遠山潤は楽しみたい   作:ゆっくりいんⅡ

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 実は前々から書きたかった今回の話。男装っ子が女子の格好したらかわいいのは万国共通の認識です(んな訳ない)。


外伝 カワイイって何だろう

「ジュン! ボクを女の子らしくしてくれ!」

「……え、何急に。えっちぃのは勘弁よ?」

「たたた頼まないよそんなこと! 君そんな奴だったのかい!?」

「最近セクハラと貞操の危機がありまして」

「……普通逆じゃないかな」

 俺もそう思う。どうも、襲われる系男子遠山潤です。ちなみに貞操の危機はマジで起こりました、メイドと妹のコンビによって。あいつ等抜け駆けが上手すぎる、心臓に悪いわ。

 それはともかく、今いるのは特別棟の一角にある美術室。午後の専門科目? エルに『大事な話がある』ってメール来たからフケた。

「で、急に何だ? 服装とか女性らしい仕草なら、ウチの女性陣に聞いた方がいいぞ」

「いや、確かにそうなんだけど……ボクが女子に女の子らしさを教わってたら、おかしく見えるじゃないか」

「あーそっか、男子で通してるもんな」

「何だその『忘れてたわ』みたいな反応!? 言っておくけど君達以外にはバレてないからな!?」

 そうなんだよなーふっしぎー。イ・ウーで同期だったジャンヌにもばれてないし。……まあ、こっち見つけると180度転回して全力ダッシュするからなんだけど。お陰でジャンヌを慕う後輩女子達に恨まれてる、何故か俺だけ。何もしてねえよ、理不尽だろ。

「じゃあウチに来ればいいのでは?」

「……メヌ嬢に弄り倒されるのを覚悟でか?」

「理子とマイシスターも足しておこう。大丈夫、女装の呪縛以外からは逃れられる、はず」

「君も大概タフだな、大抵の人は逃げると思うぞ……」

 慣れって怖いよな。ハーレムだと思った? 残念女子どものオモチャです。家主の発言権はほぼない。

「まあ、事情は分かったけど。俺は何をすればいいんだ?」

「いや、その、女子らしさを磨く手伝いをして欲しいなと……ほら、男の目線でも見て欲しいし、ジュンはそういうの詳しいだろう?」

「……他の奴に話すの恥ずかしいんだろ、絶対からかわれるし」

「うぐっ」

 図星だった、口にも出してやんの。ウチの連中なら嬉々として羞恥心を煽りながら育てそうだな。……いや、煽ってる時点で駄目か。

「と、とりあえず制服は持ってきたんだが」

「『女子は男勝りで女子力が死んでる』と言われるウチの制服着たくらいで、女子らしくなれたら苦労しないだろ」

「!? これで少しは女らしくなるんじゃないのか!?」

「お前その理屈なら俺はとっくに女らしくなってるからな?」

 「そこは男の娘でしょユーくん!」と脳内の理子が叫んでるが、黙れ元凶。

「う、た、確かに……文化祭の時の姿は見事だったけど、ジュンは変わらずだからな……」

「思い出さないでくれませんかねえ」

 アレは嵌められたんだから、是非とも黒歴史にしたい。もしくは陽菜の口を永遠に閉ざすか(真顔)

「で、でもボクが用意してるのはこれと、女子らしいシチュエーションプランくらいだぞ?」

「何その痛い発想」

「ううううるさいぞ! ボクなりに精一杯考えたんだ!」

 少女マンガでも読み漁ってんのかこいつ、自覚あるのか顔赤いけど。しゃーねえなあ。

 ギャーギャーポカポカ(普通に痛い)騒ぐエルを尻目に、亜空間へ収納していたものを机の上に出現させる。これ、人前で出したくねえ。

「? 香水に女性ものの化粧品、それにウィッグと衣装……ジュン、実は女装好きの気が」

「ねえから。依頼で必要な変装道具を持ち歩いてるだけだよ。亜空間なら容量制限ないし」

 閉まった場所忘れると、永遠に取り出せなくなるけど。

「それにしたって、一式持ってるのはさすがに……うわあ」

「よし、俺帰るわ」

「ま、待ってくれ! ボクが悪かったから帰らないでえ!」

 その格好(男装)ですがりつくなよ、貴腐人に目を付けられたらどうするんだ。

 

 

「ほら、こんなもんでどうだ?」

「……すごい……これが、ボク……?」

「鏡映ってるのはお前さん以外にいないだろ」

 まあ、大分様変わりはしたがな。髪の色に合わせて付け髪で伸びた腰までのストレートヘアー、アクセントの赤いリボン、顔は薄く化粧を施し垂れ目の印象を強調、ゆったりした純白の長袖ワンピース、合わせて着る上着のカーディガン。そんな感じの、ちょっと儚げな美少女が姿見の中にいた。

 そうして出来たのが劇場版ポスターの間○桜、黒髪バージョンである。何でこれにしたって? ぱっと出てきたのがこれだったから。

 女装? したエルは、信じられないものを見るように鏡に映る自分を何度も見たり、その場でクルクル回っている。おーい、スカートなんだからあんまり激しく動くなって。

「すごい……凄いよジュン! 今のボクは正真正銘女の子だ!」

「そりゃまあ、そういう風に仕立て上げましたからね」

「ジュンは女子のコーディネイトも完璧にこなせる女装の天才だね!」

「オイヤメロ、単に変装術の応用だから。女装の才能じゃねえから」

 そんなこと言われると、自発的に女装させられるから。テンション上がってて聞いてないっぽいけど。

「ふふ、こんな可愛らしくなれるんだなあ……あ、ボクって一人称、変えた方がいいかな?」

「別にいいんでね、無理にキャラ付けするとどっかでボロが出るし。外出するなら声域を変えるくらいで」

「え、このまま出掛けるのかい!?」

「どうせならその格好でうろつきたいだろ?」

「う、それはそうだけど……ジュン、一緒に来てくれるかい?」

「俺? まあいいけど、じゃあどこ行」

「いや待ってくれ!」

「? 何よ」

 何か嫌な予感がする(真顔)

「その、そのままのジュンだと、男の人とデートしてるって、思われるから……」

 チラチラこちらに視線を送りつつ、エルが言いにくそうにしているが……え、マジでやんの? メッチャ期待した目で見られても困るんですけど。

 

 

「……どうしてこうなった」

「ふふ。女の子同士で一緒に出掛けるの、夢だったんだ」

「片方が違うものでしょ……」

「いつもボクが男装しているんだから、これでおあいこだろ? よく似合っているよ、エレ」

「褒められても全く嬉しくないのだわ……あと、見た目女同士の時点で、バランス悪いのだわ」

 ガックリ肩を落とす、俺ことエレちゃん。まあ見た目はそのまんまエレ○ュギカルである。流石にあの格好だと目立つので、秋仕様のファミ○スタイルだが。

 ……俺は(自発的に)やってねえ! と言った傍から女装をするとか、不本意かつ不覚である。もう一回言おう、どうしてこうなった。

「まあまあ。ここまで来たんだし、もうちょっと『女の子らしさ』を勉強させて欲しいな」

「そりゃあ、引き返しはしないけど……来る場所、ここで良かったの? ウチの生徒と鉢合わせる確率も、ゼロじゃないのだわ」

 ここ――東の迷宮と呼ばれる駅から出たある意味での聖地、池袋である。夕方に差し掛かった時間の今は、キャピキャピした少女達の姿を多く見掛ける気がする。

「うん、実は行きたい場所があるんだ」

「行きたい場所? サンシャイ○とか?」

「そこもあるけど、乙女ロードってあるよね?」

「……まあ、あるけど」

 あ、これ致命的なパターンだな(真顔)

「乙女の道というくらいだし、女子らしさを「よーしクレープでも食べて女子力磨くのだわ」ってジュン!? 何で無視するんだい!?」

「今はエレなのだわ。あそこ、サラ(桜の略)が想像するような場所じゃないわよ」

「む、そんなの行ってみなければ分からないだろう!」

「分かるから言ってるのだわ……流石にあそこは勘弁なのだわ」

「んん……? キミがそこまで嫌がるのも珍しいね。何があるんだい?」

「言いたくないんだけど……まあ、言わないで突っ込まれても困るし、言うわ」

 これ男(今は女の姿だけど)の口から言うのは微妙な気分になるんだよなあ。いや趣味としてはありだよ? ただ、俺にそっちの趣味は無いのだよワトソンくんちゃん。

 手招きして耳元に口を寄せると、周囲の人々がザワザワし出した。まあ二人とも目立つしな、俺にいたっては金髪だし。

「な、な……!」

 小声で乙女ロードの真実を告げると、エルの顔が真っ赤に染まった。その顔で羞恥に悶えると理子(変態)が狂喜しそうだな。

「そ、そうだったのか。危うくとんでもない場所に踏み込むところだった……ボクには早い世界だな、うん」

「来ない人には一生来ないし、気にしなくていいのだわ」

 はまる奴は泥沼に頭まで浸かるけど、幸いウチの人間はいない。逆は多めだけど。

「むう……しかしそうなると、わざわざ来たのにどうすればいいだろうか」

「だからクレープでも食べ歩きして、ちょっぴりショッピングでもすればいいのだわ。折角だから女子ものの服でも買ってきましょう」

「え、それって……スカートも購入するのかい?」

「そりゃそうなのだわ」

「そ、それはちょっと……恥ずかしいかな」

「なんでそこを一番恥ずかしがるのか分からないのだわ……」

 

 

 その後のショッピングはダイジェストで、クレープ屋。

「はい、ご希望のストロベリーアイスなのだわ」

「ありがとう、エレ。……わ、生地もふわふわだし、クリームとイチゴのバランスも良くて美味しいですね」

「初めて食べたみたいな物言いね」

「実際、初めてですからね。普段は女子らしいものを食べてると、変に見られそうだし」

「気にしすぎじゃないかしら。スイーツ好きの男子なんて、昨今珍しくないのだわ」

「ジュンとかそうですしね。でも、どこでボロが出るか分からないから……ところで、エレの奴は……すごい甘そうだね」

「バナナキャラメルストロベリーアイスなのだわ、美味しいわよ。そういえば、ちょこちょこ口調変えてるけど」

「た、試しにちょっと……どうですかね?」

「ちょっと恥ずかしそうにしてるのはカワイイと思うのだわ」

「か、かわ!?」

 ファッションモール。

「これなんかどうかしら?」

「こ、これは……短すぎないですか?」

「これくらいなら普通の範囲なのだわ。サラは足が綺麗なんだから、ちゃんと魅せておくのだわ」

「セ、セクハラだよエレ!?」

「? 女同士で何言ってるのかしら?」

「ぐぅ……」

 この後滅茶苦茶女物の服を購入した、カードで。……美少女がブラックカードを慣れた手つきで出したから、店員さんビックリしてたな。本人は不思議そうにしてたけど。すいません、この娘少し世間知らずなんですよ。

 買う時に家がとか父が何て言うかとかブツブツうるさかったので、ある一言で解決させた。それは、

「ばれなければ大丈夫だ、問題ない」

 と。……二重にダメな気はするけど、気にしたら負けだ。

「ふう、色々未知の場所に行けたな……やりたかったことも出来たよエレ、ありがとう」

「別にいいのだわ、この格好なのは不本意だけど」

「ふふ、でも似合ってるじゃないですか」

「さっきも言ったけど、不本意なのを褒められても嬉しくないのだわ」

 またまたそんなこと言ってーみたいな目で見ないで、実際不本意なんだよ。やればやるほど抵抗感が薄れるけど(白目)

「でも、お陰で女子らしさというのを学べた気がするよ。ねえエレ」

「ん?」

 少し前を歩いていたエルが、駅の見える交差点の前で振り返り、

 

 

「また、付き合ってくれますか?」

 

 

 夕日をバックに、女子らしい柔らかな笑みでこちらを見てきた。……まあ、

「いやアリアあたりと行けよ」

「即答!? 付き合い悪いなキミは!」

 いやいいだろ、わざわざ女装して女の子トレーニングに付き合ってるんだから。

 

 

おまけ

「ユーくんユーくん! これ見てこれ!」

「なんぞい理子。……池袋に美少女コスプレイヤー出現?」

「今SNSでものっそいバズってるんだよ! 化粧の仕方で気付いたんだけど、ひょっとして片方ユーくんだよね!? その日ブクロにいたでしょ!」

「いや流石に「そういえばその日にママとメヌの三人で遊び行ったけど、アンタとエルの気配感じた気がするわね」サイヤ人か何かかアリア」

「誰が大猿も怯む怪力の持ち主よ!?」「言ってないマジで言ってない」

「おー、ついにユーくんも女装をすすんでやるように……しかもワトソンくんちゃんも巻き込むとか、ベリーゴッドだね! よーしボクっ娘に良さそうなのはー」

「オイヤメロ、積極的になった覚えは欠片もねえよ」

 このあと殺す気で止めた。……まあ、この程度でどうにかなるわけないんだけど。

 

 

 




後書き
 ワトソンくんちゃんみたいなキャラは貴重、男装の麗人もそろそろ男の娘みたいな新しい属性と呼び名で普及化しないかなあ(願望)
 どうも、転装生(チェンジ)には一過言あるかもしれない作者、ゆっくりいんです。CVRとかにいっぱいいそうですよね、いつかそっちも焦点当ててみたいものです(真顔)
 さて、次回は中国編です。多分今までで一番苦労するかな? 正直当初想定してた潤とヒロイン達の関係性が予想の斜め上を行ってるので、どうなるか作者にも分からないんですよね……
 それでは今回はここまで。感想、誤字脱字、評価などお待ちしています。
 読んでくださり、ありがとうございました。
 

ぶっちゃけ中学時代の話って見たいです?

  • 読みたい!
  • いいから続きを書け
  • 各ヒロインとのイチャイチャを……
  • エッチなのはいいと思います()

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