???「いいから進めろよ、じいさん」
「…………!」
気が付けば、周囲が灰色に彩られた空間に立っていた
「…………」
自分の身体を見てみる。 衣服はちゃんと纏っていたけど、右腕に付けていた腕輪が跡形もなく消えていた
「……」
改めて周りを見てみる。 足元には灰色の大地。 よく見れば、草のようなものが生えていた。 近場には地面から棘がいくつも付きだしていた
……なんだかこの景色、前にも見たことがあるような……無いような……。 最近こういうことばっかりで、何が現実なのかわからなくなってきたなぁ……
「狼華、狼華」
「……ん?」
思考していると、聞き覚えのある声で名前を呼ばれる
「こっちだよ」
「……」
その声の方向へと振り向くと、そこには見知った姿があった
「ノヴァ……?」
そこにはノヴァがいた。 けど、髪が真っ黒で服も真っ黒。 さらには翼も尻尾までも真っ黒に染まっていた
……これって闇寄りになった時のノヴァだよね。 ここにいるってことは、このノヴァが呼び出したのかな
「狼華」
「!」
今度は反対方向から聞こえてくる。 そっちの方向には――
「え……」
今度は、髪も服も翼も真っ白な光寄りの時のノヴァがいた
……あれ? え? ちょっと待って……混乱した
「狼華……」
またしても呼ばれる
……今度はなんだ!
「っ……」
誰かに背後から抱き着かれる
……背後からといったら、黒いほうのノヴァしかいないか
「…………」
確認するために、背後から回されている手をほどき、後ろを向く
「え…………」
そこには明るい茶色の髪に金色の瞳、白黒の翼に灰色の尻尾を生やした所謂、通常時のノヴァがそこにいた
「…………」
念のため、白いノヴァと黒いノヴァがいた場所を見る
「……?」
「~♪」
「…………」
居た。 白ノヴァは首を傾げ、黒ノヴァはにっこりしていた。 視線を普通のノヴァに向けなおす
「……!」
……そうか! わかったぞ! これは夢なんだ。 長いこと離れたままだから、こうして無意識の内に会いたいと思ってしまったんだ。 そうに違いない。 ……絶対に
「…………?」
顔を合わせていると、なんだか違和感を感じた。 まるで、胸の内に何かがつっかえている
……ノヴァの眼の色って金色だったかな? それに纏っている空気もなんだか少し違うような……
「…………」
「…………」
「……」
「……」
顔を合わせたまま無言が続く
……夢の中のはずなのに会話がない。 ……どうしよう、こっちから話しかけたほうがいいのかな
「……狼華」
「は、はい!」
いつになく優しい声で呼ばれたから改まってしまう
「狼華は私のこと……好き?」
ノヴァが両手で私の頬に触れてきながら言う
「え? も、もちろん……」
……いきなりこの子は何を言い出すんだ、って……ああ、夢だから仕方ないね
「ありがとう。 これで、心置きなく貴方に全てを捧げられる」
「!!」
急にノヴァの体が光を放ち始めた。 それに続いて白ノヴァと黒ノヴァの体も光を放つ
「……貴方のことがいつまでも好きだから、貴方も私のことを好きでいて」
「ノヴァ、一体何を――んっ」
最後まで言い切らない内に、ノヴァに唇を奪われる
「……あっ……」
何をするわけでもなく唇が離れる
「…………」
とても短かな一時。 いつもの仕打ちのせいか物足りなさを感じた
「それから……」
ノヴァの体からさらに光が溢れ、包まれていく
「どんなに辛くても、決して諦めないで」
「ま、待って!」
ノヴァを完全に包み込んだ光は、吸い込まれるように私の中に入ってきた
「ノヴァ……」
訳がわからなかった。 そして訳が分からないまま意識が暗転していった
<><><><><>
「……!」
全身にかかる違和感に跳ね起き、周囲を見渡す
「……」
まだ灰色の空間にいるらしいが、木の匂いが鼻をくすぐってくる
「…………」
念のため、右腕を確認してみる
「……」
……腕輪はやっぱりなかった。 まだ夢の中にいるのかな。 あの腕輪がないと、力が暴走してしまうかもしれないのに……
「……!」
……もしかしたら、これも夢なのかな。 ……いや、それはないか。 現にこうして布団の上で寝ている……布団?
「…………」
なぜ眠ってしまっていたのか、そしてなぜ布団の上にいるのか考えてみる
……たしかニーアが空を指さして……それで急に白いツタに襲われて……
「……!」
そういえばロディに確認しないといけないことがあった
[はいはいこちら、念話サービス~]
(ロディ! ノヴァは!?)
[っ! 念話で叫ばないの。 ノヴァなら会談を終えて封印の調整をしてるけど……それがどうかした?]
(! ……よかった)
……てっきり、私の知らないところで何かあったのかと思ったよ。 何もなくてほんとによかった
[? 何かあったの?]
(それが……ノヴァが夢に現れて、全てを捧げるとか言って消えちゃったの)
[へー……あら、あなたの腕輪……なんか色々と変わってるわ]
(え?)
いつの間にか右腕には、無くなっていたはずの腕輪がはめられていた。 よく見ると、黒から金色に変色し、九つの珠には色がついて、角があった部分は削れて丸くなっていた。 そして、ちょうど真ん中あたりを横に一直線に線が入っていて、一定間隔で光が走っていた
(……なにこれ)
[さあ? 腕輪を解放しても大丈夫になったってことじゃないの?]
(そう……なのかなぁ)
……大丈夫って言われても、怖くて解放できないんだよね。 あの時に無我夢中で十割解放した時は、精神世界で器に囚われないってことで大丈夫だったけど、こっちではどうなるかわからない
[用事はそれだけ?]
(うん。 ありがと)
[そ、じゃあね]
「…………」
念話を終え、改めて周辺を見てみる。 どうやら部屋の一室にいるようだ。 和風の造りが特徴的な内装だ
「……」
能力で外の様子を’視て’みる。 ’視て’いるはずなのに真っ暗で何も見えない。 なのに今いる場所は明るい
……これは一体どういうことなんだろう
「いたた……」
「!!」
背後から声がして、驚いて振り向く
「……どちら様ですか?」
いつのまにか、すぐそばに座っていた黒髪に白のメッシュが入った少女に尋ねる
……なぜ同じ布団の上に座っているんだろう
「うーん……私は、天照大神と呼ばれているのよ?」
明るい調子で自己紹介をしてくる
「……」
……見た感じ、外見は私と同じくらいか。 着ているものは巫女装束のようなものだけど、胴着も袴も紐を結ばずに着崩している。 そして、肌には紅色の模様が描かれていた
「……!」
……天照大神といえば、太陽じゃないか。 そういえば、永琳が言ってたっけ
「よろしくね?」
……なんかもっとおしとやかなイメージだったのに。 なんか想像と違って残念
「ここはどこですか?」
座り直しながら、この場所を尋ねる
「高天原にある私の隠れ家よ」
「……?」
……高天原、ってなんだ? そんなところが私の拠点にしていた地域の周辺にあったっけ?
[神様たちの住んでいるところよ]
(……わざわざありがとうございます)
……通信を切るの忘れてた
[私のほうで切っておくわ]
(おねが――)
糸の切れる音と同時に軽く頭に痛みが走った
……念話で話してる最中に切られると、念が逆流しちゃうのか。 今度から気をつけるとしよう
「……? まだ頭が痛い?」
「……え?」
……まだ? それはどういうことなんだ……
「いや~あなたを捕まえるときに久しぶりに力が入っちゃって……」
「…………」
にこやかにとんでもないことをしゃべり始めた
……つ、捕まえるって……
「で、引き上げてくるときにお見合いしたわけなのよ」
「……お見合い?」
「直に衝突したってこと。 こう……抱き着くような感じで」
両手を広げた後、自分の体を抱えるようなしぐさをしながら言ってくる
「……」
……あぁ、それで。 私は案外丈夫だからいいけど……。 なんかほんとに抱き着いてきそうだ
「そちらは大丈夫なんですか?」
「なんともないわ。 意外と私、頑丈なのよ。 それと、堅苦しくしなくてもいいわ」
「そう言うなら……」
……なんて心が広い……そして、なんて頑丈なんだ。 さすが太陽さんです。 ……着方に問題なのがあれだけど
「それで、ここに呼んだのはあなたに頼みたいことがあったからなの」
「なんで私なんです?」
「……なんとなく?」
「…………」
一気に脱力する
……なんとなく、であの正確な狙いで私を攫っていったってわけなんですか。 理不尽すぎる
「……それでどんな頼みなんですか?」
ため息をつきつつも、頼みごとの内容を訊く
……大抵あまりいいことではないのは確かだ
「あなたとお話ししたいの♪」
「そうなんですか……」
自身の内で、ぽろぽろと落ちていたものが轟音を立て崩れ始めていた
……頼みごとっていうから、私にしか頼めないのかなって思ったのに……
「……なってくれないの?」
「うっ……」
上目使いで私を見つめてくる。 しぐさが可愛さを出し、着崩れた服が艶めかしい感じを醸し出していた
……同性なのに……同性なのになんか、ドキって来た
「……ならないなんて言ってないです」
「ほんと? じゃあ、お近づきの印として私の体の模様と同じものを……えっと……」
ここで天照大神……太陽さんが私を見ながら言葉を止めた
……どう呼んでいいのかわからないのかな
「狼華でいいよ」
「ろう……か……? に付けてあげる♪」
「はい」
座ったまま待つ
「……狼華、はい」
待っていると、太陽さんが両手を上に挙げた
「……?」
「狼華、はーい」
両手を下げた後、また上に挙げた
「……何してるの?」
その行動が理解できないため、尋ねる
「脱いで、って手振り」
「最初からそう言えばよかったのに……」
「まぁいいじゃないの。 じゃあ、脱いで」
「…………」
太陽さんに背を向け、座ったまま襟に手をかけるところで止める
……脱がす?
「……全身にやるの?」
「そうよ? 全身にやらないと効力がでないから」
「そ、そうなんだ……へぇ……」
……いやらしいことをするわけじゃないんだ。 というか、太陽さんの身体に塗られてるんだっけね
「…………」
ちょっと気が進まないけど、服を脱いで上半身裸になる
「下も脱いで」
「全裸になれと?」
「そう」
「…………」
帯の結び目を解く
……襲われないよね、絶対
「そこにうつぶせになって」
「……うん」
布団にうつぶせになりながら袴を脱ぐ
「いい――ひゃっ!」
いいよ、と言い切らない内に背中にこそばゆい感触が伝わってきた。 意思に反して背中が反る
「きゃっ、可愛い♪」
「……///」
……可愛いとか言われると……照れる///
「ちょっとくすぐったいけど、我慢してね?」
「うん……」
……さすがにもう黒ノヴァから受けたものが収まりつつあるから、少し撫でられただけでも反応するってことはないかな。 ……あぁ、あのときは酷かった
「はぅ……」
「~♪」
……そうでもなかった。 全然収まってなんかなかった。 前よりも過敏になってきている気がする
「っ……っふ……」
こそばゆい感触は少し動いては止め、通ったところを何度も往復し、まるで弄ぶかのような動き方をしていた
「……っく……」
傍にあった枕に顔をうずめ、声を押し殺して必死に耐える
……遊んでいるのか、それとも天然なのか……。 どっちにしても厄介なのは変わりないんだけど
「狼華の肌ってすべすべ……」
「……」
……それはみんなに言われてることだから慣れたよ
「っ……あっ……!」
元々弱い部分だった尻尾の付け根から背中の間を触られ、思わず声が漏れる
「…………」
「…………」
こそばゆい感触が、お尻の辺りに来たところで止まった
「なんだか……」
「?」
「なんだか……狼華の声を聴いてたら興奮してきたわ」
「……」
……これは……天然の変態だ!
「厚塗りしてもいい?」
「駄目に決まってるでしょ……」
「え? 誰が決めたの?」
「私が」
「ふーん……」
……厚塗りとか、何かしてきそうな気がするので
「っ…………」
「…………」
「……」
沈黙の中、尻尾を弄られ続ける
「……じゃあ、背中はおしまい」
……よし、注意をそらすことができた
「仰向けになって」
「もう乾いたの?」
……塗り物にしては乾くのが早い。 それに、私が服を脱いでうつぶせになってからずっとそばにいたけど、何か持ってきた風には思えないし……いったい何を塗っているんだろう
「私自身の血を塗ってるから、乾くのが早いの」
「血!?」
……そんなものを塗られていたのか
「……にしては匂わないけど……」
「あるものを混ぜてるからしないけど、それはさすがに秘密」
「……」
……気になるなぁ。 というか、色濃くなるまで使うほどの血を使っても大丈夫なのかな
「それを混ぜてるおかげで深紅色のまま変色させずに済むの」
「血を使ってるのってやっぱり、血がなんらかの効果を発揮するとかそういうのなの?」
「よくぞ聞いてくれました。 ……その通りです」
「…………」
……直感恐るべし! ……自分のだけど。 血はあの天照大神のものだから、かなり効力があるのは間違いないよね
「私の血は一族の中でも一際強力なものなんだけど……それは完成したら体感できると思う。 ということで、早く仰向けになって」
「うん…………」
仰向けになって尻尾で身体を隠す
「……///」
……今更だけど、初対面なのに裸体を晒すとか……なにやってるんだろうな、私……
「隠さないの」
「!」
抵抗空しく、尻尾を取り払われる
「……」
尻尾の本数を増やして、また隠す
「……遊んでほしいの?」
眩しいくらいの笑顔で言ってくる
「いや……そんなことは……」
「なら大人しくしてなさいよ」
「はい……」
尻尾を一本に戻す
……変態だとわかってしまった以上、迂闊に行動できない。 身近に、過去にちょっとしたことで暴走した創造主がいたから
「それじゃあ始めるね?」
そう言って太陽さんは、手のひらを爪で切った。 切ったところから止めどなく血が溢れてくる
「大丈夫……なの?」
「大丈夫。 塗ってる最中に治り始めるくらいだったから。 さて、まずは上からね」
私の肌をなぞりながら太陽さんが言う
……まぁ、本人が大丈夫だって言ってるから心配はいらないか
「……どうしたらこんなにきめ細かな肌になるのかしら」
「……っ」
模様を描いてる最中、太陽さんが呟く。 背中に描いているときとはまた違う感覚が襲い掛かってくる
「……ストレスを感じさせない生活?」
私のすべてを掌握していた黒ノヴァとは違う、ただ塗るだけの作業からくる感覚を感じながら言う
……思い返せば身体に負荷をかけてばっかりだ。 ノヴァとかノヴァとかリオとか白狗とか。 ノヴァの場合は、知らないことの罪悪感から進んでマッサージしてくれていたんだっけね。 ……連鎖反応起こしてたけど
「一生かかっても、私には無理そう……」
太陽さんの表情に陰りができる
「何か辛いことでも?」
「別に辛いことはないのよ。 ただ……とても忙しかった」
太陽さんは、さっきまでとは打って変わって沈んだ声音で話す
「忙しかった?」
「お父様から高天原の統一を任されてから、あまり休息をとってないの……」
……お父様、ねぇ
「そのお父様って今は何してるの?」
「何かあったみたいで隠居……というか引き籠っちゃった」
「……」
気になったので客観的情報を探してみる
「…………」
――黄泉の国――
引き出せたのはこれだけだった
……黄泉の国でなんかあったからそれで引き籠った、ってことでいいか
「休息が全然とれないから、隠れ家に逃げ込んだの?」
「そ。 あまりにも身勝手な者ばかりだから嫌になったのよ」
私の胸から鎖骨の間を指で円を描く太陽さん。 描いている最中だったから赤色の円が出来上がる
……お気の毒に。 てゐと似たようなこと言ってるよ
「今頃はみんな、あたふたしてるでしょうねぇ……」
「……!」
その一言で不意に下界の様子が気になったので、ロディに向けて念を送る
[今日はやけに呼び出すじゃない。 どうしたの?]
(えっと……下界は今どうなってるかなって……)
[あー、それなら真っ暗よ。 禍々しい気が渦巻いてて大変危険な状態ね。 いろいろと飛び出してきているわ]
……それは大変だ
(太陽さんが引き籠ったから?)
[まぁ、そうね。 でも、一番の理由は別にあるのよ]
(……?)
[誰かが、天照大神が天岩戸に隠れた後に太陽を闇ですっぽりと包み込んでしまったのよ]
……闇か。 そういえば朔が闇を扱えたはず。 ……まさかとは思うけど……
「……」
ちらっと太陽さんを見る
「……?」
それに気づいたのか、太陽さんと目が合う
……これは伝えるべきなのか
[身体におかしなところがないかだけ聞いてあげなさい]
……そうしておこう
「……ねえ」
話を切り出す
「何?」
「どこかすぐれないところ、ってない?」
そう聞くと、太陽さんは一旦手を止めて考え込んだ
「んー……あ、そういえばなんか肩が凝る。 いつもは凝らないのに」
「そうなんだ……」
いつもとは違う調子……
……これってもしかして
[当たりかもしれないわね。 太陽を包み込んだ犯人を捜せば治るんじゃない?]
(すぐに見つかってくれるかな……)
星の数ほどありそうな犯人を捜している自分の姿を想像してしまう
[犯人は意外とわかりやすいかもね]
(……もしかして朔?)
[…………自分の娘を疑っちゃうなんて……まだまだ母親として自覚が足りないみたいねえ]
(うっ……)
……グッサリとくる発言だ
[あなたが朔をそういうふうに育てたのならそうかもしれないけど、あの性格からやると思う?]
朔の今までの様子を振り返ってみる。 物静かで大人しく、繋に対して冷たい態度の朔の姿が容易に思い浮かんでくる
(……確かに)
……朔のことを一番よく知っているのは私だ。 あの子がそんなことをするわけがなかった。 ……でも、じゃあ他に誰が……
[そこであなたの能力が役に立つわけよ]
……私の能力? 何かあったか……えっと……
(……’うつす’?)
そう言うと、通信越しにため息が聞こえてきた
[……あなた、なんで肝心なところで抜けちゃうのかしらね]
(…………)
……そういう性分らしいんです
「……?」
ふと気づけば太陽さんは、頭の上にはてなマークを大量に浮かべていた
……あ、’みる’のか
「……終わったわ?」
「ん?」
疑問形で終わったことを告げる太陽さん。 いつのまにか終えていたらしく、手のひらにつけた傷を治していた
[ま、いずれわかるからがんばりなさいな]
プツンと糸の切れるような音がして、念話が途切れる
……なんか冷たかったな……
「……そろそろ効き目が表れる頃ね」
太陽さんが手のひらを見ながら言う
「え……――っ!!」
その言葉の意味を考えていると、急に体が熱くなり、動悸が激しくなってきた
「っ……はぁ、はぁ……」
全身から汗が噴き出してくる。 そして、股間の辺りがムズムズしてきた
……この感覚、久しくきてなかったのに……まさかきちゃったの……?
「身体、熱くなってきたでしょ?」
「……なに、したの……?」
意識が、何か別のモノに染まりそうになるのをこらえながら尋ねる
「自分に塗ったときは、それはもう大変だったわ。 どうすればいいのかわからなかったんだから」
「っぐ……」
太陽さんが覆いかぶさってくる。 こころなしか頬が紅潮し、目に光が灯ってないように見えた
「……!!」
太陽さんの髪が白く染まっていく。 そして、お尻から尻尾が、頭には獣の耳が生えてきた。 それはとてもよく見知った姿だった
「し、白狗……!?」
……なんで白狗が。 でも、白狗は今は朔と一緒にいるはず。 じゃあ、目の前にいるのは一体……
「でもね……狼華を見ているうちに、こういうときにはどうすればいいかなんとなくわかってきたの」
「……!」
……なんだか既視感を感じる。 こういうことって前にもあった気がする。 ……いつだったっけ
「んっ……」
思考していると、いつの間にか白狗にとてもよく似た顔が目前にあった
「…………!!」
理性が危機を感じて引きはがそうとするも、急激に発情した身体は言うことを聞かず、ただ力ない腕が体を押しているだけだった
「!」
向こうが私の手を掴み、絡ませてくる。 顔を背け、なんとか抵抗し続ける
「……? っ……んんっ……」
太陽さんが両腕で包み込むようにして私の頭を向かい合わせるように固定し、そのまま唇を重ねてきた。 いつ終わるともしれない長い接吻に息継ぎがなかなかできず、頭がくらくらしてくる
「……はぁ///」
「……っ……っ……」
ようやく解放されるも、息が絶え絶えになり、意識がはっきりとしなくなってくる
「きゃっ!」
離れているうちに息を整えていると、どこからともなく現れた無数の白いツタによって手足を拘束される
「っ、うぅ……」
ツタによって足が外側に開かせられるのを必死に止める
「我慢したって辛いだけ」
「い……やっ……」
抵抗空しく、足の間に割って入られる
……もう駄目だ。 名前を聞いて永琳の話を思い出したけど、この神様も両性だ。 この後に何が来るかなんて……やっぱ想像したくない……
「……!!」
ふと目が合う。 金色の瞳……前にも見たことのあるものだった。 そしてそれがなんなのかもわかっていた
「一緒に楽になりましょ?」
「……」
今までせき止めていた何かが決壊し、自身が自分ではない何かに染まっていくのを感じながら、意識が暗闇の奥深くへと沈んでいった
<><><><><>
落ちていく。 ひたすら深く、下へ下へと暗闇の中を落ちていく
『…………』
それが自身の力ではどうにもできないことと知り、身を委ね、流れに任せる
『!!』
突如、身体に何か力がかかり、落ちていくという感覚が徐々になくなっていった
『……』
完全に落ちていく感覚がなくなると、まどろんでいた意識が戻り始め、片足に感触がきた。 そして、両足に降り立っている感覚がくると、暗闇が晴れ、さまざまな色が飛び交う空間が姿を現した
『っ……』
意識が完全に戻ってくると、一定間隔で奇妙な感覚が繰り返しきていたことに気づいた
……頭が変になってしまいそうだ
『!!』
背後から気配を感じ、振り返る
『リ――……え?』
唖然とした。 もし記憶を保有しておけなかったら、誰かわからなくなっていた
『……狼華?』
そこにいたのは確かにリオだった。 だけど、記憶にある姿とは違い、前よりも体は成長して豊かになっており、頭には猫の耳とともに結晶でできた一対の角が、背後からはいかにも悪魔っぽい羽と尻尾が生えていた。 そして、一際目立つのが――……
『えっと……その……』
視線を上から下へ、下から上へと移していく。 身体のラインが強調されるような白い衣装に身を纏っていた
……中々際どい恰好だ
『……あんまり見ないで///』
そう言ってリオは、恥ずかしそうに羽と両手で体を隠す
……今更恥ずかしがることなんてないのに……
『……その姿は?』
恥ずかしそうにしているリオにわざと尋ねる
……こういうリオを見ていると、なんだかいじりたくなってくる
『えっと……狼華の中に入る前に……』
『……それでそうなっちゃったわけ?』
『……全部言ってないのに……狼華にしては賢い』
『流石にそれは傷つく……』
……ちょっと抜けてるだけでおバカにされるのは辛いよ……。 ……というか、なんだか声がおかしい。 辺りに響き渡っているような感じだ
『……それはともかく、あの時に考え付いたのは私の中にいた魂達と融合することだけだったの。それ以外思いつかなかった』
『それって解除できるの?』
全身から嫌な汗が流れる。 大抵、私が不吉な気を感じた時は大当たりばかりだ
『元の体に戻るまでは無理。 戻ったからといって解除できるかわからない』
『それはどういう……』
あまりないアタマで考える
……その姿になってから何かあったのかな?
『ずっと昔に見たのを覚えていればわかるけど、私ね……寝ている間ずっとあの空間に連れ込まれてたの』
『あの空間って……あっ』
もうかなり昔のことなのにすぐに掘り起こせた
……星霊と化け猫が悪魔に弄られていたあの空間か。 リオもあの空間に連れ込まれたってことは、たしか悪魔がいたから……もしかして……
『ゴクッ……』
『…………』
リオが急に俯いてしまった
……あれ? 露骨な仕草をしたのに、いつものリオなら何かしら攻撃してくるのに、なにもこない。 ……まさか……
『……まさかとは思うけど……されちゃったの?』
『!!』
リオがビクッと反応する
……ああ、やっぱり……
『……誰に?』
『……察して』
リオの力ない声で、おおよそ把握する
……あの好色な悪魔さんか。 前に見たときは星霊の王様を虜にしてたから、きっとあの悪魔は何か、かなり強大な力を有してるに違いない。 現に姿が微妙に似てる
『…………』
……なるほど、全体的に見た目が悪魔っぽくなってるのはソレが原因だったのか。 悪魔に染まってきてるんだね
『大丈夫?』
『……』
無言という反応が返ってくる
……大丈夫ではないみたいだ
『……』
何も言わずにリオの頭を撫でる。 すると、リオが抱き着いてきた。 体の震えが伝わってくる
……その辛さ、ものすごくわかるよ。 攻めるほうは受けるほうの限度なんて考えてくれないからね
『……』
『……』
私の胸に顔を埋めたままのリオを見る
……こうしてみると、リオって意外と脆かったんだなあ
『……!』
しばらくリオの好きにさせておくと、突然、頭の中でピキッと音が鳴った。 そのあとに視界が映り変わる
<><><><><>
<<はぁ……はぁ……>>
視界がぶれ続け、時々暗くなる。 誰かの視点になって見ているみたいだ
<<どうして逃げるの?>>
<<っ!>>
手を膝に付き息を整えていると、背後から声がかけられる。 声はかなり近い
……裾の短いノースリーブに短パンの服装、どこかで見覚えが……
『……!!』
……思い出した! これはリオが着ていたやつだ。 ということはこの視界の持ち主はリオか
<<!!>>
リオが背後に振り返ると、後ろから拘束され、無理やり座らされる。 拘束されたまま視界が目の前の人物を捉えた
『……』
そこにいたのは悪魔だった。 それを見て、今、何が起こっているのか瞬時に理解できた
<<逃げても無駄だって、自分でもわかってるんでしょう?>>
悪魔がリオの顎を撫でながら言う
<<……いや……やめて……>>
<<話を持ちかけてきたのはあなたでしょ? それに、やるっていっても普通にやったら楽しくないじゃない?>>
<<あ……っ>>
顎を撫でてきている手が下の方へ移り、お腹の辺りで止まる。 視界が伸ばしてきた手のほうに動く
<<っく…………>>
悪魔がリオの服を脱がしにかかった。 それにリオが抵抗するが、拘束している誰かによって押さえつけられてしまっていた
<<全く、あなたという人は……人の身であるあなたが、力の塊の私たちに力でどうにかなるわけないでしょ?>>
いつのまにか全部脱がせきった悪魔が、リオに言った
……リオが……人間……? そんなわけが……
<<どうしてそれを……>>
<<知らないとでも思った? あなたは本当に昔から鈍いのね>>
<<昔から? 私の何を――んむっ……>>
リオが何かを言おうとすると、悪魔が唇を重ねてきた
……リオの昔を知っている悪魔……ああ、目覚めたばかりの頃か
<<……はぁ。 あなたが急にいなくなってしまったから……私、とてもさびしかったのよ?>>
<<いきなり何を……>>
『…………』
……なるほど、全部把握した。 ……リオ、前世ではずいぶん鈍感だったみたいだね
<<ずっと一緒にいるって言ってくれたのに、あなたはそれすらも忘れてしまったの?>>
悪魔が悲しそうな表情で言う
……これは後の仕打ちが怖いな、絶対
<<……! まさか……そんな……>>
リオの動揺がダイレクトに伝わってくる。 ようやく思い出せたみたいだ
<<どうして……>>
<<……あなたの力になりたかったからよ。 今も、昔も、これからも>>
<<っ…………>>
悪魔がリオを抱きしめる
……リオ、ずいぶん好かれてたんだ
<<さびしかった分……ちゃんと埋めてもらうんだから>>
リオの耳元で悪魔が言う
<<!! そ、それとこれとは……>>
<<拒否権はないから>>
リオの足の間に入り、にっこりと笑いながら言い放った。 そして、視界が真っ暗になり、音が全く聞こえなくなっていった
<><><><><>
『……!』
視界が元に戻ると、私の胸に顔を埋めたままのリオがそこにいた。 時間はそれなりに進んでいるはずだけど、進展が全くない
『……リオ』
あの光景を見て前世が女の敵であることが判明したリオに向かって、無機質な声音で喋りかける
『……?』
顔を上げてこっちを見てくる
『大変だとは思うけど……ガンバッテネ♪』
『! そんな……』
ほぼ棒読みで言い放つ
……同情する余地なんて全くなかったよ。 心配して損した
『大切に思ってくれていたのにそれを感じ取れないなんて、そんな悪い子にはそれ相応の罰を受ける必要があるんだよ?』
『一体なんのことを……』
わけがわからないといった表情をしてきた
……今も相当な鈍感だ
『ずっと一緒にいる、とか言っていたのにね?』
『な、なんでそれを……』
動揺して離れようとするリオを、手に力を込めて離れないようにする
『ここは私の中なんだよ? 余所者でしかも人であるリオの中なんて、全てオミトオシなんだから』
含んだ笑みを浮かべながら言う
……実際はなんで見れたかわからないんだけどね
『ぁ……あぁ……』
リオの顔が恐怖に染まった。 演出の為に尻尾を全部具現化させる
……我ながら、見た目は白いのに中身は真っ黒だ
『…………』
何かトラウマでも思い出したのか、リオは身体を震わせながら座り込む。 それにつられて私も膝をつく
……悪魔の抱擁でも受けたのかな。 きっと、あまりにも過激な抱擁だったから脳裏に焼き付いたんだ
『…………』
『あ…………』
様子を見ていると、リオがぼーっとしたまま動かなくなってしまった。 目に光が灯っておらず、揺すってみても無反応だった
……放心状態になるほどだったのか……やりすぎた
『……』
今、リオの中がどうなっているのか’視て’みる
……冗談でオミトオシとか言ってみたけど、もしかしたらできるかもしれない
<<…………>>
<<あの子の元に逃げたと思ったら、結構早く戻ってきたのね。 ……ん? 大丈夫?>>
<<大丈夫じゃなくてもいいよ。 早くしよ>>
<<……あれ? なんで泣いてるの?>>
<<何かあったんじゃない? 見れなかったからわからないけど>>
……なんてことだ。 リオの心がこんなにも弱かったなんて。 なるほど、繊細な者ほど複雑な鎧を着たがるとはこのことだったのか。 暇つぶしに情報を視てた時に気になってたんだよね
『……』
時間もそれなりに経ったはずなので、白狗とよく似た太陽さんとの行為が終わったか’視て’みる
「はぁ、はぁ、っ……ふあっ!」
客観的な視界にして’視て’みると、まだ行為の最中だった。 なぜか拘束の外れた私が相手の身体に組みつき、完全に受け入れる体勢になっていた
……というか、私の身体使って喘いでるの誰だ。 ここに本物がいるんですけど
『……!!』
そのまま視ていると、私の身体は所々が少し赤くなっており、身体に負荷を与える体勢にさせるなど、かなり乱暴に扱われていた
『………………』
勝手に動いている体を止めるために強引に戻ろうとするけれど、何をやっても戻れる気配がない
……どうしよう、このままやられ続けたら間違いなく妊娠しちゃう。 三人目はノヴァと約束してたのに……
「ああっ!」
「もっと鳴いて、狼華ぁ♡」
……止めたいのに戻れない。 誰か妨害してるのか?
『はっはっはっ! この身体は我ら闇魔一族が頂いた』
『…………』
いきなり空間に女性の声が響く
……闇魔一族なんて聞いたことないよ。 ……あ、そうだ
(もしもしロ――)
[は――い―でしょう?]
素晴らしいまでの反応速度。 念話をつなげてから一秒も経たない内にきた
(闇魔一族って何?)
雑音が入ってるが、気にせずに尋ねる
[―ら? な――聞こえが悪――ね。 ――っと―ってて]
向こうは気にしていたみたいだ
[はいおっけー]
プツプツときていた雑音がやむ
[何か用?]
(闇魔一族って何?)
再度同じことを尋ねる
[闇魔一族? ああ、乗っ取られちゃったのね]
(うん……)
……名前を出しただけで全部わかるなんて、流石ロディだ
[格上の相手でも隙があれば乗っ取ってしまう、地表修復後すぐに現れた結構厄介な種族よ。 一度乗っ取られたら自力じゃどうにもできなくなるからね]
(えー……)
『この身体は、器無き闇魔神様の肉体に最もふさわしいために捧げる。 残念だったな』
『…………』
……捧げるのにわざわざ身体を穢しているところは突っ込んだ方がいいのかな
[あげちゃったら?]
(……………………)
衝撃的なことを聞いてしまった
(……あげたら駄目でしょ。 なんかやばいものの生贄にするみたいだし……)
[魂体として生きたら?]
(…………)
……それってモノに触れられるのかな。 できなかったらすごく悲しい
『この娘の力を吸い取って最高の状態にした後、あの御方の元にいく。 お前はそこから眺めているがいい』
『…………』
……ああ、ただの色狂いなんじゃないかと’視て’て思ったけど、そういうことじゃなかったのね
[……一応あなたは今、自分の身体の中に閉じ込められてるわけなんだけど、もしかしたらその闇魔神とかいうのに会えるかもね]
(は、はぁ……)
思わずため息が出てきた
……この神様は何を楽しんでるのやら
[あ、そうだ。 こうなったから教えてあげるけど、犯人は今あなたの身体を乗っ取ってるやつよ。 あなたの前に天照大神
に憑りついて、機会をうかがっていたみたいね]
(狙われてたんですか……)
[誰から見ても色々と魅力的だから、襲われても仕方ないわね]
(…………)
……辛い、辛すぎる。 でも、めげちゃだめだ
(これからどうすればいいの……?)
[事の成り行きなんて自然に流れるもの。 今は大人しくして悪いようにされないようにね]
(……うん)
プツンと糸の切れるような音がして、念話が向こうから切れる
『…………』
放心状態になったリオを見る
……リオをいじめたのが返ってきたのかなぁ……
以上、リオと悪魔の前世が判明して、をいじめたらその見返りが予想以上に大きかった、の回でした
天照大神は元ネタがどっちか確実じゃないみたいなので、よくある女神という描写で女性ベースで男として描かれることもあるということなので両性にしてみました。 隈取、狼で某ゲームを連想させた人がいるかと思いますが、ネタとして入れたのは隈取だけです、はい
夢の中の荒野で出会った様子のおかしなノヴァは、ニーアが転生してくる前にあった出来事とセットで覚えておくと、後のシナリオで謎が解けます、はい
P.S 前書きに一人追加されたのも伏線