにならないどころか嫌な予測が立てられますね』
思惑どおり指を引っ込めてくれたのはいいんだけど、もうちょっと仲間を信用してもいいんじゃないかし『絶対変な目に合わされるのにですか』……正解よ。
「じゃあ前置きはここまでで、ゲームのルールを説明するわね。場所は武偵校を模した校舎内、あなたはひたすら鬼役の女子達+αから捕まらないよう逃げ回りなさい。制限時間は一時間、捕まると酷い目にあうわ、R15以上かG表記かは相手によるけど」
『雑過ぎませんか、あとαって誰のことです?』
「別にいいでしょ、理解してるんだし。αはあれよ、カナね」
『是非とも帰ってもらいたいのですが』
「大丈夫よ、兄弟揃ってパトラの前で女装を披露するだけだから(最悪女装で一生を過ごすかもしれないけど)」
『聞こえてますよ』
あら失礼、まあ私達としては是非そのままでいてもらいたいけどね。
「ああそうだ弧猫ちゃん、女の子に暴力を振るうのはなしだよ、逃げるのに魔法を使うのも。もしどっちかを破ったら即座に女の子達が集合するからね~」
『このブレスレットはそのためですか、呪いよろしく外れませんし。絶界といい、ずいぶん腕のいい超能力がいるみたいですね』
「えっへん、甘美ちゃん実は中々やるんだ~」
『……その才能は是非とも別のことで活かすことをオススメしますよ。つまり要約すると、鬼ごっこですか』
「そういうことです。ちなみに弧猫のことは好きにしていいと参加者の皆さんに伝えてあります、こちらで責任は取りませんので頑張って逃げてください」
『メヌは私のことを何だと思ってるんですか』
「愉しみ、ですかね?」
『愉悦部長みたいなこと言わないでください』
でっかい溜息吐いてるけど、あっさりと受け入れるあたりトラブルに慣れてるわよね、それとも諦めてるのかしら。
「じゃあそろそろいいかしら。私がスタートって言ったら配置に着いてる娘達も動き出すわよ」
『変なとこだけ公正ですね。それと待ってください、武器だけ外します。鬼ごっこで持っててもデッドウェイトにしかなりませんし』
「たしかにそうね、じゃあ今の内に外しなさい」
『分かりました』
素直に頷き、愛用のUSP二丁を袖から取り出し、床に置く。次に背中から同様の二丁。しかしチラリと見える肌やスカート下の足を見ても、女子にしか見えな――
ガシャン、ガシャガシャガシャン
「「「「……」」」」
ガチャガチャ、ガキンガキンパチ、ゴトン。
「待ちなさい」
『はい、なんでしょう? ……あの、中身男の肌を見て楽しいですか?』
「女性的なラインが形成されてることに感心しただけよ。……違うそうじゃなくて、どれだけ武器を抱えてるのよ」
『まだ半分ですよ』
平然と言う弧猫に絶句する。今置いてあるだけでも数十の銃器や刃物が置かれているのに、まだあるというの。
結局全部の武装を解除するのに五分近く掛かった。最後に脱いだ制服の上着なんて投げ捨てたらコンクリートにヒビが入ったんだけど。
『ふう、大分軽くなりました』
「どれだけ積んでるのよ本当に……」
「大体の計算だけど、全部で100キロは軽く越してるだろうねこれは……」
昔のジャ○プ漫画の主人公か何かかしら。……これは、簡単に捕まりそうにないわね。
「……まあ、それはあの娘達次第ね。じゃあ、そろそろ始めるわよ」
『はい。……私が勝ったら何かあるんですか?』
「特にないわね」
『じゃあ皆さんをボコらせてもらうのでいいです』
「冗談よ、ちゃんと景品とか叶えられる範囲で用意するから」
『それならいいです、嘘でないことを祈ります』
一瞬目が本気だったわね、危なかったわ。
「それじゃあ行くわよ。3、2、1――スタート」
『エンジョウ、大人しくお縄に――』
『では逃げます、えいっ』ドゴン!!
『って、なんだあの速度は!? 超能力でなければ女装の影響か!?』
一番近くにいた
ところで、格好が原因と考えるあたりジャンヌも遠山グループの考えに毒されてきてるのかしら。
さて、弧猫が逃げた先は体育館、時間にして五分くらいだろうか。途中風魔雛菜や間宮あかりを筆頭とする一年生グループ(乾桜は除く、あの子前に別の女装した彼の姿に憧れてたから知らないほうがいいだろう)とも遭遇したが、あっさりと振り切っている。残念だけどあの娘達に弧猫の相手は荷が重いだろう、息の一つも乱してないのだし。
とはいえ、上手く逃げ込めたわけではない。一年生達は追い掛けるのがメインではないのよ。
弧猫が体育館に到着した途端、銃声が響く。それらは軽々避けられるが、本命は撃った本人が振るう小太刀二刀、しかしこれもかわして距離を取る。
『む、何よ随分速いじゃない。あかり達は上手いこと誘導してくれたけど、ちょっと厄介そうね』
小太刀二本を構えた神崎・H・アリアは、不満そうな顔をして再度突撃する。
『アリアも参加してたのですか』
『まあね、正直無視してママと旅行にでも行こうかと思ったけど、アンタを好きにしていい権利と言われて面白そうだったから』
『……サンドバックですか?』
『それは別のとこでやったからいいわよ、アタシの目的はね――男一人のアンタと白雪・理子・リサ・メヌの四人でデートさせるわ』
『……はい? それでアリアに何の得があるんですか?』
『別にないけど、二人くらいなら余裕で捌くアンタが四人に迫られたらどういう風になるのか見てみたくなったわ』
『……アリア、メヌに毒されましたか?』
『失礼ね、あそこまで性悪じゃないわよ』
「お姉様、あとでももまんの中身を豆板醤に変えておきます」
『ヤメロォやったらマジでキレるわよ!!? ……まあそういうわけで、アタシの楽しみのために大人しく捕まりなさい、コネコ!!』
『断固拒否します』
『別に拒否してもいいわよ、逃げられるならね!』
小太刀が振るわれる、回避。離れたところでガバメント、これも回避。回天○舞十連、やっぱり回避。超能力込みの地面割り、結局当たらず。
『……だあああちょこまか鬱陶しいわね!! 大体速度上がったとはいえ何で当たらないのよ!』
『逃亡に100%のリソースを費やしてる私と攻撃・捕縛に分散させてるアリアでは私に分があります』
『どこかの仙人かアンタは! そんな理屈通じるわけないでしょうが!!』
『超能力持ちが言っても説得力ないです』
『やかましい、越えられる物理法則にも限度があるでしょ普通! 大人しく捕まりなさい!』
弧猫以上の高速移動で背後を取り、、腕を取ろうとするが、
『捕まれと言われたら逃げたくなります』
伸びた腕の真下を屈んで横から抜け、二階の窓から飛び降りる。「待ちなさいコラァ!!」と女子らしくない叫びを上げながらアリアが追いかけ、足跡を見付けてそちらへ走るがそれは弧猫が造ったフェイク、本物は逆方向へと既に走っていた。
『意外とチョロイですね』
それがパートナーへの評価でいいのかしら。
「ああ、必死で無駄な努力をしてるお姉様はカワイイわね……」
メズはいつも通りマイペースね。
さて、林の中を抜け出そうと駆けている弧猫だったが、横合いからの銃声で後方に跳躍、飛んできた銃弾と水流は避けられたが、
『うっ……しまった、誘導されました』
跳んだ先で白い粘着性の糸に捕まってしまう。以前眞巳が見せてくれた土蜘蛛の糸ね、絡まる感じが扇情的でいい趣味してるわあの子(メモメモ)
「ロリ美少女の触手プレイ……ゴクリ」
業の深い趣味ね百姫、脳内でどういう補完がされてるのかしら。
『くっふっふー、ネコちゃんの拘束シーンゲットだじぇ!』カシャカシャ
『いや理子、さっさと捕まえた方がいいですよ? じゅ、じゃなかった弧猫ならすぐに逃げ出しそうですし』
『何言ってるのマミさん、例え逃げられる可能性があってもそこに求めるエロスがあるなら撮らずにはいられない、それがフェティシズムってモノなんですよ!』
『なるほど、これが探求者の姿ですか。私もフェチに目覚めればこうあるべきと学びました』
『そこの
相変わらず眞巳は真に受けるわね、将来悪い男に騙されないか心配だわ。悪い女ならいいんだけど、ネタ的に(マテ)
『くふふ、平然としてるけどネコちゃん動けないよね~? そ・れ・に、その先は理子特製の地雷が一杯敷き詰めてあるし、空には自爆装置付きのドローンが配置してあるよ~。
この完璧で逃げられない布陣、あとはりこりんに捕まってイイことされるだけだね~。ねえ今どんな気持ち? NDK? NDK?』
『いや理子、あの子相手にネタバレとか逃げてくれって言ってるようなものですよ?』
『大丈夫ダイジョブ、マミさんの糸は頑丈かつすげえネバネバしてるし、いくらネコちゃんでも超能力なしじゃ簡単には――』
『えいっ』
理子がベラベラ喋ってる間に弧猫は手近な糸が絡んでいた木を根元から引っこ抜き、
『とう』
気の抜ける掛け声と共に伸びた糸を手刀で切断した。……ジャンヌが言ってた女装の影響というのもあながち間違いじゃないかもしれないわね。
『嘘ォ!?』と理子が叫んでる間に同様の方法で反対側の糸も切断し、拘束から開放される。
『だから言ったじゃないですか……』
『ぐうう、でもあんなの理不尽でしょ!? アリアんじゃないんだし素手でどうにかできるとかなんでさ!?』
『筋力にリソースを限界まで回して腕を振るえば、真空波くらい作れます』
『それ聞くと普段の身体スペック申告は詐称なのかと思いたくなるんですが』
『非効率的だからやらないだけです、鍛えれば誰でも出来ますよ』
『うぐぐ、だがこの地雷原から逃れるのはどうか』
『やあ』
理子の話を遮る形で震脚、画面越しからでも分かるくらい地面が揺れる。当然そんなことをすれば地雷は爆破するのだが、
『では二人とも、さようなら』
爆発を利用して飛び上がり、更に空中のドローンを踏みつけて爆破させ、同様の方法で空中を疾走していった。
『流石ネコちゃん、無茶苦茶だあ!? そしてパンチラシーン逃した、チクセウ!!
ってそんなこと言ってる場合じゃない、マミさん急いで追い掛けて』
『そうやって妙に余裕な態度を装うから、毎回逃げられるんですよ。……恋愛的な意味でも』
『ゴフォオ!? 今それ言わなくても良くない!?』
この二人はもうダメね、眞巳は早々に諦めてるし。
「う~、爆風で遮られたからねこちーのパンチラ見逃した~。男の娘の中がどうなってるのか見たかったのに~」
そんなもの見たがるのはあなたくらいよ甘美、あと弧猫の下着は上下とも女物らしいわよ、着替えさせた理子曰く(頑なに脱がないので超能力で男物の下着を原子変換させてるらしいけど)。
「グッジョブりっちー」
ショタだけじゃなく男の娘も守備範囲なのね、あなた。
さて、爆発によって空中から逃げるという中々キチッてる方法で弧猫が向かった先はグラウンド。そこには二人が堂々と待っていた。
『来たわね、弧猫』
『ご主人様、そのお姿も素敵です……』
普段どおりの笑みを浮かべる絶世の美女(♂)カナと、うっとり顔のリサだ。あの子は主人がこんなんでもいいのね。
『……姉さんにリサですか。出来れば通してくださるとありがたいのですが』
『そう言われて逃がすと思う?』
『いえ、全く。強いて言うなら自分たちが待ってたフィールドで何も用意していないことが疑問です』
『あなた相手に小細工なんてしても仕方ないでしょ? 下手に用意してリサが怪我したら後で何されるか分かったもんじゃないし』
『うう、申し訳ありませんカナ様……』
『いいわよ別に、私の作戦に乗ってくれたのはリサの方だしね。
というわけで弧猫、私としては大人しく捕まってくれれば助かるのだけど』
『男二人のファッションショーとか超絶嫌です』
『あら、今ならリサに捕まえさせてあげるわよ? このメンツなら一番マシな相手だと思うけど』
『ご、ご主人様……』
リサが潤んだ瞳で見つめる中、弧猫は数秒沈黙し、
『……たしかにそれが一番マシですが、最初から次善の策を取るほど愚かではありません』
結局提案を蹴った、まあこれは予想通り。リサは一瞬残念そうにしたが、『それでこそ私のご主人様です』と誇らしげだ。美しい主従の絆ね(メモメモ)。
『そう、まあそうなるわよねえ。じゃあいつも通り――力尽くね!!』
言いつつカナは全弾『
『予想以上に身軽ね! でもどこまでかわせるかしら!?』
『これくらいなら幾らでも避けられ――ああ、そういうことですか。リサを傷つけない、というのは嘘ですか?』
『嘘じゃないわ、ただ貴方が避ければ
『……』
位置関係として狙われているリサも覚悟した顔だ、なんだかんだ言いながら弧猫はリサに甘いし、これは詰んだかしら?
『さあ、どうするのかしら弧猫? お得意の並列思考でどうにかするのかしら? まあ――時間なんてあげないけどね!!』
スコルピオを上段に構えたカナが突っ込み、胴に向けて振るわれる。そして、
『えいや』
『グハァ!?』
カウンターで放たれた腹部への蹴りをもろに受けたカナが、すごい勢いで吹っ飛んでいった。あ、追撃で頭蹴っ飛ばして意識刈り取ろうとしてるわね。
『げふ!? ちょ、ちょっと待って、攻撃はしないんじゃ、オグァ!?』
『しませんよ、
『……』チーン
……気付かれてたか、まあ予想できた展開よね。戦闘型がもう一人いたら結果は変わったかもしれないけど。
『ご、ご主人様……』
一人残ったリサはそれでも飛び掛ろうとするが、
『リサ、
『ヘルモーイ! メイドは主人の命令に絶対遵守です!!』
あっさり陥落したけど、こっちとしてはおいしいネタを頂いたから別にいいわ(メモメモ)
『じゃあここで大人しく待ってて――はっ』
『え? ――ご主人様!?』
飛んできた小刀を振り返り様に蹴りではじき、駆け寄ろうとするリサを手で制して、『ステイですよ』と告げる。心配しているのが分かっててもルールがあるのは分かってるのね、薄情だわ(←元凶)
『ふうん、変わったわね弧猫。前だったら脅しで弾いた武器を顔面近くに飛ばしたでしょうに』
『ルールがあるからです。飛ばした武器に自分から当たられても困りますし』
『それに、そんなカワイイ格好を積極的にしてくれることもなかったし』
『……二人と違って押しの強すぎる奴等が多いんです、断っても実力行使されますし』
『意地になれば逃げられると思うけどねえ。まあ、アタシは男か女、どっちの姿でも十分可愛がってあげるさ?』
『やめてください目がマジなんですが』
『本気だからね』
……鏡高菊代が百合も許容範囲だとは思わなかったわ、思わぬ収穫ね(メモメモ)
『ちなみにアタシはこの子を狙うのに躊躇しないよ?』
『っ』ビクッ
『……』
露骨にリサを狙う様子を見て、弧猫はその場から飛び去った。
『……本当、変わったねえ。以前なら一般人相手でも「だからどうした」で済ませそうなものだったのに。
妬けるくらい愛されてるってことだねえ、メイドさん?』
『あ、愛……そうなのでしょうか?』
『そうだよ、自信もっていいさ。まあアイツはその辺無関心だから、厄介なのには変わりないけどね。
……さて、アタシも追っかけるか。アイツ相手なら一対一の方が楽なのは知ってるけど、眞巳みたいに火力担当じゃないから止むを得ないわ』
これは三角関係ということでいいのかしら(メモメモ)
「メズの推測では違うと思うけど」
いいのよ、その辺は補完できるわ(メモメモ)
『……』
弧猫が逃げ去った先は外れにある倉庫の屋根上だった。そこには武装した星伽白雪が佇み、気配を感じると閉じていた目をゆっくりと開く。
『最後は白雪、ですか。ここに来るのは予想されてましたか』
『――うん、潤ちゃ――弧猫ちゃんならここに来ると思ってたから』
『……経験則による勘、ですか。付き合いの長さがなせるもの、おまけに気配を消されてたら到着するまで中々気付けないです』
『うん、でも良かった。正直、当たる自信はあんまりなかったから。弧猫ちゃんのことは良く知ってるつもりだけど、それが一面だけってのは理解してるつもり』
『……一面なれど本質、ですよ。まあこの格好で言っても説得力ないですが』
『大丈夫、カワイイと思うよ!』
『サムズアップしてまで肯定しなくていいです』
もう周りには肯定派しかいないんだから諦めなさい。
『じゃあ弧猫ちゃん、始めよっか。悪いけど、手加減は出来ないから』
『……封じ布まで外して、本気ですね。そんなに景品が欲しいのですか?』
『それもあるけど、何より負けたくないから。理子さんにも、リサちゃんにも、そして何より――潤ちゃんにも』
『……私にも、ですか』
『うん。私はしつこいし、諦めないから!!』
宣言と同時刀から炎の斬撃が飛び、弧猫の前で爆発する。それは余裕を持った跳躍で回避されるが、白雪も予測していたのか次々と炎を飛ばしてくる。
点ではなく面、威力よりも範囲を重視した攻撃。当たって怯ませるのが目的なのだろう、実際ダメージが薄いとはいえ、弧猫は攻撃を避けきれずにいる。
『は、は――はあ!!』
が、それ以上に白雪の消耗が激しい。短期決戦向けの超偵が途切れることなく超能力を連発しているのだ、無理もないだろう。
『10分。これだけの時間超能力を使い続けるのは大したものです、私だったら三分で枯渇していたでしょうね。
でも、そろそろ限界だと予測します。連続行使は例えるなら無呼吸で全力疾走のマラソンを続けているようなものですから』
『そう、だね、正直きついよ。っ、はっ!
でも、これだけあれば来るまでの時間は十分稼げたよね?』
『!? しま――』
それまで軽業師のように屋根を飛び回っていた弧猫が、急に動きを止めてしまう。まるで何かに縛り付けられたかのように。
『アタシを忘れて他の女に夢中なんて、酷い奴だね弧猫』
『……影縫い、ですか。眞巳から習って』
『おっと、喋る時間は与えないよ。さあ星伽白雪、こっからは純粋に速さ勝負だよ!』
『分かってます、あなたには負けません! 弧猫ちゃん、お覚悟――きゃっ!?』
菊代に合わせて走り出そうとした白雪だったが、限界が来ていたのか足をもつらせ、屋根から落ちてしまう。
『まず――』
『っ、くっ――』
間に合わない。そう思った時、弧猫の足からブチブチと嫌な音が響き、
『白雪!』
血塗れの足で白雪に向かって飛び、空中でその身をお姫様抱っこ、地上へ体勢を整え着地する。まるでヒロインを助ける主人公ね、素敵だわ。
『あ』『きゃっ?』
が、傷だらけの足では踏ん張りが効かなかったのか、白雪を巻き込んで倒れてしまう。
「「……」」
そしていかなる偶然か、弧猫が白雪を押し倒すような格好になった、一つでも動けば唇が触れ合うような顔の距離で。「「おおお!?」」とサークルメンバー二名は歓声を上げる。GJよとラブるの女神、メズは微妙に面白くなさそうだけど。
『あ、あの、あのあの、潤ちゃん、私』
『……白雪、怪我はないですか?』
『え? う、うん、大丈夫、ありがとう』
『いえ、怪我がないならいいんです。……ごめんなさい、今どきますね』
『あ、まっ――潤ちゃん、その足!?』
『ああ、これなら大丈夫です。痛覚は切ってあって――』
『ダメ、こんな怪我放っておけないよ! 潤ちゃん動かないで、今治すから!』
『わ。あの、白雪?』
今度は白雪が弧猫をお姫様抱っこ、だと……!? やばいわ、これは中々ないシチュエーションね(メモメモ)
『ごめんね、靴脱がすよ。……っ、こんな酷いの、私のせいで』
『……大丈夫です、痛みは切って』
『そういう問題じゃないよ! ケガしたら痛いって言わないとだよ、じゃないと気付いてもらえないし、助けられないから!』
『え、えっと、あの……はい、すいません』
涙目の白雪に迫られて困惑顔で頷き、大人しく治療を受ける弧猫。
『……白雪、魔力なら私の方が余ってますから自分で』
『ダメ、私にやらせて。潤ちゃんに怪我させたのは私が原因なんだから』
『……でも、残量からして辛いと思います』
『大丈夫、私頑丈だから! ……それに、助けて貰ったんだからこれくらいしてあげたいの』
『……じゃあ、お願いします。あと白雪、潤ではなく弧猫です』
動こうとしていた弧猫だが、地面に降ろされて大人しく治療を受けている。いいわねこのシチュエーション、素晴らしいわ白雪。
『白雪、弧猫、だいじょ――うぶみたいね』
『あ、鏡高さん。うん、見た目ほど酷いケガじゃないし、これならすぐ治るよ』
『そうかい、それは何より。まあとりあえず――勝負はあんたの勝ちだね』
『え? 勝負?』
『……白雪私を抱えてるじゃないですか。その前に私が白雪を抱っこしたのもありますけど』
『……あ!』
気付いてなかったらしい。それだけ必死だったのね。
『で、でも、こんな形でいいのかな』
『いいんじゃないの? 運も実力のうち、情で動いた弧猫の負けってことでしょ。それでいいわよね、主催者さん』
「そっちが納得してるなら構わないわ、寧ろ素晴らしいものを見せてもらえたし」
仮に無効だったとしてもこっちからMVPを送っていいくらいだわ。菊代には『だ、そうだよ』と肩を竦められたけど。
『えっと、じゃあ……私が弧猫ちゃんに、好きなことをお願いしていいってこと?』
『……約束した覚えはないですが、そうなりますね。出来ればお手柔らかにお願いします』
『そ、そっか……えっと、じゃあ、えっとね、こね、じゃなかった潤ちゃん!』
『はい』
『あの、あのね』
白雪は顔を真っ赤にして必死に言葉を出そうとしている。初心ねえ、一々良い反応だわ。
『私と――デートしてください!』
『――はい?』
『……だ、ダメかな? あの、デートプランは潤ちゃんに考えて欲しいんだけど』
『いえ、ダメではないですしプランくらい考えますが……正直、丸一日好きにされるとかかと思いました』
『だ、だって、女の子からデートに誘うなんてはしたないことだし……』
昭和の女かしらこの子は。そういえば感性はそっちに近いんだっけ。
『……貞淑な乙女なんですね、既成事実迫られたらどうしようかと思ってましたが……』
『き、既成事実……そ、そういうのはお互いに好き合っていて、合意の上じゃないと。お互い愛し合うんだし、一方通行の想いとかダメだと思う……』カアァ
『……すいません、女性に言うことじゃなかったですね。とにかく、了解しました。では今度のデート、楽しみにしててください』
『! は、はい、よろしくお願いします、潤ちゃん様!!』
『土下座しなくていいですから……あと弧猫です』
とりあえず、決まったようね。『お願い』は拍子抜けだったけど、内容は――うん、聞くまでもないわね、皆満足そうだわ。これならいい作品が書けそうだわ。
それでは、今回の企画はここまでね。次回があればまた会いましょう。
『二度とやらないでください』
そう言われるとやりたくなるわね。
登場人物紹介
遠城弧猫(遠山潤)
リクエスト先でも女装させられる我等が主人公、段々慣れてきた気がする。
女装時は格好の影響を受ける説が立っているが、本人曰く『格好に合わせて能力値を変更している、あとは気分』とのこと。
歩く武器庫のような装備数だが、普段からこの程度は武装しているらしく、お陰でか脱ぐと(速度が)すごい。
星伽白雪
勝者。ラッキースケベを受けたりデートの約束を取り付けたりなど、ヒロイン度では本作一な気がしてきた。
原作だと既成事実を作ろうとするほど積極的だが、自分から手を出すことはない受動的+潤に迫るのは無意味という要素が合わさった結果、「デートを自分からねだるのははしたないこと」と妙に純真なキャラになった。まあ感性が古い娘なのでセーフ……だと思う。
桃子(夾竹桃)
主催者兼元凶。今回の企画でネタが大量に入ってご満悦の様子。後で潤から大量の薔薇小説をアジトに投げ込まれるという報復を受け、卒倒しかけたが。
メズ(メヌエット・ホームズ)
今回は傍観者。本人的に少々面白くない展開が目立ったが、創作を始めたらあんまり気にならなくなった模様。
百姫
ネーミングの由来は『百合を愛する姫=百姫』。CG等のパソコン関係専門。百合だが綺麗・カワイイものなら男の娘でもOK。セミロングの黒髪にヘアバンドが特徴、スレンダー。眼鏡とコンタクトを気分で使い分ける。四人の中では一番普通、のはず。
甘美
ネーミングの由来は『甘味こそ最も美味なるもの=甘美』。実は超能力持ちの少女。イラストとシナリオ補助担当。精神的に同年代かそれ以上の女性かショタ好きなバイ。童顔低身長でニコニコ笑顔を絶やさない、髪は茶色のボブ。癒やし担当でマイペース。
感想
全員分書いたら一万文字越えたんですけど(白目)
とりあえずこれでリクエスト小説二つ目完了です。……機巧様、長ったらしい上にぐだってたらごめんなさい、しかも夾竹桃視点大して書けてねえし……改めて、大量のキャラ動かすのは大変だって身に沁みました。
ちなみに今回の勝者はダイス振って6が出たらにしました。一緒に出たキャラは同数ですね、全員軒並み出目が高くて驚きましたけど……
では今回はここまでで。感想・評価・お気に入り・誤字脱字報告等、何かいただけると非常に励みになりますので、気が向いたらよろしくお願いします。
読んでいただき、ありがとうございました。
ぶっちゃけ中学時代の話って見たいです?
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読みたい!
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いいから続きを書け
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各ヒロインとのイチャイチャを……
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エッチなのはいいと思います()