薬が前日切れた僕は朝から病院にやってきていた。
「薬の使用はできるだけ避けてって毎回言ってるはずなんだけど」
診察が終わった僕は赤毛の女の子に怒られていた。
「使わないように心掛けてるんだけど」
そう言って僕は笑いながら言ったら余計に女の子を怒らせてしまった。
「何が高校に進学したら症状は落ち着くよ、余計に悪くなってるじゃない!」
空気が重くなる中、僕は明るく振る舞うことにした。
「僕の心配をしてくれるなんて真姫は優しいね」
僕は声色を優しくして微笑むと真姫は頬を赤くした。
「なっ、私は病院の娘として怒っているだけよ」
僕は分かっている真姫はツンデレだということを知っている。
「それでも僕は嬉しいんだよ」
少しだけ空気が軽くなったと思った。
「それで、高校生活は楽しいの?」
真姫は露骨に話を変えてきた。
「まぁ、それなりには楽しんでるよ」
僕は苦笑いをしながら言うと真姫は少しだけ呆れていた。
「何その言い方? イミワカンナイ」
「中学とは空気が違うのかな? 先輩も優しいよ」
そんなことを言ったが僕の中では優しい先輩が思いつかない。
「ふーん、顔はそう思ってないようだけど」
その言葉に僕は少しだけ戸惑った。
ここは話を変えようと直感した。
「そうだ、これから時間空いてるかな?」
「急に話を変えてどうしたのよ」
露骨すぎた話の変更に真姫は僕を睨んできた。
「もうすぐお昼だから2人だけでご飯にいきたいからかね?」
「べ、別に用事がないからいいけど(2人だけで)」
ツンツンしながら答えているが口だけは笑っていたのは言わないでおこうと思った。
そして僕たちは真姫の要望によりパスタを食べに向かった。
「それにしても真姫はトマトが好きなんだね」
僕はイカのペペロンチーノを食べながら真姫の食べているトマトソースたっぷりのミートソースを食べていた。
「何よ、悪い?」
「睨まないでよ、真姫が美味しそうに食べるから可愛いと思って」
そう言ったら真姫は驚いた顔をしたと思ったらトマトのように真っ赤になった。
「い、いきなり何言ってるのよ!」
表情をコロコロ変える真姫は本当に可愛いと思う。
「本当にこの時間は楽しいよ」
この時間だけは先輩と話しているときと同じくらい僕の心を癒してくれる。
「僕には本当に勿体ない時間だよ」
「か、幽が望むのならいつでも会ってあげるけど」
「いつでも会ってくれるのは僕的には有難いんだけど、真姫は一応今年は受験生なんだから僕に会う暇はないと思うよ」
「勉強はしなくても私くらいなら余裕で合格できるわよ」
「志望校は決まったのかい」
「音ノ木坂」
真姫も音ノ木坂にくるのか。
「なに、悪い?」
「悪くはないよ、真姫ならもっと上の高校を狙えるんじゃないのかと思って」
とても暖かい、この会話が続いて欲しいと願ってもそれはいけないことだ僕は幸せになってはいけない。
僕は半分死んでいる。
だから今を生きている彼女を僕の事情に巻き込んではいけない。
「それに今はUTX学院が近くだったら人気だろ?」
「私が同じ高校は嫌なの?」
真姫は僕をジト目で見つめながら聞いてくる。
「嫌ではないけど自分の選択が時には間違いになるかもしれない」
僕は低く暗い声で話す。
「君はまだ選択できる時間があるんだからゆっくりと考えたらいい、それで悩んだら手を貸すよ」
「一年だけど君の人生の先輩だから」
彼女には選択を間違ってほしくない。
「少しだけ考えてみる」
真姫は少しだけ弱弱しい口調でそう答えた。
僕のせいで空気が少しではないほど悪くなってしまった。
「さてと、真面目な話はここまでにして真姫のパスタ一口くれないかな」
僕はそう言いながら自分のパスタをフォークで巻き取り真姫の方に差し出す。
僕は笑いながら真姫の表情を観察していく。
こうやって真姫と話すのが楽しい。
それは休日の時だけ、学院にこのようにゆっくりできるような時間が欲しい。
さて、今日は気分がいいから帰りにスーパーに寄ろうかなと思いながら僕はこの今の暖かい時間をゆっくり過ぎていくことを願いながら過ごす。