ワールドトリガー-女神の名を持つ黒トリガー-   作:ぼいら~ちん

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#01 三雲湊は姉である

「やっと放課の時間ですか……

なんだか物凄く疲れたような気がしますね」

 

ホームルーム終了の知らせるチャイムをBGMに黒髪のロングヘアの少女は肩を落とした。

彼女の特徴と言えばその首に巻いたマフラーと日本人らしからぬ青い瞳と絹のように美しい白い肌。

その隣には真っ黒な髪のポニーテールの少女、背丈はマフラーの少女よりも少し大きいくらいでブレザーのボタンを全開にし、シャツ出しをしている辺りかなりやんちゃをしていそうなイメージを覚える。

 

「そりゃあ5限の体育であんだけガチりゃ疲れて当然だろ」

 

「陸上部に所属していた人間として偶には真面目に走らないとダメかと思いまして」

 

「でもお前、メインは槍投げだろ?」

 

「それでも走ることは陸上の基本ですから。

まあ……何か別の理由で疲れているような気もしますが」

 

マフラーの少女は右手で目頭を抑えながら左手で肩を揉む。

最近仕事(・・)と受験勉強を両立しているため毎日布団に入る時間は日を跨いだ後、その上寝付きが悪いものだから疲れが取りきれない。

彼女はぐっすり眠れるマットレスというものを母から勧められたりしたがそれとこれとは話が別で現在とても困っていたりする。

 

「ま、俺らも今年は受験生だしな……なあ(みなと)、偶には喫茶店でも行かないか?

プリンの美味いとこ見っけてさ」

 

「偶には甘いものを食べてゆっくりするのも良いかもしれませんね!!

行きましょう、黎奈(くろな)の弟妹も連れて5人で」

 

プリンというフレーズを聞いて湊と呼ばれた少女は目を輝かせながらポニーテールの少女-黎奈の手を掴む。

階段に差し掛かったところでこの体勢で昇るのは危険だと察したのか湊は黎奈の手を話すがその瞳の輝きは衰えを知らない。

 

「あれ?

俺には弟と妹が1人ずつだから4人じゃないのか?」

 

階段を登りながらポニーテールの少女-吹上黎奈(ふきあげくろな)-は首を傾げ答える。

 

「何を言っているんですか?

(おさむ)も誘うに決まっているでしょう。

修居る所に私あり、逆も然りです。

それはこの世界のСудьба(運命)でありПровиденс(摂理)です。

なぜなら私は三雲修の唯一の姉、「三雲湊」なのですから」

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

雷斗(らいと)(あかり)

居るか~?」

 

扉の上に2-1と書かれた教室の扉から中へと首を突っ込む黎奈。

その後ろから私-三雲湊もちらりと中を覗き込む。

 

「う~ん……なんっか違うな気がすんだよなぁ」

 

「私も同感です。

湊さんはあんまり派手なのは好きじゃないかも」

 

「でも、やっぱりパーティーだし少しくらい派手でも良いと思いますよ。

経費は全部黎奈姉さんがなんだかんだで出してくれるから」

 

中では黒縁眼鏡の少年と白いバンダナを頭に巻いた少年、そして白髪ボブカットの少女が一つの机を囲んで何やら話し合っていた。

 

「お、おいバカ!!

来てんのにその内容はマズイだろ!!」

 

「ゲッ……湊?!

ど、どうしたんだこんなとこに?

何か用か?」

 

「雷斗と灯を誘ってお茶でもしようと思いまして。

彰もどうですか?」

 

「いいっていいって!!

俺達はもう少しここで世間話してるから」

 

「そうですか?

それにしてもやけに仰々しいですね。

何かあったんですか?」

 

「いやいやいやいや!!

全然、全く、ほんっとに何でもないから!!

元チームメイトのお前に隠し事なんてするわけないだろ?」

 

「本当ですか?

何か悩み事があれば相談にのりますが……」

 

私の質問に過剰な反応を示した白いバンダナの少年-松風彰(まつかぜあきら)は必死に手を振り回しながら弁明する。

彼は私達と同学年で支部は違うが私達の同僚で、以前は同じチームで活動していた。

そんな彰をじろりと舐め回すように見ながら言い放つ私。

その言葉にびくっと身震いさせて肯定する彰。

すごく……わかりやすいです。

 

「いやいや、本当に何でもありませんから!!

本っ当にただただ世間話をしていただけなので!!」

 

彰同様、ぶんぶんと両手を振り回しながらわたわたと抗議する黒髪ボブカットの少女-黎奈の妹である吹上灯は答える。

その隣で灯の双子の兄である吹上雷斗はやや呆れた顔で二人を見る。

 

「そうです……か?

でもみなさんからやけに濃い汗の匂いがします。

確かみんなは今日は体育の授業は無い日ですし……風邪でもひいてるんですか?」

 

「やっぱり湊さんに隠し事は通じないか。

流石はサイドエフェクトがあると違うなぁ」

 

「隠し事?」

 

「ぎくっ」とでも言う様な効果音が似合いそうなほど大きく身震いする二人。

その光景を見て耐えかねたのかはぁ~と大きなため息を一つして答えた。

 

「いや、近いうちに俺の友達の誕生日があってパーティーを開きたいと思って。

彰先輩とか灯に意見を聞いていたんだけど湊先輩はどんなのがいいと思う?」

 

「そうそう!!

湊がだったらどんなの開いて欲しい?」

 

「ぐいぐい攻めすぎだアホ」

 

「タコスッ?!」

 

雷斗の答えに水を得た魚の様な勢いでぐいぐい迫ってくる彰。

そんな彰に拳骨を喰らわす黎奈。

殴られた彰は顔面から床に向かって落ちていき顔を地面にうずめると同時に尻を突き出したまま動かなくなった。

……後輩が居るのにこんな情けない体勢で居るなんて……ドン引きです。

 

「そうですねぇ……私は装飾も立派だと嬉しのですが一番はやはりご飯が豪華なことですかね。

昔はそこまで裕福ではなかった分沢山食べたいというのもあるのですが、沢山の友達と沢山のご飯を囲んで賑やかな食事、私の憧れですね」

 

それこそここに居るみんなの他にも支部のみんなや学校の友達も一緒で。

想像するだけで楽しいです。

 

「豪華なご飯とみんな一緒か……ありがとう。

参考になったよ」

 

「あくまで私の主観だから参考になるかどうかはわからないですが」

 

「なあ、雷斗、灯。

湊が最初にちらっと言ってたがこの後一緒にお茶でもどうだ?」

 

「ごめん姉さん。

今日はもう少しパーティーのことで相談したいことがあるし、支部で仕事があるから。

それにそろそろで金倉先輩も来るから」

 

「そうですか……残念です」

 

がっくしと一気に力が抜ける。

 

「で、でもあとでお姉ちゃん達も支部には寄るんだよね?

その時にみんなでお茶にしたらどうでしょうか?」

 

「ありがとうございます!!

甘いものを準備していただけるとうれしいです!!」

 

みんなでお茶と言う言葉を耳にした瞬間に私の体に力がみなぎる。

それに私にはまだ修という希望が残っている。

そのためなら……

 

「まだ私は頑張れます!!」

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

「……修は転校生に学校の案内ですか」

 

肩を落としながら前屈みの姿勢で住宅街を歩く赤いマフラーを首に巻いている少女、湊。

そしてその隣で腕を組みながら歩く俺-吹上黎奈。

あの後、湊は弟の三雲修に電話をかけたのだが話の通り転入してきた生徒に学校を案内するため暇が無いという。

なのでTHEブラコンofブラコンガールことこの三雲湊は物凄く落ち込んでいる。

 

「まあ、そういうこともあるって。

桐絵も誘ってみたらどうだ?」

 

「ん」

 

俺が提案するや否や湊はあたしに桃色のカバーの付いたスマートフォンを顔に突きつけてくる。

そこには「ごめん。今日は用事あるから無理(m_m)また今度暇があったら誘ってね☆」という文面が表示されていた。

 

「……京介は?」

 

「バイト」

 

「……レイジさん」

 

「陽太郎のヘルメットの修理」

 

「栞」

 

「第一部隊の報告書の確認と支部の端末の調整」

 

「迅」

 

「着拒されました」

 

「…………」

 

「…………」

 

「雷斗達に見捨てられ……最愛の弟に見捨てられ……終いには修や支部のみんなにも見捨てられ……

……うわぁぁぁん!!

もうお家に帰りますぅぅうう!!

帰って柚宇とゲームしてますぅうう!!」

 

修に断られた時点である程度予想は出来ていたがこの三雲湊は嫌なことがあると結構すぐに泣く、所謂泣き虫なのだ。

コイツ普段は俺らに散々「あんまり感情的になるな」とか言ってる割には一番冷静じゃなきゃならねぇ狙撃手(スナイパー)がそんなんでどうすんだよって毎度思う。

 

「落ち着けって。

……ったく、俺達お茶しに行くんだろ?

それにまだお前本部に提出する報告書書き終わってないし帰るのはまだ早いと思うよ。

最後に付け足すと柚宇の奴は今遠征で居ないだろ?」

 

「あ、そうでした。

じゃあ即行支部行って即行書き終えてそのあとお茶しましょう。

もちろん桐絵や迅さんたち支部に居るみんなで」

 

だが、コイツの切り替えの早さと他人を思いやる気持ちってのは本当にいくら褒めても褒めたらないくらいに凄い。

 

「お、オウ。

先にお茶じゃないのな」

 

「私甘いもの食べると眠くなるんです。

体質には逆らえませんから」

 

「なら仕方ねぇな……うん、しゃーないな」

 

いつも桐絵のお菓子食べた後に確実に寝ちまって寝言でアウトなのはそういうことだったのか……

でも夏場のお風呂上がりのアイスとかは一体どうしていたんだろうか……?

まさか寝る直前に入って食べてからぐっすりとか?

いやいや……普通家に帰ってきてからシャワーに直行、上がったらアイス食べて勉強のサイクルの筈(俺基準)……まさか昼寝後に夜中まで勉強?!

 

「黎奈!!

修の匂い(・・)が鼻腔をくすぐりました!!

しかも香りのもとはこの先です!!」

 

くんくんと鼻から空気を吸い込み声を大にして発言する湊。

やけに仰々しいと思ったが視界に入ったのは「立入禁止 近界民出現注意 警戒区域」と書かれた立て看板。

この先は警戒区域と呼ばれその名の通り危ない場所であるため弟である修を心配しているためにこうなっているのだろう。

 

「……普通に本部に用事があるだけなんじゃないか?

いや、転校生もいるからそれは無いだろうし第一アイツがこんなとこ何も言わずに来る方が変だな」

 

「それに他にも人の香りがします。

私が知らない辺り一般の人と思われます」

 

それに対して俺は至って冷静な対応をする。

先ほどから近くにはあたし以外居ないのに匂いがどうとか一般人がどうとか言っているが気が狂っているわけでもなければイタイ子とかそういう類のものでもない。

彼女はものすっごく、それこそ犬なんかの比じゃないくらいに鼻がよく利くのである。

人間の匂いであれば半径10km内であればどこに居ても匂いを辿れるくらいに。

 

「……この匂いは……いえ、彼がここに居るはずは……」

 

「ん?

どした?」

 

「い、いえ。

なんでも……?!

来ます(・・・)!!」

 

ウウゥーーーーー

 

(ゲート)発生、門発生。

座標誘導誤差7.66。

近隣の皆様は速やかに避難してください』

 

ぶつぶつと何か小さな声で話していたと思えば湊は突如声を張り上げる。

その直後にけたたましく鳴り響くサイレンと機械音声。

そして辺りを見回すと宙に浮いている黒い球体からバチバチと紫電が迸りそこから白い巨大な怪物が現れた。

このサイレンと黒い球体、そしてその中から現れた怪物がなんなのか私はよく知っている。

そう、これは---

 

「タイムカード通す暇もなく仕事開始かよ。

ったく、近界民(ネイバー)の野郎共ももう少し空気読んでくれてもいいんじゃねえか?」

 

「そうも言っていられません。

あの辺りに修と民間人も居ます。

急ぎましょう」

 

「って言ってもお前は遠くから狙撃、主に急がにゃならんのは俺だろ?」

 

「狙撃ポイント探しとか私にも色々あるんですよ!!」

 

あたしが悪態を吐くと売り言葉に買い言葉とでも言うように湊が頬を膨らませあたしに向かって怒鳴る。

 

「わあったわあった。

俺も体動かしてキツいしお前も頭使ってキツい。

それでおあいこな」

 

「わかればよろしい。

では行きましょう」

 

あたしはブレザーの懐から、湊は腰に付いたベルトで固定されているホルスターの様なものから黒い棒状の機械を引き抜く。

 

「「トリガー起動(オン)!!」」




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