治療が上手くいっているので早く退院したい。
食事が始まらないからお腹が減って死にそう。
病院にてギブスを外してもらいサポーターを右手首に巻き付けて行動するようになった。
腕の開放感よりもギブスのせいで密閉されているものが開放された時の匂いは最悪なもので
食欲がなくなっていくのが体でも体感できそうな悪臭を放っていた、暑くなる季節にギブスはしたくないと心に誓いながら病院で腕を綺麗に洗ってから外に出た。
外に出たのはいいがお腹は空いていない悪臭のせいでと思いながら近くの公園のベンチに腰掛けた。
「暑すぎる」
それ以外の言葉が思いつかない季節は夏になり日差しが強く右手首に付けているサポーターからは蒸し暑さが感じられる。
「夏も冬もなくなればいいのに」
そんな独り言とを呟くと聞き覚えのある声が聴こえた。
「休日の公園で物騒な事を言わないで」
その声の方を見ると買い物袋を持った会長が立っていた。
「いや、ここまで暑いと言いたくなりますよ」
僕は力がこもっていない声でそう言った。
「幽君は夏に弱いのね」
「夏だけではなく冬にも弱いです」
外でこんなにだらけることはないが日陰のベンチに座り涼んでいたらこうなるよ。
「そんな所で荷物を持って立っていないで座ったらどうです?」
会長は言われてベンチに座った。
これは長いこと話すことになるなと自分で座れと言っておきながら後悔している。
「幽君と休日に話をするのはこれが初めてなのかな」
会長の言葉にそう思った。
「本当ですね会長とこうして外で話したのは……2回目だな」
コンビニ帰りに会長に出会ってるんだよな。
「でもあれは平日でしょ」
会長は間髪入れずにつっこんだ。
「それにしても休みの時でも会長って呼ばれるのは嫌ね」
「そうですか、自分は呼びやすいですよ」
そう言ったら会長はため息をついてから僕に話しかけた。
「もし、幽君が学院の会長で休日に学院の子に会長って呼ばれたい」
そう言われれば嫌だな。
「綾瀬先輩」
そう思い僕はそういったのだが会長は納得できないみたいだ。
「私は君を幽君と呼んでるんだからもう少し軽くできない?」
これ以上貴方との距離を近づける気にはならないけど今日は諦めておこう。
「絵里先輩」
なんだか最近人との距離が近くに感じてくる。
「なんだかその方が幽君らしいわね」
「なんかいつもの僕が偽物のような言い方ですね」
僕は暑さにやられている頭を使いながら言葉を繋ぐ。
「まぁ、どれが本当の自分なか自分でもわかりませんが」
何だろう今日は話さなくてもいい事を話をしているみたいだ。
「幽君はそうやって過ごしているのは辛くないの?」
会長の声は心配そうな声色だけど今の僕には関係ない。
「辛いこともありますし薬に手を伸ばしてしまう事もありますよ」
「薬?」
「精神安定剤ですよ、数年前に色々ありまして薬がないと生活できない時期があったんですよ」
うん、今日の僕は話さなくてもいいこと話している。
でも、そんな日があってもいいようなこの人に知れてもそこまで困ることはないと思った。
「今でも使っているの」
「入学して数カ月は使っていましたよ、使わないといけない場面が沢山あったので」
少しだけ間を空けて言葉を繋ぐ。
「生徒会に入ってからは使用回数は減っていますよ……ゼロになることは永遠にありませんけど」
僕はきみの悪い笑みをしているだろう。
「それより幽君はお昼食べた?」
会長は話題を変えてきた。
「お昼はまだですね、ギブスをとった時の匂いで食欲がなかったので」
話題を変えられたのでそのまま話をそらしていく。
「なら、家で食べていって」
「何でそうなるんですか?」
「私がお昼の買い物の帰りだから」
だから買い物袋を持っていたのか。
「何だか余計な時間を使わしてしまったんですね、すいません」
僕は一応帰る途中なのに呼び止めてしまった事に謝罪した。
「幽君が謝ることはないわよ、君の独り言に話しかけたのは私だから」
そう言って会長は自分が悪いと自分を責めた。
だからこの人には話せるんだろうなと思いながら僕はベンチから立ち上がった。
「お昼、ご馳走になります」
そう言ったら会長は微笑んだ。
「美味しいものを作らないと」
そこで僕は冗談で呟く。
「なら、絵里先輩のロシア料理が食べてみたいですね」
「手の込まないものなら作るわよ」
その笑みを見ながら今日は楽しいことがありそうだと思いながら会長の住まいに向かうと可愛い妹がいた事は今度にでも語ろうと思う。