ガンダムビルドファイターズ Anything goes -エニシングゴウズ-   作:oyakata

6 / 23
閲覧ありがとうございます。

今回はストライクフリーダム(ほぼ無改造) VS ティフシーガンダム(ダークハウンドとフォビドゥンガンダムのニコイチ)のバトルです。


ガンダムビルドファイターズ AG 第三話「深き者の翼」後篇

 部室に戻ると、反省会をしていた部員が何人か残っていたが、シミュレーターは空いていた。

俺とカイトはそれぞれ装置の前に立ち、互いのガンプラをセットした。

先輩は装置のコンソールを開き、ルール設定を選考会のままになっていた3VS3から1VS1に変更した。

「制限時間は無制限、フィールドはランダム、ダメージレベルはBで……」

「ナガサキ先輩、ダメージレベルはAに変更してくれ」

カイトは先輩にそう告げる。それを聞いた先輩は俺の方に視線を寄こす。

俺はカイトの顔を見る。カイトの顔は、先ほどの笑顔と違って険しいものになっていた。

真面目だ。今のカイトの言葉に、遊びは無い。

「……Aで」

「了解。ダメージレベルはAに設定。じゃあ、始まるよ」

先輩がコンソールを閉じると、すぐさまプラフスキー粒子がフィールドの生成を始めた。

場所は、多数のデブリが漂う宇宙空間。

「アシダ・カイト提督、ティフシーガンダム、着任します!」

「ミズシマ・ユウジ、ストライクフリーダムガンダム、行きます!」

互いに飛び出した宇宙空間。俺はすぐさまブーストを切り、ファンネルを周囲に漂わせ、構えた。

サオリの手帳を元に編み出した戦法は"待ち作戦"だ。

先ほどのバトルでは相手チームに放浪されて全然出来ていなかったが、エネルギーを極力使用せずに防御一択。

相手がストライクフリーダムのカリドゥス砲の射程範囲に入ったら、ファンネルで足止めして一気に接近して撃ちぬく。

火力だけなら、一撃で粉砕できる威力なのは確認済みだ。

『その作戦は俺に対しては悪手だと思うぜ?お前本当に俺のこと見てなかったんだな』

カイトから通信が入った直後、至近弾を食らう。背後から。

「何……!?」

慌てて振り返ると、そこには小さなビットが飛んでいた。

こんなヤツにビーム兵器を使用するのはエネルギーがもったいない。殴って破壊しようと接近するが、うまく避けられてデブリの影に消えてしまう。

「そうか、確かカイトのガンプラには艦載機……ビットが付いているんだ!」

思い出した瞬間、デブリの海の先でビットの中央に陣取っている黒いガンプラが見えた。

それを一言で伝えるなら、フォビドゥンガンダムのバックパック"ゲシュマイディッヒ・パンツァー"を持つダークハウンド。

本来盾の付いている部分にそれぞれ二門の砲台を付け、触手を連想させる白いアームがついており、杖に見立てた剣を所持している。

そしてその周りを、ひし形のビットが飛んでいた。

『さあ、どんどん飛ばすぜ!』

迫り来るビットを避け、俺はティフシーガンダムの死角になるデブリの一つにたどり着く。

死角に入れば猛攻も和らぐと考えて影に入るが、デブリに複数のビットが体当たりして砕いてしまった。

「なっ、そんなのアリか!」

『何でもアリだ!』

破壊されたデブリの向こう側を見ると、ティフシーガンダムは先ほどよりも近づいてきていた。

このまま飛び込んで間合いに入ろうかとも思ったが、周囲を飛ぶビットがいつでもこちらを狙える位置にいるため、迂闊に注意を反らせない。

距離を離さないように、ティフシーガンダムを中心に旋回移動を繰り返してビットの攻撃を避ける。

『なるほど、無駄撃ちするとエネルギーを消耗するから一撃に全てを賭けるって寸法か』

こちらの作戦がバレたようだ。だが、バレた所でやることは変わらない。

「少しずつ……旋回しながら近づく……!」

旋回してビットを交わしながら、徐々に距離を縮めていく。ティフシーガンダムもこちらに対して常に正面を向くようにしていたが、ある瞬間、方向転換が少し遅れてこちらに背を向けた。

「今だ!」

俺は旋回を止め、一気に距離を詰めた。アグレッサーのブリック軍曹じゃないが、振り返る1モーションの間に決着を付けるため、俺はカリドゥスのチャージを始めた。

だが、振り返ったティフシーガンダムが持っていた物に驚いて、思わず動きを止めてしまった。

「ど、どこにそんな物を……!?」

ティフシーガンダムは、いつの間にか頭身よりも巨大な剣を持っていた。

先端や剣の腹部分の所々に銀色に輝く刃が取り付けられており、斬るというより削るような仕組みだろう。

ティフシーガンダムは、その剣を振りかざしてきた。俺はヴォアチュール・リュミエールを起動させて背後に後退する。今のでエネルギーが減りすぎ、カリドゥスのチャージが止まってしまった。

「くっ……バトルが始まった時は持っていなかったのに……どういうことだ?」

ガンプラバトルの公式ルールでは追加投入は認められていない。

カイトがルール違反を犯したのだろうかと疑ったが、その剣の刀身を見て考えを改めた。

「これは、ビットが……くっついている?」

『全てのビットを連結させて巨大な剣にする武装、名付けて"神風特攻剣"!』

ティフシーガンダムは剣を、まるでバットのように構えて武器を見せびらかした。どうだと言わんばかりに見せつけ、満足したとばかりに剣を構えなおして、再び距離を詰めて来る。

これ以上エネルギーを消耗すると、カリドゥスを撃つ余力すら無くなる。

かといって受け止めるためにはビームシールドを展開する必要があり、これにもエネルギーが必要……

「なら、押し返すまで!」

『うおっ!?』

俺はビームライフルを剣に対して水平に構え、ライフルにめり込ませることで防御に成功した。ライフルは当然失われたが、元よりカリドゥス以外を撃つ余裕は無い。

「チャージが溜まってない……今撃ってもダメか……」

撃っても勝負を決められないと踏んだ俺は、蹴りを入れつつティフシーガンダムから距離を取った。安全な距離で、再びカリドゥスのチャージを始める。

『……なるほどね。一撃必殺以外は撃ち込まないってことか、頭が硬いねぇ。俺だったら攻めるタイミングだったぜ?』

カイトが挑発気味に通信を入れてくる。

無防備にも目の前で剣にめり込んだライフルを外している。その行為にイラつきを隠せず、俺は舌打ちをした。

『まぁ、俺だったらそもそも接近しないけどな。今のは遠距離でビットを撃ち落して戦力を減らすところだ』

カイトのいうことは最もだったが、エネルギー消費の激しいこのガンプラではその作戦を行うと先に限界が来てしまう。

『エネルギー不足だって言っても、全く消費せずに防御一択ってのはどうなんだ。俺ならデブリを砕いたビットの一つでも叩き落としたぞ』

確かに、先ほど無茶に突っ込んできたビットはその場で静止していた。少しでも攻撃にエネルギーを使えば、落とせていたかもしれない。

けれどそれではフルパワーでカリドゥスを撃てない。

『今さっきの接近の時だって、カリドゥスのチャージが溜まって無かったから引いたんだろ?チャージの必要が無いドラグーンで追撃することだってすぐ展開できるビールサーベルやビームシールドで斬り裂くことだってできたはずだ』

確かに、一撃必殺を当てることに夢中になって近接攻撃のチャンスを無駄にした自覚はある。

しかし、近接攻撃を行ったとして、それで相手の戦力を削げるとは限らない。

それこそ、今攻撃していたら途中でエネルギー不足になって反撃を食らう可能性もあった。

『まあ、俺は接近戦でも負けるつもりは無いけどな!』

「……さっきから俺が俺が俺がうるさいな!気にしていることを次々と……俺にとってのベストは今のタイミングじゃないんだよ!俺は俺なりの作戦があるんだ!」

俺は俺はとうるさいカイトのセリフにキレて通信に答え、一気に接近した。

距離が十分に縮まっていなかったので、回避されてしまう距離……のはずだった。

『うおぉ!?』

通信の気迫に気圧されたのか、カイトは回避行動が若干遅れた。チャンスだと睨んだ俺は攻撃では無く、胴体に組みつくことにした。

「今だっ!」

カリドゥスのチャージをそのままに、周囲にドラグーンを展開する。

俺を振りほどこうとするとドラグーンに撃ち抜かれ、このままでいたらカリドゥスで撃ち抜かれる。

これを避けるには、拘束しているストライクフリーダムの腕をこの場から動かずに破壊するしかない。

「捕らえたぞ、カイト!」

『まじかよ……ジャーマンの仕返しか!?』

カイトに言われて気がついたが、ストライクフリーダムが組みついた体勢は、奇しくも先ほどカイトにやられたジャーマン・スープレックスと同じだった。

「これが俺のやり方だ、カイト!」

『なるほど。しかと見せてもらったぜ、お前のガンプラバトル』

カイトがそう言った瞬間、ティフシーガンダムの剣がバラけた。ビットに戻ったんだ。

「しまっ……!」

『狙いはドラグーン!行けお前たち!』

バラバラに散ったビットが、周囲を包囲していたドラグーンを次々に落としていく。包囲が崩れた瞬間、ティフシーガンダムはストライクフリーダムにしがみつかれたまま、ブーストを吹かして脱出した。

そしてそのまま、大きめのデブリに突っ込んでいく。

「ちょ、ちょちょちょちょ!?」

『うおおおおお、銀河ジャーマン・スープレックスぅ!』

俺は逃げようとしてストライクフリーダムの両腕を離すかチャージ不足のカリドゥスを撃とうか迷って、思いとどまる。

(そうか、これが狙いか……!)

カイトは俺のストライクフリーダムが無駄撃ちすることを期待している。いや、無駄撃ちせざるを得ない状況を作っている。

カイトの戦い方が分かった。挑発して、誘って、弱点を突く戦法だ。

それなら、俺が対抗する手段は一つ。

『おら、ぶつかるぜ!』

カイトの宣言通り、ティフシーガンダムとストライクフリーダムはそのままデブリに突っ込んだ。

激しい音を立ててお互いのガンプラが叩きつけられる。ティフシーガンダムは頭部にバックパックがあるので破損は少なかったようだが、ストライクフリーダムは頭部がもげた。

だが、それでもティフシーガンダムを掴んでいた腕は放さなかった。

『なにっ!?』

「対抗する手段は一つ!お前の挑発や誘いに乗らず、最後まで意地を通すことだ!」

デブリに墜落してもなお腕を放さないストライクフリーダムを、無理やり振りほどこうともがくティフシーガンダム。だが、もう遅い。カリドゥスのチャージは完了した。

俺はトリガーを押し込んだ。

瞬間、デブリが爆発。否、デブリごとティフシーガンダムを撃ち抜いた。

全エネルギーを放出したストライクフリーダムは停止し、宇宙を漂う。

頭部を失い、カリドゥス発射時に腕も吹き飛んだ。飛び散ったデブリに当たったのか、翼も、周囲に飛んでいたドラグーンもボロボロ。エネルギーが再チャージされても、動かないだろう。ティフシーガンダムは胴体を失い、ビットも沈黙した。こちらも、動く様子はない。

引き分けだ。

 

 

 バトル終了のシステムコールの後、俺とカイトはシミュレーターの横に立って向かい合っていた。

シミュレーターの上には、お互いの破損したガンプラが置かれている。

「どうだミズシマ、俺が言いたかったこと、伝わったか?」

カイトが開口一番そう告げる。俺は正直に答えた。

「わからなかった」

「まぁそうだな」

「じゃあ何で聞いた!?」

ノリとテンションでしゃべっているようなカイトに、俺はたまらず突っ込んでしまう。

「お、やっと突っ込んだな」

「……ま、まぁ、カイトが”そういう奴”だってのが分かったから……」

そうそうそれそれ、とカイトは俺の肩を叩いて笑った。

「俺はそういう奴なんだ。そういう生き方してる奴なんだよ。お前は馬鹿がつく位に真剣にガンプラバトルやってるみたいだから、俺みたいなフラフラしてる奴のことを許せないのかもしんないけどさ」

カイトは壊れたティフシーガンダムを拾い上げ、苦笑した。

「安心しろよ。俺はちゃんとガンプラバトル、大好きだからさ」

そこまで言われて、俺は初めてカイトが言いたかったことが分かった。

俺がガンプラバトルに全力で取り組んでいるように、カイトも全力で取り組んでいるんだ。艦これだったり、ソシャゲだったり、ガンプラバトルだったり、その全てに。

俺の心配していた、いつかコロっと心変わりして止めてしまうかも、という心配は、不要だったんだ。

「……ごめん、俺はカイトのことを勘違いしていたみたいだ」

「おう、気にすんなよ!」

俺とカイトががしっと握手をして青春の一コマ的な雰囲気になった時、先輩がぼそっと呟いた。

「カプ成立……!」

俺はその意味が分からなかったが、カイトが青い顔して鳥肌立てて固まった。

恐る恐ると言った風に先輩の方に振り返る。

「ま、まさかナガサキ先輩……まさかのまさかと思いますがまさかまさか……」

「どうしたの。何に気がついてしまったのカイト」

「そ、その……腐って……」

「その先をユウジの前で喋ると絹江・クロスロードのようなことになる」

「あ、アイアイサー!」

絹江・クロスロードって真実に近づきすぎて殺されたキャラクターだよな?何の話だろう?

俺が話の詳細を聞こうと口を開くと、その口をカイトが手のひらで塞いで来た。俺は頭にハテナを浮かべることしか出来なくなる。

「よぉしミズシマ!俺のガンプラ直すの手伝え!お前のもの手伝うからさ!そうと決まればアナハイムにGOだ!」

先輩から逃げるように走り出したカイトに連れられ、俺は部室を後にした。

部室を出る直前に見えた先輩の顔は、とても良い笑顔だった。

 

第3話「深き者の翼」 -完-




読了お疲れ様でした。

ユウジとカイトの生き方の違いによる衝突と全て美味しく頂いている先輩の話でした。
書いている内に、ユウジの戦い方が初戦に戻ってしまっている気がして、修正しようかちょっと悩みましたが、ユウジの性格からして「楽しむ」と決めたバトルと「意地を通す」と決めた戦いで戦闘方法が変わるのはアリだと思ったので、こうなりました。

次回更新日時は12/23予定です。もしかしたらその前にガンプラ写真を投稿するかもしれません。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。