ガンダムビルドファイターズ Anything goes -エニシングゴウズ- 作:oyakata
今回はバトルがありません。
前篇もちゃんとしたバトルシーンが無かったので、まともなバトルなしの話は意外と初めてです。
次の日、部室に顔を見せたのは全体の半数ほどだった。
多少驚いたが、あんな事件があった後なのだから仕方がないかと、顔を出した部員たちでスイラン・ハク・シロへの対策会議を開いた。
終始無言だった部員が多数いたのが気になったが、やはりまだ戸惑いを隠せないのだろうと思っていた。
次の日、会議中に無言だった部員が顔を出さなかった。
出席した部員から欠席している部員の話を聞いてみたが、中には授業にすら出ていない生徒もいるようだった。
俺は心配になりアリガ先生に相談したが、先生はしばらく時間を置くべきだと言うだけだった。
不安が拭えないまま1週間が経過した。
部室に来るのは、俺を含めて8名だけになってしまった。
俺は部長として、どうしたら良いのだろう。
スイラン・ハク・シロが模型部に入部してから1週間が経過した。
3人はこの1週間は転校で授業の進み具合を調整する補修を受けていたので、本日から部活に参加することになる。
けれど、部室には彼女たち3人を除いて8人の部員しかいない。
皆、目標を見失ってしまったんだ。あの3人の勝たないと大会に出られない。けれどそんなの不可能だ。だから大会には出られない。大会に出られないのならば、模型部員である意味がない。
恐らく大概の部員はそういう思考に陥って顔を出さなくなってしまったんだろう。
ガンプラバトルをするだけなら、模型部に入る必要はない。近所にあるショップに行けばいくらでもバトルが出来る。
悲しいけれど、今の時代の学校の模型部のメリットは参加条件が学生である大会への出場くらい。
それが無くなればこうなるのは仕方がない。
「……けど、こんな壊れ方……あんまりじゃないか……!」
俺はガラガラになった部室を見て、誰にともなく呟いた。
大会への出場意欲を持つ生徒が減って自然とこうなったのであれば仕方がない。それは時代の流れだ。
けれどこれは、あの3人組が故意に仕組んだ”乗っ取り”だ。
憤らなければならないと思った。
「ユウジ、部長が呼んでる」
ふと気がつくと、部室にいたメンバーが全員準備室の方へ移動し始めていた。転校生の3人を除いて。
俺は先輩の後に続き、準備室に入る。転校生3人はこちらの動きには全く関心を示さず、自分のガンプラをいじっていた。
準備室の中には部長が趣味で作ったガンダム作品のコスプレ服が入っているクローゼットとジャンクパーツが入ったプラスチックケースがいくつもが置いてある。
皆はそのケースに座るように促され、座る。
この場にいる8人は、俺、先輩、カイト、ミズキ、ユキ、トウキ、シンジ、部長。
呼び出した張本人である部長は立ったまま。そういえば、今日はコスプレをしていない。
「あの3人を倒す」
キャラを作っていない、素の部長は若干低めの声色で語り始めた。
現状チームとして維持できているのは、奇しくも俺のチームだけ。ユキとトウキのチームメイトもシンジのチームメイトも連絡がつかないらしい。
「現在我が部は、模型部残党VS転校生と言う構図になっている。これは転校生によって仕組まれたシナリオ通りの展開である可能性が高い」
部長は何故こんな現状に成ってしまったのかを探るため、職員室に何度か足を運んで情報を集めてきたと言う。
それによれば、転校生はこの学校に来て直ぐにアリガ先生の元を訪ね、そのまま校長の元へ行き自分たちの戦歴を語り”優勝の可能性が高い”と言うことをアピールしたらしい。
そしてその後、”現在の模型部の選考方法が転校生に優しくない”と意義を唱えた。
確かに今の模型部の選抜チーム決定方法では、4月の頭から選考会に参加していないと評価されづらい。
途中参加の生徒が確実に不利になる仕組みだ。
「アリガ先生はその時に選考会の仕組みを説明したらしい。途中参加の生徒でも評価点を分散してうまいこと平等になる仕組みを作ってあったらしいんだけれど……もう校長はその話を聞いていなかった」
この時すでに校長は”優勝の可能性の高いこの転校生を出場させる方法は何だろう”と思考するようになってしまっていた。
転校生の、というよりスイランと言う少女の仕業らしい。口が上手く、自分に有利になるようにうまいこと思考を誘導したのだろう。
アリガ先生が疲れ切っていたのは、そういうことだったのか。
「そういうわけで、今まで平等な条件で行われていた選考会は”有象無象VSエリート転校生”の構図に作り変えられてしまったって訳だ」
「先にアリガ先生を反論できないように校長を味方につけたのね」
「ッチ、中々頭がキレる奴らだ」
「……でも、実力は本物。小細工せず、堂々と選考会に参加してきても勝てなかった」
先輩の一言に、少し騒ついた雰囲気が再び落ち込む。けれど部長は、構わずに続けた。
「確かに、その場合は素直に諦めてしまったかもしれない。けれど、今はもう状況が違う。これは乗っ取り行為だ。戦いを挑まれたんだ。そして、今のままじゃ負けたままだ」
部長のセリフに、落ち込んだ雰囲気が再び騒つく。
……いや、先ほどの不平を吐き出す雰囲気では無い。もっと熱い空気が、準備室を満たしていくのが見て取れた。
「オルガ風に言うと、売られた喧嘩は買うことにする。やられっぱなしじゃガンヲタの名が泣くぜ。最初にも言ったけれど、今からあの3人を倒す方法を考える」
部長の瞳の奥に、確かに炎を見た。
俺たち8人は誰に言われたわけでもなくガンプラを取り出し、掲げた。なんかこういうノリ、本当にジオンっぽいよなと思いつつ、とても楽しい気分になる。
「鋼鉄の7人には1人多いから、鋼鉄の8人か?」
「オイ部長、それ最後ほとんど死ぬから名乗っちゃダメだろ」
「んー、他に8人の組織って何かあったっけトウキ?」
「たぶんガンダムだと無いですね……」
「8人将とかでいんじゃねーか?もしくは4天王2つ分とか」
「8人……4天王……なんだかポケットなモンスターみたいね」
「ジムリーダーかよ!」
皆で軽口を叩く余裕が出てきた頃、対転校生に向けた対策会議を始めた。
最初に話し合ったのは、チーム編成だ。
俺とカイトとミズキは元々チームだったから良いとして、残り5人の中から3人チームを作れば選考会で戦う回数が増える。
最初はユキとトウキのチームにシンジが入ることになる雰囲気だったが、突然部長が手を挙げた。
「俺も選考会に参加するよ。本大会の出場枠は後輩に譲るって決めたけど、これは部の存続をかけた戦いだから」
「マジかよ!んじゃあ、元Bチーム復活だな!おいナガサキ、テメェこの後に及んでビルダー志望だから出ないとか言わねェよな?」
「……言うつもりでしたが、言っても却下っぽいですね。わかりました、入ります」
先輩が、若干諦めた、けれど少し嬉しそうな顔で了承した。
元Bチームと言うのが何かわからなかった所に、カイトが耳打ちしてくれる。
「ナガサキ先輩がベスト4取った年は学校から2チーム出場してたんだよ。3年3人のチームがAで、2年と1年のチームがBってわけだ」
去年の選考会のチーム構成は人数自由だったらしく、先輩たちが選考会で優勝した際にチームには6人の部員がいたらしい。
そこで3人ずつに分かれて出場し、先輩たちBチームがベスト4になったということだった。
ちなみにAチームは序盤にガンプラ学園とぶつかって負けてしまったとのこと。
「Aチームの人は全員3年だったから、今はもういないってことか」
「そういうことだな。でも、Bチーム復活ってことは、ユキ先輩とトウキ先輩のチームは……」
「元Bチームが出るっていうなら私らはサポートに回るよ」
「練習相手、ガンプラ制作、転校生のデータ収集。バトル以外にもやることは多いですよね?」
ユキとトウキはやる気満々で返事をしてくれる。
大丈夫。きっと現状を打破すれば、他のメンバーも戻って来てくれるはずだ。
次の日の放課後、俺と部長はホビーショップアナハイムを訪れていた。
目的はもちろんガンプラの購入。俺は未だ扱い慣れないガンプラを(と言うより以前使っていたストライクフリーダムに近づけるため)何かアイデアの種になりそうなガンプラを探しに来た。
部長は以前に使っていたガンプラではスイランたちに勝てないと推測して、新規で作成するとのことで、どうせなら一緒にと誘われた。
ガンプラの販売コーナーに入り、どんなガンプラを買うのかと聞くと、少し困った顔をしながら答えてくれた。
「言い方は悪いけど、メタを張るんだよ。一度戦っているのを見たからね、どんなガンプラが有効かはわかる」
そう言って幾つかガンプラを手にとって買い物カゴに入れていく。
ちなみに先輩たちはそれぞれ練習や調査のために別行動。先輩とミズキは一緒に来たがっていたが、ミズキは家の用事があるとのことで今日は学校を欠席。先輩はシンジ先輩に連れられて連携の練習中。先輩が人を殺しそうな目でシンジ先輩を見ていたけれど、大丈夫だろうか……
ガンプラのパーツをバラ売りしているコーナーに入った時、棚の向こう側に見覚えのある顔を見つける。
「あらユウジ様御機嫌麗しゅう本日はどのようなご用件でこちらにいらしたのかしら私はもちろんグフの作成ですがオリジン版のプロトタイプグフが見当たらず困っていまして」
マシンガントークと共に近づいてきたのは、先輩の幼馴染のイケガキ・サオリ。ここで何度も顔を合わせているので、お互い顔を見れば挨拶をする程度の仲ではあると自覚しているけれど……毎回この言葉の嵐には気圧される。
「どうしたんだミズシマ君……あぁ、イケガキちゃんじゃないか」
「あらトモリ様御機嫌麗しゅうお久しぶりですわね」
サオリと部長……本名ナツモリ・トモリが親しそうに挨拶を交わす。
2人が知り合いだったことに驚いたが、考えてみたらサオリの幼馴染である先輩と元チームメイトである部長なら知り合いでも不思議では無いのかと納得する。
「あ、そうだ。イケガキちゃんなら俺の今考えてるガンプラに良い武器とか思いつくかな」
「あら新作ですか高校の大会はもう出ないと仰っていたのにどういう心境の変化でしょう私でお役にたてる範囲でしたら是非ともお力をお貸し致しますわ」
「助かるよ。ミズシマ君もイケガキちゃんに相談してみると良い。イケガキちゃんはここいら一帯のファイターに顔が利くんだ。中々良いアドバイザーだって有名だしね」
「トモリ様お言葉ですがもうミズシマ様とは仲良くさせて頂いておりますし何度かご一緒にガンプラを作ったことも御座いますのよ」
「あぁ、そうだったんだ。ごめんね、余計なおせっかいだったかな」
「いっ、いえ……」
凄い。2人が揃うとマシンガントークが両方から飛んでくる。
部長の声はサオリと違って聞き取りやすく内容がすっと頭の中に入ってくるが、その代わり凄まじい情報量を一気に突っ込まれるような気がして疲れる。
喋り好きの2人の間に挟まれ、俺は目を回していた。10分ほど経って俺がようやく発した声は、こんな言葉だった。
「あ、あの、立ち話もアレだし、工作コーナーの方に移りません?」
2人とも、あぁ、そう言われれば、と言う感じの顔をして工作コーナーへ移った。
この人たち、放っておいたらマジでずっと喋っているんじゃないだろうか……
「それで、ミズシマ君はどんな改修をしたいんだい?」
「は、はい。俺はストライクフリーダムをもっと安定して動かせる改修を入れたいです」
工作コーナーのテーブルに座った俺たちはサオリにアドバイスを貰う為、それぞれが作りたいガンプラのイメージを話し始めた。
例の3人の話を交えて、有効なガンプラは何か、どんな武装が有利で不利か、いくつか案も出てきた。
けれどその内に、一つの結論に至った。
「ミズシマ君、ストライクフリーダム以外のガンプラにした方が良いんじゃないか?」
部長のこの一言に、俺は心底驚いた。
確かにこれまでの話の流れで、俺がストライクフリーダムを使うメリットが無いことは分かっていた。
ストライクフリーダムは、一騎当千を成し遂げ得るガンプラだ。
作中のような超起動を再現するため、複数の武装を使い分けトリッキーかつ不規則に行動することにより相手を翻弄し、大火力で一気に殲滅。
それがキラ・ヤマトの行った戦法。
だが、それを実現するために素組みのストライクフリーダムはエネルギー不足になりがち。
なので俺はビームシールドを犠牲にしてアブソーブシステムを使った長時間稼働を組みこみ、高火力の兵装をそのままにして、更に近接攻撃手段を増やすためにドラグーンの行動アルゴリズムを改良した。
だがそれは、1対1を想定した改良だ。
逆に今回のような3人がコンビネーションを用いて攻めてくる敵に足してはドラグーンは本来の使用方法に戻した方が良い。
けれどそれを行うとドラグーンに使用するエネルギーを余分に吸収する必要があるため、今のアブソーブシールドだけでは足りなくなる。
補う為にエネルギータンクを担ぐ方法もあるが、それでは機動力が落ちてしまう。
それならばストライクフリーダムを使うよりもダガーやストライクのようなエネルギー効率の良いガンプラを使用した方が良い。
SEED作品やガンダムタイプ拘らなければもっと選択肢は増える。
仲間であるミズキのエニグマとカイトのティフシーガンダムとの相性を考えることも重要だ。
だが、それでも俺は、その部長の言葉に対してこう返した。
「いや、ストライクフリーダムで行きます」
前にも言ったが、俺はストライクフリーダム以外のガンプラを使って戦ったことがない。
拘っているわけでは無かった。ただ、親友との約束をした時に使っていたガンプラだからと言う理由だった。
だから、別に機会があれば他のガンプラに変えても良いと思っていた。
思っていた、けれど……
今ここで使うガンプラを変えたら、それは逃げたことに他ならない気がした。
ストライクフリーダムを使って負けた相手に、ストライクフリーダム以外のガンプラで勝ったら、俺はもうストライクフリーダムを使ってはいけない気がした。
いつの間にか拘りを持ってしまっていたらしい。でもそれなら、俺は拘りぬいてやろうと思った。
「俺はストライクフリーダムで勝つ方法を考えます」
それを言った瞬間のサオリと部長の顔を、俺は忘れない。
サオリは"同志を見つけた"風な表情。部長は"こいつと同類か"風な表情。
あ、やべ。めんどくさいヤツ認定された気がする。
「ユウジ様私感動したしましたユウジ様のストライクフリーダムに対する熱意は本物ですわ私はユウジ様が素晴らしいガンプラを作れるように何でも力をお貸しいたします足りない知識必要なパーツ過去の作例なんでもご紹介いたしましょう!」
「ミズシマ君、拘りは大切だ。しかし必要以上の拘りは執着に変わる。今回は別に良いけれどあまり前のめりになり過ぎるのだけは勘弁してくれ。別に他人の主義に口を出すような真似はしたくないんだが手遅れになってからでは遅いからね……」
やっぱり予想通り、と言うか予想以上の量の言葉が返ってきた。
あぁもう、はやくガンプラ作らせてくれ……
第7話「三つの翼」 -完-
読了お疲れ様でした。
今回は各キャラに色んなフラグが立ちました。
この話を書いた一番の目的は、まぁユウジに新ガンプラ制作のフラグを立てたことですかね。
新、と言ってもストフリなのは確定的に明らかなのですが……どんなストフリになるのか、楽しみにしていてくださると幸いです。
次回更新日時は4/3予定です。
追記:リアル事情により更新日時を伸ばします。ちょっと4月に入って環境が変わったせいで執筆時間が取れないので、いつ更新できるか分からないのですが……気長にお待ちいただけると幸いです。