―――何処となく納得がいかないような表情で白夜叉は番一の謝罪の言葉を受け取り、十六夜達の方に向き直る。
「さて、と。お主らの試練も決めねばの」
そう言って十六夜達に白夜叉は近づいて行き、番一は頭を掻きながら座り込む。
白夜叉の背をボーッ、と眺めていると、彼方の山脈から甲高い叫び声が聞こえ、獅子と鷲を合わせたような鳥が飛んできて、白夜叉が再び羊皮紙を取り出し書き綴る。
羊皮紙を受け取った直後に耀が手をビシ!と手を上げ、鳥?か何かに近づき、飛鳥と黒ウサギ、白夜叉は湖畔の近くに立ち、十六夜は番一の隣に歩いてきた。
隣に立ってからしばらくの間、耀の動向を眺めてから番一に話しかける。
「……。なあ番長。本気じゃなかったのか?」
「ん。まあな、肩が暖まってなかった。あークソ、負けた負けた」
負けたというも、番一はそれでも少し満足そうな顔をする。
「いやはや、俺の素の全力の一撃を受け止められる奴が異世界にいるとは思わなかった」
「へえ?番長のいた世界には普通にいたと。桜が咲き続けるとかいう話と一緒に今度話してくれよ」
「おう、わかった。それよりあの鳥……?はなんだ」
二つ返事で引き受け、番一は十六夜に尋ねる。
「
「まじか!?すげえなそりゃ。……俺のとこにも猫と話せる奴はいたが、猫限定だったしな……」
「―――番長のいた世界がどういう世界なのか、本気で気になってきたぞ」
「また今度な、と。飛んでったな。……どういうルールなんだ?」
「<グリフォンの背に跨り、湖畔を舞う>、<力><知恵><勇気>の
ざっと十六夜が説明する、
「<勇気>、ね。そんな曖昧なもので戦いたくねえな。勇気の基準なんて人それぞれだろうに」
そう言いつつ、飛んで行ったグリフォンを目で追う。
「そういえば番長。聞きたいことがある」
「なんだ十六夜、何でも聞け」
十六夜は少し溜めてから問う。
「番長の背に集まってた、あの光はなんなんだ?」
その質問に番一は
「……。
「オマエが白夜叉に殴りかかる時に背中に光が集まってたんだが」
「光が集まるってどういう状況だよ?」
番一は自分の身に起きることなどどうでもいい、というように立ち上がり歩き出しながら言う、
「まあギフト鑑定するとかなんとか黒ウサギも言ってたし、その時にわかるだろ」
バットをグルグルと回し、肩に担ぎ、耀の方を見て驚く、
「うお!?グリフォンから落ちたぞ!?」
「春日部さん!?」
皆が見守る中、彼方の山脈を廻り、帰ってきたグリフォンの背から耀は振り落とされていた。
黒ウサギは即座に助けに行こうとし、手を十六夜に掴まれていた。
「は、離し―――」
「待て!まだ終わってない!」
湖畔の上で振り落とされた耀は、次の瞬間体を
彼女の落下速度を衰えさせ、ついには湖畔に触れることなく飛翔したのだ。
「…………なっ」
「おお、すげえな」
番一以外の全員が絶句した。無理もない。
先程までそんな素振りを見せなかった春日部耀が、湖畔の上で風を纏って浮いているのだ。
ふわふわと泳ぐように不慣れな飛翔を見せる春日部耀に近寄ったのは、呆れたように笑う十六夜だった。
「やっぱりな。お前のギフトって、他の生物の特性を手に入れる類だったんだな」
軽薄な笑みに、むっとした声音で耀が返す。
「……違う。これは友達になった証。けど、いつから知ってたの?」
「ただの推測だ。黒ウサギと出会ったときに風上に立たれたらわかるとか言ってたろ。普通の人間にはできない芸当だ、だとすると春日部のギフトは他種とのコミュニケーションだけではなく、他種のギフトを何らかの形で手に入れたんじゃないか……ってな。グリフォンのあの速度に耐えられる生物は地球上にいないだろうし?」
興味津々な十六夜の視線を避ける耀。
「なあ白夜叉、宙に浮くのって凄いモノなのか?」
「そうじゃな。空を飛ぶ者は大抵の場合翼を持つ。驚くべきはグリフォンのギフトの特性を使用したという点だ。―――おんしの持つギフトだが先天性か?」
番一の質問に白夜叉は答え、そのまま耀に話しかける。
「ううん。父さんにもらった木彫りのおかげ」
「木彫り?良かったらその木彫りというのを見せてくれんか?」
頷いた耀は、ペンダントにしていた丸い木彫り細工を取り出す。
白夜叉は渡された手の平大の木彫りを見つめて、急に顔を顰める。
「材料は
ブツブツと呟きながら鑑定をする白夜叉。
「いや、これは……これは凄い!!本当にすごいぞ娘!!これが本当に人造だとすればおんしの父は神代の大天才だ!まさか人の手で独自の系統樹を完成させ、しかもギフトとして確立させてしまうとは!コレは正真正銘<生命の目録>と称して過言無い名品だ!」
興奮したように声を上げる白夜叉。耀は不思議そうに小首を傾げて問う。
「系統樹って、生物の発祥と進化の系譜とかを示すアレ?」
「そうじゃの、しかしこの木彫りはセンスが溢れとるの。
わざわざ円形にしたのは生命の流転、輪廻を表現したもの。
再生と滅び、輪廻を繰り返す生命の系譜が進化を遂げて進む円の中心、即ち世界の中心を目指して進む様を表現している。
中心が空白なのは、流転する世界の中心だからか、生命の歓声が未だに視えぬからか、それともこの作品そのものが未完成の作品だからか。
―――うぬぬ、凄い。凄いぞ。久しく想像力が刺激されとるぞ!実にアーティスティックだ!
おんしさえよければ私が買い取りたいぐらいだの!」
「ダメ」
耀はあっさり断って木彫り細工を取り上げる。
「で、これはどんな力を持ったギフトなんだ?」
「それは分からん。詳しく知りたいなら店の鑑定士に頼むしかない。それも上層に住むものでなければ鑑定は不可能だろう」
「え。白夜叉様でも鑑定できないのですか?今日は鑑定をお願いしたかったのですけど」
グッ、と気まずそうな顔になる白夜叉。
「よ、よりにもよってギフト鑑定か。専門外どころか無関係もいいところなのだがの」
ううむ、と唸り困ったように白髪を掻き上げ四人の顔を見つめる。
「どれどれ……ふむふむ……うむ、四人ともに素養が高いのは分かる。しかし何とも言えんな。
おんしらは自分のギフトの力をどの程度に把握している?」
「企業秘密」
「右に同じ」
「以下同文」
「説明不要」
「うおおおおい?いやまあ、仮にも対戦相手だったものにギフトを教えるのが怖いのは分かるが、それじゃ話が進まんだろうに」
「別に鑑定なんていらねえよ。人に値札張られるのは好きじゃない」
「説明不要なのは本当だぞ?微塵も知らんし想像もつかないからな!」
ハッキリと拒絶する十六夜とそれに頷く二人、本当に微塵も知らない番一。
「何にせよ<
白夜叉がパンパンと柏手を打つ。すると四人の前に光り輝く四枚のカードが現れる。
逆廻十六夜の前にはコバルトブルーのカードが、
久藤飛鳥の前にはワインレッドのカードが、
春日部耀の前にはパールエメラルドのカードが、
長井番一の前にはナイトブラックのカードが、
それぞれの名とギフトが刻まれたカードを受け取る。
黒ウサギは驚いたような、興奮したような顔で四人のカードを覗き込んだ。
「ギフトカード!」
「お中元?」
「お歳暮?」
「お年玉?」
「果し状?」
「ち、違います!というかなんで皆さんそんなに息が合ってるのです!?このギフトカードは顕現している恩恵を収納できる超高価なカードですよ!他にも―――」
「つまり。素敵アイテム、と」
「だからなんで適当に聞き流すのですか!あーもうそうです、超素敵アイテムなんです!」
黒ウサギに叱られながら四人はそれぞれのカードを物珍しそうにみつめる。
「本来はコミュニティの名と旗印も記されるのだが、おんしらは<ノーネーム>だからの。少々味気ない絵になっているが、文句は黒ウサギに言ってくれ」
「……どういう事だ?」
「だから絵柄の文句は黒ウサギに言えと……」
「
番長がギフトカードを白夜叉に見せる、他の者も同様に覗き込み
「な……んだ?これは」
一斉に息を呑む。
―――壊れたテレビのように荒く掠れた、意味を為さない文字が間隔を開けて絶えず変化をしていた。
<領 争 読 >
<箱 風 殴 >
<世 漁 軸 >
<星 庭 砕 >
< 創 後 ん>
<す 題 親 >
< え 物 >
<解 事 止>
<問 児 語 >
<ら 黒 名 >
<無 廃 黄 >
そしてたっぷり一分ほど変化し続け、
<
と表示され、停止した。
「……なんじゃ、これは?」
「俺に聞くなよ。確かに俺は負けたが、さすがに壊れてるのはちょっと……」
「
「ヤハハ、それなら俺のこれもレアケースなわけだ?」
十六夜も白夜叉にギフトカードを渡す。
<
「……いや、そんな馬鹿な」
白夜叉は二人のギフトカードを持ち、悩む。
「<
エラーを起こすなど……」
「何にせよ、鑑定は出来なかったって事だろ。俺的にはこの方がありがたいさ」
「まあ仕方がないな。諦めることにしよう」
パシッとギフトカードを取り上げる二人。
(……蛇神を倒す童と、私の一撃でも倒れぬ童の二人にエラーか)
本来神格保持者など、人間の手で倒せるはずがなく、神霊であり星霊でもある白夜叉の肋骨をへし折る勢いで振り抜いた一撃を耐えきるというのもまた、おかしな話ではある。
(強大な力を持っていることは間違いない……<ラプラスの紙片>の解析ギフトを無効化した?)
修羅神仏の集う箱庭において無効化のギフトなど対して珍しくなどない。だが、それは単一の能力に特化した武装に限られた話。
強大な奇跡の力を宿す者が、奇跡を打ち消す御技を宿しては大きく矛盾する。
その矛盾の大きさに比べればまだ<ラプラスの紙片>に問題がある方が納得できる。
「一応聞いておくが、他の者には異常はないか?」
白夜叉は念のために聞いておく。これ以上の厄介ごとは面倒だ。
「私は<威光>というものね」
「私は<
飛鳥と耀が答え、白夜叉が安堵で胸をなでおろす。
「っとすまん白夜叉。もう一個だ」
……番一がもう一度呼ばねば、本当に安堵できていたであろう。
「……ハァ?今度はなんじゃ。おんしにも正体不明が来たか?」
「いや、違う。今度は脱字だ」
そう言って見せてくるギフトカードには、
<
の二つの文字。
それを見た白夜叉は今度は顔面を蒼白に染め、今にも泡をふき出さんばかりになっていた。
「―――――――――おんし、<番長>というのは言葉のアヤではないのか?」
「いんや?元の世界では名乗ってたし」
「……白夜叉様?」
番一が答えた瞬間、ブツブツと何かを呟き始める白夜叉。
またしてもたっぷり五分ほどして頭を掻きながら伝えた。
「今度腕利きの鑑定士を呼ぶ。
白夜叉は、戦う前よりもはるかに警戒心と殺気を
「……。おいおい、そりゃねえだろ?せめて説明ぐらいしてくれ。そんなにヤバいのか?」
「最悪の場合、箱庭上層の全てが殺しに来る」
即答する白夜叉、その言葉に黒ウサギは唖然とする。白夜叉の目には冗談の色は微塵もない。
「だから説明しろ。ヤバいのは脱字か?黄金バットってやつか?」
「黄金バットじゃ。いいか、よく聞け。」
白夜叉は息を吸い、
「―――黄金バットを持つものは、
赤坂です。
やっとギフト出せましたよ!ええ、ようやくです!
……え?訳が分からんって?それなら変化する文字の中にネタを入れておいたんで探して見てください。
とりあえず、いったん10話で区切りがいいので……特に何もしません。
次の話は少し遅れるかもしれません。(当社比)
誤字・脱字ありましたら報告していただけると幸いです。
感想、評価。狂喜乱舞します。
ではでは。