「……!」
ふと、唐突に目が覚めた
「…………」
カーテンの隙間から見える外の景色が、いつになく眩しく感じる。
「……」
デジタルの時計を見てみると、六十六時六十六分と示されていた。 なぜそうなってしまったかなんて、起き掛けの頭で考えられるはずもなかった
「……」
いつもどおりにベッドから降りると、一瞬にして景色が吹き飛び、何もかもが白へと変わっていった
「……」
夢……これはきっと夢なのかもしれない。 不規則に変わっていく風景が、どことなく夢を連想させる。 でも、夢にしてはやけに視界が鮮明だ
「……」
周囲を見渡してみる
さっきまで白だった景色は、所々灰色になっていた
「……」
視線を下に降ろしてみる
立っている場所を中心にして、床が波紋を作っていた。 そして、床にはパジャマを着た少女の姿が映っていた
「………………」
自分の姿を確認できてしまうなんて……驚いた。 ……どうせ夢なら、もっと胸を大きくしてくれてもよかったのに
『夢だったら……どんなによかったことか……』
突然、背後から女の子の声が降りかかる
「!?」
それに驚いて振り向くと、そこには誰もいなかった
『目を覚ませば、そこはいつもと変わらない光景。 ……けれど、今、目を覚ましてしまえば、そこは見知らぬ光景が広がる』
「……」
どこか聞き覚えのあるような声だ。 一体どこで聞いたんだろう
『……それでも、あなたは目を開ける?』
「……?」
声の主はいきなり何を言っているんだろう
「……」
とりあえず頷いておく。 所詮、これは夢なんだから
『……目を覚ます前にあなたにお願いがある』
「?」
夢の中だというのに頼みごと……なんだか生々しい
『あなたにしかできないこと……それであの子を助けてあげて。 境ができる前に……』
「……」
これにも頷く
……これはいわゆる予知夢っていうやつなのかな。 きっと周りで困っている人を見つけたら助けろっていうことなんだろう
『ありがとう……。 あの子を……――を……』
「……っ!」
最後まで聞くことができず、夢から強制的に追い出された
<><><><><>
「――い」
朦朧とした意識の中、誰かに身体を揺さぶられている気がした
「――い、起きて、朝だよ」
「……もうちょっとだけ……寝かして……!」
誰かが呼びかける声に、勝手に反応して喋った。 そのせいか、徐々に意識がはっきりしてくる
「……っ……うーん……」
冷たい風が頬を撫でるのを感じて目を開けると、目の前には青一色の景色が広がっていた
「……」
「あ、目が覚めた」
「……?」
まだぼんやりとする中で、声のした方へと顔を向ける
「身動きひとつしないままずっと眠っていたから、どうしてくれようかと思っていたよ?」
……逆光で完全にわからないけど、女の子の声がするから女の子でいいか
「あ、ごめん。 眩しい?」
「……」
横になったまま頷く。 すると、女の子が反対側にきた
「……」
なぜか頭の中でカチッと音がした
「…………どうかした?」
桃色の髪に桃色の眼をした少女がそこにいた。 緑色のワンピースのようなものを着ているけど、お腹が出ていて上と下がベルトで繋がれていた。 そして、少女の背中から半透明の結晶が左右に伸びていた
「………………」
……ところで、この子は一体誰なんだろう
「そんなに険しい顔してどうしたの?」
「……目の前にいる子がいったい誰なのかなー、って」
「あらら……私のことがわからないの?」
「…………」
申し訳なさげに顔を逸らす
……真っ白い地面だけど、ちょっと向こう側が透けて見える
「困った……。 じゃあ、自分の名前は?」
「…………!」
……わからない。 自分のことが何一つ……
「これはひどい……。 ……あ、でも安心して」
「……?」
「私が全部覚えてるから」
「…………」
にこやかに頬笑むその裏側に、どす黒い影が見えた気がした
「あなたの名前はニーア。 で、私はミュウっていうの。 私たちは姉妹だよ。 よろしくね」
ミュウと名乗った少女がニコッと微笑んだ
「よ、よろしく……」
ニーア……それが私の名前……。 それにミュウとは姉妹……。 ……よし、覚えた
「それで、私たちは星霊って種族なの」
「ふーん……」
……全くわからない
「……」
首を動かして見える範囲で体を見てみる。 青い服を着ていることだけはわかった
「さて、と……起き上がれる?」
「…………っ」
起き上がろうとしても、手から力が抜けていった
……身体に力が入らない
「……ダメ」
「しょうがないね。 何日もずっと眠ってたから」
「……え?」
何日も眠っていた……?
「死んだようにぐーっすりと。 私も起きた時はそんな感じだったから」
「…………」
ミュウも似たようなことになってたんだ。 でも、なんでミュウが名前を知ってて私が知らなかったんだろう……考えるのはよそう
「……なにそれ?」
「ん? これ?」
ミュウが四角くて薄い板のようなものを持っていた。 表面が白くなっていて目がチカチカする
……どこかで見たことがある気がするけど、その時の光景を思い出せない。 ……もどかしいからなるべく考えないようにしよう
「これは鏡だよ。 ……なにと勘違いしてたの?」
「…………」
どうやらただの鏡だったみたいだ。 よく見れば端に青が映っていた
……なにと勘違いしていたんだろう
「…………」
いつまでも寝転がっているわけにはいかないので、手を開いたり閉じたりしてみる
「…………」
今度は強く握ってみる
「……っ」
自分では強く握っているはずなのに、力がちゃんと入らなかった。 だけど、少しずつ体を動かせるようになってきているというのはわかった
「……」
目が覚めてから少し経ったから、もう上半身くらいは起こしておけるようにはなったかもしれない。 それよりも背中が痛い。 何か固いものが当たってる
「あれ、もう大丈夫?」
なんとか身体を起こすとミュウが訊いてきた
「背中が痛くなったから起きた」
「なるほどね……あの人が言ってたことは本物だったんだ……」
「……?」
なにやらぶつぶつ言っている。 あの人って誰だろう
「…………」
辺りを見回してみると、白い地面は見える範囲でずっと広がっていた。 遠くのほうには岸が見え、そのさらに奥には細長くて背の高い木々が生い茂っていた。 ほんのりと冷たい感触が手から伝わってきているけど、これはきっと地面が冷たいだけなのかもしれない
「……あ、そうだ。 背中が痛い原因知りたくない?」
「?」
痛い原因? それなら地面がでこぼこになって……
「……!」
……見れば、さっきまで横になっていた部分は平らになっていた
「知りたくない?」
再度質問される
「……知りたい」
「わかった」
そう言って、ミュウがさっきよりも一回り大きな鏡をどこからともなく取り出した
「これね、能力で作り出したの。 想像したものを形にできるからすっごく楽なんだよ?」
「は、はぁ……」
よくわからないけど……とにかくすごいのか
「…………」
それにしても……空気がおいしい
「えっと……真正面だからこの角度で、って……何見てるの?」
「え? あ、あぁ……うん……っ!」
周りの景色から視線をもとに戻すと、 目の前には青い目をした青髪の少女が座っていた。 ミュウと全く同じ意匠の青い服を着て、驚いたように私をみつめていた。 そして……
「……!」
その少女の背中から、半透明の結晶が左右に伸びていた
「…………」
これは……誰だ?
「……驚いてるところ申し訳ないんだけど……それ、ニーアだから」
「…………」
右手を伸ばしてみる。 すると、青髪の少女が左手を伸ばしてきた
「……これ、鏡だから」
「…………」
なんでかわからないけどやりたくなっただけだし……。 とりあえず、鏡に映っているのは私ってことでいいのか
「背中が痛かったのは、その結晶でできた羽のせいだよ。 仰向けに寝てたから痛くなったんだね」
「ふーん……」
鏡に対して身体を捻り、背中を向けてみる
「…………」
羽の付け根の部分には何もなかった。それと、背中とお腹はほぼむき出し状態だった
……星霊ってこういうのなんだ……
「…………」
「羽はちゃんと動かせるし、それで空を飛べるからね」
「どうやって動かすの?」
「こうやって」
ミュウが自分の羽を動かして見せた
「……」
半目で睨む
「な、なんで?」
「わからないから」
「……あー、背中の表面を動かす感じ?」
「……」
なんで疑問形なんだか……
「とりあえず、羽ばたきを想像してみればいいと思うよ」
「ん……」
……羽ばたくことをイメージ……私が動かしているところを想像する
……なんだか背中がむずむずしてきた
「……!!」
何かがつながった気がした。 目を閉じ、背中のほうに神経を集中する
「ちょ、ストップ! ストップ!」
「?」
ミュウの焦った声に目を開けてみると、視界の端から結晶が伸びてきていた
「あー……」
「動かすだけでいいから……」
動かしているつもりだったんだけど……。 でも、今ので感覚は掴めた
今度は目を開けたまま、背中に軽く意識を持っていく。 すると、視界の端から結晶が消えていき、体が浮遊感に包まれた
「おぉー」
思わず感嘆の息がこぼれた。 羽をはばたかせてさらに上へと上昇していく
「……さ、流石は私のお姉ちゃん。 ……覚えるのが速いところは全く変わってない」
後半何言ってるのか聞き取れなかった
「危ないから降りてきてー」
「んー…………」
この辺のことに詳しくない以上は……大人しくしてないと駄目かな……
「ん……?」
降りてくる途中、細長い木々が生い茂ったところに二つの影が見えた
「どうかしたー?」
「……え? あ、うん。 向こうになんかいたから」
「なんか?」
地面に降りて細長い木々のほうを指さす
「ふーん……竹林か。 ……行ってみる?」
へえー……あの木は竹っていうのか
「……行くの?」
「行こうと思ったから話したんじゃないの?」
「…………」
違うけど……気になっただけなんだけど……
「はい、思い立ったらすぐに行動!」
手首を強く掴まれる
「ま、ままま待ってよ! 敵だったらどうするの?」
「かんけいなーい♪」
「あ、ちょ……った!!」
肩が外れるんじゃないかと思うくらいの負担が腕にかかり、腕だけ吊られて空に連れていかれる
「……で、どのあたり?」
「えっと……」
狼華に「あれから~」を言わせなくするためにどうすればいいのか考えている間にでた閑話みたいなものです
ニーアとミュウは一応この小説の原案だったものの主人公でした。 以上
以下、小説の件↓
ニーアについて
冒頭の誰かとニーアは同一人物ですが、前世の記憶がありません。 普通に言葉を話せているのは……まぁ、転生させたあの方のせいです。
ミュウについて
必然的に記憶を持ったまま転生したので、あのお方の話を覚えてました
P.S ネタ、逆輸入