【休止中】番長が異世界から来るそうですよ?   作:赤坂 通

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第十四話

―――箱庭二一〇五三八〇外門。<フォレス・ガロ>居住区前。

飛鳥、耀、ジン、そして黒ウサギと十六夜と番一は<フォレス・ガロ>のコミュニティの居住区へと向かう道中に、黒ウサギから疑問の声が上がった。

 

 

「その……耀さん?なぜ番一様のバットを……」

至極当然の疑問に本来の持ち主である番一が答えた。

「そりゃ一撃必殺、必中必殺、見敵必殺じゃなきゃな。ガ……ガルなんとかって奴に素手で挑むのは危険そうだし」

「いつ貸すって言ったんだ?タイミングが無かった気がするんだが」

十六夜が気になったのはいつそんな話をしたのかという点だった。

というのも、朝起き出して顔を合わせてからは番一は基本十六夜達と共に行動していたからであり、十六夜がその会話を耳にしないのは物理的に不可能だからである。

 

「……今朝ちょっといろいろとあってな」

「……今朝ちょっといろいろとあって」

「……すげえ気になるぞ。オイ」

その質問には耀と番一の二人が渋い顔で避けるように答えた。

 

「何があったかは聞きませんが、いいのですか?」

「ガ……ガルなんとかって奴を袋叩きにして欲しいという俺の願いだ」

「あら。私には勤まらないと?」

飛鳥が若干不満そうに声を上げる。

「飛鳥よりか耀の方が力が強そうだったしな。お嬢様がバット持って襲ってくるというのも中々なものだが……」

「ヤハハ!今度そのシチュエーションも見てみたいな!」

「確かに。夜中に見たら怖いと思う」

「だな。ガハハハハ!」

高笑いする番一はしかし、いつも手にしている物が無いせいか手を暇そうにぶらつかせていた。

 

 

 

 

 

「あ、皆さん!見えてきました……けど、」

黒ウサギは一瞬、目を疑った。他のメンバーも同様。それというもの、居住区が森の様に豹変(ひょうへん)していたからだ。

ツタの絡む門をさすり、鬱蒼(うっそう)()(しげ)る木々を見上げて耀は呟く。

「……。ジャングル?」

「虎の住むコミュニティだしな。おかしくはないだろ」

「おかしいです。<フォレス・ガロ>のコミュニティの本拠は普通の居住区だったはずですし」

「……?なんだこの木。変だな」

番一が門に絡みつく木を触り首をひねる。その樹枝はまるで生き物のように脈を打ち、肌を通して胎動のようなものを感じさせた。

「うわ、気持ち悪い……お、<契約書類(ギアスロール)>貼ってある」

木を触っていた番一が声を上げる。門柱に貼られた羊皮紙には今回のゲームの内容が記されていた。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

ギフトゲーム名<ハンティング>

 

・プレイヤー一覧:久遠 飛鳥

         春日部 耀

         ジン=ラッセル

 

・クリア条件  :ホストの本拠内に潜むガルド=ガスパーの討伐。

・クリア方法  :ホスト側が指定した特定武具でのみ討伐可能。

         指定武具以外での攻撃は<契約(ギアス)>によって無効化される。

・敗北条件   :降参か、プレイヤーが上記の勝利条件を満たせなくなった場合。

・指定武具   :ゲームテリトリー内にて配置。

 

宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗の下<ノーネーム>はギフトゲームに参加します。

                     <フォレス・ガロ>印

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「ガルドの身をクリア条件に……指定武具で打倒!?」

「こ、これはまずいです!」

ジンと黒ウサギが悲鳴のような声を上げる。飛鳥は心配そうに問う。

「このゲームはそんなに危険なの?」

「いえ、ゲーム自体は単純です。問題はこのルールです。このルールでは飛鳥さんのギフトで彼を操ることも、耀さんのギフトで傷つけることも出来ない事になります……」

「ってことは、俺のバットも攻撃できないのか……残念だ」

「指定武具で打倒……<恩恵(ギフト)>ではなく<契約(ギアス)>で身を守られてしまいました、これでは神格でも手が出せません!」

「すいません、僕の落ち度でした。初めに<契約書類>を作った時にルールもその場で決めておけばよかったのに……!」

 

ルールを決めるのが主催者(ホスト)である以上、白紙のゲームを承諾するというのは自殺行為に等しい。

ギフトゲームに参加したことが無いジンは、ルールが白紙のギフトゲームに参加することが如何に愚かな事かわかっていなかったのだ。

 

「敵は命がけで五分に持ち込んだって事か。観客にしてみれば面白くていいけどな」

「気軽に言ってくれるわね……条件はかなり厳しいわよ。指定武具が何かも書かれていないし、このまま戦えば厳しいかもしれないわ」

そう呟く飛鳥は厳しい表情で<契約書類>を覗きこむ。

 

そんな飛鳥の表情を見た黒ウサギと耀は、飛鳥の手をぎゅっと握って励ます。

「だ、大丈夫ですよ!<契約書類>には『指定』武具としっかり書いてあります!つまり最低でも何らかのヒントが無ければなりません。ヒントが提示されてなければ、ルール違反で<フォレス・ガロ>の敗北は決定!この黒ウサギがいる限り、反則はさせませんとも!」

「大丈夫。黒ウサギもこう言ってるし、私も頑張る」

「……そうね。むしろコレぐらいのハンデがあった方が、外道のプライドを粉砕できるわね」

愛嬌たっぷりに励ます黒ウサギと、やる気を見せる耀。飛鳥も二人の(げき)で奮起する。

これは売った喧嘩で買われた喧嘩。勝機があるなら諦めてはいけない。

 

その陰で十六夜はジンに昨夜のことを話していた。

「この勝負に勝てないと俺の作戦が成り立たない。負ければ其処(そこ)までだ。勝てよ御チビ」

「……分かってます。絶対に負けません」

こんなことで(つまづ)くわけにはいかない。

 

その裏で番一は耀に話しかけていた。

「あ、バット使えないし返してくれ。いつかまたゲスイ奴と喧嘩する時に貸し出すからよ」

「……喧嘩することは前提なんだね」

はい。と言ってバットは番一の手に戻り、参加者三人は門を開けて突入した。

 

 

            ※

 

 

門の開閉がゲームの合図だったのか、生い茂る森が門を絡めるように(うごめ)いた。

「うお!?なんだコレ余計気持ち悪い!?」

「ゲームが始まりました!……ええと、この木はおそらく鬼化(きか)しているのかと」

「どういう意味だ、黒ウサギ」

気化(きか)?なんだ空気にでもなるのか」

「空気になる『気化』ではなく、鬼になる『鬼化』です。吸血鬼によって……吸血鬼?」

黒ウサギが門に絡む木を触りながら首を傾げる。

 

(鬼化……それもこんな範囲での鬼化なんて、彼女以外には)

 

「吸血鬼が何かしたって事か。なるほど」

番一が合点がいったという風に手を打つ。

「ってことは指定武具は銀かニンニクか十字架だな」

「……その中だったら『銀製の何か』が指定武具でファイナルアンサーだ。」

「YES。けれど『指定』としか書かれていませんし、棍棒(こんぼう)やただの銀の棒なんて言う可能性も……ってあれ?」

ふぐぐ、という表情で門を睨む黒ウサギが何かに気づき空を見上げ、

 

「どうした黒ウサギ?っておわっ!?なんだこれポストシュートのプロか!?」

 

そんな黒ウサギを見ていた番一のポケットに不自然に手紙が舞い込んだ。

「お、ポストシュートのプロは箱庭にもいるのか!」

「……番一様、どなたからです?」

黒ウサギが十六夜の言葉を避けるように番一に尋ねる。

「ん?おう」

「おい待て黒ウサギ。ポストシュートのプロについて答えろ」

そんな意図に気づいた十六夜は黒ウサギを問い詰める。

 

 

「……それはさておき」

「さておかねえよ。どうして避ける?」

 

 

「……。知りません」

「は?」

「ですから知らないのです。ええ、誰も。この箱庭にいる誰も不自然ポストシュートの犯人を知らないのですよ」

「……白髪ロリとかもか?」

「白夜叉様も困った顔でおっしゃていました

『手紙を書き終えて封蝋をして郵便屋に出しに行こうと立ち上がったら消えていた』

『何を言っているのか分からないと思うじゃろうが、私にもわからない』と」

「便利かつ快適だな。それ」

「ですが、きっちり郵便代+手数料を持って行かれるようです」

「ありがた迷惑だな。それ」

十六夜と黒ウサギの二人が話し込んでいる横で手紙を広げる番一。

 

「白夜叉からか。なになに……って!?マジかよ!?手配速すぎだろ!ゲーム開始したばっかで呼び出すなよ!」

「どうしました番一様?」

「白夜叉からの呼び出しで『鑑定人の準備が出来たから急いで来い』だそうだ!……ちょっくら行ってくる!」

 

 

 

 

 

            ※

 

 

 

 

 

タッタッタッ、と軽快なリズムで走りサウザンドアイズの店へと向かう。

「にしてもなんでこのタイミングかね……」

あまりにも運が悪い、というより仕組まれたんじゃないかと言うタイミング。

「っと、ここか」

サウザンドアイズ店前でブレーキをかける番一。

 

 

 

「って危ねえ!?」

 

 

 

キキーッ、と滑って速度を落とした顔面に箒がフルスイングで迫ってきたのを頭を後ろに反らすことによって避ける番一。

「チッ……ノーネームお断りで、貴方は出禁を喰らわせたはずです。帰ってください」

「お前、今舌打ち……まぁいいか。おーい白夜叉ぁー!入れてくれぇー!店員に止められるぅー!」

「店先で叫ばないでくださいっ!」

「そういうのはまずは自分の声を抑えてからだな」

 

ガハハハハ!と、笑う番一を睨む女性店員の背後の、暖簾(のれん)から声を聞きつけたからか白夜叉が姿を現した。

「おお、来たか番一。ほれ鑑定人が待っておるから早く入れ」

「ですが!」

彼奴(こやつ)は私が再鑑定させてくれと頼んだのじゃ。通してやってくれ」

女性店員を(さと)すようにそう言うと白夜叉は番一を連れて店内へと入る。

 

 

 

 

「今日は私室じゃないのな」

「昨日は店を閉めた後だったからの。ほれこの部屋じゃ」

白夜叉はそう言って妙にゴテゴテした扉を指す。

「ゴテゴテしてんなこの扉」

「盗聴、透視、その他諸々の情報漏洩(じょうほうろうえい)を防ぐギフト付きの特別製の部屋じゃの」

そう言って白夜叉がドアノブに手を伸ばすと白夜叉の姿が瞬きひとつの間で消えた。

 

 

 

 

「いや、ドアノブ触ればいいだけなのか?セキリュティザル過ぎだろそれだと?というかせめて 入り方伝えてから入ってくれよ……」

後にはどうすればいいのか分からずに立ち尽くす番一の姿が残った。

 

 

 

 

 




赤坂です。
遅れに遅れました。すいません。
2016年は基本多忙の身になりますので更新ペースは遅くなります。
……一月ぶりに途中で書き止めていた14話を書いていたら書き方忘れかけていました。

あ、新年あけましておめでとうございます(二月)
番長は今年も色々やらかすつもりではありますのでお付き合いいただければ幸いです。
このままですと、4月までに25話も行かない可能性も……。
隙を見て書いて行こうと思います。
誤字・脱字・感想、よろしくお願いいたします。

ではでは。
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