―――二六四七五外門・<ペルセウス>本拠。
黒ウサギは夜遅く<ペルセウス>本拠へ赴き、ルイオスに
『コミュニティ代表者を交え、会談の場を設けたい』と伝えた。
『会談の場を設けたい』=『
その翌日、白亜の宮殿の門を叩いた<ノーネーム>一同を迎え、謁見の間で両者は向かい合う。
交渉の場に着いたルイオスはにやけた顔で黒ウサギに熱い視線を送り、番一の送り返す殺意とおもちゃを見る子供のような視線を受け、苦虫を噛み潰したような顔でそっぽを向いていた。
そんな状況を無視して黒ウサギは切り出す。
「我々<ノーネーム>は<ペルセウス>に決闘を申し込みます」
「何?」
ルイオスの表情が変わる。予想していなかった返答に眉を
「決闘の方式は<ペルセウス>の所持するゲームの中で最も高難度の物で構いません」
「え?そんなつまらない事言いに来たの?決闘なんてしないって」
ルイオスは拍子抜けしたように声を上げた。自分達が戦って負ける事などあり得ない、と思っている。
だが、相手は<箱庭の貴族>。頭のおかしい男もいる以上ゲームを受けるのは危険でしかない。
そもそも<名無し>と対等な決闘をするという事そのものが既に屈辱なのだ。
ルイオスは決闘を拒否し、手のひらで払う仕草を向ける。
「それが用件ならとっとと帰れよ。あーマジうぜえ。趣味じゃねえけど、あの吸血鬼で
―――ドサッ、っと黒ウサギは、ルイオスの眼前に巨大な大風呂敷を広げる。
風呂敷の中からは<ゴーゴンの首>の印がある紅と蒼の宝玉が転がり出た。
ルイオスの傍で控えていた側近達は眼をひん剥いて叫び声をあげる。
「こ、これは!?」
「<ペルセウス>への挑戦権を示すギフト……!?まさか名無し風情が、
困惑する<ペルセウス>一同。本来ならば、挑戦権を得たコミュニティが出た場合本拠に通達が行くのだが、気づいていなかったらしい。
それもそのはず、ここ数日の書類は仕事をしないルイオスの所為で、執務室の中で山積みになっているのだから。
「ああ、あの大タコか。あれならヘビの方が数段マシだな」
「あー。あの、おっちょこちょいばあさん三人衆か。知恵が必要なゲームだったんだろうが、クリアは一瞬だった」
このゲームは力のない最下層のコミュニティにのみ常時解放されている試練で、ペルセウスの武具のレプリカを与えるというもの。様式も調った、立派なギフトゲームである。
―――はずなのだが、番一の赴いたグライアイの試練は少し不備があったようだ。
ルイオスは宝玉を見つめて盛大に舌打ちした。
そもそも<ペルセウス>への挑戦権を与えているのは、ペルセウスの伝説を描きつつ、下層のコミュニティの向上心を育てるための物だった。
が、ルイオスにはそんな立派な志などない。
二代目以降から設置されたこの制度。無くそうと思った矢先にこの事態だ。
ルイオスの不快感は絶頂に達していた。
「ハッ……いいさ、相手してやるよ。もともとこのゲームは思い上がったコミュニティに身の程を知らせてやるための物。二度と逆らう気がなくなるぐらい徹底的に……徹底的に潰してやる」
華美な外套を翻して憤るルイオス。
それを睨み、黒ウサギは髪を緋色に染め、宣戦布告する。
「われわれのコミュニティを踏みにじった数々の無礼。もはや言葉は不要でしょう<ノーネーム>と<ペルセウス>。ギフトゲームにて決着をつけさせていただきます!」
※
<
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ギフトゲーム名 <FAIRYTALE in PERSEUS>
・プレイヤー一覧:逆廻十六夜
久遠飛鳥
春日部耀
長井番一
・<ノーネーム>ゲームマスター ジン=ラッセル
・<ペルセウス>ゲームマスター ルイオス=ペルセウス
・クリア条件 :ホスト側のゲームマスターを打倒
・敗北条件 :プレイヤー側のゲームマスターによる降伏
プレイヤー側のゲームマスターの失格
プレイヤー側が上記の勝利条件を満たせなくなった場合。
・舞台詳細-ルール
*ホスト側のゲームマスターは本拠・白亜の宮殿の最奥から出てはならない。
*ホスト側の参加者は最奥に入ってはいけない。
*プレイヤー達はホスト側(ゲームマスターを除く)の人間に
*姿を見られたプレイヤーはゲームマスターへの挑戦権を失う。
*失格となったプレイヤーは挑戦資格を失うだけであり、ゲームを続行する事は可能である。
宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗の下、<ノーネーム>はギフトゲームに参加します。
<ペルセウス> 印
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<契約書類>に承諾した直後、六人の視界は間を置かずに光へと呑まれた。
門前に立った十六夜達が不意に振り返る。
白亜の宮殿の周辺は箱庭から切り離され、未知の空域を浮かぶ宮殿に変貌していた。
此処は最早、箱庭であって箱庭でない場所なのだ。
「姿を見られれば失格、か。つまりペルセウスを暗殺しろってことか?」
胸を躍らせるような声音で十六夜が呟く。
「まずは宮殿の攻略をしなければなりません。伝説のペルセウスとは違い、黒ウサギ達はハデスのギフトを持っておりません。不可視のギフトを持たない黒ウサギ達には綿密な作戦が―――」
黒ウサギが人差し指を立てて説明している途中でその指を番一に向けた。
「番一様、もしやと思いますが、便利な見えなくなる必殺技とかお持ちで?」
思い立ったのは、黒ウサギの雷を吸い取った<番長必殺シリーズ>。
記憶が確かなら<三十二式>といっていたはず。
なら少なくともあと三十一個あるはず。もしかしたら姿が見えなくなるような、
今この場で超便利で都合の良い様な必殺技が、あるとは思えないがもしかしたら
「あるぞ」
「「「「「ある!?」」」」」
皆に驚かれたが即座に番一は言い直す。
「あー違う違う。あるにはあるが、真っ暗に近い影が必要だし、ろくすっぽつかえた物じゃない。何せ<八式>だし。ネタ満載の一桁台だし」
あるにはあるようだが、そこまで便利ではないようだ。
頭を振った番一は、やれやれというように肩を
「皆もご存知の<番長必殺シリーズ>。確かに四十八個ある必殺技だが?全局面対応用とは銘打ってはある必殺技だが?その実欠点が多い!知ってるだろ?」
「いえ、知りません」
「知らないわね」
「うん、知らない」
「初耳なんだが?」
「初ウサ耳です」
「あ、そういえば言ってねえや。数字が高いほど効果が強い、低いほどネタ度が高い。欠点が結構ある。その欠点はカバー可能っちゃ可能。程度か?使えない必殺に意味ないし、目の前のゲームに集中しようぜ」
敵地門前でコントを繰り広げている場合ではない。
話の種になってしまった番一が無理やり話を本筋に戻す。
「とりあえず、ジンが見つかったらアウトでしかも人数が限られてる。ってことは役割分担必須で、やる事は大きく分けて―――いくつだ?」
「まあ、そうだな。そもそも数人で挑むゲームじゃねえと思うし、役割分担は必須だな」
まだまだ秘密を増やしてくる番一を十六夜が睨みながらも、話に乗った。
コクリと頷いた耀が続ける。
「うん。まず、ジン君と一緒にゲームマスターを倒す役、次に索敵。見えない敵を感知して撃退する役割。最後に、失格覚悟で囮と露払いをする役割」
「索敵は鼻も耳も眼も良い春日部か、一度透明になった奴等を追った事のある番長だが……。
あの日結局番長は追えたのか?」
あの日、とはレティシアが連れ去られ、番一がハデスのギフトを使う<ペルセウス>のメンバーを追った日の事だろう。
「追えたには追えたが、確実じゃない。『たまたま』と『なんとなく』がうまく機能したってだけだ。確実なのは耀のほうじゃないか?」
「でも番一君も結構いい線行ってると思うけれど?耳も眼もよくない?」
「まあ確かに良いっちゃいいけど、俺は<ルイオスを袋叩きにし隊>のメンバーだし……」
「番一君……?」
自身で話を戻した癖にまたコントを始めるのか、と、飛鳥が
「私情を持ち出した番長には戦闘、索敵、囮、露払い、全ての役割を平等に押し付けるとして、 本格的な索敵は春日部。任せた。不可視ってだけなら臭いや足音は隠し切れないはずだ」
「えっ、ちょっと待て、それ不可能じゃねえか?見つかったらアウトなのにルイオス戦まで見つからずに囮もこなすとか」
番一の抗議を無視して、十六夜の話にコクリと耀が頷く。それに黒ウサギが続いた。
「黒ウサギは審判としてでしかゲームに参加できません。ゲームマスターを倒す役割は十六夜さんにお願いします」
「あら、じゃあ私は番一君と一緒に囮と露払い役なのかしら?」
むっ、と不満そうな声を漏らす飛鳥。
だが飛鳥がルイオスを倒すに至れるかは未知数。何より飛鳥のギフトは不特定多数を相手にするほうがより力を発揮できる。
そうだとしても不満な物は不満なのだ。
少し拗ねた口ぶりの飛鳥を十六夜がからかう。
「悪いなお嬢様。俺も譲ってやりたいが、勝負は勝たなきゃ意味がない。あの野郎の相手は俺か番長が適してる」
「……ふん。いいわ。今回は譲ってあげる。負けたら承知しないから」
「残念ですが、必ず勝てるとは限りません。油断しているうちに倒せねば、非常に厳しい戦いになると思います」
五人の目が一斉に黒ウサギに集中する。番一が呑気な顔をして問いかける。
「つまり、一撃必殺・初撃決殺・見敵必殺スタイルで行くと?」
「ま、まぁそうなのですが。それが出来たら最高でしょう、ですがそう簡単に事が運べると楽観視は出来ません」
「だな。常に最悪のパターンを考えて行動する事が肝心だが……アイツそんな警戒が必要かね?」
「ええ。問題は彼自身ではなく、彼の所持しているギフトなのです。黒ウサギの推測が外れてなければ、彼のギフトは―――」
「隷属させた元・魔王様」
「そう、元・魔王の……え?」
十六夜の補足に黒ウサギは一瞬、言葉を失った。
しかし素知らぬ顔で十六夜は構わず続ける。
「ペルセウスの神話どおりなら、ゴーゴンの首がこの世界にあるはずがない。あれは戦神に献上されてる筈だからな。それにもかかわらず奴等は石化のギフトを使っている。
―――星座として招かれたのが、<ペルセウス>。ならさしずめ、やつの首にぶら下がっているのは―――アルゴルの悪魔、ってところか?」
「……アルゴルの悪魔?」
十六夜の話がわからない飛鳥達は顔を見合わせ、小首をかしげる。
しかし黒ウサギだけは驚愕したままで固まっていた。
彼女だけが、今の答えに帰結する事の異常さに気が付いていたからだ。
「十六夜さん……まさか、箱庭の星々の秘密に……?」
黒ウサギは信じられないものを見る目で首を振りながら問いかける。
「まあな。この前星を見上げたときに推測して、ルイオスを見たときに確信した。番長にハンデのつもりで、宝玉を手に入れて帰る前にアルゴルの星を観測して答えを固めたってところだ。機材は白夜叉が貸してくれたし、難なく調べらる事ができたぜ。―――まさか調べ事で数日潰しても番長とのレースに勝てるとは思わなかったがな」
フフンと自慢げに笑う十六夜。ぐぬぬとした顔をする番一。黒ウサギは含み笑いを滲ませて、十六夜の顔を覗き込んだ。
「もしかして十六夜さんってば、以外に知能派でございます?」
「何をいまさら。俺は生粋の知能派だぞ?黒ウサギの部屋の扉だって、ドアノブを回さずに開けられただろうが」
「いえいえ、そもそもドアノブが付いていませんでしたから。扉だけでしたから」
黒ウサギが冷静にツッコミを入れる。番一が負けじと声を上げる。
「俺だって、知能派だぞ!ドアの開け方だって叩き方だって知ってる!」
「お、そうか?じゃあ参考までに、方法を聞きたいもんだね」
からかうように十六夜がニヤニヤした顔で、番一に尋ねる。
番一は応えるように門の前に立つ。
「あれだ、既知の相手なら三回。階級が高い相手には四回かそれ以上。……今回は、二回だな」
二回、お手洗いで行う回数。しれっと<ペルセウス>をお手洗い扱いする番一。
「そう、二回―――<ノック>をするんだ」
「あっ」
察する一同。
「つまり、
バットを構え、体を
「番長必殺・一式……『ホームランバット』!!!!」
バットを振り抜く。轟音と共に、白亜の宮殿の門は粉々に消し飛んだ。
「一回じゃない」
「あとルイオスの脳天に一回で、合計二回だ。きっと脳みその中は留守だろうがな。ガハハハハハ!」
飛鳥のツッコミに冷静に返し笑う番一。吹き飛んだ門だったものの
振り返り、皆に告げる。
「さて、ギフトゲーム。開始と行こうぜ?」
赤坂です。
相変わらず、話が進まない。
それと十八話の終わりと十九話の始めが、読み直したらおかしかったので、修正しました。
明らかに出てる情報を出てないとして扱ってましたね。ハイ。
三月中に終わらせたい一巻。
ならゲームしてんなって話ですけど。
え?十九話で二月中に終わらせたいって言ってた?
一回全部読み直したとか言っててこの始末?
……誤字・脱字・感想いただけると幸いです。(逃避)
ではでは。
すみませんでした。