今回ちょっと短いけど許して。展開的に…これ以上無茶はできなかった…
ネウロは、この日『謎』を喰った。
とても上質とはいえず、薄味の謎だったがわずかに腹は膨れた。
ネウロは人間界で目立つことはできない。ゆえに、人間界で探偵紛いのことをして自らを目立たせるなど愚の骨頂。
奴隷人形、もとい協力者となりえる雁夜と桜は現状役立たず。
では、どうすればよいのか?そんなものは簡単だ。
新たに、奴隷人形を見つければよいのだ。
「さあ先生!その手で、犯人を指し示すのです!」
「………え、嘘、マジでやるのこれ」
「(やれ。やらねば口に変化させた手を突っ込むぞ)」
「ぐぐぐ……は、犯人は…お前だ!」
「さすがですーー『白野』先生!」
新しい奴隷人形の名は、岸波白野という女子高生だった。
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あのあと、警察がきて酷い目にあった。
なんだって私がこんな目に会わなくちゃいけないんだ。本当に。
……ネウロが無能そうな警察官を脅してたところなんて、みてない。知らないよ、私は。
「フハハハハハ。久しぶりに面白い顔も見れた。人間界は時々しか退屈せんな」
「退屈はするんだ……ていうか、あの警察官……なんだっけ、石垣、さん?あの警察官脅してなかった?」
「目の錯覚だ。気にするな」
いや、あのドS顔で弄り倒していたお前がいったい何を言うんだ。
こいつの名前はネウロ。
麻婆豆腐食ってたら、なんか探偵になれだのどうのこうの言われて、あげく脅されて、仕方なしに探偵役をしている。無論のこと、成績は中の下の私に推理など出来るはずもなく、さっきも謎を解き明かしたのは全てネウロだ。
魔人どうのこうの、というのも聞いた。無論のこと、初めは信じるわけもなかったが、わけのわからないエグい道具を出したり、体を無機物に変化させたり、あげく素顔が山羊と鳥の混合物。その他もろもろ合わせて、信じないわけにもいかなかった。
探偵なんて自分で一人でしとけや、とか思ったが、なんでも化け物ゆえ目立ちたくないそうな。
「ま、いいかな。一週間だけなら」
そう。
この化け物が私と行動を共にするのは、一週間だけという約束のもと、契約した。
契約内容は、私がちゃんと探偵役を行うこと。その代わり、私にある程度の報酬と、事が終われば人々の記憶から、私が探偵ごっこをしていたことを消してくれるということ。
期限は一週間。
記憶も消す、って言ってるし、それならいいかな、と。
この化け物なら記憶くらい余裕で消せそうだ。あんな光景を見たら嫌でもそう思ってしまう。
「ほう。あんな光景というのは、このようにスーパーカー一台を五分でバラバラに分解してしまった光景か」
「そうそう。そんな風にスーパーカーをバラバラに……ってなにやってんのコラァァァァァァァァァ!!!?」
やりやがった、こいつ。
私は少しだけ、契約したことを後悔した。
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同時刻、キャスターーー真名を『青髭』のジル・ド・レェによる児童大量誘拐の計画が着々と進められていた。
腐ってもそこはキャスタークラス故、神秘の薄まる昼間ならば他の者に気付かれずに小細工をすることくらいは可能であった。
排水管の奥地を変質させた魔術工房には、二人。ジルと、そのマスターの男。男は、ひどく特徴的な笑い方をして、さっそくジルが攫ってきた子供に印象付けていた。
「火火火(ヒヒヒ)。かわいそうにねぇ、こんなに怯えちまって。旦那ァ、ちょっと脅かしすぎじゃねーのー?」
「私ではなく、おそらくその幼子が怯えているのは貴方に対してでしょうーーゼンジロウ」
そう。
この男は、現在全国指名手配中の連続殺人放火魔ーー葛西 善二郎という。
かつて、「新しい血族」と名乗る凶悪極まりないテロリスト集団の幹部だった男だ。現在、その幹部で生きているのはこの葛西だけである。
「ま、せいぜい好き勝手やってくださいや。おじさん、長生きできりゃそれでいいんで」
「ふむ。では、言われた通り勝手にさせていただきましょう。私のアートに共感していただけなかったのは残念ですが、貴方のアートは素晴らしい」
「お褒めに預かり光栄ですよっと」
極悪犯罪者と、凶悪な反英霊。
最悪に近い組み合わせが、この聖杯戦争で決まってしまった。
「さあ、ショータイムだ。火(か)っとばしていこうじゃねえか」
その瞬間。
都心のホテルで、大火災が発生した。
ホテルの側面にーー『火』という文字を獄炎で描いて。
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「何事だッ!」
敵襲かーーケイネス・エルメロイ・アーチボルトは即座にそれを疑った。
このホテルは特に火災に対しては気を使っているものだったはず。それがいきなりホテル全体に及ぶ大火事などと、どう考えてもおかしい。
「ランサーッ!」
「はっ、わが主よ!」
「ランサー、近くにサーヴァントの気配は!」
「いえ、感じられませぬ!それと、ソラウ殿はすでに避難させておきました!」
「わかった。では、ただちにこのホテルを脱出するぞ。せっかく作った魔術工房だが、背に腹は変えられぬ!お前は引き続きサーヴァントを探れ、アサシンの可能性もある。私は一人でも脱出可能だ」
「御意!」
霊体化し、サーヴァントの気配を探るべく消えてゆくランサー。
ケイネスも必要な魔術礼装だけ取り出すと、脱出を開始した。
が。
「うおっ!」
突如、前方から恐ろしい炎がケイネスを襲った。無論、その程度で時計塔の主がどうこうなるはずもなく、魔術でかき消す。
ケイネスの行く手を遮るように立ちはだかっていたのは、野球帽をかぶった顔に火傷のある中年の男。
「ドーモ、ケイネスさん、だっけ?日本語通じっか?」
「何者だ貴様……!先の魔術での攻撃といい、マスターだな!」
「おう、マスターだ。しかしな、一つ誤解がある。魔術なんてもんは、人間の限界を超えちまってるもんでね」
「人間の限界を超えないことをポリシーにしてる俺は、使わねぇんだわ」
男ーー葛西の袖口から覗いていたのは、火炎放射器を何十倍にも圧縮させた機械。ケイネスが驚くよりも先に、葛西が攻撃に移った。
「燃えちまいなァ!」
「させん!我が魂を守れ、
身を守るように、ケイネスの取って置きの魔術礼装ーー月霊髄液が火炎を遮断していく。
これには葛西も驚いたのか、少し目を剥いた。
「それが魔術か。火火ッ、面白いモン使うんだな……うおっとォ!」
「やれ、月霊髄液!」
「それ攻撃も出来るのかよ。ちっ!」
炎では、月霊髄液は突破できない。かろうじて電撃か、もしくは月霊髄液の元の媒体である強化水銀を貫ぬくような圧倒的なパワーを葛西が持っていれば別だが、あいにくとそんなもの葛西にはない。
此方から売った喧嘩だが、これは流石に分が悪いと悟った葛西は、ホテルのガラスを叩き割り、なんたることかホテルの側面をすいすいと登っていくではないか。
見たところ、本当に強化魔術などは使っていない。即ち、身体能力のみでホテルの側面を登っているのだ。とても信じられない。それこそ、協会の代行者クラスの身体能力だ。
「く、肉体派が……!」
忌々しげに舌打ちするケイネス。彼は葛西が去っていった方向を、睨みつけていた。
ーーこの時。
ケイネスの手甲から令呪が、消えていたことに、誰が気付いたのだろうか。