東方星霊宴~気がついたら転生してた~   作:ALUM

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???「消えたものが判明してる中のあえてのサブタイ命名なんじゃ」


古の章
第十話~消えていったもの~


破壊尽くされた地表が元通りになってから数か月後の夜、木々に囲まれた小さな広場で、私は不思議な夢を見た

 

 

「………………」

 

 

水晶で覆われた洞窟にいて、リオと初めて出会った場所で、腰まで届く長い黒髪の少女と対面していた。 そして、その少女が微笑むと白い球体を放ってきて、私の身体の中に吸い込まれていくというものだった

 

そんなおかしな夢を見てしまったものだから、すっかり目が覚めてしまった

 

 

「…………」

 

 

身体を起こし、空を見上げる

 

一面に張り巡らされた術式が淡く輝いていて、その間から見える空模様からは、まだ日が昇っていないことがわかった

 

 

「………………」

 

 

見上げるのを止め、視線を下に下ろす

 

傍には朔と白狗が、少し離れたところには繋と隷音が毛布に包まって寝ていた

 

……相変わらず仲のいいことで

 

 

「…………」

 

 

ぼそぼそと名前を口にしようとするも、出てきたのは空気だけだった

 

 

「……」

 

 

リオがもう手の届かないところに行ってしまったあの日から、私は声を発することが出来なくなっていた

 

 

「………………」

 

 

胸に手を当てる

 

……胸の内にぽっかりと穴が空いた感覚。 みんなのおかげで。最初の頃に比べれば幾分かは楽になった。 けど……

 

 

「…………」

 

 

……少し、散歩がしたくなった。 気を紛らすために身体を動かしていたい

 

膝に掛けていた毛布をしまい、ゆっくりと立ち上がる

 

 

「……?」

 

 

遠くの方で白い球体が、尾を引いてゆらゆらと漂っているのが見えた。 それに誘われるように向かっていく

 

 

「……」

 

 

すぐ傍まで近づいて触れてみようとするけど、まるで避けるように球体が横に逸れた。 そしてそれが引き金になったのか、球体が次々と現れていった

 

 

「……!」

 

 

太刀を取り出して身構える

 

 

「…………」

 

 

……が、白い球体たちが襲ってくる気配はなかった。 その間も増え続けていき、 辺り一面を覆い尽くすほどになっていった

 

 

「…………!!」

 

 

球体たちが突然、私の目の前で左右に分れた。 空いた空間が奥まで続いていて、ちょうど道のようになっていた

 

……進め、ってことなのかな

 

 

「……」

 

 

どこか、似たような出来事を思い出しつつも歩を進める

 

 

「…………」

 

 

あの時はたしか、辺り一面が白に彩られていた場所を歩いていたかな。 ……飲み込まれそうになったところを妨害されたから、流石にもう手を出してこないよね

 

そんなことを思い出していると、地面に巨大な穴が空いている場所に出た。 その周りには大量の白い球体が浮かんでいた

 

 

「……!」

 

 

すぐそばを球体が通り過ぎていき、そのまま大穴の中に入っていった

 

 

「……」 

 

 

大穴を覗き込んでみる

 

……縦穴になっているみたいだけど、底が全く見えない。 さっき入っていった球体は少し降りたところで静止していた。 ……来い、ってことなのか……?

 

身体全体に妖気を纏い、穴に飛び込む

 

 

「…………」

 

 

入っていくと球体が、道案内をするかのように奥へ動き出していった。 それについていこうとすると、球体が徐々に速度を上げていった

 

……深さが分からないまま速度を上げるのは嫌だな……。 何か深さを知ることは……

 

 

「…………」

 

 

能力で穴の底を’見る’と、遥か下の方に突き当りがあった。 そこには白い球体があちこちに浮かんでいた

 

……久しく能力を使ってなかったから、すぐに思いつけなくなってる……

 

とりあえず速度を上げて一気に下まで降りていき、地面すれすれで急停止して降り立つ

 

 

「…………?」

 

 

目の前の地面に透明な結晶が生えていた

 

……ここってもしかして……

 

 

「……!」

 

 

その透明な結晶が光ると、白い球体に変化してしまった

 

 

「…………」

 

 

これは一体なんだろう。 ……考えても仕方ないか。

 

壁に向かって歩いていき、壁に沿って一周してみる

 

 

「……」

 

 

そうしているうちに風を感じる場所を見つけた。 そこには巨大な岩があって、その上にはつい最近崩れてきたような跡があった。 それを、能力を使って広い場所に’移す’と、横穴が現れた

 

 

「……!」

 

 

もしかしてここは……

 

横穴を進んでいくと広い場所に出た。 辺りを白い球体が飛び交っていて、その中央には大きな結晶が生えていた

 

 

「……っ!」

 

 

大きな結晶に駆け寄る。 その中には……

 

 

「…………」

 

 

……ただ、自分の顔が映るだけだった

 

 

「………………」

 

 

身体全体の力が抜け落ち、その場に座り込む

 

……わかっていた。 もういないって、もう会えないって

 

 

「……!」

 

 

目の前の結晶が急に淡い光を放ち、術式を展開し始めた。 そして、私の方にも展開してくる

 

 

「…………」

 

 

……結晶の方は遅延発動、私に来ているのは情報盗奪の術式。 ……私の情報を奪って何をするつもりなんだ

 

構成が終わると、私の方にきている術式が消えた

 

 

[……そこにいるのは……狼華で間違いない?]

 

「!!」

 

 

頭の中に聞き慣れた声が響き渡る

 

……リオの声だ!

 

 

「…………」

 

 

そうだよ、と口にしようとしても声が出てこなかった

 

 

[まぁ……狼華にしか反応しないようにしたんだけどね。 無事に星霊たちがここに連れてこれたみたいでよかった]

 

 

その間もリオは淡々と話し続けた

 

……星霊って、あの白い球体たちのことか

 

 

[この術式が起動したってことは……私の肉体はもう消滅してしまったってことかな]

 

「…………」

 

 

……これは……録音しているのか……

 

 

[だとしたら、狼華にはとても悲しい思いをさせてしまっていると思う。 それについては……ごめん]

 

 

ごめんで済まされる問題じゃないよ……

 

 

[それで早速本題に入るけど……その前に私が、狼華が向こうに行っている約十億年の間にこの星のあちこちに星命力を活性化させる術式を仕掛けた、って話したっけ?]

 

「…………」

 

 

した……ような気がする

 

 

[大抵のことじゃ滅多にやられることはないけど、万が一に備えてそれ以外にも色々と施しておいたの]

 

「…………?」

 

[情報盗奪の術式が消えて身体が動くようになったはずだから、目の前の水晶に触れてみて]

 

「……」

 

 

言われるままに水晶に触れる。 すると、水晶が徐々に半透明になっていく

 

 

「……!!」

 

 

中には、なんとリオの姿があった。 目元が熱くなってくる

 

 

[ここ最近は見てないからわからないけど、流石にもう器は成熟してるかな。 で、ここからがとても大切]

 

「…………」

 

[肉体が消滅してしまった際に、誰か私に触れている者がいなかった? いなかったらそれまでなんだけど、いたら魂を中に移しこむために光で包み込むの]

 

「…………っ」

 

 

抑えきれなくなった感情が堰を切ったように溢れだした。 頬を滴が伝い、地面に零れ落ちていく

 

……なんてことだろう。 ……触れていたのは私じゃないか

 

 

[移しこんだ魂は目覚めていなくて、覚醒するまでに時間がかかるの。 まぁ、そのあたりは保有者の持つ力の総量で決まるんだけどね。 それで、目覚めるための時間稼ぎとして私の全てを一時的に付与することにしたの。 多分、能力も使えるようになっているはず]

 

「…………」

 

「目が覚めた後は、身体から抜け出して自力でそこにある器に戻るから、心配しないで。 ……最後に……私を看取ってくれた者が狼華でありますように]

 

 

水晶が展開した術式が消えていく

 

 

「リオ……」

 

 

もう一度名前を口にすると、声が戻っていた

 

 

「……」

 

 

胸に手を当てる

 

リオが残していってくれたもののおかげで、胸の内に広がる違和感は完全に消えていた

 

 

「……」

 

 

近くを漂っていた星霊に触れてみる

 

 

「……!」

 

 

今度は避けられずに触れることができた。 温かい感触が手を包み込む

 

……もう、みんなに大変な思いをさせる必要はなくなった。 これからはいつも通りだ

 

その場を後にし、地上に上がる

 

 

 

<> <> <> <>

 

 

 

「……!」

 

 

地上付近までくると、二つの気配が感じられた。 一つは朔、もう片方は白狗だった

 

……突然いなくなったから心配してきたのかな。 書置きぐらいできたから、何か残しておけばよかったな

 

 

「あ、お母様……」

 

 

地上に出て降り立つと、朔が話しかけてきた

 

 

「起きたら急にいなくなるんだから心配したんだよ?」

 

「……ごめんね、朔」

 

「「……!!」」

 

 

声を発すると、二人は驚いて顔を見合わせた

 

 

「……ほんとにお母様?」

 

 

おずおずと朔が聞いてくる

 

 

「そうだよ」

 

「ほんとに?」

 

「ほんとだよ」

 

 

朔が複雑そうな表情をした

 

 

「……でも、どうして……。 その穴の中で何があったの?」

 

「リオが残していってくれたものが治してくれたの」

 

「各地に残したっていう?」

 

「そう」

 

 

リオがいなくなってしまったあの後、真実を言う前に声が出なくなってしまったから、朔達には嘘をしか教えてない。 この子たちまで辛い思いをさせる必要はないから

 

 

「お母様が声を出せなくなるほどショックを受けたものだから、きっと手の届かないところにいってしまったのかなぁ、って思ってたけど……それでも、治ってよかった」

 

「…………」

 

 

……勘が鋭い。 ほとんど事実に近いことを言ってる

 

 

「それで、この球体って何?」

 

 

白狗が触れようとしている中、朔が聞いてくる

 

 

「むぅー…………」

 

 

触れることができないみたいで、不満そうに頬を膨らませていた

 

……たしか、星霊って言ってたかな

 

――星霊。 星に宿るものが目に見える形になったもの。 星命力の塊が具現化した結晶からも発現する。 惑星自体にも魂は存在し、その区分は星霊となる。 最も力を持つ者は星霊の中の王と呼ばれる――

 

「……星霊っていうの」

 

「ふーん……」

 

 

朔も星霊に触れようとするけど、やはり避けられてしまった

 

……今のは、リオの能力だったか。 ”ありとあらゆる術を知る能力”か。 ……あの時、私に少しでもいいから術式の構成を教えてくれればよかったのに……頑固なんだから……

 

 

「……とりあえず、戻ろ」

 

「うん」

 

 

朔から差し出された手を握り返し、手をつないだまま歩く

 

 

「…………」

 

 

無言のまま、白狗が空いた手を握ってきた

 

 

「……お母様」

 

 

突然、朔がこちらを向く

 

 

「何?」

 

「身体、元に戻ったね」

 

「え?」

 

 

身体を見てみる。 以前よりも大きくなった胸、長くなった髪、そしてぱつぱつになってしまった甚平

 

……変化に全く気が付かなかった

 

 

「…………」

 

 

視線を感じた

 

その方向を見ると、白狗がじーっとこちらを見てきていた

 

 

「……前の方がよかった」

 

 

…………あ

 

 

「いつでも好きな時になってあげるよ」

 

「じゃあ、いますぐ」

 

「それは個人的に待ってほしいかな」

 

 

元に戻って嬉しいから

 

 

「わかった」

 

「……♪」

 

 

嬉しそうに尻尾を振った

 

二人の顔を見てみれば疲労の色はなくなり、前よりも明るい感じになっていた

 

……いつもの雰囲気に戻ってきた。 私には悲哀なんてやっぱり似合わない

 

 

「繋達をおどろかせよっか」

 

「うん」

 

 

元来た道を朔に先導してもらいながら、三人で悪だくみをしていった

 




以上、閑話休題兼新たな章の幕開けみたいなものでした。 一時的とはいえ、狼華がほぼチート級の能力をもつことになりました。 ノヴァから与えられた力があるので、知るだけでなく使うことができてしまいます。 お~怖い怖い

「名前が出てくるキャラは、せっかく作ったんだし全員生存させていたい」っていうのが作者の願望。 そしてリオはメインヒロインだから九話で退場させてしまうなんてもってのほか。 というわけで、ほぼ主人公視点だけで語られる物語特有の「ご都合主義」を合理的にして復活フラグを立てました。 仮にそのまま生き返らなかったら、狼華でさえ声を失うほどだったので、ノヴァだったら自暴自棄になってしてしまうかもしれないですね

この話を書いてみて推敲してみましたけど……本来は感動するところのはずなのに、なかなか感動できないです。 情景は鮮明に浮かんでくるんですけどね。 ……こういうことがあるとつくづく文才が足りないってことを痛感させられます

狼華の声を失うというネタは、昔見た本で、「恋人の暴力で極度の心的なストレスを感じた主人公は実家に逃げるものの、心に大きな傷を負ってしまい声が出なくなってしまう」からです。 十年くらい前に見たジブリのような挿絵の入った本なんですけど、タイトルが思い出せません。 グスコーブドリの伝記みたいな挿絵です

この小説の原案を二次ファンで書き始め、新たに書き直してハーメルンで投稿し始めて大体三年。 そろそろ年齢を明かしてもいいですね。 私の年齢は十八で、今年で十九です。 ニートではないのです。どこかの大学に一年生として通ってますが素性を明かすつもりはほとんどないですね。 自称、知識の宝庫の友人Aとは旧友ですが、もし仮に特定しても私のことは聞きださないでください

P.S いつ復活するか? かなり後でしょ!
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