ガンダムビルドファイターズ Anything goes -エニシングゴウズ-   作:oyakata

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閲覧ありがとうございます。

最初の予定よりも投稿が遅くなって申し訳ないです。

今回はザクコマンドー(ザクウォーリア改造機体) VS グフS14(グフR35+オリジナルブースター)のバトルです。


ガンダムビルドファイターズ AG 第二話「憧れの翼」後篇

 ショップのバトルシステムの前に立ち、先輩とサオリは火花を散らしていた。

俺は先輩の横に立ってキョドっている。

「ユウジ、私がサオリのアホをぶっ飛ばして情報を聞き出すから応援して」

「は、はい先輩がんばってください!」

先輩はジャージの襟元から腕を突っ込んでザクを引っ張り出す。それは一昨日の夜壊れてしまったはずのザクコマンドー。

「せ、先輩もう修復したんですか!?」

「ユウジ。モビルスーツを運用する際、予備パーツでもう一機体分組み上げられるという話は多い」

「……え?」

先輩はハイネ・ヴェステンフルスみたいに得意げにニヤリと笑いザクコマンドーを台座にセットした。

そう、それは俺と戦った時のザクコマンドーと同じものだが、実は違う。

そのほとんどが、修復中のパーツと入れ替えられた予備パーツで組み上げられていた。

「基本的な設計はザクウォーリアとゲルググキャノン、あとちょっとのオリジナルパーツだ。今回はサブアームの盾が不足したからミサイルポッドを追加で装備したが、全てのパーツが容易に調達できるキットを使用している。だから、戦いの間に余計な心配をしないで済む」

この時、先輩が本当にビルダー志望で頑張っていることを知った。

補給・修復は確かに課題だ。ガンダム作品の中でも良く問題に上がる。それを補うために機体パーツを共通化した等の設定が多いが、それを実際に行っていた。

先輩が俺よりも一つ年上であるということを、強く実感した。1年後、俺はその領域に立っているのだろうか。

「ナガサキ・アンナ、ザクコマンドーで行く」

そんなことを考えていたら、いつの間にかバトルが始まった。

フィールドは廃墟。壊れたビルやガタガタのアスファルト道、高い塔や噴水広場などのオブジェクトが並ぶ空間だ。

その空間に、グフS14は居た。

『ぅおぉ~っほっほっほっほっほ行きますわよアンナ!』

「で、でけぇ声……」

結構離れているというのに、通信だけでなく肉声まで聞こえてくるくらいの大声。

笑い声と共に、グフS14が突っ込んでくる。背中には、グフR35には付いていない巨大な装置が付いている。それが高速移動を可能にしているようだった。

先輩のザクコマンドーは腰のサブアームを持ち上げ、左右合計8門の砲身で狙いを定め、撃つ。

グフS14は全てを避けることはできず、両腕の盾を使って防御を行いながらも近づいてくる。

「強引……!」

『もう私の距離ですわヒートロッド!』

グフS14が最小限の動作で腕を前に突き出し、ヒートロッドを射出した。構えから打ち出すまでの挙動が早い。

先輩はなんとか対応しようと、バックパックから伸びる盾を下ろして機体の前に出した。

だが、サオリが狙ったのは足だった。

ヒートロッドが盾の下を素通りし、ザクコマンドーの足を突き抜けて地面に刺さる。

『釘付けですわ覚悟なさいアンナ!』

「狙いは機動力を奪うことか……」

先輩は盾からビームサーベルを取り出し、釘付けにされた足を足首ごと切断してバックブーストで逃げる。

逃がさないと言わんばかりに追撃するグフS14。

だがこの距離は、先輩の距離だ。

先輩は舌なめずりをしつつ、コンソールでガンダムヘビーアームズの頭部が描かれているアイコンを選択する。

すると、ザクコマンドーに搭載されている全てのミサイルポッドが開いた。

「フルオープンアタック……!」

モビルスーツ単機から出たとは思えない量のミサイルが、グフS14に迫る。

後で先輩に聞いてみたところ、この時ザクコマンドーに積んでいたミサイルは156本らしい。

流石のサオリも焦ったのか、グフS14は立ち止まって飛び上がる。跳躍速度も早い。

先輩のミサイルは全て地面に落ち、土煙と瓦礫を撒き散らした。

『危うく私のグフS14が粉々になるところでしたわ』

上空のサオリがそんなことを言っている中、先輩は土煙の中に潜り込んでザクコマンドーのミサイルポッドを外し、廃墟の中に仕込み始めた。

「一昨日の俺とのバトルと同じですね」

「フィールドが荒野だったから土煙の濃い所に一個置いただけだったが、こういう遮蔽物が多い場所なら大量に仕込める。緊急用の背面のポッド以外は全て着脱可能に作ってあるんだ」

全てのミサイルポッドを遠距離で発射できるようにボタンも全て別々に割り振っているらしく、先輩のコンソールには大量のボタンが表示されていた。

先ほどのフルオープンアタックは、それらのボタンを一斉に押すための補助ボタンらしい。

「コンソールの配置やボタンの連動なんかも気にして設定したからね。操縦技術だけで切り抜ける強者もいるけれど……よし、準備できた」

先輩はザクコマンドーのモノアイで周囲を見回した。その時、俺はモノアイの色が銀色であることに気がついた。そして、カメラ越しに見る風景が妙にクリアなことも。

「これは……粒子変容塗料!?」

「あ、気がついたね。一昨日のバトルで私が土煙の中からユウジのストライクフリーダムの位置を明確に把握していたカラクリはこれ」

ザクコマンドーが見る風景には、土煙が一切写っていない。

粒子変容塗料はプラフスキー粒子の粒子帯を変化させることができる。

有名なのはニルス・ニールセン選手が7年前の世界大会で使用した戦国アストレイだ。戦国アストレイは刀に粒子変容塗料を塗ってあり、粒子帯をフィールド上の衝撃波や炎と同じにして、物体にして斬り裂いていた。

先輩のザクコマンドーのモノアイは、表面に粒子変容塗料を塗ることにより映るオブジェクトを本来のプラフスキー粒子に見える粒子帯に変更し、透かして見ることができる装置となっていた。

「カメラのピント調整みたいなインターフェースを使って微調整する必要があるから、移動中や攻撃中は使えない。けれど、お互いに姿が見えない状況ならかなり有用」

ザクコマンドーはキョロキョロと周りを見回し、一つの塔に目を付けた。その塔の根元を狙って、ビームライフルを撃ちすぐさま移動した。

ビームは見事に塔に直撃し、根元を失った塔が倒れ始める。倒れた塔は、丁度グフS14が対空している所に落ちてくる。

『倒れる塔に私のグフS14が巻き込まれると思いまして!?』

サオリは素早い動きで塔を回避し、根元付近から先輩が先ほどまで立っていた位置までに満遍なくバルカン砲を使って射撃する。

その内の一発がミサイルポッドに当たり、小さな爆発を起こす。

『……今のは……!』

サオリはミサイルポッドが設置されていることに気がついたのか、慌てて高度を上げる。

どうやら先輩の戦術を見抜いたらしい。先輩はそれを見て、軽く舌打ちをした後に煙から出て移動を始めた。

「サオリとは何度か戦ってるから、私の戦法に気づかれるのが早い……たぶん、もうこの一帯には降りてこないつもりだ」

設置したミサイルポッドを回収している内に土煙は晴れる。そうしたら、見通しの良い所を狙い撃ちされるだろう。

先輩は諦めたようにフルオープンアタックのコマンドを選択し、全速力でその場から移動を始めた。

グフS14は土煙の中から次々に撃ちあがってくるミサイルを避けつつザクコマンドーを追う。

『ちょこざいな罠に引っ掛かる私だと思いまして!?』

「くっ……サオリのグフ、前はあんなに早くなかった……背中の新作装備は何なの……?」

先輩はコンソールの中からガンダムヴァーチェの頭部が描かれているアイコンを選択する。

するとザクコマンドーの腰の装備のエネルギーが空になったと言う警告が表示され、装備が外れた。

どうやらあのボタンは装備のエネルギーを本体に送り、その後自力でパージするショートカットボタンのようだ。

パージ後のザクコマンドーのエネルギーゲインが、一桁増えている。

「あの装備に、こんなに粒子が……!?」

「反転して一気に距離を詰めて接近戦する。ユウジ、ちょっと動くから離れた方がいいかも」

先輩は深く息を吐くと、コンソールのレバーを全力で引っ張った。

ザクコマンドーは各関節から悲鳴を上げながら反転し、足のバーニアを吹かして進行方向とは逆に飛び上がる。

その衝撃で周囲のビルが倒壊する。

『来ましたわね』

グフS14は飛んできたザクコマンドーに臆して速度を緩めることなく、突撃してくるザクコマンドーを迎えた。

激突したのは、ザクコマンドーの盾とグフS14のヒートソード。

お互い、ヒビが入って今にも砕けそうだ。凄まじい速度で突っ込んだのが分かる。

「っつぁ!」

『そこですわ!』

盾を押し込みつつ空いた方の手でグフS14にボディーブローを叩きこむザクコマンドー。

ヒートソードを押し当てて盾を砕こうとするグフS14。

女子同士のガンプラバトルとは思えない、生々しい壊し合いが繰り広げられる。

その内、ザクコマンドーのバーニアが噴射を止め、落下し始める。

『今ですわ!』

グフS14は高度が落ち始めたザクコマンドーの頭上を取り、フィンガーバルカンを撃ち始める。

ザクコマンドーはそれを防ぐために頭上に盾を掲げるが、地面に到達する前に砕け散ってしまう。

もはやザクコマンドーを護る物は存在しない。

『終わりですわ!』

「それはこちらの台詞よ」

落ちるザクコマンドーを見下していたグフS14の頭上に、いつの間にか大量のミサイルがあった。

サオリはそれに気がついて盾を構えるが、全ては防ぎきれなかった。

降り注ぐミサイルは先輩のザクコマンドーをも巻き込んで、周囲一帯を爆破した。

「現実のミサイルポッドと違って、放置したミサイルポッドも粒子のチャージが完了すれば再装填される。油断したわねサオリ」

『ぐぬぬでもアンナのザクだってもう……』

ミサイルの爆風で吹っ飛んだ周囲一帯の土煙が晴れてくる。

そこには、ゲルググ足でしっかりと地を踏みしめて立つザクコマンドーの姿と、地面に伏したグフS14があった。

見ればザクの表面には焦げ目一つ付いていない。

『まさかミサイルを全部避けたと有り得ないエネルギーは使いきっていたはず!』

「エネルギー切れは演技よ。それと、ミサイルのパターンは全部頭に入っているの」

先ほどのエネルギー切れはフェイント。本当はまだ動けるだけのエネルギーを残し、あえて自分諸共ミサイルで爆撃した。

避けられる自信が無ければこんなこと出来ない。

『さすがアンナですわまさかこんな作戦で来るとは昨日までの私でしたらここでギブアップでしたわね』

「……!?」

サオリの通信越しの声が、まだ自信たっぷりであることに気がついた先輩は警戒した。

とは言ってもザクコマンドーにはもう緊急用の背後ミサイルポッド以外の武装が無い。

先輩は先ほどパージした腰の装備の場所まで移動しようとグフS14から視線を外した。

次の瞬間、グフS14の背後の装備が"羽ばたいた"。

「!?」

羽は既にグフS14を離れ、廃墟の向こうへ消えていた。グフS14はもう動いていないようだ。

「まさか、コントロールをブースターの方に移した……?」

先輩は見知らぬ装備を警戒し、腰装備を装着しようと右腕で拾い上げる。

その右腕ごと、装備が吹っ飛んだ。

「!?」

『拾い食いはお行儀が悪いですわアンナ』

見ると、廃墟のビルの反対側に例のブースターがいた。隙間からミサイルを撃ち込んだんだ。

「ビルの隙間を通せるほど正確な攻撃をしているってことは、接地してる……!?」

先ほど見たブースターは、グフS14の背中で羽ばたいていた。もしかしたら、鳥のような姿なのかもしれない。

「それなら飛び立つまでに時間がかかる……今なら!」

先輩は腕を失ったザクで廃墟に体当たりする。

廃墟はモビルスーツの重量に耐え切れずに倒壊を始め、反対側までも巻き込んで瓦礫を散らす。

ブースターが鳥型なら、飛び立つ前に羽ばたく必要がある。瓦礫を降らせた今なら飛び立てずに瓦礫に埋もれるはず。

しかし、明らかになった廃墟の向こう側にブースターの姿はなかった。

『ここですわよ!』

瓦礫から立ち上がったザクコマンドーの頭上から、ビームバルカンが降り注いだ。

まともに食らったザクコマンドーは肩の装甲が外れ、頭部も半壊する。

「さっきはミサイル、今のはバルカン……サオリが操っているブースターは、一体……」

『もう虫の息ですわね冥土の土産に教えて差し上げましょうこれがいつの日かラル様と共闘した日の為に開発した"イグナイトブースター"ですわ!』

廃墟の空を、羽の生えた4本足のブースターが飛んでいた。

頭(?)に当たる部分はグフイグナイテッドのバックパックで、羽もそれのようだ。

足の部分は、かつてアリスタ事件があった全国大会でレナート兄弟が使用したスコープドッグに似ている。

腹(?)部分にはミサイルポッドがついており、背中(?)に当たる部分にグフS14のフィンガーバルカン風のバルカン砲がくっついている。

見ると、倒れているグフS14のバルカン砲が片方だけ無くなっている。

なるほどこの形状なら、羽ばたいて飛ぶことも、四つ足で地を駆けることもできる。

「ブースター単体でこの火力……サオリあんた、このブースター単騎で出撃することを想定してるわね」

『ご名答ですわアンナこれはグフR35専用支援ブースターとしてふさわしいようにバルカン砲と盾のスペアを積み背面に付けば推進力の底上げや空中で左右への微妙なスラスター調整などが行えるんですのよザクとは違うのですのよザクとは!』

早口でまくし立てるのと同時にバルカン砲による威嚇とミサイルでの必殺を狙ってくるサオリのイグナイトブースター。

先輩のザクコマンドーは右腕を失い、両肩を損傷。頭部もかろうじてカメラが生きている程度で、歪んでしまって旋回しないであろう破損具合。

どう見ても先輩の負けは確定だ。

『もう降参してもよろしいんですのよー!?』

声高々に勝利宣言かますサオリと、頭の怒りマークが取れない先輩。あわわ、これリアルファイトにならないだろうか……

『そうそう色んな所に隠してあったミサイルポッドはもう壊しておきましたわよこの私に隠し事ができると思わないことですわアンナあなたの行動原理はお見通しですのよ!』

気がつくと、先輩がミサイルポッドを配置した場所から煙が上がっている。全て壊されているようだ。

「流石ねサオリ。あなたの新作ブースター、最高じゃない」

『あらあらこんな時に感想ですかもう諦めてしまったと受け取って構いませんね止めを刺して楽にしてあげますわ!』

イグナイトブースターがザクコマンドーの背後、少し離れた位置に飛行時の速度を落とさずに着地し、そのまま駆けて来た。

羽でラリアットして真っ二つにするつもりだ。

「先輩、逃げないと……」

「大丈夫だよユウジ。私のザクコマンドーはモビルスーツだ。宇宙世紀やコズミック・イラにおいて、モビルスーツがいかに優れた兵器であるか、こういう時に実感するよ」

迫り来るイグナイトブースターに対して振り向いたザクコマンドーの左腕には、グフS14のヒートサーベルが握られていた。

『いつの間に!?』

「サオリが私の可愛い可愛いミサイルポッドを潰している時、かな」

ザクコマンドーはヒートサーベルを、まるで野球バットのように後ろに振りかぶった。

目標はもちろん突っ込んでくるイグナイトブースターだ。

サオリはそれに気がつき慌ててブレーキをかけようと足を止めるが、慣性がそれを許してくれない。

「潰す」

『ぃいやぁあぁぁあ!』

先輩は大リーガー真っ青なフルスイングでイグナイトブースターをかっ飛ばした。

首部分と翼部分がもげて飛んでいき、フィールドの外に居るサオリの眉間に音を立ててぶつかる。

その瞬間にバトル終了を知らせるシステムボイスが流れ、先輩の勝利が確定した。

 

 

 

 工作スペースに戻った俺はサオリを必死に宥めていた。

「ほ、ほらコーラ買ってきたから機嫌直してくれよ……」

「あ、タオル買ってきたから涙ふくと良いぞ。もちろんハロプリントされてるやつだぞ」

「あ、いい工具使ってるなーアルティメットニッパー俺も欲しいなぁー」

バトルが終了した途端、先ほど饒舌だったのが嘘のように無言になり、涙だけが床を濡らすほど流れていた。

「っ……ぐっ……うぅ」

「え、えっと、あのえうあぉ」

俺が奇声しか発せないくらい切羽詰まった頃、先輩が俺の肩を叩いた。

「ごめんユウジ。サオリが負けたらこうなることすっかり忘れてた」

どうやらサオリは負けると毎回こんな風に号泣し、しばらく泣き止まないそうだ。早いところガンプラバトル経験者の情報を聞き出したいんだけどなぁ……

「こいつのこの負けず嫌いすぎて戦う相手が気を使う所が人気あるのよね。勝った時の笑顔にコロっと落ちるおじさん達のおかげで情報通になったみたいな所があるから、許してあげて」

「そ、そうなんですか……先輩、もしかしてサオリちゃんのこと嫌いなんですか?」

言い回しに作為的な部分を感じた俺はサオリに聞こえないようにこっそり聞いてみる。

先輩は腕を組んで少し考えてから、渋い声で答えた。

「利用価値がある時以外は喋りたくない」

大嫌いだそうだ。

「ふ、ふふ、ふふふ、あ、アンナ、さ、さう、流石、私のおしゃにゃ、おしゃ、おしゃにゃにゃじみで、です、わね」

「そういうのいいから、早く約束の情報を教えなさい」

先輩容赦ない。しかし、先ほどの早口とは真逆でしゃくりあげながら喋っているから区切りが多いが、これもこれで聞き取りづらい。

サオリは精一杯涙を堪えて、絞り出すように名前を告げた。

「……アシダ・カイトですわ」

「ご苦労様」

先輩はそれだけ言い残して立ち去ろうとする。

それを見たサオリはまたふぇぇぇぇと目に涙を溜め始める。

「……よしサオリちゃん、俺と一緒にガンプラ作ろう!サオリちゃんのグフS14も直すの手伝うよ!」

俺の言葉に一番反応したのは、先輩だった。

立ち去ろうとしていた足を止め、俺の方へ歩み寄ってくる。

「ユウジ―――」

「先輩はアシダ・カイトの勧誘の方、申し訳ないんですけどよろしくお願いします。サオリちゃんのことを抜きにしても、自分のガンプラを作らないといけないですし」

先輩は、まぁ確かに、としぶしぶ頷き、アンナに何か耳打ちしてから店を出て行った。

「……さてサオリちゃん、ガンプラ直そう」

俺はサオリのグフS14とイグナイトブースターの破損部位を確認しながら泣き止むのを待った。

しかし、無口で何でもそつなくこなしそうな先輩に、こんなに我儘な幼馴染が居たって言うのは意外だった。

いくら泣いても決して声を上げない意固地な所とか、そういう所は似ていそうというか、何とも不思議で微笑ましい感じだ。

「……ユウジ様ありがとうございますですが決して勘違いなさらないで下さい私普段はこんな失態……その……」

「おぉ、早口復活してるね。じゃあもう大丈夫かな?」

「……えぇご迷惑をおかけいたしました……その……ユウジ様はアンナのこと……」

サオリが何か言いかけた時、俺の背後でドサっと言う、何か大きなものを落とした音が聞こえた。

振り返ると、そこに姉が居た。

「え?お姉ちゃん、なんでここに……って言うかその大量の買い物袋は……?」

「お姉ちゃん、ユウジちゃんがプラモ好きだったからお店教えてあげようと思って近所にあるこの専門店見つけて、隣のスーパーで買い物したついでにちょっと覗いてみてたんだけど……まさかユウジちゃんが女の子をニッパーやナイフで脅して泣かせている所を見るなんて思わなくて……」

「……へっ!?」

俺+工具+泣いてる女の子=姉のリスカ案件。

「ごめんね、お姉ちゃんが構ってあげなかったからユウジちゃんが変態さんに……責任とって私が死ぬからユウジちゃんは全うな道に……」

「お店の工具でリスカは駄目だよお姉ちゃん!いや店のじゃなくても駄目だけども!」

俺は慌てて姉を押さえつけて買い物袋を抱え上げ、逃げるように店の出口に向かう。

「ユウジ様!」

「ごめんサオリちゃん、お姉ちゃんをどうにかしたらまた……」

「い、いえ今日はありがとうございましたもう大丈夫ですわ」

「そ、そう?」

サオリは少し躊躇い、スカートのポケットから一冊の手帳を取り出し俺に渡してきた。

手帳には"アイデアノート・アンナ愛しのユウジ様用♪"と書かれている。

「アンナからユウジ様がエネルギー管理で困っていると伺いましたので解決できそうな方法をいくつか考えてみましたのでこれを差し上げますのでご活用くださいませ」

それだけ伝えると、さっさと店から出て行ってしまった。

俺も死ぬ死ぬ喚いている姉を押さえつけて、後を追うように店から出るのだった。

 

第2話「憧れの翼」 -完-




読了お疲れ様でした。

サオリちゃんの登場と言うよりホビーショップアナハイムと言う場所の登場の方が重要な気がする2話でした。
原作で出てきたGミューズでも良いかなと思ったのですが、高校生が放課後にお台場まで行くのは不自然に感じたので、ちょっとオリジナルのチェーン店を作っちゃいました。

あ、ちなみにザクコマンドーもイグナイトブースターも実際に私が作ったガンプラです。

次回更新日時は12/9予定です。
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