ガンダムビルドファイターズ Anything goes -エニシングゴウズ- 作:oyakata
ガンダムビルドファイターズ AG 第一話「砕けた翼」前篇
機動戦士ガンダムのプラモデル、略してガンプラ。そのガンプラを戦わせて遊ぶ遊びを、ガンプラバトルと呼ぶ。
ガンプラバトルで強くなるコツは、ガンプラを動かすプラフスキー粒子の特性を良く理解し利用することだ。
ガンプラバトルは専用の装置の上で行う。粒子はその装置の上面から放出され、バトル中は装置の上全てが粒子で満たされた状態だ。
プラスチックに粒子が浸透していればしているほど、機体出力が向上する。
逆に言えば、機体に浸透している粒子を一気に放出して使い切ってしまえば、動かない木偶の坊になってしまう。
……そう、今の俺のストライクフリーダムガンダムのように。
「動け、動けよこのクソマシーン!」
迫り来る多量のミサイルに俺の視界は埋め尽くされ、無慈悲なシステムコールと共に、俺のストライクフリーダムガンダムの初陣は終了した。
『BATTLE END』
第1話「砕けた翼」
屋上前の扉がある階段の踊り場で、俺は腰を下ろして落ち込んでいた。
屋上は立ち入り禁止らしく、ここを通る生徒は滅多にいない為、一人になって落ち込むには持ってこいの場所だ。
「……はぁ」
俺の手には、先ほどまで激闘を繰り広げていたストライクフリーダムガンダムが握られている。
電光石火の超加速、高火力ビーム兵器、追随を許さない圧倒的手数。
どれを取っても最高のモビルスーツだった。それこそ、作中のような強さだった。
「30秒持たなかったけどね」
「うぐっ」
そう。そんな高出力な機動を行って、核を積んでいないストライクフリーダムガンダムが長時間の稼働に絶えられるはずがない。
すぐに残存粒子……機体を動かすのに必要な粒子量がなくなって、的になってしまう。実際なってしまった。
それが先ほど行われた『第一回部内対抗バトルロワイヤル選抜』の結果である。
「なんで俺が作ったストライクフリーダムだとこんなに稼働時間が短いんだ……と言うかそもそも、動きも悪いし狙いもつけにくいし!」
「作り手の技量が足りてないんだよ」
「そ、そりゃ俺はビルダーとしちゃ素人だけど、ストライクフリーダムだけはずっと整備してき……」
ふと、自分が今階段の踊り場で一人で落ち込んでいる最中だったことを思い出し、相槌の声の主を探して振り返った。
そこには、ガンダムホワイトの逆三角の布があった。
「……White!?」
「発音が違うよ1年。驚きを表すならホワイトじゃなくてホワットだよ」
「いやホワイトで合ってます……じゃなくてっ!」
そこにいたのは、少し小さめの学校の制服を着た女子生徒。
階段に座る俺の背後に立ち、見下ろすような体勢でこちらを見ていた。
そして、俺が見上げるような体勢で見ている。まぁそうなると当然、見える訳で、これは不可抗力だ。
「不可抗力だ!」
「うん、何がだい?」
良かった気が付いていない。
俺は慌てて腰を上げる。立ちあがる際に、上履きの色が青であることに気がつく。
上履きの色が青いのは2年生だ。ちなみに1年生である俺は赤、三年生は緑だ。
「せ、先輩、いつからいらっしゃったんですか?」
「先に居たの私なんだけど」
「そ、それは申し訳無いです」
人の気配を全く感じなかった。
本当に最初から居たのだとしたら、忍者か何かかもしれない。いや俺にだけ見える美少女幽霊かもしれない。
実際可愛い。顔立ちは……髪の短い王留美って感じだ。ティファ・アディールでも通じるかもしれない。
ちなみに先ほども気になったが、やっぱり制服が小さい。
膨らんだ胸部とかすらりと伸びた脚部の露出領域とかがいい具合にピックアップされている。体つきは……カガリ・ユラ・アスハくらいはあるかな。少なくともエルピー・プルよりはある。
「ところで、さっきのバトルだけど、ガンプラになにかあったの? 手に馴染んでないみたいだけど」
「先輩の制服もサイズが馴染んで……や、いや、なんでもないです。俺のストライクフリーダムが馴染んでないって、わかるんですか?」
「いつも使ってるガンプラじゃないでしょ、それ。ガンプラが真新しいのにアンテナやバックパックに干渉しない持ち方とかバトル中の装備の変更とかに慣れを感じたのに、出力が全く考慮できてない動きをしたり回避した先にある障害物にぶつかったり、全然制御できてなかったから……いつも使ってる同型の、違うガンプラを使ってるのかなって」
たった一度のバトルを見ただけで、そこまで推察されるとは思わなかった俺は驚いた。いや、高校ではこのくらい普通なのか……?
改めて、高校でのバトルが楽しみなってきた。
「流石ですね先輩、戦ってもいない相手のことをそんなに……」
「いや、戦ったよ?」
「え?」
「さっきのバトロワの最後にミサイル打ち込んだの私」
先輩は制服の襟に手を突っ込み、ザクウォーリアを取り出した。どこにしまってんだ先輩。
「ザクコマンドー。私のガンプラ」
ザクコマンドーと呼ばれたそのガンプラは、頭部と胴体、腕部がザクウォーリア、脚部がゲルググ、肩は見た事ないドラム缶のような形状になっていて、ミサイルポッドが付いていた。
バックパックはザクファントムのもののようだが、ミサイルポッド兼ジェットパックのついている所にサブアームが取り付けられており、盾が2枚くっついている。盾の裏にはミサイルポッド。
更に、大型のサブアーム……いや、2つ目の腕と称した方が良さそうな太さのアームが腰の裏側から伸びていて、機体の腰回りを覆っている。アームの外側には盾が付いていて、先端には2つずつビールライフルとガトリングらしき銃口がついている。
「これ、腰のサブアームの盾を外せばまだミサイルポッドくっつくようになってる。ちなみにバックパックの盾の裏には接近戦用のビールサーベルついてる」
「あぁ、なんか要塞落とせそうなザクがいるなとは思ってました……」
ゲリラ真っ青な脳筋ぶっぱなし戦法を行う色物ガンプラを披露して満足げな先輩は、俺の隣に来て腰を下ろした。
「さて、私は自分の手の内を見せた。次は一年の番だ」
「え?」
「一年が本来使っているガンプラの話をするんだよ。あんな無茶な動きについてこれるガンプラがどんなものなのか、気になる」
そこで先輩は初めて笑顔を見せた。
しかし、天使の微笑み的なものではなく……世界征服を企む、ロンド・ミナ・サハクみたいな微笑だった。
こんな顔をする人間がまともな思考をしているはずがない。
相手が男だったら俺は適当に言い訳して離脱していただろう。
が、女子とのおしゃべりと言う誘惑に負けて俺は腰を下ろしてしまった。まぁ下ろしてしまったんだから仕方がないから話そう。というか、実は誰かに話したかったんだ。
話して、俺の憤りをわかってほしかった。
「実は俺、昨日の朝、東京に来たんですよ……」
騒音レベルの足音、子供の泣き声、響くアナウンス。普段はただ鬱陶しいだけのそれらを聞いて、俺は懐かしさを覚えた。
「懐かしいな、東京駅」
俺は3年ぶりに東京にやってきた。
小学生まで東京に住んでいたのだが、親の仕事の都合で中学生の間は少し都内から離れた所に住むようになり、東京の高校入学をきっかけに都内へ移り住むことにした。東京には年の離れたもう働いている姉がいるので、その家に世話になる。
本来なら昨晩の内に姉の家に到着して、今の時間には登校する予定だったのだが、落雷事故だかなんだかで新幹線が止まってしまい、到着したのが今になってしまった。
「ごめんお姉ちゃん、先に学校に行ってから向かうね」
と、姉に連絡を入れて学校へ向かった。
学校について、教師を見つけて事情を話す。
「トランクケースは校門付近にある警備員室の中に鍵付きの部屋があるから、そこに保管してもらいなさい」
そう言われてトランクを預け、ついでに制服に着替え、入学式とオリエンを終えた。
「はい、じゃあ気をつけて帰れよ。入学初日から補導されるようなことしたヤツは一年間ずっと日直にするからな」
中々に印象深いアリー・アル・サーシェス似の教師が去った後の教室が、妙にざわついている。
オリエン前に貰った予定表には、この時間帯は部活の見学時間とかいてある。すぐに姉の家に向かう予定だったが、ちょっと部活を見ていこう。
俺が入ろうとしているのは、模型部だ。
俺は小学校の頃、よくガンプラバトルの大会に出場していた。
引越し先には大会を開くような施設がなく、中学校が結構厳しめだったので学校の友達と放課後に、という機会も少なかった。
けれど、今は違う。東京に出たから親の目も遠いし、バトルできる環境がそこら中にある!
部活に入れば完璧だ、ずっとガンプラバトルのことを考えてられる!
よし、と意気込んだ俺は模型部の部室に向かった。
模型部の部室は校舎の3階にあった。
部室に入ると、30人程度の人間がそれぞれガンプラを作成している。一部は戦艦や航空機、フィギュアなんかを持っている人もいる。そして、やっぱりあった、ガンプラシミュレーター。
俺がシミュレーターがある環境に感動していると、部室の奥の準備室と書かれていた扉が勢いよく開く。
「都立大岩学園にようこそ一年生諸君!模型部部長のロックオン・ストラトスだ!」
パイロットスーツのコスプレをして登場した部長を名乗る男が登場すると、2年・3年と思しき部員が拍手を送った。
あぁ、こういう空気なのか。俺も他の1年にならって当たり障りのない拍手を送る。
「うむうむ、ノリの良い1年生ばかりで感心したぞ!ってなわけで早速だが君たちには明日、殺し合いをしてもらいます!」
そう言ってホワイトボードに『第一回部内対抗バトルロワイヤル選抜』と書き込んだ。
「今の君たちの実力を見る為だから全然緊張とかしなくていいぞ!もちろん第一回、第二回と続けて成長の見込みがあれば選抜メンバーに入ることもできる!」
そのセリフを聞いて、俺は愕然とした。そうだ、高校に入れば大会に出られると思い込んでいたけれど、模型部が人気の場合はメンバーが多すぎて実力が高いヤツしか出られない、なんて可能性もあるじゃないか!ってか実際そうじゃないか!
周りの1年からも、ガンプラまだ作ってねーよとか、未完成だから今回はやめとこうかなといか言う声が聞こえて来る。
ふふふ、ガンプラに関しちゃ俺は全然問題ないんだなこれが。
俺が小学生の時から使っているガンプラは、俺が作ったものではなく、当時隣に住んでいた同い年の友達に作ってもらったものだ。
お互いにバトルの腕とビルドの腕を認め合った上で、二人で一人のファイターだ!とか言って遊んでいたのを覚えている。
俺自身が中学に入って知ったが、どうやら全国大会出場者からガンプラの作成依頼が来たこともあったらしい。
家族ぐるみの付き合いで、引っ越しするまではよくお互いの家を行き来していたのだが、俺が引っ越しをする際に俺にストライクフリーダムを手渡して、「ガンプラバトル、やめるなよ。やめなきゃ、いつかまた会える」と言われたのをよく覚えている。
実はその後、連絡がつかなくなり、今どこにいるのか分からないのだけれど……
「だから俺の使うガンプラは、お前のストライクフリーダムだけだ……お前のガンプラで、俺は勝つっ!」
決意を固めた俺は、部長熱弁のガンプラバトル模型部7か条を華麗に聞き流した。
部長の終わらない熱弁を強制的に止めた顧問の先生の指示で、模型部一同は帰路につくことになった。
まさか模型部の顧問が担任のアリー・アル・サーシェス似の教師だったとは驚いたが。
校門に差し掛かると、見覚えのある人影が見えてきた。姉だ。
「迎えに来てくれたんだお姉ちゃ……」
ふと、いつもの調子で姉のことを呼びそうになり、口籠る。
ここは高校の校門で、周りにはまだ他の生徒が大勢いる。きっとここでお姉ちゃんなんて言った日にゃ周りにいるヤツらからシスコンと呼ばれ人気者になってしまうに違い無い。
精一杯背伸びをして、俺は呼んだこともない敬称で姉を呼んだ。
「あ、姉貴、ま、待ったぁ↑?」
うーわ上ずった、裏声出た、自分がキモい、死にたい。
そんな感じで片手を軽く上げたまま真っ赤になっている俺を見て、姉は肩から下げていた鞄を落とした。
「……ごめんなさいお父さんお母さん、弟がグレました……私の責任です、死んで詫びます!」
「ちょっとお姉ちゃん何でポケットからカッターナイフ出てくるのリスカやめてー!」
いきなりリスカ始めた姉を全力で押さえつける羽目になった。
そうだ、姉はこういう人だった。
ちょっとぶっ飛んだレベルで世間とズレてて、話し相手がちょっと態度悪いだけで自分のせいかもしれないと被害妄想止まらなくなってリスカしようとする身内に欲しくないタイプの人。
そんな性格でまともな仕事が出来るはずもなく、何をしているかと言うと、何とお笑い芸人をやっている。
高校の頃に渋谷で友人と今みたいなやり取りをしていた所を芸能事務所のマネージャーに目撃されたらしく、そのままのネタ、と言うか姉そのままのキャラクターでテレビに出ている。
外見は、黒髪のマユラ・ラバッツって感じで美形ではある。ちなみに相方の友人は……ビスケット・グリフォンをそのまま女性にしたような感じ。
バラエティ番組とかに呼ばれた時の死んで詫びる系のやり取りはネタだと思われているが、実は全部本気で言ってて、姉の友人も本気で止めている。
身内としては姉がテレビに出ているとハラハラして仕方が無い。
ちなみに結構売れている。
「よかった、グレたんじゃなくて恥ずかしかっただけなのね?いいのよ、お姉ちゃんに甘えても。そうだ、今夜は久しぶりに一緒にお風呂入る?」
「公衆の面前でそういうことを言わないで……」
「イヤなの?(カッターしゅぱっ」
「イヤじゃないですっ!」
周りの目が怖い。早くここから立ち去りたい一心で、俺は姉の手を取った。
「ほらお姉ちゃん、早く帰ろう。俺、腹減ったよ」
「まぁ、それじゃあ牛丼屋さんに寄って行きましょう。私料理できないから」
「今後の生活が不安になる情報だ!」
校門を出て少し歩いた所で、自分がトランクケースを持っていないことに気がつく。
「あ、トランク預けてたからちょっと戻って取ってくる」
「それなら、私が代わりに受け取っておいたわよ。警備員さんに姉ですって言ったら出してくれたの」
「え、本当?お姉ちゃんにしては…ゲフンゲフン、さすがお姉ちゃんだね!」
あのトランクの中には俺の半生を共にしたストライクフリーダムガンダムが入っている。早く出して破損していないかチェックしたり明日のバトロワのための整備とかしたい。
「それで、トランクはどこに?」
「……」
それまで饒舌にしゃべっていた姉が、突然無言になり周囲を見回している。自分の手を眺めたり自分の背後を確かめたり。
「……」
「……ま、まさか……」
「お姉ちゃん、どうしてトランク持ってないのかしら?」
「うおぉおぉおぉぉぉおおぉおぃ!?」
こうして俺は自宅から持ってきた半生を共にした相棒、使い慣れた道具、あと着替えとか携帯ゲームとかその辺全部失ったのだった。
「……ってことがあったんだ。ひどくない?」
話終わった俺は隣に座る先輩に同情を求めた。
「まさか原稿用紙10枚近い上京エピソードを聞かされた挙句、ガンプラの話が出てこないなんて思わなかったよ。私はガンプラの話を聞きたいって言ったんだよ……国語の勉強、しよっか?」
「まさか同情どころか相槌すら無いとは思わなかった!先輩冷たい!俺寂しいです!そんなこと言われたらガンプラどころじゃないです!」
俺はワザとらしく顔を覆って身体をゆすった。この拗ねかたをすると、自分も姉の弟なんだなと実感してしまう今日この頃。
「……はぁ、じゃあ聞くけど、結局トランクは盗まれたのかい?今日新造のガンプラを持ってきたってことは、昨晩慌てて買って作ったんだろうけどさ」
「ええ、窃盗です。俺が騒いでいた時に通りがかったおじさんが、トランクを車に積み込んで走り去るマスクの男を目撃したって言ってたんで」
「それが一年のものであると言う保証は無いじゃないか」
「金色に着色したガンダムトランクなんで間違いないかと」
「あぁ間違いないなそれは。そんなものを使う人間が近くに二人以上いるとは思いたくない。盗難届けは出したのかい?」
「出したけど戻ってくるとは思えないんです。金品目的じゃなくて、トランクが目当てかもしれないじゃないですか」
「……むぅ、それでは君の友人のガンプラは見られないのか」
「……残念ながら……」
俺は昨晩、姉に頼み込んで着替えよりも先にストフリのガンプラやら工具やらを購入してもらい、一晩で組み上げた。姉のお詫びに死ぬ病が発症したり姉の家がゴミ屋敷一歩手前だったりと忙しくて忘れていたが、半生の相棒を奪われた怒りは相当なものだ。
その上、自分の作成技術じゃかつてのアイツにすら到底及ばないと知って、絶望もしている。
中学3年間、アイツのガンプラを補修しながら技術を磨いたつもりだったけれど……
「まあ、無いものを見たいと我儘を言っても仕方がないわね。それじゃあ、始めましょうか」
「何をですか?」
「ついてくれば分かるさ、一年」
「……あの先輩、俺のことずっと一年って呼んでますけど、もしかして名前知らないんですか?」
「知ってるよ。ミズシマ・ユウジだろう。3年前のトーナメント小学生の部の優勝者チームに居た」
「え……そ、それ知ってて声かけたんですか?」
「そうだ。それで、ついて来るのか。来ないのか?」
「……行きます」
階段を下り始めた先輩の後を追って、俺は歩きだした。
後篇へ続く
読了お疲れ様でした。
はじめましてoyakataと申します。
ビルドファイターズの二次創作を書きたくなって投稿する場所を探してたどり着きました。
キャラクターやガンプラはオリジナルの設定で進んでいく予定です。
時間軸はビルドファイターズトライと同じ年と言っていますが、セカイら原作キャラクターが登場するかどうかはまだ未確定です。
原作では出来ないような設定の改造ガンプラを出していきたいと思いますので、これからもよろしくお願いします。
後篇は明日投稿予定です。