―――世界の果て・トリトニスの大河。
ギフトゲーム開始の宣言と共に両者元へ降ってきた羊皮紙、<
『ッカ!ルールも読まぬ戯けがッッ!』
「『俺を試せるかどうか試す』なら殴り合いに決まってんだろ!」
白蛇は口から圧縮した水球を弾丸のような速度で十六夜に向けて放つ。
人の頭ほどもあるその球を、十六夜は最小限の動きで避け白蛇に向け跳躍し、その巨躯を蹴り飛ばそうと十六夜は体を
『愚直に突っ込んでくる勇気は認めよう!だが!』
白蛇が叫び次の瞬間、十六夜の体は白蛇の尻尾により薙ぎ払われ、木に叩きつけられた。
「―――ッハ!その程度じゃ俺は倒せないぞ!駄蛇ッッ!!」
そう言って駆け出そうとする十六夜に向け白蛇は水球を連射する。
「同じ技しかできないのか?さっき避けられたからって数頼みかよ」
十六夜はあくまで避けに徹する。と、
『フン!私がいつコレしかできないと言った?』
大河の水が浮き上がり、人間大の大きさの水球となり、十六夜の頭上や周囲に大量に落下する。
いかに水といえど圧縮され、高質量になった水が直撃すれば並の人間は押し潰されるだろう。
「クソ。これ以上濡れるのは勘弁だ」
十六夜は潰されそうなどとは考えず、単に濡れることの方を気にし、走って回避する。
―――先程から十六夜が執拗に避けているのは単に濡れるのが嫌なだけである。当たったところで決定打になり得ない以上、理由はそれしかない。
「十六夜ーそろそろ一発ぶちかましてやれー!」
番一は呑気に十六夜に向け声援を送る。
「お前は濡れてないからわかんねえだろうけどな!濡れたガクラン程、最悪な物はねえぞ!」
『ゲームの途中に余所見とはな』
一瞬、番一の言葉に気が逸れた十六夜が気づいたときには既に遅かった。白蛇は水柱を五本立て昇らせ、 それらを十六夜に集中させる、横に薙ぎ、縦に薙ぎ、逃げ場を封じた。
「ッッ!!」
十六夜は気づいた次の瞬間には身を
「ぐえッッ!!??」
気を抜いていたためにもろに直撃し吹き飛ばされた。
水流は木々を薙ぎ払い、大地を揺らす地響きが広がった。
「ゲームに参加してねえ奴を巻き込んでんじゃねえ!!」
そう叫び足元にあった石ころを蹴り上げて握り混み、第三宇宙速度などというバカげた速度で白蛇へ投げつける。
白蛇は水柱を立て身を守ろうとするも、超速で飛来する石を止めることはできず、水柱は無惨にも割られる。
『グハァ!!!???』
額に直撃し、白蛇が大河に向け横向きに倒れる。
―――そして次の瞬間。
「この辺りのはず……」
微妙に真剣な顔をした黒ウサギが森の中から現れた。
「お?黒ウサギか。どうしたその髪の色」
吹き飛ばされ木に打ち付けられ、天地逆で、つまり頭を支点にして木にもたれかかってる番一が尋ねる。
黒ウサギの胸中に安堵が沸き上がる、ことはなく、散々振り回された黒ウサギは怒髪天を突くような怒りを込めて振り返る。
「もう、一体何処まで来ているんですか!?」
「ちょっと<世界の果て>まで、そう怒るなよ黒ウサギ、ガハハハハ!」
「ちょっと其処まで、ぐらいのノリで言わないでくださいっ!」
とそこで黒ウサギは十六夜の姿を見る、心配は不要だったらしく、何処にも傷はない。どちらかと言えば番一の方が被害は大きかった。
唯一濡れていなかった番一だったが今はびしょ濡れになっていたのだ。
「どうだ番長?濡れたガクランは」
「ぬ……確かに最悪だ、じんわりと中の服に染みわたっていく感じが特に」
十六夜が番一に近づき声をかけ、ついでと言うように黒ウサギに話しかける。
「しかし良い脚だな。遊んでいたとはいえこんな短時間で俺らに追いつけるとは思わなかった」
「むっ、当然です。黒ウサギは<箱庭の貴族>と
アレ?と黒ウサギは首をかしげる。
(黒ウサギが……半刻以上もの時間、追いつけなかった……?)
黒ウサギは箱庭の創始者の眷属。
それが示すのは生半可な修羅神仏では太刀打ちできぬほどの力を持っているという事。
その駆ける姿は疾風より速く、本来であれば黒ウサギに気づかれることなく姿を消す事も、追いつけないなんて事も、あり得るはずが無いのだ。
「ま、まあ、それはともかく!十六夜さんと番一さんが無事でよかったデス。水神のゲームに挑んだと聞いて肝を冷やしましたよ。」
「水神?―――ああ、
え?と黒ウサギは硬直する。十六夜が指したのは川面にうっすらと浮かぶ白くて長いモノだ。
黒ウサギが理解するより早くその巨体が鎌首を起こし、
『まだ……まだ終わってないぞ、小僧ォ!!』
十六夜が指したそれは先程、彼がバカげた速度で石を投じて気絶させた白蛇は、この辺り一帯を仕切る水神の眷属だった。
「蛇神……!って、どうやったらこんなに怒らせられるんですか十六夜さん!?」
ケラケラと笑う十六夜は事の
「なんか偉そうに『試練を選べ』とかなんとか、上から目線で素敵なこと言ってくれたからよ。
『貴様……付け上がるな人間!我がこの程度の事で倒れるか!!』
白蛇の甲高い
「十六夜さん、下がって!」
黒ウサギが庇おうとするが、立ち上がった番一がそれを阻む。
「下がるのはお前だ黒ウサギ」
「番長の言うとおりだ。これはアイツが売って、俺が買った喧嘩だ。手を出せばお前から潰すぞ」
本気の殺気が籠もった
十六夜の発言に白蛇は息を荒くして答える。
『心意気は買ってやる。この一撃を凌げば貴様の勝利を認めてやろう』
「寝言は寝て言え。決闘は勝者を決めて終わるんじゃない。敗者を決めて終わるんだよ」
求めるまでもなく、勝者は既に決まっている。
その傲慢極まりない台詞に黒ウサギも白蛇も呆れて閉口した。
『フン!―――その戯言が貴様の最期だ!』
白蛇の雄叫びに応えて嵐のように水が巻き上がる。竜巻のように渦を巻いた水柱は白蛇の丈よりも遥かに高く舞い上がり、何トンもの水を吸い上げる。
竜巻く水柱は計三本。それぞれが生き物のように唸り、蛇のように襲いかかる。
この力こそ時に嵐を呼び、時に生態系さえ崩す、<神格>のギフトを持つ者の本気だった。
竜巻く水柱は川辺を抉り、木々を捻じ切り、十六夜の体を激流に飲み込む―――!
「―――ッハ―――しゃらくせえ!!」
突如発生した、嵐を超える暴力の渦。
十六夜は竜巻く激流の中、ただ腕の一振りで嵐を薙ぎ払ったのだ。
「嘘!?」
『馬鹿な!?』
驚愕する二つの声。それはもはや陣地をはるかに超越した力である。白蛇は全霊の一撃を弾かれ 放心するが、十六夜はそれを見逃さなかった。
「ま、中々だったぜオマエ」
大地を踏み砕くような爆音。胸元に飛び込んだ十六夜の蹴りは白蛇の胴体を打ち、白蛇の巨躯は空中高く打ち上げられて落下した。その衝撃で川が氾濫し、水で森が浸水する。
―――かくして勝敗は決した。
―――問題児たちの箱庭来訪、初のギフトゲームは白蛇の敗北、十六夜の勝利で幕を閉じた。
赤坂です。
という訳で初の戦闘シーンですが・・・どうでしょう?うまく伝わりますか?
というよりこのペースだといつ一巻の内容は終わるのやら・・・
次の話でお会いしましょう!