ガンダムビルドファイターズ Anything goes -エニシングゴウズ- 作:oyakata
予定よりちょっと早めに投稿できました。
今回は後篇でもバトルです。対戦カードは以下の通り。
ストライクフリーダムコマンド(ストライクフリーダムのカスタム機)
VS
ダナジン(無改造)
アナハイムのガンプラコーナーの端にある非常階段。
アナハイムはエレベーターやエスカレーターが充実しているので、わざわざ階段を使用する客は多くない。
たとえ今日のように大会が開かれてた日でも、利用客は居ない。静かな空間だ。
その非常階段に、俺たち3人は座っていた。
「……っかー、負けたな……」
カイトがそう呟いた通り、俺とカイトの二人は3時間前にタッグ大会2回戦で敗北した。
俺たちはその後模型部の部員に混ざって観戦していたのだが、俺たちを倒したパーツハンターは3回戦に勝利した後に行方不明になり、4回戦は不戦敗となった。
その後、ウチの学校の生徒ではない一般の成人男性のコンビが優勝者になった所で、大会はお開きになった。
客は散り散りになり、模型部の部員もバラバラになった。
ただ俺たちだけは、ここに集まった。なんというか、たくさんのことが起こりすぎて、一旦落ち着かないと、帰ることもできなかったんだ。
「とりあえず、ユウジ、カイト、お疲れ様。なんだか久しぶりに会話をした気分だわ私」
先輩が俺とカイトの肩に手を置く。なんとなくその行動が気恥ずかしくて、顔を背けてしまった。
お疲れ様、と言われたが、結局ロクな結果を得られていないからかもしれない。
1回戦は勝利したが、相手は部員。しかも相手が元々破損したガンプラで戦っていたので、むしろ目立ったのはイイジマとダイモンの側だった。
2回戦は非武装と格闘機を相手にしてKO負け。倒したのは非武装の方をギリギリ倒しただけ。
目立って派手なシーンは無かった。むしろシキ・ミズキの高い操縦技術の方が目立っていた。
完全な咬ませ犬状態で終わった大会。当初の目的"派手な戦いでアピールして新しいメンバーゲット"は果たせそうにない。
「俺ら頑張ったってミズシマ!元気出せ!」
「で、でもさ……」
「ユウジは頑張った。ガンプラの性能をちゃんと引き出してくれていたよ。ドラグーンフィストを使いこなしていたし、アブソーブシールドもちゃんと機能していた。負けたのは、相手の実力が勝っただけ。仕方ない」
先輩の励ましも加わり、何だかあやされているような気持ちになって慌てて返答した。
「そうですよね、俺頑張りましたよね。カイトもお疲れ様。先輩も、応援ありがとうございます」
そう言ってカイトの肩に手を置く。するとカイトは少し顔を歪めて身を竦めた。
手を置かれたのを嫌がったと言うより、痛みがあった……?
「どうしたんだカイト?」
「い、いや、どうも肩を痛めたみたいでな。夢中でやって肩に力入りすぎたかな」
「ちゃんとケアしておきなさい。深刻な怪我になると選手生命に関わるわ」
笑い飛ばすカイトを見てそれほど大した痛みではないことは分かったが、先輩も俺も軽く注意を促した。
「それじゃあ、メンバーについてはまた学校で考えましょう。今日は疲れただろうから、二人とも気をつけて帰ってね」
「先輩は帰らないんですか?」
「ちょっと試したいことが出来たから、ガンプラ買って帰るわ」
「俺も腹減ったからフードコート寄って帰るわ」
カイトと先輩、それぞれ思い思いの方向へと歩いていく。俺は何もする気分にもなれなかったので、そのまま帰ることにした。
いや、何もする気分になれないというか……無力を痛感して、落ち込んでいるというか……
そんな風に煮えたぎらない気分で歩いていたら、突然後方から声をかけられた。
「あれ~、白いガンプラの人だ~」
振り返るとそこにミズキが立っていた。
帽子をかぶった黒髪の、カイトのガンプラを非武装で打ちのめした恐るべき高速操縦技術を持つ化け物が。
「お、お前……」
「黒いガンプラの人は居ないの?あ、シキっちは一緒じゃないよ~」
ミズキは、まるで友達に話しかけるような距離感で会話を進め、いつの間にか目の前に近づいていた。
敵とまでは言わないが、気さくに話しかけくるような場面じゃないと思うのだが……
「最後の攻撃凄かったねぇ!私、外の人に不意打ち避けられたのも反撃食らったのも初めてだよ!やっぱり色んな所で色んな人と戦う方が楽しめるよねぇ!あ、握手して~」
「え?あ、ど、どうも?」
突然褒めちぎられて、何が何だかわからないうちに握手までしてしまった。
なんだこの展開。このあとツボでも売りつけられるのだろうか。
いやいや、でも本当に油断してはいけない。こいつはパーツハンターと呼ばれる人物。
ガンプラを平然と破壊する、もしくは破壊を楽しむ残忍な性格……
「ねえねえ!私も凄かったでしょ!速かったでしょ!いや~頑張ったんだよ四速歩行!あのまま戦いたかったんだけど、シキっちが"ノルマは達成した"とか格好つけてふらっといなくなっちゃうから出られなかったんだよぉ~!」
……残忍な性格……?
ちょっと疑問を押し殺せなくなり、俺は質問をしてしまった。
「ね、ねえ。君、パーツハンター……なんだよね?なんのためにガンプラを賭けて戦っているんだい?」
「ガンプラを賭けてガンプラバトルする人のことをそう言うんだよね?そうだよ!賭けて戦った方が相手が本気になってくれるからだよ!シキがそう言ってたし。外で戦う時はね、ガンプラはシキが用意してくれるんだよ」
質問の答えを聞いて、俺は確信した。
この子は、まだ引き返せる。
「ミズキ……さんって呼ばれてたよね?ガンプラ、自分で作ったことある?」
「無いよー?」
いや、入り口すら見ていないんだこの子は。
それをシキ……小柄な金髪の男が、利用しているんだ。
俺は使命感に駆られた。たぶんガンプラバトルに関わる者なら誰もが抱くであろう凡庸な気持ちだが、それに従わずにはいられなかった。
「そっちの名前はミズシマだっけ?あ、名前似てるね!」
「名前はユウジだよ。そう呼んでもらって構わない。ミズキさん、ちょっとこの後に時間ある?」
「あるよー」
俺はポケットからスマホを取り出して電話をかけつつ、ミズキを連れてガンプラコーナーへと引き返した。
ガンプラコーナーに到着した俺は、工作コーナーに座る女の子に声をかけ……ようとして先に声をかけられた。
「あらユウジ様ご機嫌麗しゅう先の大会の映像見させていただきましたわまさかアブソーブシステムとはちなみにあのシステムはラル様が大活躍したアリスタ事件のあった世界大会でイオリ・セイが使ったのが元祖と言われており……」
「さ、サオリちゃん、ちょっと待ってくれないかな……その前に、さっき電話で頼んだことなんだけど」
「えぇ構いませんよ何を作りたいのですかグフなら完璧に教えて差し上げますわ」
会ったのは、ガンプラコーナーでグフを作っていた先輩の幼馴染のイケガキ・サオリ。
彼女には、ミズキのガンプラ作りのサポートを頼んだ。
ミズキは凄まじい操縦技術を持っていてバトルを楽しむことのできる子だ。
けれど、ガンプラを作ったことがなければ"ゲーム"をしているのと変わらない。
ガンプラバトルの持つ魅力に気がつけば、きっとパーツハンターなんて止めてくれる。
だから、ガンプラ製作を体験してもらう。ちなみに俺じゃあまり上手く教えられないから、オリジナルのガンプラを作れるほどの腕前を持つサオリに助けを求めたんだ。
「わ~そのドレス、クラウレ・ハモン?あ!髪までヅラだ!すごいすごい!」
「え?あ、あら貴方見所がありますわね私の仮装を一瞬で見抜くなんていつも身長足りないから気がついてもらえな……おほん……お好きなガンプラをお選びなさいグフ以外でも完璧に教えて見せますわ」
「いいの!?じゃあ私はこれがいいかな~!」
「ダナジンですか?また珍しいチョイスですわねいいですわ貴方が一流のダナジンマスターになるまで扱いて差し上げます!」
「お願いしま~す!」
なんとなくこの二人は相性が良い気がしたんだけれど……ビンゴだったかな?
とにかく、そうして始まったガンプラ講座だったのだが……始まって驚愕した事実があった。
「まずはガンプラをレジに持って行って会計してこないとね」
「え?ガンプラってお金払わないといけないの?」
「えっ!?お金持ってない!?」
「持ってるよ。クレジットカードだけど」
「クレカって……なんか黒いんだけど!?」
「と言うかガンプラって箱に入ってる時はこんな風に枠になってるんだね~」
「ランナー見たことないの!?」
「なんでAとかBとかに分かれてるの?」
「色ごとに成形するからだよ。ほら、クリアパーツとかポリキャップとか素材が違うものはまとまっているでしょ」
「本当だ~関節はこのゴムっぽいのなんだね~」
「ポリキャップ知らないの!?」
「説明書に写真とか絵が描いてある~」
「それすら!?」
ミズキは完成品のガンプラ以外に触れたことすらなかったらしい……今までガンプラバトルをしていたのが不思議だ……
とにかく、相当な時間(普通に作ったら1時間の所をたっぷり3時間くらい)をかけて、素組みのダナジンが完成した。
墨入れすらしていないから、ガンプラバトルで使ったら最低性能だろうけれど……
「じゃあ、じゃあ、早速だけどバトルしようよバトル!自分で作ったガンプラでバトルなんて初めて!楽しみ!」
完成したダナジンを持ち上げて嬉しそうにはしゃぐミズキ。
そんなミズキに、俺は言い放った。
「じゃあ、そのダナジンを賭けて俺のストライクフリーダムコマンドと戦う?」
「いいよ!」
俺の言葉を信じられないという風な表情で見たサオリ。けれど、俺が目配せをしたら事情があることを理解してくれたのか、黙ってシミュレーターの方へ移動してミズキのガンプラの登録を手伝ってくれた。
GPベースに登録された真新しいダナジンと、俺のストライクフリーダムコマンドのバトル。
正直言って、勝てる気がしない。あの高速の不意打ちに反応できたのは、極限まで集中力が高まっていたから。
今やれと言われてできるとは思えない。
けれど、ここで"勝たないといけない"。ここで勝たないと、ミズキを正しい道に立たせることはできない。
「ミズシマ・ユウジ、ストライクフリーダムコマンド、行きます!」
「ミズキ、ダナジン出ま~す!」
フィールドは宇宙。
遮蔽物が少ない分、不意打ちの心配は無いかもしれないけれど……
そう思った瞬間、正面にアラートが表示された。ダナジンによる長距離射撃といえば、ダナジンキャノンのはず。
ビーム系の攻撃だ。俺は咄嗟にアブソーブシールドを前に構える。
そこに現れたのは、ビームではなくダナジンの本体だった。
ものすごいスピードで顎部のビームスパイクを展開させて突撃してきた。これではビームスパイクを吸収できても質量で押し負ける。
俺は防御を解いて回避を行う。
『ドラゴンちゃんの攻撃はそう簡単には避けられないよぉ!』
回避を見越し、羽の角度を変えて突っ込む先を俺の方へ向けてきた。無茶な軌道修正に羽が軋んでいる。
俺は回避が不可能だと判断し、アブソーブシールドを構えて後方に加速した。同じ方向へ進めば、衝突の威力を下げられる。
だが、食らった衝撃は相当なものだった。
ビームスパイクを吸収して消すことには成功したので破損は無かったが、腕が若干凹んでいる。
『受け止め切られた!?すごいすごい……ってあー!頭が曲がっちゃったぁ!?』
通信でミズキが嘆いた通り、ダナジンの頭部は突撃の衝撃でストライクフリーダムコマンドの腕のように凹んで曲がってしまっていた。
いや、むしろダナジンの被害の方が大きい。ガンプラバトルにおける機体の性能差は出来栄えに左右される。
ストライクフリーダムコマンドの方が、頑丈だったということだ。
『うぅ~、よくもドラゴンちゃんを!』
その場で身を翻してダナジンスピナーで打撃を加えてくる。
俺はドラグーンフィストを射出し、迫りくるスピナーに対して打撃を叩き込んだ。
ドラグーンはスピナーを完全に止め、むしろ押し返すことに成功した。
それを見たミズキは接近しての格闘では勝ち目がないと悟ったようで、すぐに後退した。
つけっぱなしのオープンチャンネルからミズキとサオリの会話が聞こえて来る。
『くっそ~、なんであんなに強いの!?』
『出来栄えの差ですわね墨入れや部分塗装をするだけでも出力が段違いに向上するものですわ』
『ただ組むだけじゃないんだ……もしかして今まで私が使ってたガンプラにもそういうのがやってあったのかな』
『今使っているダナジンよりも強力であったと思うのならばそうなのでしょうガンプラの強さは作中設定に比例しませんから』
『……そう、なんだ……そんなに時間を掛けても、バトルで簡単に壊れちゃうなんて、寂しいね……』
よし、思った通りだ。ミズキにはちゃんとガンプラ作成に関する知識を与えれば、その破壊行為にちゃんと罪悪感を覚えてくれる。
これはダメージレベルBだから実際には壊れていないけれど、全国大会から上になるとダメージレベルA。実際にガンプラにダメージが出るようになる。
ミズキにはこのまま負けてもらって"ガンプラを破壊された人たちの気持ち"を覚えてもらおう。
そうすれば、きっとミズキはパーツハンターを止めてくれる。
『……でも、だからこそ本気になれるんだね』
『え?』
『……数時間、数日、数週間、数ヶ月かけた子が、一瞬で消えるかもしれない緊張感……これが本当のガンプラバトルなんだね』
おや?
『私すごくゾクゾクしてきちゃった……さぁ、もっと本気でやろうよ!』
『え?ミズキさん何をしていますの!?』
サオリの声の後、フィールド全体にノイズが入る。視界が歪み、次の瞬間に見えたのは破損箇所が治っているダナジン。
見ればストライクフリーダムコマンドの腕の凹みも治っている。
そして、画面中央に信じられないアラートが表示された。
"Damage Level Change A."(ダメージレベルがAに変更されました。)
「……は?」
『ミズキさん今のコマンドは何ですの!?バトル中にダメージレベルを変更する方法なんて聞いたことありませんわよ!?』
『へっへっへ~、デバックコマンドだよ!』
ダナジンは遠方から再び突撃を開始する。今度はビームスパイクだけでなく、両腕からビームサーベルも出している上に回転している。
見た目が凶悪すぎる。やばい。
俺は慌ててアブソーブシールドを前に出して防御したが、回転と突撃の威力は死なず、そのまま宇宙空間を引きずられる。
「うわ、ちょちょちょ……くっそ!」
ストライクフリーダムコマンドを後方に加速させて離れ、先ほど吸収できたビームスパイク分のエネルギーを消費してカリドゥスを撃ち込んだ。
回転しているせいで狙いが定まらず、頭を狙ったビームは逸れてダナジンの右腕に当たり、吹き飛んだ。
だがダナジンは止まらず、残った左腕のビームサーベルを突き立ててくる。
サーベルはストライクフリーダムコマンドの胴体を捉えた。だが、ガンプラの出来栄えの差のせいか、ビームサーベルは貫通することなく、プラスチックの表面を若干削っただけだった。
『むむ~、やっぱりこの子のパワーじゃ無理か~、なら!』
瞬間、視界からダナジンが消えた。
俺はレーダーを確認する。すると、反応が一つしかない。これは……
「……上か、下!」
『下でしたぁ!』
真下からダナジンスピナーによる薙ぎ払いが飛んでくる。
気がついたが対応が間に合わず、足に強烈な打撃を食らう。慌ててダナジンのいる方向を向くが、そこにダナジンはいない。
「また……今度は上か!?」
『今度も下でした!』
再び、足に強烈な打撃。
そこで俺は気がついた。ミズキは俺の方のレーダーに自分が写っていないことを知っているような口ぶりだ。
ガンプラバトルシミュレーターについているレーダーは、確かに共通機能。常に自分が中心になり、その四方にプラフスキー粒子を一定以上持っている物体に反応する。ただし水中や砂嵐の中、特殊な兵装等により精度が低下する可能性がある。
そのレーダーの仕様を完璧に理解し、相手のレーダーの現在の状況を把握している。
その知識を使って、この見通しの良い宇宙空間で"死角からの不意打ち"を成立させていた。
「無茶苦茶だ……!」
『難しいことじゃないよ~ただの隠れん坊だって!』
やはり凄まじい操縦技術。だがその凄まじい高速移動に、ガンプラの方が耐えられなくなってくる。
ダナジンスピナーと翼の酷使により、遂には稼働による負荷で関節部分が折れてしまった。
『うぐぐぐぐ、もう攻撃手段が無いよぉ!』
「情けない話だけど……これで終わりだ!」
満身創痍のダナジンに向かい、ストライクフリーダムコマンドのドラグーンフィストを叩き込む。
派手な爆発エフェクトがダナジンを包み込み、バトル終了のシステムコールが聞こえ、プラフスキー粒子の散布が止まった。
シミュレーターには、パーツが原型を留めない程にボロボロになったダナジンと傷だらけのストライクフリーダムコマンドが残った。
「……さて、これでミズキさんは……って、え!?」
シミュレーターの向こう側に立っているはずのミズキを見ると、ミズキはシミュレーターの上にいた。
上に乗っかっているのではなく、シミュレーター"跳び越えている最中"だ。
し、信じられないくらい跳んでるぞ……!?
そしてそのまま俺の目の前に着地し、俺にしがみ付いてきた。俺はミズキの体重を支え切ることができず、そのまま押し倒される。
「もう一回!もう一回やろう!」
「ちょ、ちょっとミズキさん!?」
「今のバトルで分かったの!ポリキャップの近くは補強しなきゃダメだし、威力の高い武器を作るには塗装とかしなきゃダメだって!私のダナジンすぐに直してくるから、もう一回やろう!」
目を爛々と輝かせ、再戦するまでにやるべきことを連ねている。今だ。今、このタイミングで言うセリフが、きっとミズキを正しい道に導けるのか決まる。
「……ミズキさん、忘れてない?ミズキさんのダナジンは、俺が貰う約束だよ」
「あっ」
その瞬間、希望に満ちていたミズキの表情が一気に真っ青に変わった。
よし。これでミズキにガンプラを奪われる気持ちを理解してもらえたはずだ。
丹精込めて作ったガンプラを奪われる気持ちを知れば、ミズキはパーツハンターを止めてくれるはず。
「じゃあ新しい子を作る!」
え?
「次はどの子がいいかな!もっと大きい子とかどうだろう!もっともっと戦いたい!合わせ目消しって言うのがあるってサオリちゃんに教わったからそれやってみたいな!あ、でも一日待たないといけないんだっけ……」
ミズキは目の輝きを更に強くして、俺に微笑みかけてきた。
……駄目だ。俺にはこの子を導けない。この子は、強すぎる。
奪われる側になったことが無いから、痛みを知らないのだと思った。
けれど違う。強すぎて痛みを感じないんだ。何度やられても立ち上がる強さがある。
ボロボロのガンプラでも強敵に挑む覚悟がある。だからこそ、シキのような強者の隣に立つためにパーツハンターになったのかもしれない。
俺では、正しい道を教えられない。いや、この子の歩む道が、俺の知る道とは違ったんだ。
「……ごめんミズキさん、もう俺はミズキさんとガンプラバトルをする資格が無い……」
「え?どうして?」
「……俺じゃあ、ミズキさんの前を歩けないから……」
俺はそう言い残して立ち上がり、傷だらけのストライクフリーダムコマンドを回収した。
ボロボロのダナジンはミズキの手に渡し、サオリにお礼を言って店の出口に向かって歩き出した。
ミズキが縋って何かを訴えてくるが、俺は何も返すことなく……いや、何も返すことができず、帰路についた。
その次の月曜日。
俺は朝のホームルームで信じられないモノを目の当たりにした。
その日の放課後、逃げるように教室を飛び出し、模型部の部室へと駆け込んだ。
部室には既に先輩とカイトの姿があった。俺は腰を落とし、肩で息をするほど疲弊していた。
「はぁっ、はぁっ……」
「どうしたのユウジ。そんなに息を切らせて……」
「なんだ?まるで化け物から逃げてきたみてーな……表情……」
カイトが言った通り。俺は化け物から逃げてきた。だが、どうやら追いつかれてしまったらしい。
俺の後方を見た先輩とカイトの顔が固まったことからも明らかだ。観念して振り返ると、そこにはウチの学校の制服を着たミズキが立っていた。
「やっほ~。カガミハラ・ミズキ、大岩学園に転校してきました~。模型部に入部希望でーっす!」
第5話「壊れている翼」 -完-
読了お疲れ様でした。
パーツハンターのうちの1人、ミズキちゃんが転校してきました。
さて、どうなりますことやら。まぁ何も考えてないんですけどね。
いや、大まかには構想ありますが……既に最初の構想からズレているのでまたどんどん変わっていく気も……
と言うか書いていてめっちゃ可愛いですミズキちゃん。
特にイメージ固めずに書いていましたが、なんとなくCV佐倉綾音さんで想像してました。
ちなみにシキは柿原徹也さんですかね……フェアテのナツ寄りの声で。
あ、主人公のユウジは阪口大助さんです。銀魂の新八の声で。
雑談でした。
次回更新日時は2/7予定です。
●追記
諸事情により、更新予定日を2/14に変更します。