ガンダムビルドファイターズ Anything goes -エニシングゴウズ-   作:oyakata

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閲覧ありがとうございます。
今回はタッグ大会一回戦です。

ストライクフリーダムコマンド(ストライクフリーダムのカスタム機)
 &
ティフシーガンダム(艦これのヲ級風ガンプラ)

 VS

ブレイヴGO改(金塗装のブレイヴ+武装変更)
 &
ゼクミーヌス(ゼクアイン+武装変更)


ガンダムビルドファイターズ AG 第四話「壊れた翼」後篇

 俺とカイトはバトルシミュレーターの前に立った。先輩は観客席で見ている。

シミュレーターの向こう側にいるのは、同じ学校の生徒であり、同じ部の仲間であり、今は復讐鬼と化した男女二人。

「カイト、始まったらすぐに隠れられそうな所に避難して。俺はなるべく前に出て注意を引きつける」

「……大丈夫か?あいつらの顔見えるだろ。あの勢いで迫られたらたまったもんじゃねえぞ」

カイトの言う通り、対戦相手の二人はずっと険しい表情でこちらを睨みつけながら会話している。まるで俺たちが彼らの恨んでいるパーツハンターなんじゃないかと錯覚してしまうほどに。

「きっとアイツらは今、パーツハンターをぶっ倒すことしか考えてないんだろうよ。そしてそれを邪魔するやつらは同列の悪。そういう目をしてる」

俺は聖人でも、メイジンでも、ましてや善人ですら無い。だから復讐に取り憑かれて憎悪を剥き出しにするあの二人を見ても、恐怖しか抱けない。戦ってその地獄から救ってやろうとか、パーツハンターは俺に任せろとか、そういう格好良いことも言えない。

ただ、一つだけ感じることがある。

それは多分、ガンプラファイターなら誰でも持っている意地なんだろう。

「あんな状態のファイターを勝たせるわけにはいかない。勝っちゃダメだ。俺たちが勝とう、カイト」

「言うじゃねえか。主役はお前に譲るぜ、ミズシマ!」

シミュレーターからシステム音声でガンプラとGPベースのセットを促される。

俺たちは配置につき、それぞれのガンプラを出撃させる。

「ミズシマ・ユウジ、ストライクフリーダムコマンド、行きます!」

「アシダ・カイト提督、ティフシーガンダム、着任します!」

俺とカイトのガンプラが出撃した先は、海上だった。こちらとあちら、お互いにわずかに陸地があるようだ。

『キタぜミズシマ!俺は早速海中に隠れる。油断すんなよ!』

カイトがそういうと、ティフシーガンダムは水中へと消えていった。

俺は陸地でガンプラの各所の動きをチェックする。

このストライクフリーダムコマンド、通常のストライクフリーダムとの相違点はビームシールド発生装置が緑色に塗られ、ファンネルが黒くコーティングされていること。それ以外は稼働範囲や操作系統は通常と同じにしてある。

「この装備がどこまで通用するかは、やってみないと分からない……!」

ストライクフリーダムコマンドを飛び上がらせ、対戦相手の位置を確認する。まだ遠いが、レーダーには映っている。2機ともまっすぐこちらに向かってきている。

「これなら、両方一緒に相手に出来る……!」

俺はストライクフリーダムを敵機の方向へ動かし始めた。その瞬間、画面中央に警告マークが表示される。

咄嗟にブーストを吹かして急浮上する。すると、足元を極太のビームが通り去っていった。

「今のは……ガナーザクウォーリアのオルトロス高エネルギー長射程ビーム砲か?」

敵はガナーザクウォーリア。そう想定し、接近を急ぐ。遠距離攻撃を連発されては敵わない。回避にだってエネルギーは使用する。

「粒子エネルギー反応が増大……二発目か?」

ストライクフリーダムのブーストボタンに指を掛け、すぐに上昇運動が出来るように準備をする。

だが、目の前に現れたのはビーム砲ではなく、ガンプラ本体だった。

「き、金色のブレイヴ……!?」

それは一見すると金と黒で塗装されたクルーズポジションのブレイヴ。

ブレイヴと言えば、飛行モードであるクルーズポジションと人型に可変する細身で素早いイメージ……のはずだが……右半身に違和感があった。

右腕がガフラン、右ブースターの位置にオルトロス高エネルギー長射程ビーム砲、そして背後の太陽炉の真下に大きなエネルギータンクがくっついている。

飛行モード時に本体の前方に装着されているGNビームライフル「ドレイクハウリング」は銃口が既に無かった。

それが凄まじい勢いで突っ込んでくる。回避をしようと急上昇したが、読まれていた。

軌道修正して、体当たりしてくる。

そしてその勢いのまま、空中を引き回される。

「まさか、そのブレイヴは……!」

『そうよ。パーツハンターにぶっ壊された、私のブレイヴ!』

執念。その言葉がよく似合いそうな声色で入った通信に、俺は一瞬よりは長く竦み上がった。

剥がれたであろう塗装の上から塗られた塗料、砕けたであろうパーツの接着跡、欠けたままのパーツ、そして無理やり取り付けられた腕と武装……

復讐鬼。その名が相応しいガンプラだった。

『イシジマ・ユキ、ブレイヴGO改、推してくよ!』

「くっ……も、もう一機は……!?」

随分と上空まで押し上げられてしまって確認できないもう一機。レーダーを見ても反応が消えている。

ブレイヴを引き剥がそうとストライクフリーダムを操作しながら、カイトに通信を入れる。

「ごめんカイト、一機見失った!」

『おうミズシマ、こっちもすまねえ。そこ上空すぎて俺のカメラじゃ距離感が掴めん。なるべく高度を下げてくれると助かる!』

「了解!」

ブレイヴGO改の胴体を掴み、捻る。胴体は可変時の軸になる。ここを捻るとガンプラの上半身と下半身が歪み、体勢を維持するのも大変なはず。

そう思い、勢い良く捻りあげたら……装甲がベキっと言う嫌な音を立てて剥がれた。

「うわわわ!?ご、ごめん!?」

『……何を謝ってんの一年生。二年生として忠告してあげるわ、これはガンプラバトルよ。相手のガンプラを壊す覚悟が無いなら、とっとと場外にでも出なさい!』

ブレイヴGO改が、ストライクフリーダムを離さないように方向転換した。進行方向は、一番近いエリア端……場外。

俺の異変に気がついたカイトが通信を入れてくる。

『マジかよ……ミズシマ、踏ん張れ!』

「そ、そんなことを言っても、ブースターを使うとエネルギーが……」

『場外よりゃマシだ、吹かせ!』

俺は舌打ちをしてからブーストを吹かしてブレイヴGO改を押し返し始めた。

その推進力は凄まじく、減速の後、押し戻し始めた。

『な、なんなのその出力は!?』

「流石は先輩のストライクフリーダム……このまま一気に!」

腰からビームサーベルを取り出し、逆手に持って突き立てようと振り被る。

その瞬間、ブレイヴはクルーズポジションを解除してストライクフリーダムから離れた。

ドレイクハウリングを構えてこちらに撃ち込んでくる。

俺は構えを解いてビームを避け、ブーストを吹かして斬り込もうとする。

その瞬間、エネルギー残量が5%以下になり警告が表示されて著しく動きが鈍った。

ブースターが止まり、ビームサーベルが消える。それを見たユキは、笑いが混じった声で叫んだ。

『やっぱりエネルギー問題は解決していなかったのね!一年生にしては良い動きだと思ったけど、やっぱり最初の選考会の時のままね!』

勝利を確信したのか、ブレイヴGO改は背後からオルトロス高エネルギー長射程ビーム砲を取り出して構えた。

そしてすぐさまチャージが完了し、撃ち込んでくる。どうやら背後に増設されたエネルギータンクが、ビーム砲に急速にエネルギーを送る仕組みらしい。

だが今はその仕組みが"ありがたい"。

俺はコンソールから特殊兵装のウィンドウを開き、"test"と書かれた格好良さもへったくれもないボタンを押す。

「ストライクフリーダムコマンド……頼む!」

両腕のビームシールド発生装置を頭の前に出し、ビームに対して垂直に構えた。

その様子を見て、ユキはいくらビームシールドでも威力を殺しきれないと思っただろう。

だが、結果は違っていた。

ビームは完全に消え去り、無傷のストライクフリーダムがそこに居た。

更に、エネルギー不足で動きを鈍らせていた筈のストライクフリーダムは軽快に構えを解き、ドラグーンを周囲に飛ばして見せた。

「……成功だ……!」

今行ったのは、ストライクフリーダムコマンドの新装備"アブソーブシステム"。

システムそのものは7年前に考案されたものだが、使用が難しいこともありあまり普及していない。

だが、"敵の放ったビーム攻撃をエネルギーに変換できる"強力なシステムだ。

俺はそれをビームシールドの代わりに両腕に取り付け、エネルギー不足という欠点を克服すると共に強力な防御兵装にした。

『まさか……アブソーブで回復を……くっ、この泥棒野郎が!』

ブレイヴGO改がドレイクハウリングを撃ち込んで来る。吸収する要領が分かった俺は、そのビーム弾を全て腕のアブソーブシステムで吸収して見せた。

『……くっ』

回復させるだけだと気がついたのか、ブレイヴGO改はドレイクハウリングを下げてガフランの右腕を構える。

近接格闘で戦おうとしているんだろう。俺はドラグーンをブレイヴGO改の周りに展開する。

『うおぁあぁ!』

叫び声と共に、ストライクフリーダムに突っ込んでくる。俺はブレイヴGO改の頭部目掛けてドラグーンを突っ込ませた。

激しい衝突音と共にブレイヴGO改は動きを止める。

『なっ!?こ、このドラグーン、まさか近接用!?』

「……そうですよ」

俺はたっぷりと間をとって話しかけた。こういう時は、どうしても気が大きくなる。悪い癖だと思いつつも、こういうのもガンプラバトルの醍醐味だと考えてしまう。

「俺のストライクフリーダムコマンドの新装備は、アブソーブシールドと、このドラグーンフィストの2つです。この二つで、俺はイシジマ・ユキさんに勝ちます!」

俺は啖呵と同時にドラグーンフィストを次々にブレイヴGO改に叩き込む。ドラグーン百烈拳。小学生の頃の思いつきの攻撃を、こんな形で昇華できるなんて思ってもみなかった。

元々ドラグーンは消費エネルギーが激しい。空中に飛ばすときに内部に粒子を貯蔵させ、それを飛ばすわけだ。

ならば最初から粒子を割り振らず打撃用として用いれば良い。その発想に至った為、ドラグーンに薄いゴム皮を貼り付けておいた。これなら粒子を通さない為、粒子を用いた武器にも耐性ができる。

このまま押し切……

『……押し切られるわけにはいかないのよ!トランザム!』

赤くなったブレイヴGO改はガフランの腕からビームサーベルを出し、振り回す。無茶苦茶に振っているわけでは無い。

的確に、迫るドラグーンの軌道を逸らすように凪いでいた。

俺はその操縦技術に驚き、見惚れてしまう。その一瞬の隙を突き、距離を取られる。

ストライクフリーダムコマンドは近接戦闘用。慌てて距離を詰めようとブーストを吹かすが、トランザムを発動したブレイヴGO改は3倍の速度で移動している。常に一定の距離を保たれ、一向に近づけない。

しかし、ブレイヴGO改は徐々にその速度を落としていく。

それもその筈、元々ブレイヴGO改は各所が破損した状態だった。その状態で負荷がかかるトランザムを続けていたら……

「ユキさん、それ以上は……苦しいだけです」

『黙りなさい!対戦相手を心配するような言葉を吐くんじゃないわよ!』

ジョイントパーツが折れたのか、破損音と共にブレイヴGO改の左腕が外れて海へ落ちていく。

パーツをばら撒き、亀裂音を発しながらも動き続けるブレイヴGO改を、これ以上見ていられなかった。

『よそ見を、するな!』

「!」

視線を逸らした瞬間、方向転換してきて体当たりを食らう。その時の衝撃でブレイヴGO改の頭部が外れて、海へ落ちる。

ブレイヴGO改は再び一定の距離を離し、こちらを牽制し続ける。

『分かってるのよ、今の私のガンプラじゃ勝てないってことくらい!』

ドレイクハウリングを撃ち込んでくるが、全てアブソーブシールドで吸収する。ヤケになったのか、ドレイクハウリングをこちらに投げつけてくるが、ドラグーンフィストで吹き飛ばす。距離が、徐々に縮まる。

『でも、戦わないわけにはいかないの!パーツハンターを倒す機会があるなら、しがみつかなきゃいけないの!』

距離が縮まって射程に入ったことで、ドラグーンフィストが自動的にブレイヴGO改へと向かう。

ブレイヴGO改はガフランの腕から出したビールサーベルでドラグーンフィストを薙ぎ払うが、途中でサーベルの根元部分が外れる。取れたパーツは無残にも歪んでいた。

『……苦しいわよ。自分の相棒を、こんなボロボロにしてまで戦わせるのは……でも、戦わずに逃げるのは、もっと苦しいの』

「ユキさん……」

『……』

突然動きを止めたブレイヴGO改。オルトロス高エネルギー長射程ビーム砲を構えて、チャージ時間もそこそこに撃ち込んできた。

「っ!?」

ストライクフリーダムの両腕のアブソーブシールドでそれを吸収する。

これ以上やっても、ただエネルギーを吸われるだけだ。だが、ブレイヴGO改はビームの放出を止めなかった。

「……まさか……!」

『ちゃんと受け止めなさい……一年生。それが勝者の義務よ。敗者の無念も、怨念も、怒りも、全部引き受けなきゃいけないの』

全てのエネルギーを撃ち尽くしたブレイヴGO改は、そのまま落下し始めた。海の中へと落ち、レーダーからも反応が消えた。

「……受け止める……」

俺は最大値を超えたエネルギーゲージを見つめ、コントローラーを握りしめた。

 

 

 その頃、カイトは水中で敵ガンプラと対峙していた。

相手は凄まじい速度で水中を移動し、こちらとの距離を測っているようだった。

「やばいな……ティフシーガンダムは水中に隠れることを想定しちゃいるが、水中で自在に戦うようには出来てねぇ」

海上戦闘を想定しており、水上に安定して浮く方法や深度の浅い海を移動する方法は持っている。

なので持っている武装は、空中にいる相手に有効なものがほとんどだ。

海中を移動する敵を探知する仕組みはあるが、戦闘は想定していない。

「マジで困った……一か八か、水中にビット飛ばしてみるか……?」

想像して、やはりやめた。水圧のせいでまともに航行できないビットは敵にとって良い的にしかならない。

ここでビットを減らされるのは、避けたほうが良い。

「くそ……待ってても仕方ない、こうなりゃヤケだ!」

俺はコントローラーからモードチェンジのボタンを押した。

背中の武装"WOヘッド"を頭部に被せ、ティフシーガンダムを水中、レーダーの示す深度まで下げて突っ込ませる。

「いざってなったらバルカンもフレスベルグもある!相手が水泳部じゃなきゃ意外と行けるんじゃねぇか!?」

俺はカメラをソナーモードに変更した。WOヘッドを被った状態で使用可能になるソナーモード。

これは原作機体には無い機能で、カイトが考えて、ナガサキ先輩と共に実装した物だ。

この状態は視界を完全に遮断する代わり、全ての情報をプラフスキー粒子の反射で表示する。

真っ暗な視界に、反応があった空間が白く光って表示される。

「行くぜ、アクティブソナー!」

ティフシーガンダムの周囲に、超音波を発生させる。超音波に触れた粒子が、カメラに白く表示される。

もちろん周囲の水もプラフスキー粒子なので反応するが、水の振動程度の反応は無視するように設定してある。水よりも大きい粒子、つまり敵ガンプラのような粒子を貯蔵している物体に当たった場合に反応するようにしている。

そしてやはり、同じ深度に光る影が映った。位置は、正面。

「よぉし……一気に撃ち抜いてやる!」

俺はフレスベルグをぶっ放した。全く気にしなくても良いと言う程ではないが、ミズシマのストフリみたいにエネルギーを気にするほどの消耗じゃない。

代わりにというか、これが普通だが、一撃で仕留められるくらいの威力は無い。直撃してもダメだろう。ましてや水中。水の抵抗が大きい為、更に威力が落ちるはずだ。

フレスベルグが水中に消えていった後、俺はパッシブソナーを付けた。

パッシブソナーは超音波を発するのではなく、周囲の粒子の動きを察知する。派手に水をかき分けて移動していたりすれば、それだけ多くの粒子が動く。それが白く表示される。

「お、居た居た……ってこっち向かってきてるじゃねぇか!?」

どうやらフレスベルグは外れたようで、凄まじい勢いでこちらに向かってくる。当たり前だが、こちらの位置がばれたということだ。

俺はカメラを通常モードに切り替えた。そこに映ったガンプラは、ゼクアインだった。

いや、ゼクアイン"だった"ガンプラ、と言った方が良いかもしれない。

アンテナが無いが、頭部や胴体、足などは確かにゼクアインだ。だが、左腕が得体の知れない巨大な爪のような武装になり、腰にはそれぞれ形違いのレールガンのような装備。バックパックには巨大なブースター。恐らく水中用だ。

そしてゼクアインの独特な両肩のラッチは外され、そこには大型のバーニアが取り付けられている。

「……な、なんだよそのゼクアインは……?」

『ゼクミーヌス……二日で仕上げた急造品だが、お前のヒョロっちいガンプラを潰すくらい訳無いぜ』

突然、相手が音声通信でなく映像付きの通信を送ってきた。

映っていたのは、マスクの男。

「よぉ、お前か……聞けばお前、俺らと同じ一年生らしいじゃねぇか。なんだぁ、二年生のお姉さまとタッグ組んでるから気が大きくなってんのか?」

『俺の名前はダイモン・トウキだ、アシダ・カイト。次にユキさんの話題を出したら即ぶっ潰す』

凄まじい眼力で睨みつけてくる。俺も大概人のことを言えないが、こいつ本当に高校一年生か?

迫り来るゼクミーヌスはティフシーガンダムの眼前で止まり、腰のレールガンを取り外す。良く見れば、そこには刃がついていた。銃剣だ。

まさかとは思ったが、このガンプラは水中近接用……ズゴックやゴックのように運用する想定で設計されている。

「なんて無茶な設計……もしかしてこのガンプラ、パーツハンターにぶっ壊されたのを改修して来たのか!?」

『そうだ。ユキさんも同じだ……パーツハンターをぶっ潰す為に作ってきた。お前らに、俺たちの覚悟を超えられるものか!』

巨大な爪を振り上げて殴りかかってくるゼクミーヌス。ティフシーガンダムを浮上させてそれを避けるが、空振りすることなく、そのままの速度で水中を航行し始めた。

バックパックのブースターからスクリュー音が聞こえ、肩のバーニアが角度を変えて進行方向を調整し、俺のガンプラの真下に張り付き、振り上げた爪を再び振り下ろそうとする。

『当たるまで何度でも振り下ろす!』

「うおぁあぁ、怖え!」

WOヘッドをバックパックに戻し、速度を上げて海上へと逃れる。勢いよく水上へと飛び出し、振り返る。

そこには、同じく水上に飛び出してきたゼクミーヌスの姿。

「空中まで追ってくるのかよ!」

『宇宙だろうが地中だろうが追っていく!そのための強化ブースターだ!』

空中に出た途端、ゼクミーヌスのバックパックの中で回っていたスクリュー音が消え、ジェットが噴射し始めた。

とてつもない接近速度で、あっという間に追いつかれる。

「くっ、サーペント!」

WOヘッドから伸びる白い触手、サーペントを操って爪を止めようとする。だが、その圧倒的な質量で弾かれ、サーペントで守った本体ごと吹き飛ばされる。

『甘い!そんな細いアームでは何も貫けん!』

銃剣を、ロクに構えもせずに撃ち込んでくる。狙いはデタラメだが、威力が高かった。掠っただけで肩マントのパーツに傷がついた。

まずい、直撃を食らったらパーツ破損じゃ済まない。

「艦載機、発艦開始!」

ビットを飛ばしてゼクミーヌスを包囲する。ビットは基本的に目標との距離を一定に保つように設定してある。

何も指定せずとも、その内の2つが対角線を描くようにビットからビームサーベルを出して突撃を行う。

待機距離まで移動したら別の2つが、同じことを行う。

これを繰り返すことで永遠に敵を牽制し続ける仕組みなのだが……

『邪魔だぁ!』

爪でビットを叩き落とし、レールガンで撃ち落とし、ビットを振り切る加速で包囲網を抜け、こちらに向かってくる。

力技……パワフル過ぎてこちらの戦法が一切通じていない。

「ウッソだろお前、それ壊れてるの直しただけじゃねぇのかよ!」

『そうだ!壊されたのを直して、強化したんだ!このガンプラなら、パーツハンターをぶっ潰せる!今度こそ、ユキさんを守る!』

爪を用いての打撃。防御の暇すらなく、まともに食らってボディパーツが破損し、海へ落とされる。

WOヘッドを被り、頭上からの攻撃に備えるが、放たれたのは"突き"だった。

爪の間に仕込まれたビームサーベルがWOヘッドを貫通し、肩を突き刺していた。

「マジ……かよ……」

『……お前、このガンプラ、本当に勝つために作ったのか?』

ゼクミーヌスが動きを止め、ティフシーガンダムを突き刺したままトウキが再び通信で話しかけてくる。いや、話しかけるというか、怒りをぶつけてきているような感じを受ける。

「はっ、楽しむために作ったに決まってるだろ」

『そうか。本気でやって悪かったな』

そのセリフは、カイトが遊びで戦っているんだと言っていた。

そして自分は遊びでやっているのでは無いと、言っていた。

カイトはそれが許せなかった。以前ユウジに偉そうに説教した時とは少し状況が違うが、つまりはそういうことだ。

「はっ、ガチ勢気取りかよ……エンジョイ勢だってなぁ、本気で遊んでんだよ!」

こいつに説教垂れても仕方ない。はっ倒して分からせる。

カイトはコントローラーから特殊兵装"FlagShip"を選択した。

その瞬間、ティフシーガンダムの周囲を金色の光が包む。突然ゼクミーヌスの爪の間から出ていたビームサーベルが消え、ティフシーガンダムは海から上がってくる。

『なっ、これは……粒子が変化している!?』

ゼクミーヌスが若干距離を取ると、ビームサーベルが復活した。それを見てトウキはそれが何であるか理解したらしい。

そう、FlagShipを発動するとティフシーガンダムは周囲の粒子は金色に輝く物質に変化させる。

……変化させるだけだ!

特に性能が3倍になったりしない!

だが、思わぬ副作用として、ビーム系に物質化している粒子情報までも上書きすることが分かった。

つまり、エネルギー物質完全無効果バリアってわけだ。まさか艦これのフラグシップを再現しようと思って作ったジョークコマンドがこんな性能を持つとは、思ってもいなかったが。

「どうだガチ勢……エンジョイ勢の本気、見せてやるぜ!」

俺はビットを呼び戻し、神風特攻剣を構築して斬りかかる。

ゼクミーヌスはそれを爪で受け止め、銃剣を突き刺そうとしてくるが、ティフシーガンダムのサーペントで剣を押さえ込む。

俺は空いている左腕で肩マントについているフックガンを取り出し、ゼクミーヌスの肩装甲とバーニアの間を撃つ。

するとフックが隙間を通過し、ワイヤーが引っかかる。

『お前、まさか……!』

「部位破壊だぜ!」

ワイヤーを思いっきり引くと、戻ってきたフックがバーニアと肩装甲の間を直撃。接続部分のジョイントを破壊した。

バーニアは海へと落ちていく。

機動力を削ぐしか、こいつのパワーに対抗する手段は無い。ならば、こういう戦い方をするしか方法が無い。

だが……それでも縮まらない差というものは、存在した。

『……俺のガンプラに何すんだぁああぁあ!』

突然出力が上がったゼクミーヌスの爪に押し込まれ、神風特攻剣ごと押さえ込まれてしまう。

左手の銃剣を海へと放り投げ、サーペントを鷲掴みにしてちぎられた。

「なぁ!?ど、どんな出力してんだよ!?」

『言っただろう……こんなガンプラ、潰すのは簡単なんだよ……!』

だが、そんな無茶な出力に、ガンプラは悲鳴を上げ始めていた。

各関節から嫌な音が聞こえているし、無茶をしている左手の拳パーツはヒビが入っている。

それでもゼクミーヌスは止まらない。サーペントをちぎった後は肩パーツを、腰パーツを、次々と剥いでいく。

『お前をすぐにぶっ潰してユキさんの援護に向かうんだ……ユキさんは、俺が守るんだ……!』

「何だよお前、随分焦ってると思ったら相方の心配かよ!目の前の俺に集中しろって!」

『黙れ!お前みたいな遊びでやってる奴に、俺の気持ちが分かるはずは無いんだよ!』

その叫びのあまりの迫力に、俺は黙るしかなかった。トウキの"本気"は、俺たちとは違う次元にあることを、理解したからだ。

トウキはガンプラバトルを遊びだと思っていないし、遊びでやっているわけではない。

トウキの言うとおり、こいつはユキさんを守る為にガンプラバトルをやっている。

その気持ちを超えない限り、俺がこいつに気迫で勝ることは無いだろう。

「……参ったなぁ。理屈じゃないってのは……すまねぇ、ユウジ」

俺が負けを覚悟した時、突然ゼクミーヌスの動きが止まった。

何事かと周りを見渡すと、上空にストライクフリーダムコマンドが居ることに気がつく。

まさかと思いゼクミーヌスを軽く押すと、四肢を力なく放り出して海へと沈んでいった。背中部分が大きく破損している。

この威力は、ストライクフリーダムのカリドゥスだろう。

『カイト、間に合って良かった。勝って来たよ』

「……あぁ、さんきゅーなユウジ」

ゼクミーヌスが完全に海に沈んだ時、システムコールが終了を告げ、俺たちの勝利が確定した。

 

 バトルフィールドが消え、装置の上にパーツが外れた4つのガンプラが残った。

この大会のダメージレベルはB。バトル中に破損しているように見えても、実際はパーツが外れるだけで済む設定だ。

……だったのだが……イイジマ・ユキのブレイヴGO改とダイモン・トウキのゼクミーヌスは、実際にパーツが欠け、プラスチックがひしゃげていた。

「……まぁ、あんだけボロボロの状態で戦えば、ね……」

「ユキさん、すいません……」

「泣くなトウキ。私たちはパーツハンターをぶっ倒すって決めたでしょう。私はそれを叶えるまで、バトルをやめる気は無いからね。その間、私を守ってくれるんでしょう」

「……はい!」

「ユウジと、カイトだっけ」

破損したガンプラを回収した二人が、俺たちに話しかけてくる。

バトル開始前とはまるで別人のような、優しい微笑みを浮かべている。例えるならそれは、スメラギ・李・ノリエガのような、大人の笑みだった。

「勝ったんだ。背負ってもらうよ。私らの……無念。パーツハンターの野郎に勝っても負けても、その無念だけは持ってってくれ」

そう言って俺たちの前から去る二人の背中を、俺は忘れないだろう。

後悔と無念と憎悪と怒りが混じった、その背中を。

 

第4話「壊れた翼」 -完-




読了お疲れ様でした。
今回は濃い話になったと思ってます。
ユウジは新武装を、カイトは新機能のお披露目でした。

ちなみにユキちゃんとトウキ君は幼馴染です。トウキ君は距離のある喋り方をしているように見えますが、人目のある所では敬語を話す癖がついているだけです。成人するころに結婚するんじゃないっすかね。リア充爆発しろ(どうした)

あ、ちなみにダメージレベルBなのにガンプラが破損したのはおかしいって思われるかもしれませんが、元々ボロボロで関節が外れかかっているような状態であったのを無理やり動かしていたのでそうなった、とかそういう解釈でお願いします。

次回はパーツハンター登場の予定です。ちなみに現段階でパーツハンターの人物設定は毛ほども決まっていません!(どうしよう)

あと、ほぼ同時にティフシーガンダムの設定も投稿されてると思います。
次回更新日時は1/24予定です。
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