転生先はリリカル!? オリ主はロリコンなの   作:三河葵

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大晦日のこの時間にこんな小説を読んでいないで、異世界オルガを読んだ方が良いと思います。

ということでおまけ話はシリアス続きで溜めた分割とぶっ飛んでいると思いますので、不愉快になった方はブラウザバックなりお気に入り外すなりをおススメします。一人だけ盛大におかしくなっています。

なお、大晦日の朝6時現在ですが

UA→50309
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このような駄文に付き合って頂きありがとうございます! こんなの初めて、もうなにもこわry


あ、こんな話ですがおまけという名の最終話です。


自由にして良いって言われたからって、なにやっても許されると思うことなかれ

 ―――

 

「ん、クォクォア…」

「起きましたか?」

 

 ……なんだか眩しい。あそっか、朝だもんな。そりゃ仕方な……

 待て。今の声ユーノだよな? なんで声が若干低くなってるの? 太った? いや知らないけどさ。とにかく、ユーノにしてはトーンが違う。

 

おいもっと待て。なんで寝起きで隣にユーノがいる…? 無性に嫌な予感に駆られて、電流が走ったが如くに両目を開ける。余程のことだからか、頭まで無茶苦茶冴え出したくらいだ。絶対普通の事態じゃ

 

 

「や ら な い か」

「ばああぁああぁああぁぁああぁぁぁああぁぁ!?」

 

 ななな、なんだこいつは!? いやまずは落ち着……けるかおいぃいいぃ! 見たまんまを説明すれば誰だって困惑か動揺するわ! 首から下がガチムチなユーノとか見たくなかったよ! なんで顔面が美形の少年のままなのにそこから下がケンシロウなんだよ! ツッコミどころ多くて逆にツッコミにくいわ!

 なにが一番恐ろしいって、その外見に加えてホモくさい発言をしたところだろう。別につなぎを着ちゃいないが、なんかこう、視線が野獣くさい。俺の判定で言えば黒よりのグレー判定だが、一応確かめてみよう。

 

「ゆ、ユーノ……だよな…?」

「えぇそうです」

「なにその格好……なんの影響…?」

「なんのって、ホモって言ったらガチムチでしょう?」

「全宇宙のボディビルダーに膝ついて謝れ!!」

 

 距離感が分からねえよ! マジでなにがどうなってそうなったよ!?

 どうにか整理しようにも頭が回らない。それに、なにか違和感があって気になる。なんだろう、ユーノの顔付きから感じるが首から下のクオリティのせいでよく分からん。俺の動揺を余所にユーノは吶々と語り始めた。

 

「……ぼくはね、正義の味方になりたかったんだ」

「余命僅かな言い回し止めろおぉ! ……ていうか待て、さっきと言い、なんでユーノが俺たちの世界のネタを……まさか」

「ここが夢の世界だからね。だからこの話も夢で終わるんですよ」

「メタいなおい!」

 

 言っていいことなのかそれ!? ていうか夢で終わるってなに? こいつ読者と話せる力でもあるのか? 首から下ケンシロウなのに? 魔導師どころか奇跡を具現化するような肉感じゃないだろ。物理で殴るのが本職みたいな見た目なのになんて能力持ってるんだよ。

 

「そもそもぼく、作中でそんな目立ってないでしょ? どの作品でもそうだけど、人が増えるほど僕の存在は追いやられて、気付いたら名前すら出ることも無くなる……ぼくユーノ・スクライアは、回を重ねることで出番を減らされるユーノ・スクナイヤに変わるんです…」

 

 ごめん、不覚にも面白いと思っちまった……つーか思ったよりメタい。結構首突っ込んでるけど大丈夫なのか?

 

「ま、まあユーノ。お前が頑張っていることも頑張っていたこともみんな分かっているさ」

「なのにリリロリ最終話に出番が無かったですよね!?」

「すまん知らねー!」

 

 メタ発言が出来ない俺にはマジで知らないことだが、どうやら出番は無かったらしい。もし本当なら、それは作者の技量のせいとしか言い様が無いな。まずその姿で身を捩らないくれ、マジで笑いそうになる。

 

「……けどね、八高さんは違う」

「ん?」

「八高さんは鈍いけど、人に気を回せるし、こうして僕にフォローまでしてくれる」

「友達だからな、当然だろ」

「そういうところが好き」

「え」

 

 …………今ナチュラルに言ったが、そういう意味合いじゃないよな? 黒寄りのグレーだが、まだ確定していないらセーフのはず。あぁ、きっとあれだ。友達として好きってことだな。ライクだライク。アイ・ライク・アイスクリームみたいなもんだろう。確実になんか違うが、ニュアンスとしては

 

「だから君を押し倒す! 世界などどうでも良い、ぼくの意志で! この気持ち、正しく愛DA!」

 

ダウトオォォオォォオオォオォオォオォォッ!! しかもガンダムラブな上級大尉みたいな告白までしてやがる。決定打は……頬が桃色に染まっている。あ、ガチ勢だこれ。これ逃げるしかないよね。

 ふと辺りを見渡すが、どうやらここは………え!? なのはの部屋!? 俺なのはの部屋で寝てたのか!? …そう言えばここって夢の中だったな。まあ一応はセーフ、かな? ともあれ逃げる算段はした方が良いな。見慣れた場所だ、出口は分かっている。

 

「あぁ……君のマスター譜面(ノーツ)をオールジャスティスしたい……」

「俺の側に近寄るなああぁぁあぁあぁ!!」

 

 特定の音ゲーに対する被害広げんなし! 俺結構好きなんだよぉ!

 と内心でツッコんでる場合じゃない。脳内でなにかしてるのか、妙に心ここにあらずなユーノをすり抜けてから部屋を飛び出した。

 しかしなんだ…? 夢の中ということは理解したが、まだ先に感じた違和感は晴れない。

 

 ―――

 

「はぁ、はぁ……!」

 

 はたしてあのユーノ相手にどの程度逃げられるのか…そもそもだが隠れようにも隠れたくないんだよな。心理的に袋小路に行くとマジで逃げ場が無くなりそうで不安が大きすぎる。あの肉体だと魔法使えなくても強そうだし、こっちが使えないと引き合わないんだよ……

 

「……そうだ、俺にはアヴァロンがいる! なあアヴァロン、ちょっと手助けを」

『あ、ごめんなさいあなた。呼ばれちゃったわ』

【放っておけよ。俺はもう少しお前といたい】

『だけど主が……あん』

【いいから。俺といなよ】

『………はい』

「誰だお前ら!?」

 

 なんだ今の!? 一のデバイス内で二つの音声とか聞いたことねーよ! 片方がのじゃロリ様のものにしても普通の女声だったんだが! しかもなに!? なんか夫婦で同棲しているような空気醸し出してるんだけど!? なんなんだよ、知り合いの家にいったら知らない男が父親を名乗ってたくらい気まずいんだよ! 声かけにくいわ畜生!

 

「くそっ、流石夢の中。デタラメも良いところだぜ…! ん…?」

 

 逃げ場を探しているところに、ちょうど前から見知った影が一つ。しかも魔導師! これは運が良い! うちのデバイスが今謎の一軒家と化してるし、助けを求めるしかない! 正に渡りに船、地獄に仏! 恥も外聞も知ったことか! 実際俺より強いし、問題は無いさ!

 ……極めて自然に近づいてしまったが、話せる距離までに来てある決定的な違いに気が付いた。同時に、自分に対して感じていたある違和感の正体に辿り着く。

 

「八高さん? どうしたんですか、そんな汗だくになって」

「……つかぬことを聞くが、今フェイトって年いくつだっけ?」

「19、ですよ?」

 

 フェイトは絶対怪訝にしてるだろうな。今俺頭の中こんがらがってるし。

 どう見ても大人びている。ガチムチに眼が行きがちだが、ユーノも顔付きがそうだったからな。 ……待て、年相応に背丈を伸ばしたフェイトを見降ろす俺は……

 

「…俺っていくつだっけ」

「22ですよね?」

「22!? マジかよ! よっしゃ!」

 

 どおりで手足も長いなと思ったよ! あぁーすっきりした! 違和感の正体はこれか! 妙に嬉しい訳だが、なぜって生前の年齢を超えているんだよな。やばっ、単純に嬉しい。

 ……割と本当に小躍りしかけたが、そろそろファイトにどん引きされそうな視線を向けられている。とりあえずそういう年齢の設定のようだということは理解したし、話を進めなくては! いつユーノが来てもおかしくないし。

 

「と、すまんフェイト! ちょっと助けて欲しい!」

「ご、ごめんなさい。私これから用事で…」

「用事?」

「家族とこれからピクニックなの」

「家族とピクニック……」

 

 それってあれか。プレシアさんとアルフとアリシアを加えての四人でか。これは引き留める訳にはいかんなおい。

 

「……フェイト、道草していないで行くぞ」

「あ、クロノ! クロノを待っていたんだよ!」

「ファッ!?」

 

 え!? なんでフェイトがクロノ執務官に抱き付いてるんだ!? なに!? ここまで来て年齢が引きあがっていることはもう突っ込む気にならんが、二人ってそういう関係だったっけ!?

 

「ま、待て。執務官、なにしてはるの?」

「あまり自分から言うのも癪だが……見ての通りだ」

「いや見ての通りと言われても」

「フェイトと交際しているんだ! 知っているくせに言わせないでくれ!」

「ウッソだろ!? ……家族でピクニック、てことは」

「テスタロッサ家とハラオウン家での懇親会ということだが……フェイト」

「ごめんね、舞い上がっていた」

「……話したなら仕方ないさ」

 

 なに次元でこれ!? 変なパラレルワールドに迷い込んだみたいで変な感じなんだけど! 心の隅で楽しいと思っているのは本当だが、それ以上の事態がなだれ込みすぎて整理が追い付かん!

 無理矢理落ち着こう。つまり、フェイトと執務官は付き合っている。そういうことだ。しかも家族ぐるみ。リア充じゃねーか!

 

「なにか急いでいるみたいだが、どうかしたのか?」

「い、いや別に。か、家族ぐるみでなら仕方ないさ。じゃあ行ってくると良い」

「大丈夫なんですか? 助けを求めていましたよね?」

「人手が欲しかったところだが一応一人でもいけるし……まあ気にするな。言ってらっしゃい」

「はい♪ 行こうクロノ」

「あぁ」

 

 いかんよこれ、絶対巻き込めないじゃん。幸せにおなり!

 深くを言うことも出来ず、手を振ってフェイトたちを見送る。そもそも、あのユーノをフェイトが見たらなにを思うのかも考えたくないし、やっぱり巻き込めないという結論に。家族でピクニックとなると、アリシアもアルフもプレシアさんも無理だな。維持張った手前フェイトに頼るわけにはいかない。こうなるとなのはか……

 

 

「…し、仕方ない! こうなったらなのはに! よし、電話もあるし、これで」

「ふっ」

「耳に息を吹きかけるなぁああぁああぁあぁあぁ!」

 

 やばい! 気付いたら既にマッスルユーノの射程圏内だ! この距離で爆肉抱擁(バインド)を食らったらマジで一たまりも無い。 …ん、なぜ魔法を使わない…? まさか…

 

「ユーノ! 美形のイケメンがそこにいたぞ!」

「え、どこ!?」

「男なら誰でも良いんかよ!」

 

 余所見している隙を突いて、だっとそこに民家に飛び込む。これをきっかけにいろんな場所を通りながら撒くのが一番だな。それ以上の案を思い付くことも出来ずに、ただ一心不乱に疾走を続ける。

 

 ―――

 

「よし、ここまで来れば…! 頼む…!」

 

 路地裏を通り過ぎて俺もどこを通っているか分からなくなったが、その甲斐もあってユーノを振り切ることが出来た。今では見慣れた公園のトイレの個室で隠れている。

 ……呼び出し音の回数を数えるのも億劫だ。ひたすら焦りに焦っていることもあって、一回一回が長く感じる。魔法は使えないにしてもあの肉体のユーノだぞ。捕まったら洒落にならん。今は体力の回復に専念しながら助けを呼ばなくては…!

 ん、外から聞こえる? まさか超近くだったのか!? これはラッキーだ! なのはならなんとか。

 

 

『八高さん? どうしたんですか?』

「な、なのは! 今大丈夫か!?」

「あぁ八高さん、こんにちは」

「…………………………………………………」

 

 二人と顔を合わせたことを確認してから電話を切るが、ある光景によって俺は言葉を無くした。 ……うん、フェイト動揺に年齢を重ねたなのはとクロノがいる。それは予想内だ。俺が一番を眼を引いたのは、クロノと砂遊びをしている金髪の幼女だった。一見してクロノと笑顔を向けあっていることから仲が良いのは分かるが……誰この子? なるだけ冷静に、静かにクロノに尋ねる。

 

「……クロノ、その子は?」

「あれ、話は聞いていませんか?」

「…多分」

「あぁあー……説明は難しいけど」

「なのはママとクロノパパの娘の、高町ヴィヴィオです。どう輪さん、思い出しました?」

「ファッ!?」

 

 今明かされた衝撃の真実ゥウゥウウ! 待て待て待て! 顎が外れたと思ったぞ! しかし、二人の娘にしてはこのヴィヴィオという娘、両の瞳がやけに綺麗だ。なんて言うんだっけ……そうそう、オッドアイだ。緑と赤の宝石みたいな綺麗な瞳が第一印象で、あと笑顔が可愛い。うんうん、やっぱこの年齢の娘はこれくらい快活じゃないとね。なんだったらキャンディーでも人攫いかよぉ! 落ち着こうか俺ぇ!

 

「は、はははは……そうだったな。二人とももうそういう年齢だったな…」

「けど輪さん、凄い動揺してる…」

「い、いやー、ついテンパっちゃったよぉ! うははははは!」

「聞いてないようでしたら話しましょうか?」

「い、今は止しておくよ! 俺も俺で用事あるし!」

「そういえば電話してきたときになにか切羽詰まってましたね。どうしたんですか?」

「いや良いんだ! よくよく考えたら問題無かった! 三人ともお幸せにー!」

 

 なのはたちはフェイトとは別ベクトルで家庭を築いていた模様。時既に遅しだが、お邪魔虫になる前に退散せねば。それにユーノがいつ来てもおかしくないですし。

 ……よくよく思い返すとヴィヴィオという娘、年齢は知らないが普通に話せるほどだったな。なのはたちの今の年齢を考えると……考えたくない。ここは夢なんだろ? それなら、謎のご都合が起こってると思えば不思議ない。ユーノがああなった時点でお察しとはいえ、い続けたら頭おかしくなりそうだぞ。

 

「どうにかして起きるしか助かる道は無いようだが……一体どうすれば…」

 

「や・た・かさあぁあぁああぁああぁん! どこですかああぁあぁ!?」

 

やべえ! 筋肉モリモリマッチョマンの声が! ここに来られる前にまったく違う方向に逃げなくては!

 

 ―――

 

「お! このはにシルヴァ!」

「八高さんこんにちは」

「えぇ…」

「露骨に嫌な顔しないでこのは! …例によってこれから用事だったりする?」

「なんのこと分かりませんけど、用事ですね」

 

 みんなして用事か! 次から次へと俺が不利になる状況になっててやばいぞ! 二人して並んでるとなれば確実だろうが、万一にも可能性と言うものが

 

「今からシルヴァちゃんと【自主規制音】で【自主規制音】しなくちゃいけないんです。神聖な【自主規制音】に男は不要ですし」

「真顔でなに言ってんの!?」

「分かりませんかね。めしべと」

「丁寧に説明しなくて良いから!」

 

 なんでやねん! 方向性は違えどみんな家庭絡みなことして! このはに至っては……なにも言うまい。とにかく、どこまでも俺にはアウェーな空間と来た。まさかと思うがユーノが操ってるとかそんなこと無いよな?

 

「でも大丈夫? まるで追われてるみたいですけど」

「聞いてくれて助かったよシルヴァ。は、話して信じてくれるか分からんが……なんかガチムチなユーノに追われてるんだ。追いつかれたら俺が危ない」

「良かったじゃないですか」

「良くないの!」

「冗談はさておき。筋肉モリモリなユーノさんってなんなんですか」

「まったく逆の人ですよね?」

「俺がなに言ってるのか分からないと思うが、まったくの事実なんだ」

「……………」

 

 だよね! 絶対呆れるよね! 実物見れば絶対信じてくれると思うが、いかんせん一番肝心な本人が出てこない。序盤のモンスターパニック映画みたいだ。うん、この例えは分かりにくいな。

 

「ふふっ、八高さん、必死な顔で冗談を言うものじゃないですよ」

「冗談じゃないんだこれが!」

「手を頭に乗せな。乗せないと乗せる頭が無くなりますよ」

「その孤独なSilhouetteが似合う元ネタのキャラはまさか……」

「格闘技世界チャンピオン、スパ」

「コブラじゃねーのか!」

「おふざけは置いて……折角のシルヴァちゃんの休日なのに、なんであなたのアホな冗談に付き合わないといけないんですか。おまけにシルヴァちゃんは笑うし……シルヴァちゃんを笑わせるのは私だああぁ!」

「え、ちょ」

 

 なんでこのははバリアジャケットを纏ってるんだ!? ピュアなのは良いことだがこれは純粋すぎぃ! 下手に刺激したらマジで攻撃されかねん! こうなるとすることは一つだ。

 

「お二人とも幸せにいぃいぃいぃいぃいいぃいぃいぃい!」

 

 祝いながら逃げる。これに限る。なのはやフェイトたちもそうだが、年齢を重ねても仲睦まじいようだし、喜ばしいのは本当なんだよな。ここが夢の中という点を除けばだが。

 ……さて、助け舟は無し。逃亡劇はまだ続く……

 

 ―――

 

「さて、ここまで来れば」

「と思った?」

「な、ユーノ……っ!」

 

 隠れ蓑に打ってつけと人気のいない場所に逃げ込んだのが間違いだったぜ……普通に考えれば、こうして組み伏されると助けられる可能性が低い。それが雑木林の類なら尚更。

 しかし、近くでこのガチムチ具合を見ると、状況と相まってなんか恐怖するな。絵面を想像するとだが、昭和世代の漫画に出てくるマッチョに押し倒される一般人男性……なんとなくだが、こんな風に文面にされると、現場に立ち会っても逃げたくなるような響きしてるな。目撃者が女性なら怯むだろうし、男なら余計に逃げるに決まってるわ。貴腐人なら激写ポイント?

 

「ねえ八高さん。この場所覚えてる?」

「……記憶が確かなら、俺となのはがユーノが会った場所、だよな」

「やっぱり覚えているんだ。 ……やっぱりぼくたちにとって、特別な場所だったんだね」

「待て。今のユーノが言うと感慨湧きづらいんだが」

「けどそこがいい」

「良くねえ!」

 

 くそ、予想は出来ていたが、やはり腕力がとんでもねぇ! 本気でビクともしないどころか、ユーノは余裕の表情を少しも崩さない。魔法全否定されてるみたいでシュールな光景だが、これされてる側としては結構恐ろしいぞ。

 

「さあ八高さん。ぼくと魔導師の契約をしてお婿さんになってよ!」

「キュウべえさんより怖ええぇえぇええぇええぇ! だ、誰かあぁあぁ!」

 

 結局魔導師にしたいのかお婿にしたいのか分からん契約結ぶなし! ていうか同意してないのに顔近づけるなって! 顔赤いいぃ怖いよぉおぉぉおぉおぉ!

 

「ぬおぉおおぉおぉおおおぉおぉおぉ!」

「このダンディな声は……!」

「輪! 今助けに来たぞ!」

 

なんで俺がここにいるのが分かったのか、この状況に疑問はないのか。ツッコミどころはあるだろうに、一切意に介すことなく、ザフィーラが急速で援護に現れた。

 「ぬんっ!」肉の厚みで言えば今のユーノに見劣りするも、ザフィーラとて詰められた筋力を誇る。その飛来した肢体を弾丸のように身体をたたみ、タックルにしてユーノに激突する。元から加速されていたんだ、その爆肉をもってしても吹き飛ばされるだろうな。

 

「た、助かった!」

【輪! 今すぐ主の家に! お前を待っている!】

「え、なんで?」

【良いから向かえ! ここは抑える!】

 

 ユーノに場所を悟らせない為か、ザフィーラは念話でそれだけを伝える。主……はてが俺を待っている? 理由を聞こうにも、ザフィーラにはもうその余裕は無さそうだ。どれくらい足止め出来るか…或いは倒せそうでもあるが、なんか今のユーノって底が見えないからなぁ……だが、ザフィーラの意思をを無駄にしたくない。俺は振り返って八神家へと走る。

 

「ふふっ、まずは君が相手になるんだね?」

「輪逃げろぉおぉおぉアッー!

 

 絶対聞きたくなかった叫び声を背に、俺は涙を拭いながら全力で足を交差させていく。

 

 

 ……ところで、ユーノ×ザフィーラって需要はあるのだろうか? ……なに考えてんだ俺は。

 

 ―――

 

「は、はやてー。いるかー?」

 

 ザフィーラに言う通りはやての家に来た訳だが、誰もいない。まあ、はやてに限らず四人の騎士も管理局勤めだからな。 ……その割には人の気配がない。本当にはやての家かと疑うほどに静かだ。ヴィータが物理的に襲い掛かるかはやてがにこやかに待っているかで色々覚悟をしていたのにこれじゃ肩透かしだ。いや、平和なことは良いことだけどね。

 

「や、八高さん……こっち…」

「あ、いるじゃん。いるなら返事しても」

「……ちょっと出たくなかったから」

「――――」

 

 リビングからの声に引っ張られた先に見たものに、息を呑んだ。いや、息をすることも瞬きをすること忘れていたのかもしれない。ただ素直に、その写真のような光景に心を奪われてしまっていた。

 多分に漏れず年齢を進めたはやては、ウェディングドレス―――風のワンピースを着たまま、俺を待っていたと言わんばかりに立っている。俺がウェディングドレスを連想したのはそのデザインもあるが、よく見ると顔を薄く覆ったメイク……決定打はその顔付きだろう。俺の知ってるいつもの温和な表情とはなにか違う、別の感情を込めた眼が気になる。

 と、とにかく。意図は分からないが薄い生地のワンピースだ。流石に肌寒いに決まってる。散々走り回ったし、着ているジャケットが鬱陶しいので、はやてを覆うように肩からかけさせる。

 

「い、良い服だな。けど、もう少し重ねて着た方がお洒落だと」

「動揺して。もしかして、なにか勘付いた?」

 

 ……どこか、本当に夢でも見ているような潤んだ眼で、はやては俺を捉える。はやての言う通り、俺は動揺してる訳だが、はやてが動揺を誘うような服してるからだぞ。

 

「なにを勘付いてるのかとは知らないが、見る男が見れば勘違いしかねないから止めた方が良いぞ」

「八高さんは勘違いしないの?」

「は、はやて……近い…」

 

 どんな魔法を使ったんだ……訳ないことは知ってる。だが分からない。なぜ俺は動けない? はやてと眼を合わさったから? これは緊張か? 少なくとも恐怖じゃないのは確かだが……敢えて言えば、友情とはまったく別の感覚だ。覚えはある、だから名前を付けるのは簡単だ。だが、俺はロリコンだぞ? 人並みに彼女欲しいなぁって思っても……ねぇ?

 俺はそう思ってる一方だが、肝心のはやてからは否定や不満は無い。いや、まさかだよな? はやてが俺に? なんで? 大分訳が分からない。

 

「……わたしね、八高さんのこと――――」

 

 

 ―――

 

 

 多分俺は変な夢を見たと思う、内容は覚えてないが、一週間俺の実生活に影響を与えるほどだ、余程濃いものを見たのかもしれない。

 大きなもので言えば二つ。一つは

 

「あの八高さん…」

「な、なんだユーノ」

「この距離から話って出来ないかと」

「君はユーノになんの恨みがあるんだ?」

「無いって断言出来るんだが……自分でも分からないんだ」

 

 なぜかは分からんが、ユーノに近寄れなかった。執務官の言うようなやましいことは無いが、なぜか躊躇いのようなものが生まれてしまう。ぶっちゃけ当初こそ走って逃げていたレベルだから、充分に落ち着いたレベルだ。もうしばらくもすれば完治するだろう。

 で、もうひとつだが、

 

「あ、八高さんおはよう」

「お、おう」

 

 ……こっちも落ち着いて来たが、はやての顔を見ては、なにかドキッとすることがよくあった。なんでだろうな。ただなんというか、本当に落ち着かないとしか言い様が無かったくらいだ。勿論嫌いになったとかそんなことは無いのは確約していい。

 

「今日も模擬戦するん?」

「だな。そろそろ動かないとみんなに追い付かないし」

「追い付かないってそんな」

「俺は止まんねぇからよ、はやてたちが止まんねぇ限り、その後ろに俺はいるぞ!」

「いや、わたしは背中見て来たんけど…」

 

 「ぶぇっくし!」むずっとした拍子にくしゃみを発してしまう。つーか後ろにいたら間違えたらストーカーとか変態じゃねーか! 俺違うから! 変態じゃなくて紳士だから!

 とまあ、本当にそろそろ戦闘形式に身体動かして慣れておかないと、本当に誰にも勝てなくなっちまう。出来ることならみんなの邪魔にはなりたくないし。指輪のアヴァロンに軽く眼を向けてから、

 

「だからよ……止まるんじゃねぇぞ…」

「は、はい…」

 

 セリフを言いきらないといかん気がしたから全部言う。はやての若干困惑した視線を向けられながら、俺は訓練場所へと移動する。




主人公のラストセリフがパロディという流れをしてかっただけでした。

StS編を書かないと決めたので、この話では「リリロリStSを書いた時の関係」をざらっと書かせていただきます。ヴィヴィオを娘にしたなのはとクロノ、家族を持ってるからクロノとは違う関係になったフェイト、これはこれでかも。

ではまた会いましょう。みなさん本当にありがとうございましたノシ

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