聴こえてくるのは線路を走る電車の音、とても心地よくここ音を睡眠の音色にも使えると思っているのは僕だけではなかった目の前にいる先輩も目を瞑って音を聞いている。
「希先輩もこの音が好きなんですか?」
少しの睡眠から目が覚めた僕は目を閉ざしている先輩に問う。
「せやね、なんだか楽しい場所に運んでくれる未知の世界に連れていってくれるってうちはそんな事を思ってるんよ」
先輩が詩でも歌うかのような楽しそうな顔した。
「僕は一つ一つが歌を奏でているイメージがあったんですよ、遠くに行くにつれて心地いい音色にもなるんですよ」
僕は自分の感情をそのまま言葉にする。
「うん、幽君の寝顔を見てたらそう思った」
その言葉を聞いて僕は恥ずかしくなった。
「希先輩も目を閉じていたので寝ていると思ったんだけどな」
そう言ったら先輩は嫌な笑みを浮かべながら言った。
「乙女の寝顔を無料で見れるわけないやん」
僕はそのセリフを聞いて少しだけ笑ってしまった。
「ちょっと笑うことないやん」
と先輩は少しだけ真剣な顔で言った。
「いえ、先輩の言い方が面白かったので」
そう言って窓の外を見ているととある駅についた途端に先輩は口を開いた。
「売店の方を見てたら面白いの見れるよ」
そう言われて僕は売店の方を見ると知った顔が2人見える。
「佐藤も来ているのか」
僕の呟きは先輩に聞こえていた。
「彼の事知ってるん?」
「従兄弟ですからね、それにしても彼らは何を買ってるんですか?」
僕は佐藤との関係を簡単に言って彼らの行動を聞く。
「駅弁を買ってるんよ、ここのお粥さんのお弁当はすごく美味しいんよ」
だから降りてでも買いに行く価値がある。
「僕らは買いに行かなくてもいいんですか?」
「うちらは帰りに普通に買う方がええよ」
ホームの違う場所まで移動してここまで戻ってくる時間が限られている。
次の電車は数時間はこない。
「だから帰りのホームで買うのがいいのか」
「それもあるけど汁物のお弁当を運ぶにはそれなりの経験が必要になるんよ」
そう言って説明している間に袋を回しながら階段を降りてくる影が見えた。
「袋を回転せることで中に入っている汁に遠心力を加えてこぼれないようにして運ぶこれは初心者には考えつかない方法なんよ」
先輩はここに来て説明してくれた。
「まぁ、それぐらいしてもでも食べたいお弁当なんよ」
そう言って先輩は持ってきたリュックからお握りを取り出した。
「うちらもご飯にしようか」
僕は頷いて先輩の握ってきたお握りを口に運ぶ。
程よい塩加減と中身の梅の酸味が絶妙にマッチしていてとても美味しかった。
「お握りは美味しいですね」
そう言って僕らは揺れる電車の中、美味しいお握りを食べながら話に没頭する。
「それにしても幽君と2人でお話するのも新鮮やね」
そう思ってみると先輩とこうやって普通に話すことはなかったように思う。
「そうですね、絵里先輩を交えて3人での会話が多いですからね」
そう言って先輩の方を見るとジト目でこちらを見ていた。
「エリチといつの間にかそんなに仲良くなってるん」
「この間の休みに出会いましてそこで休日まで会長って呼ばれたくないと言われたので」
僕は休みに偶然出会いそうなった事を言ったお昼を頂いた事は言っていない。
「そうやったんや」
先輩は内容を聞くとニコニコと笑顔になった。
女性は不思議だなと思う。
「それにしても不思議だな」
先輩と出会って色々あったそれでも数ヶ月もの間こんなにも距離が近づくとは思はなかった。
これも自分の心の変化なのだと思いながら今の思い出をなくさないように努めようと思う。
「何が不思議なん」
僕の独り言はこの人の地獄耳には敵わない。
「先輩とこうやって2人だけで旅行ですかね、合宿ですがどこかに行くには初めてだと思うんですよ」
とっさに思いついたことを述べたが実際はその通りだった、僕は学院に入学してから誰かとどこかに行ったことはない。
だからこの合宿がとても楽しみだったとは言わないでおこうと思った。
だけど僕の表情を見ている彼女にはそれはお見通しなのかもしれない。
それでもいいかなと思いながら目的地に向かう電車に揺られることにした。