【休止中】番長が異世界から来るそうですよ?   作:赤坂 通

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第八話

 ―――二一〇五三八〇外門・ペリペッド通り夕暮れ。

 サウザンドアイズ七桁外門支店へと向かう道中。

 

「桜の木……ではないわね。花弁の形が違うし、真夏になっても咲き続けているはずがないもの」

 商店へ向かう通りは石造で整備されており、脇を埋める街路樹(がいろじゅ)は桃色の花を散らして新芽と青葉が生え始めている。

「いや、まだ初夏になったばかりだぞ。気合の入った桜が残っていてもおかしくないだろ」

「……?今は秋だったと思うけど」

「桜は一年中咲き続けてるものだろう?別に不思議でもなんでもない」

 

 ん?っと噛み合わない四人は顔を見合わせて首を傾げる。黒ウサギは笑って説明した。

「皆さんはそれぞれ違う世界から召喚されているのデス。元いた時間軸以外にも歴史や文化、生態系などとところどころ違う箇所(かしょ)があるはずですよ」

「番長の<桜が咲き続ける世界>みたいな、パラレルワールドってやつか?」

「近しいですね。正しくは立体交差並行世界論というものなのですけれど……」

「意味が解らんし、説明には時間がかかるんだろう?今度説明してくれ」

 番一は苦そうな顔で話を止める。すると黒ウサギが振り返る。どうやら店に着いたらしい。

 商店の旗には、蒼い生地に互いが向かい合う二人の女神像が記されている。

 あれが<サウザンドアイズ>の旗なのだろう。

 

 日が暮れて看板を下げる割烹着(かっぽうぎ)の女性店員に、黒ウサギは滑り込みでストップを、

 

「まっ」

「待ったなしですお客様。うちは時間外営業は」

「邪魔するぞ」

「していませんっっ!!!」

 

 番一は滑り込みどころか真正面から、下げようとしている看板の下をくぐって入ろうとして……止められていた。

 流石は超大手の商業コミュニティ。押し入る客の拒みにも隙がない。

 

「……。流石だな。俺の<遅刻滑り込み堂々打ち崩し戦法>が通じないのはお前で二人目だ」

「というよりなんて商売っ気の無い店なのかしら。押し入る番一君も大概だけれど」

「全くです!閉店時間の五分前に客を締め出すなんて!押し入る番一さまも大概ですけど!」

「文句があるならどうぞ他所へ。押し入ろうとしたのであなた方は今後一切の出入りを禁じます。出禁です」

「出禁!?出禁にするなら押し入ろうとした番一さまだけにして下さい!私たちも巻き添えで出禁なんて御客様を舐めすぎでございますよ!?」

「失礼しました。では彼は出禁にして他の方は中で入店許可を伺いますのでコミュニティの名前をよろしいでしょうか?」

「……う」

 一転して言葉に詰まる黒ウサギ。そんな会話の裏で番一と十六夜はというと、

 

「……。なあ十六夜、ふざけ半分で出禁喰らって黒ウサギが困ってるんだが」

「番長がフザけるから起きたことだ。反省してその技は封印しろ」

 

 ……ごく普通に会話をしていた。黒ウサギがアワアワと慌てていると、

 

 

 

 

 

 

 

「いぃぃぃぃぃぃやっほおおおぉぉぉぉぉぉぉ!久しぶりだ黒ウサギィィィィィィィィィ!」

 店内から爆走して着物風の服を着た真っ白い髪の少女に黒ウサギは不意打ち(もしくはフライングボディーアタック)を仕掛けられあわや大惨事となる

 

 

 

 

 

 

「なんだこいつ?」

 前に、番一が飛び出してきたその少女の襟元に右中指を引っ掛け、両足を軸に半回転し十六夜に向けて勢いを殺さずにそのままブン投げる。

 

 

 

 

 

「てい」

 番一が投げつけてきたそれ(・・)を十六夜はボレーシュートで黒ウサギに叩き込む。

 結局、黒ウサギは蹴られた少女と共にクルクルクルクルクと空中四回転半ひねりして街道の向こうにある浅い水路まで吹き飛んだ。

「きゃあーーーーーーーーーー……………!」

 ボチャン。そして遠くなる悲鳴。

 店員は痛そうな頭を抱えていた。

「なあ店員。この店にはドッキリサービスがあるのか?」

「おう。俺もさすがに驚いた。別バージョンがあるなら見てみたい」

「ありません」

「「なんなら有料でも」」

「やりません」

 真剣な表情の二人に、真剣な表情でキッパリ言い切る女性店員。この三人、割と真剣である。

 直後、少女が再びくるくると縦回転して飛んできたので、

「ほっ」

 番一が右腕で抱きかかえるように受け止めた。

 さっきから右腕ばかりなのは、左手で常に金属バットを持っているからであり、打ち返さなかった分マシだと思ってもらいたい。

「グウゥゥ……!黒ウサギの豊満な触り心地から一転、筋肉質で固い触り心地が……ウゴゴゴゴ」

「ガハハハハ!鍛え方が違うからな!」

 

 そう言って番一は少女を降ろし、黒ウサギが濡れた服やミニスカートを絞りながら水路から上がり複雑そうに呟く。

「うう……まさか私まで濡れることになるなんて」

「因果応報……かな」

 耀の腕の中にいる三毛猫も賛成するようにニャーと鳴く。

 反対に濡れても全く気にしていない少女は大して怒ってもいないような声で、けれど笑っていない目で尋ねる。

「とりあえず先程ワシを投げた筋肉質な男と、ボレーキックをかましてくれたオヌシらよ。

 名乗れ、この恨み忘れないからの?」

「十六夜様だぜ。以後よろしく和装ロリ」

「俺は長井番一様だ。名乗れというから名乗るがお前も名乗れよ?礼儀ってもんだ」

 ヤハハガハハと笑いながら自己紹介をする十六夜と番一。

 

「初対面の相手を投げ、蹴り飛ばす奴に礼儀を問われるとはな。私こそ<サウザンドアイズ>の

幹部様で白夜叉様じゃ!」

 ……白夜叉は小さい胸を張って堂々と名乗り、喋りだす。

「ふふん。お前たちが黒ウサギの新しい同士か。異世界の人間が私の元に来たということは……ついに黒ウサギが私のペットに」

「なりません!どういう起承転結があってそんなことになるんですか!」

「まあいい。話があるなら店内で聞こう」

 呵々(かか)と笑いながら白夜叉は店へ入ろうとして、女性店員に声を掛けられた。

「いいのですか?彼らは旗も持たない<ノーネーム>のはず。規定では」

「<ノーネーム>だと分かっていながら名を尋ねる、性悪店員に対する詫びだ。彼らの身元は私が保証する」

 むっ、と拗ねるような顔をする女性店員。彼女にしてみればルールを守っただけなのだから気を悪くするのは仕方のないことだろう。

 六人は女性店員に睨まれながら暖簾をくぐった。

 

 

 

 

            ※

 

 

 

 

「生憎と店は閉めてしまったのでな。私の私室で勘弁してくれ」

 六人は店の外観からは考えられない、不自然な広さの中庭を進み、縁側で足を止める。

 障子を開けて招かれた場所は香のような物が焚かれており、風と共に六人の鼻をくすぐる。

 個室というにはやや広い和室の上座に腰を下ろした白夜叉は、大きく背伸びをしてから十六夜達に向き直る。

 

「もう一度自己紹介しておこうかの。私は四桁の門、三三四五外門に本拠を構えている

<サウザンドアイズ>幹部の白夜叉だ。この黒ウサギとは少々縁があってな。コミュニティが崩壊してからもちょくちょく手を貸してやっている器の大きな美少女と認識しておいてくれ」

「その外門、って何?」

 耀が小首をかしげて問う。

「箱庭の階層を示す外壁にある門ですよ。数字が若いほど都市の中心部に近く、強大な力を持つ者達が住んでいるのです」

 外壁から数えて七桁の外門、六桁の外門、と内側に行くほど数字は若くなり、同時に強大な力を持つ。箱庭で四桁の外門ともなれば、名のある修羅神仏が割拠(かっきょ)する完全な人外魔境だ。

 黒ウサギが描く上空から見た箱庭の図は、外門によって幾重もの階層に分かれている。

 その図を見た四人は口を揃えて、

 

「……超巨大タマネギ?」

「いえ、超巨大バームクーヘンではないかしら?」

「そうだな。どちらかといえばバームクーヘンだ」

「何処からどう見てもバームクーヘンだな」

 

 うん、と頷き合う四人。身も蓋もない感想にガクリと肩を落とす黒ウサギ。

 対照的に、白夜叉は呵々(かか)と哄笑を上げて二度三度と頷いた。

「うまいこと例える。その例えなら今いる七桁の外門はバームクーヘンの一番薄い皮の部分に当たるな。更に説明するなら、東西南北の四つの区切りの東側に当たり、<世界の果て>と向かい合う場所になる。あそこにはコミュニティに所属していないものの、強力なギフトを持つもの達が住んでいるぞ。―――その水樹の持ち主などな」

 白夜叉は薄く笑って黒ウサギの持つ水樹に視線を向ける。白夜叉が指すんのはトリトニスの大滝を住処にしていた蛇神の事だろう。

「ああ、あの十六夜が倒した蛇か」

「十六夜さんがここに来る前に素手で叩きのめしまして。この水樹は蛇神様から(いただ)いたのですよ」

 番一が呟き、自慢げに黒ウサギが言うと白夜叉は声を上げて驚いた。

「なんと!?試練ではなく拳で倒したとな!?ではその童は神格持ちの神童か?」

「いえ、黒ウサギはそう思えません。神格なら一目見ればわかるはずですし」

 

 

 神格とは生来の神様そのものではなく、種の最高ランクに体を変幻させるギフトを指す。

 

 ―――蛇に神格を与えれば巨躯の蛇神に。

 

 ―――人に神格を与えれば現人神や神童に。

 

 ―――鬼に神格を与えれば天地を揺るがす鬼神と化す。

 

 更に他のギフトも強化されるため、箱庭にあるコミュニティの多くは各々の目的のため神格を手に入れることを第一目標とし、彼らは上層を目指して力を付けているのだ。

 

 

「ふむ、しかし神格を倒すには同じように神格を持つか、互いの種族によほど崩れたパワーバランスがない限り不可能なはず」

「……なあ、あの白蛇の事を知ってるってことは知り合いか何かか?」

 番一がふと気になった事を白夜叉に聞き、

「んむ?知り合いも何も、あれに神格を与えたのはこの私だぞ。もう何百年も前の話だがの」

 その言葉に十六夜は物騒に瞳を光らせて問いただす。

「へえ?じゃあオマエはあのヘビより強いのか?」

「ふふん、当然だ。私は東側の<階層支配者(フロアマスター)>だぞ。この東側にあるコミュニティでは並ぶ者が居ない、最強の主催者なのだからの」

 

<最強の主催者>―――その言葉に十六夜・飛鳥・耀・番一の四人は一斉に瞳を輝かせる。

「そう……ふふ。ではつまり、貴女のゲームをクリア出来れば、私たちのコミュニティは東側で最強のコミュニティという事になるのかしら?」

「無論、そうなるの」

「そりゃ景気のいい話だ。探す手間が省けた」

 四人は剥き出しの闘争心を視線に込めて白夜叉を見る。白夜叉はその視線に高らかと笑い声をあげた。

「抜け目のない童達だ。依頼しておきながら、私にギフトゲームで挑むと?」

「え?ちょ、ちょっと御四人様!?」

 突然の展開に慌てる黒ウサギを右手で制す白夜叉。

「よいよ黒ウサギ。私も遊び相手には常に飢えている」

「ノリがいいわね。そういうの好きよ」

「ふふ、そうか。―――しかし、ゲーム前に一つ確認しておくことがある」

 白夜叉は着物の裾から<サウザンドアイズ>の旗印―――向かい合う双女神の紋が入ったカードを取り出し一言、

 

 

 

 

 

「おんしらが望むのは<挑戦>か―――もしくは<決闘>か?」

 ―――刹那、四人の視界は暗転した。




赤坂です。
投稿が遅れました理由はプロローグの後書きに完全回答があります。
もう少しペースを早めにした方がいいのかな、とか。
もう少し文章全体を長くした方がいいのかな、とか。
色々考えてます。感想やコメントいただけると発狂しながら取り入れます(多分)。
誤字・脱字も報告していただけると幸いです。
また次回お会いしましょう。
ではでは。
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