遠山潤は楽しみたい   作:ゆっくりいんⅡ

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 ここでネタバレを一つ。

 『妖刃』は原作の『原田静刃』ポジションにいる別人です。というかこんな妖刕( ゚д゚)いてたまるか(←用意した奴)

 立ち絵イメージですが、私のTwitterプロフ絵がイメージです。興味があればご覧ください。
 
 
セーラ「作者」

( ゚д゚)「はい? 何でしょうセーラさん」

セーラ「今、75%」

( ゚д゚)「峠は越えましたね、ありがとうございます」

理子「十分高いんだよなあ」


第二話 逃げろや逃げろ、そして準備だ

「あー……これ、新しく生やすより縫って再接合した方が早いか」

 

「ご主人様、リサがやります! 縫合セットも用意しました!」

 

「ユーくん塗り薬いるー? くっつくの早くなるよー」

 

「いやそれ接着剤じゃないか峰さん!?」

 

「ちゃんとした塗り薬なんだよなあ、これ」

 

「嘘ぉ!? ケースが日本のホームセンターにありそうなので紛らわしいんだけど!?」

 

 本当だよな、ぱっと見木工ボンド用のだし。なんでこんな見た目かって? 理子の趣味(真顔)

 

 というわけでどうも、遠山潤です。前回は死の危機に瀕してたから自己紹介忘れたわ、よく生きてたな(白目)

 

 妖刃とのデスレース後、現在はリバティー・メイソンの拠点に匿ってもらって、治療の最中だ。出血を止めて造血もしてるんだが、腕の再接続が手間なのよな。拾っておいて正解だった、足止めに自爆させようかとも思ってたけど(真顔)

 

「ん、んう……はあ。ご主人様、治りました。どうでしょうか?」

 

「……なんか、リサが魔術使う時のボイスエロくない? どうですかユーくん、ルーちゃん(エルの愛称)」

 

「真面目に治療してる奴に何言ってるんだエロ魔人」

 

 あとエル、顔を赤らめて「えっと……」とか言ってると、肯定してるも同然だぞ。

 

「失礼。遠山潤、峰理子、リサ・アヴェ・デュ・アンクのお三方で間違いないか?」

 

「ん? ああ、合ってるよ。初めましてカイザーさん、リバティー・メイソンの優秀な殲魔士(エクソサイザー)に出会えるなんて、光栄だ」

 

「……ワトソン君に聞いていた通り、いい耳をしているな。こちらこそ、イクスカリヴァーンを普通郵便で送る優秀な武偵に出会えて光栄だ、ジュン」

 

 まだその事音に持ってるのかよ、細かいこと気にするとモテないぞイケメン(適当)

「必要なもんが帰ってきたんだから別にいいだろ」(真顔)

「……まあ、まあいい。その辺りの話し合いは、後でじっくりしよう。

 とりあえず、消防や警察への対応は任せてくれたまえ」

 

「あー、悪い。腕ぶった切られたのと逃げるのに必死だったから、そこまで気を回せなかった」

 

「君にそこまで言わせる相手なんて……ギリシャの神々でも出てきたのかい?」

 

「しがない武偵をどんな目で見てるんだエル。

 ……まあ個人的には、そっちの方が良かったかなあ……」

 

 本気なのか冗談なのか分からない言葉に、俺は溜息を吐く。神なら神殺しの武器を使えるから、対抗策はあるからな。いやあっちは当てればいいけどさ、当てれば(白目)

 

 二人が興味深そうにこっちを見ているが、聞かない方が胃に優しいぞ? 言うけどな(ゲス顔)

 

「魔剱の相方は『妖刃』と呼ばれてた。『氷帝』の方が分かりやすいか?」

 

「「……は?」」

 

 エルとカイザーの口から、異口同音の疑問。気持ちは分かる、俺だってこんなこと言われたら同じ反応するし。

 

「えっと……ジュン、血を失いすぎておかしくなったかい? 高級ホテルほどじゃないが、休める場所なら用意するよ」

 

「おう妄想に囚われた可哀相な人みたいな扱いやめーや」

 

「可哀相扱いはよくされるんじゃない? ユーくんは!」

 

「お前それブーメラン」

 

 白けた視線と可哀相なものを見る目を向けられるナンバーワンだろうよ、理子は。

 

「……冗談だとしたら、流石に笑えないのだが」

 

「冗談でこんなこと言えねえよ。直前まで認識できなかったから、このザマだ。

 ああそうだ、カイザー。もみ消しはやらなくていいと思うぞ。あいつの飼い主なら、片手間でやってくれるだろうし」

 

「……『氷帝』単独ではなく、飼いならしている組織があると?」

 

「制御できているかは分からんがな」

 多分できてるんだろうが。口には出さず、俺はあいつと相対した時の姿を脳内に描く。

 あやめの花を模した髪飾りの代わりに付けていた、新しいもの。あれが意味するのは一つ。

 

「剣型のフルール・ド・リス。……あんたらなら、俺達より馴染み深いだろ?」

 

「……!?」

 

「まさか……西欧財閥!?」

 

「見間違いではないぞ」

 

 エルとカイザーは絶句している。無理もないよな、事実なら相手が悪すぎる。

 

 西欧財閥。名の通り西ヨーロッパを中心とした財閥が統合したことで出来た欧州の一大組織であり、代表の発言権は『EU全体の総意と同等』と言われるほどであり、これは比喩でも何でもない。

 

 また魔術・教会関係の各組織とも太いパイプを持っており、表だけでなく裏にも影響は大きい。私兵の下部組織も相当数あるからな。

 

「……なるほど、なるほどだ。あちらが関わってくるなら、下手に動かない方が賢明か」

 

「でもユーくん、『氷帝』ーーあーいや、この呼び方はやめた方がいいかな?」

 

「そうしておけ」

 既に捨てた通称だろうが、魔術的の名を連呼するとろくなことがないからな。あれは物理的に害を及ぼすタイプだが、ホラーものの怨霊よろしく(白目)

 

「えーと、『妖刃』くんちゃんは財閥のワンコになるような子なの? ユーくんから聞いてたキャラとは、だいぶ違うんだけど」

 

「お前命知らずだな。本人の前では言うなよ、首が飛ぶ」

 

 あいつをくんちゃん呼びした奴なんて初めてだよ。「ほーい」とか言ってるけど、どこまで分かってるんだか。

 

「金や権力で転びはしないだろうな。大方命を助けられたとか、誰かの跡を継いだとかじゃねえか? あれで義理堅いところがあるからな」

 

「にゃーるほどにゃー」

 

「……あの、ご主人様。そうなると『妖刃』様は、やはり」

 

「ーー陣営が変われば、敵味方も変わる。友や相棒との殺し合いなんて、別に珍しくないさ」

 

「…………」

 

「そんな顔するなって」

 

 泣きそうな顔で目を伏せるのに苦笑しながら、頭を撫でてやる。よし、腕はちゃんと動くな。リサの治癒魔術の腕も上がってるか。

 

「……ジュン、イチャついてるところ悪いんだが……」

 

「エルの言い方よ」

 

「その、勝てるのかい? 『妖刃』が君の元相棒だというなら、難敵というレベルじゃないだろう?」

 

「ぶっちゃけ至難。難易度はベリーハードというよりインフェルノ」

 

 即答してやったら、ええ……という顔でこちらを見てくるエル。しゃーないやん、真正面から俺があいつに勝てるわけないんだし。首が胴体とお別れするだけやで(真顔)

 

 かといって集団で襲っても、空を舞う首の数が増えるだけだ。

 

 『山の翁の暗殺術と、、NOUMINの剣術を足して割らない』って、妙な評価した奴もいたからなあ。的確過ぎて泣けてくる。

 

「正直、妖刃もそうだが魔剱も十分脅威だ。あいつと肩を並べられるくらいには、な」

 

「……それなら、どうするんだい?」

 

「今必要なのは時間だ。さっきの戦闘で情報は集まったから、備えを十全にする」

 

 置き土産の天使モドキを介して、魔剱の戦闘スタイル等の情報も得られたしな。引くくらい強いからどうしろとって感じだが(白目)

 

「つまり、リバティー・メイソンの皆さんに支援してもらうのが重要なのですよ!」

 

「タカる気かよお前」

 

「な、なるほど。それじゃあーー」

 

 

「ーー残念ながら、それは不可能だ」

 

 

「……カイザー? 一体何をしているんだ!?」

 

 会話中に連絡していたのだろう。リバティー・メイソンの他メンバーがロビーに集まり、集団の中心で俺達に銃を向けるカイザーの姿に、エルが非難の声を上げる。

 

「……ワトソン君、冷静になりたまえ。今彼等を匿うということは、かつての『氷帝』と西欧財閥を一遍に敵に回すのだぞ? それがどれだけまずいか、君とて分かるだろう。明日どころか次の瞬間には、ここが惨劇の場になっても不思議じゃない。

 ……それに、『妖刃』と遠山潤はかつてコンビであり、家族だった。水面下で繋がりがあると疑わない方が、無理があると思うぞ?」

 

 コウモリもいることだしな、とカイザーが忌々しそうにつぶやく。ふむ、本心ではないが冷静な判断力。組織人としては優秀と言えるだろう。

 

「っ、それは、確かにそうだ……悔しいがボク達が束になっても、妖刃には勝てない」

 

「分かってくれた「だが!」」

 

 カイザーの言葉を遮って顔を赤くし、組織の仲間に向かってエルは強く主張する。

 

「彼は、ジュンは王室の宝であるイクスカリヴァーをシャーロックの手から取り返してくれた! 英国紳士なら、その恩義を仇で返すというのは、あまりにもーー」

 

「はいエル、ストーップ」

 

 ヒートアップするエルに声を掛ける。これ以上は組織の人間としてまずいでしょうよ、今後の立場を考えろって。

 

「! ジュン、どうして止める!? ボクは、ボクだけじゃなくリバティー・メイソンも、キミへの恩義がーー」

 

「その気持ちだけで十分だよ、だから冷静になれって。

 仮に妖刃を倒せても、万が一西欧財閥が出てくれば問題はリバティー・メイソンだけじゃなくなる。お前もそれは分かるだろ?」

 

「ーーう、ぐ……なら、ボクだけでも! ボク個人として手伝うなら問題ないだろう!? 必要なら、リバティー・メイソンも抜ける!」

 

「ワトソン君、何を言っているんだ!?」

 

「恩人に報いることすら出来ず縛るなら、名誉と地位もボクは不要だ!」

 

「ワトソン君……」

 

 憤怒と決意を秘めた目を見て、カイザーも本気だと理解したのだろう、口を閉ざしてしまう。後ろにいるリバティー・メイソンの面々も困惑を滲ませている中、

 

 スパーン!!

 

「あいたぁ!?」

 

 エルの後頭部に、デストロイ君三号(ハリセン)を叩きつけてやった。

 

「ちょ、何するんだジュン!?」

 

「何じゃねえよバカヤロー。曲がりなりにも家に誇りを持つ奴が、簡単に捨てるなんて言うなっての。一時の感情で、積み上げたものが全部無くなるぞ」

 

「っ、ジュンはボクの援護などいらないと言いたいのか!?」

 

「んなわけねえだろ、お前個人でも大助かりだよ。だけどな、今必要なのはリバティー・メイソン構成員としてのエル・ワトソンだ」

 

「……どういう意味だい」

 

 少し冷静さを取り戻したのだろう、エルが後頭部をさすりながらも睨み上げてくる。引っぱたいたのは悪かったって。

 

「極東戦役が終わったら、師団と眷属で交渉の機会が必ずある。その時、『中立』を謳った俺達が交渉で少しでも発言権を持つには、組織に属し、関りを持つお前の力が必要なんだよ。

 お前個人としても、組織としてもが借りを返すならそん時だ。組織を危機に陥らせる可能性が高い、今じゃねえよ」

 個人()にやられたなら、メンツを潰さないためにも口出ししにくいしな。そう締めくくり、肩を竦める。

「……だが、それもキミ達が死んでしまっては意味がないじゃないか」

 

「だーいじょうぶだってルーくん。ユーくんのしぶとさは、ギャグキャラ並だから!」

 

「もうちょいマシな例えなかったのかオメーは」

 

 あとそれもブーメランだからな。

 

「……というわけでカイザーさん。腕も治ったし、俺達は出ていきます。後ろから撃たないでくださいよ?」

 

「それは誓ってしない、安心してくれたまえ。

 ……しかし、どうするのだ? 妖刃は付近にいるだろうし、外に出たら間違いなく襲われるぞ」

 

「そこはまあ、やりようですよ」

 

 逃げるだけなら難しくないし、こっちには理子(逃亡の達人)もいるしな。

 

「そうか。……すまないな、ジュン。恩人を追い立てる、不甲斐ない男で」

 

「襲われないだけマシなんで、お気になさらずー」

 

 背を向けて手を振る俺に、カイザーが苦笑する気配を感じた。どいつもお人好しだねえ、ただの同盟相手だというのに。

 

「ジュン……」

 

「そんな今生の別れみたいな顔するなって、エル。首だけになっても、生きて帰ってくるよ」

 

「その時は理子が腰にぶら下げて持ってくるねー」

 

「いえ、リサが丁重に持っていきますっ」

 

「……いや、それは下手なホラーより怖いから、五体満足で帰ってきてくれ」

 

「一本までは欠損を許してくれると助かる」

 

 大真面目にそう言ったのだが、冗談と思われたのか苦笑されてしまった。いやマジで五体満足なら奇跡の部類だぞ。

 

 

「…………地下水路か」

 

 リバティー・メイソンのロッジから出てきた潤達の魔力を辿り、気配を殺したまま妖刃は動く。コンクリートを斬り開き(・・・・)、地下へ着陸して疾走。すぐさま見つけた。

 

「ーー」

 

 抜刀。余人が見たら納刀の瞬間まで、認識すらできない居合の一撃は、並んだ三人の首をまとめて撥ねーー

 

「……」

 

 霧が散るように、幻として消え去る。

 

「と、妖刃君!」

 

「妖刃、やったか?」

 

「……いや、囮の幻影だった」

 

 遅れて地下に入った魔剱ーーアリスベル、と雲居ーー獏に首を横に振り、再び音と魔力を辿り始めるがーー

 

「!? 何だ、これは……!? あの三人の気配が、街中に感じられるぞ!?」

 

「どれも均一で、特定がし辛いですね……」

 

「魔力反応の、分散だ」

 

 気配を消すのではなく、増やすことで相手を混乱させる。奴の十八番と呼べる逃走術。

 

「……妖刃、特定はできるか?」

 

「俺の魔術の腕では、無理だな。あれが作る以上、魔力の気配も完全に均一だろう」

 

 潤という男の魔術は、一種偏執的なまでに精密で精巧だ。余人からすれば理解不能な領域でも、あれにとっては当然の範疇なのだから、おかしいものだ。

 

「……だが、何もしない訳にはいくまい。魔剱、妖刃。潰して回ってくれ」

 

「分かりました」

 

「了解」

 

 雲居の指示を受け、二手に分かれて行動を開始する。

 

(逃がしたか。……奴に時間は、与えたくないのだがな)

 

 発生源の魔力を切り裂きながら、妖刃は思う。厄介なことになりそうだ、と。

 

 

おまけ

「ふう。とりあえず、駅まで着いたな」

 

「いやー正面から堂々と出るとか、聞いた時はユーくんの頭がアレになったかと思ったけど」

 

「逆に考えるんだ、追い込んだ鼠だけど正面から逃げてやろうと」

 

「ヘルモーイ! 相手の思考を予測して裏をかく手腕、流石ですご主人様!」

 

「思い付いても普通やらないけどねー。それで、どこに愛の逃避行するのユーくん?」

 

「愛はいらんだろ。とりあえず、西欧財閥とバチカンの影響が少ない場所が候補だが」

 

「ご主人様、リサから提案があるのですが」

 

「聞こう」

 

「ありがとうございます。リサの故郷、オランダはいかがでしょうか?」

 

 

「……行ったね」

 

「ああ、行ったな。無事に帰ってきて欲しいものだ」

 

「おや、カイザーが初対面の相手を気にかけるなんて、珍しいね」

 

「ワトソン君にあそこまで言わせる相手なんだ、気にもするさ。

 ……少し、妬けるな」

 

「? 何か言ったかい?」

 

「い、いやなんでもないぞワトソン君!?」

 

 

「……んん?」

 

「どうした理子」

 

「いや、どっからか夾ちゃんと逆というか、決して相容れない匂いがしたような……あれかな、腐臭?」

 

「よし、触れないでおこう」

 

 




あとがき
 逃亡決行までで一話過ぎた、どういうことだってばよ(白目)

 どうも、ゆっくりいんです。リバティー・メイソンからも刺されそうになりましたが、ダメージなく逃亡成功しました。さすが潤君汚い、詭弁の達人なり(褒めてない)。

 さて、次回はオランダの逃亡先で反撃の準備です。イチャイチャ? (多分)ないです、真面目にやるはずです(多分)

 それでは今回はここまで。読んでくださりありがとうございました。

 感想・評価・お気に入り等、いただければテンションが爆上がりして投稿頻度が早くなるかもしれません(真顔)

ぶっちゃけ中学時代の話って見たいです?

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  • 各ヒロインとのイチャイチャを……
  • エッチなのはいいと思います()

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