僕はスーパーについてから自分のお財布事情を思い出した。
「普通のお弁当が買えない」
僕のお財布に入っているのは300円だけだ。
このお金で買えるのはどん兵衛かおにぎり二つだろうか、それだけではこの空腹をしのぐことはできない。
僕の体は心と違いお惣菜コーナーに向かいお弁当の目の前に立つていた。
「三種のチーズカレー弁当だと!」
僕はどこかの牛丼屋で出るような名前の弁当の名前を口にしていた。
見ているだけで空腹のお腹が余計に空腹な感じがしてくる。
「くっ」
僕はお弁当を食べたいと思ったが半額弁当を求める覚悟はなかった。
僕はこんな臆病な自分が嫌いだけどそれでいいと思いながらうどんを選んでいたら後ろから割烹着を着た男の人が呟いてきた。
「お前は諦めるのか」
その言葉は今の僕には深く突き刺さった。
僕はどん兵衛に伸ばした手を止めて握りこぶしを握って呟く。
「あ、あなたに僕の何が分かるんですか?」
男の人は僕の後ろで腕を組みながら語りだす。
「挑まずに逃げ出すのか? そうやって挑まずに楽な方に逃げて自分の心を騙したまま生きていくのか? 今君の空腹は何で満たされる」
僕は振り返り男の目を睨み付ける。
「その眼をしているのなら」
そう言って男は右腕をお弁当が鎮座している場所を指さした。
「あれを求めるだけの意地はあるんじゃないか」
半額弁当が鎮座しているところに沢山の人が走って行くのが見える。
「行け、君が求めている答えはこの先にある」
僕の体は自然と半額弁当の方に走っていく。
「大きくなったな」
その時、男の人の声が聞こえたが僕はこの空腹をあのお弁当で満たすことで頭がいっぱいだった。
争いに遅れた僕は存在に気づいていない奴らをしとめることにしたがその中で見たことある二つのシュシュで縛られた髪を見た。
その動きに僕の瞳は釘付けになっていた。
「なんで、舞姫がここに」
近くで戦っていた男が呟いた。
「舞姫?」
僕は疑問に思いながらも楽しそうに踊っているかのような動きで敵の攻撃を躱して蹴りを入れる姿を見ていたがここは戦場だ、油断をしたものから消えていく。
それは自分も同じだ先輩の姿を見ていた僕は的になっている。
気付いた時には僕は地面に倒れこんでいて、頭が痛い、血が流れている。
今日もこのまま気絶するのかと思っていたが目の前にまだ三種のチーズカレーが残っている。
僕のお腹は限界を迎えている。
食べたい。
チーズが溶けてまろやかになり口の中に広がるチーズの旨味とカレーのスパイスの旨味を味わいたい。
だから僕は―――
「……まだ、終わらない」
そう言って僕は限界を迎えている体に鞭を打ちながら震える体を立たせる。
視線は獲物である半額弁当をとらえている。
血が流れているおかげなのかいつもよりか頭の中がクリアになってきている。
考えるのが面倒だ。
ただ、目の前の半額弁当を手に入れるためだけに頭を動かせばいい。
そう思って行動する僕だけど体は限界を迎えているはずだった。
「不思議だ」
僕の体は鳥の羽のように軽くなっているように思えた。
これなら素早く動けるのかもしれない。
臆病者には臆病者なりの戦い方が存在する。
周りは自分の力を試そうとするのなら僕はそれを利用してやればいい。
僕は冴え切った頭をフル回転させてここから半額弁当を手にする為の最低限の動きを見出した。
行動に入る瞬間、僕が立っているのを確認した奴が襲ってきたが体を少しだけ前に倒してそのまま地面をけり低い姿勢のまま相手に突っ込んでいく。
「バカが!」
そして僕は体を少しだけ上にそらして走る速度をわざと落とした。
そして行うことは一つ相手の攻撃を当たるギリギリまで見ることに徹する。
相手の戸惑う顔も見える自分から攻撃をあたりに来るバカを見るのだからだけど僕はその攻撃は受けない。
体を前に沈ませて一気に加速して相手の攻撃を避けて左腕を思いっきり相手の鳩尾めがけて槍の様に勢いよく突き出した。
相手に当たるのを確認すると相手の服を掴んで地面に叩きつけるように振り下ろして前に進む、半額弁当は目の前に差し掛かり安心してしまった。
横からの攻撃に反応できなくなり僕はそのまま横に飛ばされた。
飛ばされる中、僕は自分が笑っていたことに気づいてしまった。
こんなにボロボロになり血を流したのにこんなに楽しいと思ってしまった。
今日も何も口に入れることができないと思いながら僕はその場に倒れて意識を眠らせた。
さて、話の中に出てきた割烹着の男は誰のお父さんなのかは僕は分からないよ?