東方星霊宴~気がついたら転生してた~   作:ALUM

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「お主を見て唐突に思い出したんじゃが、実はな……今は亡きホムペで投稿していた方の小説では、IFものとして狼華という人格を発生させずに転生させるというものをやろうとしていたのじゃ。そこにいるもう一人のお主はそれの主人公じゃ」
「……で?」
「話の流れは基本的に同じじゃ。 しかし! 自身が覚醒する前に交わってしまったことと、目覚めたら目覚めたで男であったのに女の身体になっていることに悩み苦しみ、後に出会うことになる仲間たち、そして並行世界からやってきた息子を名乗る双子の兄妹に支えられて、愛を受け入れるか拒絶するかの選択肢を選ぶんじゃ。 ちなみに選択肢は物語スタート直後からある」
「最初からその話でいけばよかっただろ……」
「それでいくと、どう行動しても主人公が消滅する話しか思い浮かばんかった」
「…………」「………………」
「切ったお詫びとして、本編参入の権利を贈るのじゃ。どう出てくるかは楽しみにしておいとくれ」
「壮大な前振り……乙」


第十七話~変化~

「本当にそれでいいのですか?」

 

「いいんだよ」

 

 

小さな空間に二つの白い影。 片方は忍んでいそうな衣装、もう片方は厳かな雰囲気を醸し出していそうな衣装に身を纏っていた。 どちらにも共通することは、頭の上に白い狼の耳を生やし、腰の辺りからは大きな尻尾を下げ、そして、身体付きが大変よろしい女性だということだった。 その二人は今、向かい合って話をしていた

 

 

「もう一度考え直してみては……」

 

「ちゃんと考えて決めたことだよ」

 

 

厳かな雰囲気を醸し出す衣装に身を包む女性、天照大神、愛称……ハクが説得し、それを狼華が払い除ける。 何について話をしているのか、それは……

 

 

「五穀豊穣の神気は、相性が合わなければ身体に余計な負荷を掛けます。 それに、豊穣を大地にもたらすには予想以上に力を使うと聞いています。 もし仮に他の神たちと争いになってしまったらまず勝ち目はありません」

 

 

忍んでいそうな衣装の女性、狼華が、神気を身に着けるという話だった。 さらにいえば、神そのものになるというものだった

 

 

「…………」

 

 

目を閉じ、じっくりと狼華は考える。 自身の身体には、すでに妖力、霊力、魔力、そして今は右手首に付けられた腕輪によって制御されている起源の力がある。 それらの力を上手く組み合わせれば、星を覆うほどの術式を組み、豊穣の効果と同程度のものを発生させることができるだろう

 

 

「……それでも構わないよ」

 

 

それだけでは心もとない。 術は少しでも多い方がいい。 危険を承知で狼華は言葉を返す

 

 

「……わかりました。 そこまで言うのなら……」

 

 

ハクが両手を身体の前で合わせる。 そして合わせた手をゆっくりと離すと、淡い光を放つ球体が手の間から現れた

 

 

「後天的に神になるには三つの手段があります。 そのうちの一つが、この神気を宿す種を身体に受け入れること」

 

「種?」

 

 

ハクが説明し、狼華が質問をした。 種のことよりもその手段について疑問に思っているようだった

 

 

「他の二つは不安定なモノなのでお勧めはできません」

 

「どういったものなの?」

 

 

さらに狼華が質問した。 気になっているのか早くやってほしいのか、狼華は尻尾をゆらゆらと揺らしていた

 

 

「一つ目は信仰されることで神として崇められること。 あの子のほうではこの方法が多いらしいですが、信仰されなくなれば途端に力を失い、元に戻ってしまいます」

 

「…………!」

 

 

次から次へと出てくる新たな単語に、狼華の探究心が刺激される

 

 

「あの子って?」

 

「私の妹のことです。 向こうではあの子が主体となって動いています」

 

「ふーん……」

 

 

天照大神の妹について、狼華は自身の内に秘められた情報を閲覧した。 名は月夜見……ずっと昔に月の裏側に出現して、永琳達に移住を認めた神様だった

 

 

「もう一つは、今持つ全ての力を以て生まれ変わる方法です。 この方法は最も勧めることができないものです」

 

 

狼華の頭の上に、新たな?マークが出現する

 

 

「どうして?」

 

「この方法では信仰によって力が増減することがありませんが、生まれ変わる前の力の総量で神力の保有量が決まってしまうからです」

 

「へぇ……」

 

 

さっきから生返事か質問しかしていないことに若干申し訳ないと思いながらも生返事をし、その方法で神になった場合について狼華は考えた

 

 

「……」

 

 

自身の霊力、妖力、魔力を全て神力に変換した場合、地球が誕生してすぐに生れ出てから今までの分を変えることになる。 それはもう膨大な量の神力を保有することになるだろう

 

 

「? ……もしかして、今言った方法がいいと思いませんでしたか?」

 

「……うん」

 

 

隠すことが苦手な狼華は、正直に頷いた

 

 

「確かに、強大な力を持つ者は神力も強大になります」

 

「それだったらそっちの方がいいんじゃないの?」

 

 

思ったことを口に出す狼華。 ご尤もとばかりにハクが頷く

 

 

「ですが、あえて種を身体に受け入れる方法をとったのは、種には無限の可能性が秘められているからです」

 

 

ハクが手を目の前にかざし、とある映像を見せた。 そこには、一つの種があった

 

 

「正しい心を持つことで種は成長し続けます。 一と一が二になり、二と二が四になるように……そして、それが兆を超え京を超え、いずれは無量大数の彼方へと行き着きます。 ……私がこの方法をとるのはこういう理由からです」

 

 

ハクの言葉に呼応して、その種から芽が飛び出し、芽が成長して木になり、さらに成長を遂げて一本の大樹になった

 

 

「………………よく考えているんだね」

 

「先を見据え、相手を見極めなければすぐに騙されてしまいますから……」

 

 

ハクの顔に陰が入る。 余程苦労していたらしい

 

 

「……ということですが、受け入れる覚悟はできましたか?」

 

「うん」

 

 

狼華が目を閉じる

 

 

「では……」

 

 

ハクが白い光を放つ球体をゆっくりと手で押すと、ハクの元を離れて狼華の身体に吸い込まれるようにして入っていった

 

 

「………………」

 

 

狼華は目を閉じたまま何も反応を見せなかった

 

 

「……どうですか?」

 

 

心配でたまらないハクが狼華に聞く

 

 

「うーん……」

 

 

変わったようなところが今一つわからない狼華は、曖昧な返事を返した

 

 

「何かおかしなところは?」

 

「おかしなところ……」

 

 

自分の身体にどこかおかしなところがないか、狼華は能力を使って”視た”。 身体の中心部に淡く光る種があるだけで、他にはおかしなところ、変わったところはなかった

 

 

「!」

 

 

その種を意識したからか、身体の内で何かが溶けていく感覚を覚える。 そして、全身から力が湧きあがってくるのを感じた

 

 

「今しがた、貴方から神気を感じ取れました。 どうやら上手く繋がらなかっただけみたいですね」

 

 

ハクが目を閉じ、耳と尻尾をせわしなく動かしながら言った。 それのせいで、今までの厳かな雰囲気が音を立てて崩れ去った

 

 

「? どうかしましたか?」

 

「……な、なんでもないよ」

 

 

仕草に見とれていると、それに気づいたハクが目を開けて狼華に話しかけた。 慌てて狼華は視線を外すものの、自分の意思とは無関係に動く尻尾のせいで隠せていなかった

 

 

「そうですか?」

 

「うん……」

 

 

狼華の後方を見ながらハクが訊く。 ハクの視線の先には、ゆらゆらと揺れ動く狼華の尻尾があった

 

 

「……貴方の尻尾って、筆みたいな色合いをしていますね」

 

「…………へっ?」

 

 

唐突に指摘された狼華は、対応できずに素っ頓狂な声を上げた

 

 

「白と黒、相反する色同士が見事に混ざり合っていて、綺麗です」

 

「あ、ありがとう……」

 

 

動揺しつつも狼華は言葉を返した。 普段はあまり気にしていない部分を褒められるとは思ってもいなかった

 

 

「……あ、もうこんな時刻に……」

 

 

ハクが時の流れを感じ取り、耳と尻尾を垂れながら呟いた

 

 

「何かあるの?」

 

 

事情を全く知らない狼華は訊いてみた

 

 

「いえ、特に何もありませんが……この部屋に滞在しすぎると下界が長時間暗い状態になってしまうので、外に出るだけです」

 

「…………」

 

 

どういう状況になるのか人づてにしか聞いていない狼華は、自分なりに想像してみた。 リオが地球全体に展開した術式の光が地表を暗く照らし、闇の中から生まれた今までのものとは性質が違う魑魅魍魎が闊歩している世界、そんな風景が浮かんでくる

 

 

「貴方も一緒に来てみますか?」

 

「遠慮しておく……」

 

 

ずっと前に兎耳の少女、てゐの言葉を思い出して狼華は断る

 

 

「そうですか……では向こうに帰られますか?」

 

 

ちょっと寂しげにハクが訊く

 

 

「うん。 連れ去られたと思って心配してる子がいるからね」

 

 

見た目が蒼い妖精みたいな子、ニーアのことを思い出しながら狼華が答えた

 

 

「あ、あれはこちらに連れてくるにはどこからでもいいというわけではなく、私自身の力で無理やり門を開いたわけで、それで……」

 

「……」

 

 

ハクは必死に説明するが、狼華には悪いことを必死に隠す子供のようにしか見えていなかった

 

 

「それで、どうやって向こうに戻ればいいの?」

 

「え? えっと……そこの全身鏡です」

 

 

狼華の質問に、なんとか気を取り直したハクが狼華の背後にある全身鏡を指さした

 

 

「……?」

 

 

後ろを振り返った狼華の目には、ただの全身鏡が映る

 

 

「……これでほんとに帰れるの?」

 

 

思ったことを伝える狼華。 少し前に、ちゃんと戻れると言っておきながらいつの間にか少々危なげな洞穴にいたからだ。 ……実は、ちゃんと送ってくれていたけど引きずり込まれただけかもしれない

 

 

「大丈夫です。 降りたい場所、又は会いたい人を念じれば、自然と目的地に着きます」

 

「ならいいんだけど……あ、そうだ!」

 

 

狼華が、今度会ったときに必ず渡しておこうと思っていた通信符を、亜空間ボックスから取り出して大神に差し出す

 

 

「お札、ですか?」

 

「そうだよ。 それを持って念じれば、近くに居なくても話せる」

 

「…………」

 

 

ハクは通信符を凝視した。 自身の知識を最大限活用して、仕組みを理解しようとしている

 

 

「この印……初めて見ます」

 

「独自に編み出したからね。 他にはないよ」

 

 

豊富な術があってこそ編み出せたものであり、決して自身が頑張ったわけではないことを頭に入れつつ、狼華は言った

 

 

「……これと同じようなものを貴方が持っているってことでしょうか?」

 

「そうだよ」

 

 

狼華が亜空間ボックスからもう一枚同じものを取り出して、ひらひらと見せた

 

 

「なるほど……とても便利ですね」

 

「!!」

 

 

大胆にも、ハクは胸元に通信符を仕舞い込んだ。 やはり、あの時のように変身すると動きが大胆になるのだろうか

 

 

「…………ねえ、ハク」

 

「どうしました?」

 

「……蒸れちゃわない?」

 

 

思ったことを、狼華はそのまま伝えた

 

 

「激しく動かなければ大丈夫ですよ。 ……もしかして――」

 

「そんなことない! そんなことない!!」

 

 

必死に否定する狼華。 邪なことを考えていたのがバレバレだった

 

 

「そ、それよりも、時間は大丈夫なの?」

 

「まだ少しあります」

 

 

そう答えて、色気を漂わせてにじり寄ってくるハク。 離れる狼華

 

 

「なんで近づいてくるの……?」

 

「なんとなく、じゃダメですか?」

 

 

なんとなく色気を漂わせてくるのか

 

 

「それに貴方を見ていると、なんだか頭がぼーっとしてきて……」

 

「……!」

 

 

これはいけないと思っているうちに、背中が壁に当たった。 ……こっちもいけなかった

 

 

「身体も火照ってしまって……このままじゃ皆の元に行くことができないので、鎮めるのを手伝ってくれませんか?」

 

 

ハクが狼華と身体を密着させる

 

 

「…………!」

 

 

下腹部に堅いものが当たり、思わず狼華はハクの下半身に目を向けてしまった。 着物の一部分が大きく盛り上がり、存在を主張していた

 

 

「……///」

 

 

ルーチェの元に連れ去られる前のことを思い出して、顔を真っ赤にする狼華。 それでもハクの下半身に目が釘付けになっていた

 

 

「……治まるまで好きにしていいよ///」

 

 

狼華が本能のままに言葉を発する。 服を分子化させて裸になりながら

 

 

「お言葉に甘えさせてもらいます」

 

 

そう言ってハクは一旦離れ、着物を脱いで裸になった。 ハクの胴体に描かれた模様が明るく光る

 

 

「……!!」

 

 

急激に身体が熱くなった。 自身の身体に目を向けると、ハクのものと同じ模様が、同じように輝いていた

 

 

「…………///」

 

 

頬を赤く染めて、再びハクが密着してくる。 息が荒く、鼓動が早鐘を打っているのがわかった

 

 

「…………」

 

 

ぼーっとなりそうな頭で狼華は思った。 今回ばかりは……できてしまうかもしれない、と

 

 

<><><><><>

 

 

 

 

「…………」

 

 

空をじっと見つめたまま、その場に佇む少女が一人。 髪も服も青で彩られ、背中からは一対の半透明の結晶でできた羽が生えている、なんとも異質な姿だ。 蒼き少女の表情は、どこか不安げだった

 

 

「……あれ? あのわんこどこ行ったの?」

 

「!」

 

 

蒼き少女の後ろから、紅で彩られた少女が話しかけた

 

 

「……あの空の向こう」

 

 

蒼き少女、ニーアが、空を指さしながら言う

 

 

「空の向こう? 月まで行っちゃったの?」

 

「…………」

 

 

紅き少女、ミュウの質問に、ニーアは答えるべきか迷った。 別に答えてもいいだろうけれど、ミュウはきっとそこに行こうとしてしまうかもしれない……いや、駄目だと言われても絶対に行く

 

 

「よくわからない」

 

「むぅ~……ちゃんと見ててよね」

 

「…………」

 

 

あまりの理不尽さだったが、気づかない方が悪い、と言いかけてぐっと飲み込んだ。 ミュウのことだ、刺激するのはまずい

 

 

「火柱が上がったのは……この辺りかな」

 

「!」

 

 

聞き覚えのない声が遠くから聞こえてきた

 

 

「……誰かいる」

 

 

声の方向に二人して振り向く前に、向こうがニーア達に気がついたようだ

 

 

「ねえ、この辺りで何があったの?」

 

「えっと……」

 

 

声の主は、黒髪の少女だった。 裾を短くした着物を着て、頭からは狼の耳、腰からは狼の尻尾を生やし、狼華と似たような雰囲気を出していた

 

 

「白に黒が混ざった髪の人が、すぐそこの洞穴を……」

 

「…………」

 

 

ニーアが言うと、黒髪の少女は考え込んだ。 何か思い当たる節があるようだ

 

 

「その人は……なんか危なくなかった?」

 

「……危ない?」

 

 

狼華の印象を、ニーアは頑張って思い出してみた。 どうなるかわからないのに、自ら進んで危地に行くところなら確かに危ない

 

 

「……うん」

 

「それで、どんな格好していたかわかる?」

 

「…………」

 

 

ニーアは、さらに危ないことを思い出した

 

 

「布の切れ端が身体にくっついているだけで、ほぼ裸だった」

 

「………………今はどこにいるの?」

 

 

黒髪の少女の問いからニーアは、会わせたら狼華を全力で殴りそうな空気を感じた

 

 

「空の向こう側」

 

 

ミュウに言ったことと同じことを言う。 ニーアにはそれぐらいしかわからなかった

 

 

「……ありがと。 また来るから」

 

 

そう言って、黒髪の少女は帰ってしまった。 知りたいことを全て得たのだろうか

 

 

「……なんだったの、あれ」

 

「……狼華の知り合い?」

 

 

 

 

<><><><><>

 

 

 

 

「あの……」

 

 

一方その頃。 なんとか身体の火照りを鎮めることができたハクは、恐る恐る狼華に話しかけた

 

 

「っ……ん?」

 

 

ハクに抱かれている狼華が、身体が痙攣する中で苦しそうに反応する

 

 

「……大丈夫ですか?」

 

「何……が?」

 

「お腹とか、身体全体が……。 その……痙攣してますし……」

 

「…………」

 

 

今までいいようにしてきた連中とは違って自分の身体を心配してくれているハクに、狼華は涙が出そうになった

 

 

「お腹の方は……大丈……夫。 痙攣してるのは……ハクの力が……流れ込んだ……から」

 

「それって危険では……」

 

 

狼華にとって似たようなことがノヴァとの初体験であったから、きっとこれも自分の力の一部になるんだろう

 

 

「…………」

 

 

狼華は目を閉じて、自身の内を能力を使って”視た”。 三つの均衡した力とノヴァの起源の力とは別に、新たに力が入り込んでいるのがわかった。 それが、神気を宿す種を著しく成長させ、同時に身体に影響を与えているようだった

 

 

「……」

 

 

今度は第三者の視点から自身の外見を”視た”。 一糸纏わぬ身体には模様が無くなっていること以外に特に変化は見られなかった

 

 

「……はぁ」

 

 

痙攣していた身体がようやく落ち着きを取戻し、狼華は大きく息をついた

 

 

「すみません……」

 

 

溜め息から何かを感じ取ったのか、ハクが謝った

 

 

「……へ?」

 

 

急に謝られて、身に覚えのない狼華はきょとんとした

 

 

「貴方を欲のはけ口にしてしまったみたいで……」

 

 

ハクが耳を伏せた

 

 

「…………」

 

 

ここで狼華は思った。 もしハクの言ってる通り、欲望のままに動いていたのだとしたら、自分は欲を著しく増幅させる何かを放っていることになる。 ……でも疑問だ。 隷音はどうして襲ってこないのだろう

 

 

「本当にすみません……」

 

「いいって。それよりも一人でいるときは大丈夫なの?」

 

 

狼華が疑問を口に出す

 

 

「いえ……全く……。 ある日突然身体が熱くなって、いつまで経っても収まらない時は一人でしています」

 

「…………」

 

 

畜生に……いや、全ての生き物にとって逃れられない定め、発情期。 これを迎えてもなんともならないのは、欲の泉が枯れているのか無理やり枯らしたのか、それとも常に発情してるのか。 ハクは枯れていないみたいだ

 

 

「でも、貴方のおかげで楽になりました」

 

「……役に立てたなら何より」

 

 

複雑な気分だけど、感謝されるならそれでいい

 

 

「それともう一つ。 私が見間違えた時、あの子が~とか言ってたよね? どういう関係なの?」

 

 

前から気になっていたことを狼華は訊いてみる。 もしかしたら、朔は白狗と一生別れないといけなくなるかもしれない

 

 

「あの子は、私が生まれ出た時に分かれた……いわばもう一人の私です」

 

「……どうして分かれちゃったの?」

 

 

もう一人の私、という部分は置いておく

 

 

「私に何かあって下界が日の光の恩恵を受けられなくなったとき、あの子がいればなんとでもなるからです。 ……決して怠けたいからではないですよ?」

 

 

口に出したということは、しようとしていたということなんだろう。 ハクがいなくなったとき、白狗がハクの代わりに役割を果たす。 今の白狗にその役目は到底できるとは思えない

 

 

「ハクとその子はほぼ同じ姿をしてるけど、ハクの普段の姿って……どっち?」

 

 

重い話を置いておき、訊いてみる。 同じ種族ならとても嬉しいことだ

 

 

「こっちの姿です。 皆の前に出るときは隠していますけど……」

 

 

自身の髪を触りながらハクが恥ずかしそうに答える

 

 

「堂々としてればいいのに……」

 

「皆を纏め上げている者が畜生だと知ったら、何をされるか……」

 

「…………」

 

 

力でねじ伏せればいいと言おうとしたが、ハクはそんなことをするような性格ではないことを思い出す

 

 

「……時間は大丈夫なの?」

 

「!!」

 

 

ハクが時間を気にしていたことも思い出し、狼華が尋ねると、ハクの肩がびくっと震えた

 

 

「……大幅に過ぎましたけど、もうしばらくこのままでいたいです」

 

 

ぎゅっと抱きしめる力を強めるハク。 甘えん坊、なんて言ったらまた欲求が爆発するかもしれない。 下手に刺激をしない方が自身のためだ

 

 

「向こう側の世界が大変なことになっちゃうよ」

 

「……それじゃあ、会いたいときに攫ってもいいですか?」

 

 

とんでもないことを言い出すハク。 意外な一面を見ることができたのかもしれない

 

 

「……流石にそれは駄目かな」

 

「あっ……」

 

 

狼華がハクを引き剥がして立ち上がり、分子化させた服を再構成して身に纏った。 そして、なんとなくお腹と腰の具合を確かめる。 ……できてないようだし、正常なようだ

 

 

「もう行ってしまうのですか?」

 

 

ハクが服を着直しながら言った

 

 

「怠けちゃうからね、ハクが」

 

「むぅー…………」

 

 

むすっと頬を膨らませるハク。 もはや上に立つ者としての面影がない

 

 

「私といるのが嫌ですか……?」

 

「そんなことないよ。 むしろ好き」

 

 

理由は同族だからっていうのもあるけど、一番はやっぱり親密になれたってことだ

 

 

「でも戻らないと……一緒に居た子が、いつまでも戻ってこないって心配するから」

 

「はい……」

 

 

見るからに残念そうな仕草をするハク

 

 

「……しょうがないなぁ」

 

 

突き放すのも悪いと思った狼華は、亜空間ボックスに手を突っ込んだ

 

 

「……何をなさってるのですか?」

 

「えっと……はい」

 

 

亜空間ボックスから、狼華は目的の物を取り出してハクに見せた。 見た目は漆塗りの木の棒のようなものだ

 

 

「これをこうやって引っ張ると……」

 

 

狼華が木の棒の端と端を持って引っ張ると、中から銀色の板のようなものが現れた

 

 

「……剣? にしては小さすぎるような……」

 

「小太刀って言うの。 護身用のね。 これもあげるよ」

 

 

鞘に刃を仕舞い込み、半ば押し付けるようにハクに渡す

 

 

「力を込めて創り出したから、そう簡単には折れないよ」

 

「……大事にします」

 

 

両手で小太刀を抱くようにして、ハクはお礼を言った

 

 

「あそこの全身鏡から戻れるんだよね?」

 

 

狼華が鏡を指差して聞く

 

 

「はい。 ですが……今はちょっと……」

 

「どうかしたの?」

 

 

ハクが言いづらそうにした。 とても言えないようなことを、言おうかどうか悩んでいるようだ

 

 

「言っても大丈夫だよ」

 

「……実は機能が今は不安定で、時間がずれてしまいます」

 

「……慣れてるから大丈夫」

 

 

言いづらそうにしていた割には、そんなに大したことじゃない

 

 

「それに、ハクなら最小限に抑えることができるでしょ?」

 

「できません」

 

「…………」

 

 

堂々とした自白に言葉を失う狼華。 これなら仮初めの姿を使う必要が無いんじゃないかと思ってしまった

 

 

「……ど、どのくらい誤差があるの?」

 

 

狼華が動揺しながらもハクに訊く

 

 

「使う側の技量によると思います」

 

「そっか……」

 

 

……ひょっとして……機能を把握できてない?

 

 

「それじゃあ、鏡の中に入ればいいの?」

 

 

狼華が全身鏡の前に立つ

 

 

「そうですね。 入る際にはちゃんと念じてください」

 

「わかった」

 

 

入る前に狼華は、降りる場所を思い浮かべた。 湖の近くに入口に結界が張られている洞穴、それを遥か上から見下ろすように

 

 

「また会おうね」

 

「はい」

 

 

短い言葉を交わし、想像を保ちつつ、狼華は全身鏡の中に飛びこんだ

 

 

 

 

<><><><><>

 

 

 

 

 

「わっふ!」

 

 

狼華が飛びこんだ先は、固い地面だった

 

 

「いたたた……」

 

 

顔を押さえながらも、狼華は周囲を見渡した。 湖が傍にあり、すぐ近くに結界が張られた洞穴が、ちゃんと目的地に着いていることを示していた

 

 

「…………」

 

 

遥か上から降りてこようとしたのに地面に顔をぶつけることになってしまったのは……技量不足だったみたいだ

 

 

「……!!」

 

 

本来出てくるはずだった遥か上空を見ると、空一面を覆っていた術式が跡形もなかった

 

 

「……そうだ!」

 

 

狼華が思い出すように念を飛ばす。 送り先は、毎回お世話になっているロディだ。 どのくらい時間が流れたのか教えてくれるはず

 

 

[もしもし~?]

 

 

のほほんとした口調で応答したロディ

 

 

(あ、ロディ? 私だよ)

 

[どちら様~?]

 

(ノヴァの正妻、狼華だよ)

 

[……ごめんなさい。 名乗ってくれるまでわからなかったわ]

 

 

ロディの記憶力に問題があるみたいだ。 専門家に診てもらわないと

 

 

[それで何か用?]

 

(こっちに来るときに時間がずれたらしいから、どのくらい経ったのかなって)

 

 

率直にロディに伝える

 

 

[えっと……なるほど、最後に居た場所を教えてちょうだい。 逆算してあげる]

 

 

ここで狼華は、最後に居た場所がどこなのか考えた。 今いる湖の畔かそれともハクの元か。 もしかしたらハクのいるところは時間の概念がないのかもしれない

 

 

(今いる場所)

 

 

基準はこっちだろう

 

 

[了解、ちょっと待ってて]

 

(うん)

 

 

ロディが逆算している間に、狼華は神力を扱う術を確認することにした。 数ある術の中の豊穣の部分についてだ。 折角使えるようになったのに何もできないんじゃ話にならない

 

 

[おっけー、逆算終了]

 

(ん……)

 

 

まだ確認していないのにロディから連絡が来た

 

 

[計算結果から簡潔に言うと、狼華はかなり未来に行っちゃったの]

 

(うん)

 

[んで……ライフサイクルが元に戻ったことで、さっきちょうどリオの展開していた術式が消滅したの]

 

(それで?)

 

 

術式が消えていることはいいから、どのくらい経ったのかを教えてほしい。 言葉に出さずに胸の内にしまっておく

 

 

[人の祖先が誕生して幾分か経った時代に飛ばされたのよ、狼華は。 二足歩行で武器を扱うくらいに知能が発達してる時代に]

 

(武器を扱える……?)

 

 

少し賢くなった頭で、狼華は考える。 向こうに行く前には、洞穴にいたのを除けば自然から生まれた者は妖精くらいしかいなかった。 人が現れ始めたということは、同時に妖怪も現れ始めたということになる

 

 

[闇を本能的に恐れるから、闇の妖怪たちが増えてるわね。 それで、もともと古くからいる者達がそれらに襲われている、っていうのもあるわ]

 

(古くからいるってどういうこと?)

 

 

確かあの時に、隷音を除いて全滅したはずだ

 

 

[環境とともに復活したのよ。 性質はだいぶ変わってしまったけど、根本的にはあまり変化はないわ]

 

(そりゃすごい……)

 

 

会ったことなんて一度もない

 

 

[それにしても……連絡するのが私でよかったわね~。 繋だったらとっくに忘れてるわよ?]

 

(……え?)

 

 

通信越しにロディの含み笑いが聞こえてくる

 

 

[あの子、あれからかなり男っぽくなっちゃってね。 隷音にいいように扱われなくなったのよ]

 

 

どうやら教えたことを実践したようだ。 でも、それなら忘れることはない気がする

 

 

(繋って今どうしてるの?)

 

[隷音と近くの山に移住した。 その際に、復活した鬼達も一緒にそこに行ったわ。 前みたいに全員殴り飛ばして従わせたみたい]

 

(…………)

 

 

繋が鬼達の頂点……あの子はもう鬼でいいんじゃないかな

 

 

[ところで狼華、今の貴方はどんな扱いになってるかわかる?]

 

(全然わからない)

 

[行方不明、生死不明で絶望的って扱いにされてるの]

 

(じゃあ、文字通り幽霊になったのね)

 

 

もっと早く帰っていればよかった……物理的に無理だった

 

 

[そうね。 ちなみに、捜索活動していたのは主に朔と白狗ちゃんとミュウよ]

 

(朔が!?)

 

 

これは予想外だった。 普段めったに動かない朔が、自分の為に動いている。 そう考えると、自然と涙が出てきた。 ところでミュウって誰だっけ?

 

 

[三日で動くのをやめて、霊気を毎日探ってるわ]

 

(…………)

 

 

捜索してくれているだけでも……ありがたい

 

 

[あ、そうそう……]

 

 

唐突にロディが話を切り出してくる

 

 

[今、そっちに向かって巨大な隕石が接近しているのよ]

 

(!!)

 

 

狼華の脳裏でめちゃくちゃになった地球の光景が蘇ってきた

 

 

(それって……)

 

[安心して、ただの彗星よ]

 

(安心できないんですけど!?)

 

 

全く笑えないフォローに、思わず狼華は叫んだ。 大きさはわからないけれど、地表に激突するのはまずい

 

 

[何も作用していないから、新しく手に入った力の練習がてらに防いでみたら?]

 

 

簡単に言うロディ。 何にも力が働いていなくても、大変なのは違いない

 

 

(大きさはどのくらい?)

 

[そうね……狼華が昔居た都市が丸々ちょうど収まるくらい。 あの時の半分くらいよ]

 

 

できるか不安になった

 

 

(到達までどれくらい?)

 

[今さっき貴方が見ていた方角に、ちょうど肉眼で見えるわ]

 

 

狼華は目をこらして空を見渡した

 

 

「……!」

 

 

空の一点に、昼なのに一際大きな星が輝いていた。 おそらく、それがロディの言っていた彗星だろう

 

 

(見つけたよ)

 

[んじゃ頑張って。 そうすれば、朔が見つけてくれるわよ]

 

(そんな理由で救われた者たちは、なんて思うんだろうね)

 

[まぁ、よくある英雄として祭り上げられる人達って、大抵しょうもないことから始まって、いつの間にか世界を救ってるじゃない]

 

 

ついでに世界を救ったってことは、きっととんでもない力の持ち主だったのだろう

 

 

[救われた者からは、救った者は眩しく見える]

 

(?)

 

 

一瞬、本当にロディと話をしているのかと思ってしまうほど、口調が変わった

 

 

(……ロディ?)

 

[救ったものが邪なものに芽生えてしまえば、妄信者はいいようにされてしまうのよ。 ……どうして欲を出すのかしらね]

 

(……さぁ)

 

 

そんなことを訊かれても困る

 

 

[神ってやっぱり清い心の持ち主がなるべきよね]

 

 

どうやらロディは他の世界の様子を見て、憂いに浸っているようだった

 

 

(ロディも自分のことを慈愛の女神だ、って自称してるじゃん)

 

[私は別よ。 役柄を自称してるだけだもの]

 

(ふーん……)

 

 

ロディの発言を元に、狼華は考えてみる。 役柄を自称しているということは、慈愛の神という部分を自称している。 ということは残るのは……

 

 

(……女だけが残るの?)

 

[何か難しく考えてない?]

 

(慈愛の神っていうのが自称なんでしょ?)

 

[……まぁ、そういう考え方も一理あるわね。 私たちはどこかで作られた世界の住人。 本当の神ってどこにいるのかしら]

 

 

様子のおかしなロディに、だんだん不安になってきた狼華

 

 

(一体どうしちゃったの……?)

 

[あ……あぁ、ごめんなさい。 そういえば、そっちに彗星が接近してるんだったわよね。 頑張ってね、それじゃ]

 

 

一方的に話を切り上げてロディが通信を切った。 ロディのことが気になるけれど、今は彗星からこの星を護らなくては……

 

 

「…………」

 

 

目を閉じて、ゆっくりと深呼吸する。 そして、自分が扱える最上級の防護術式を展開し始める

 

 

「……っ」

 

 

彗星に向けて一層ずつ、妖力、魔力、霊力と分けた障壁を重ねていく。 その際に、彗星が衝突しそうな部分を厚く、他を薄くする。 継ぎ接ぎだらけの即席ものだけど、念入りに調整すれば十分発揮できるはず

 

 

「…………」

 

 

ノヴァから与えられた起源力は使わない、というよりも使い方を知らない。 今までは、ただ腕輪に触れることで膨大な質量を解放させていただけだから、制御の仕方なんて何にもわかっていない。 これはリオから引き継いだ能力を以てしても駄目だった

 

 

「……」

 

 

地道に組み合わせていき、層を何万にも増やしていく。 流石に多いけれど、やりすぎなくらいがちょうどいい

 

 

「っ……」

 

 

それらの層の間に、防護の神力を染み込ませていく。 念のための処置だ

 

 

「…………ふぅ」

 

 

一通り展開し終え、狼華は一息ついた。 そして空を見上げ、だんだんと地表に影を落としていく彗星を見る

 

 

「っ…………」

 

 

彗星が障壁にぶつかったのを感知し、狼華が術式に力を注ぎこむ。 空気が振動するほどの轟音を発しながら、障壁が彗星を削っていった

 

 

「……」

 

 

狼華は、試しに手を抜いてみた。 それでも障壁が破られるようなことはなく、ごりごりと削っていく

 

 

「…………」

 

 

前例があるから念入りに作ったけれど、大したものじゃなくてよかった

 

 

「………………」

 

 

彗星が消滅していく様を、狼華はただじっと見つめる。 おもむろに亜空間ボックスから全く手に付けていなかった多機能カメラを取り出し、その様子を収める

 

 

「……」

 

 

一部始終を撮り終わり、狼華は、ごろんと仰向けに寝転がった。 そして、我が子達との再会を妄想する。 千年ぶりに朔と顔を合わせることになる。 だったら、驚きの方法でお出迎えしてあげよう

 

 

「……あ! いた! いたよ!!」

 

「!」

 

 

どうやってあまり感情を表に出さない朔を驚かせようか思考していると、ミュウの声が頭の上から聞こえてきた

 

 

「……!!」

 

 

直後に凄まじい殺気を感じ、狼華が慌てて横に転がる

 

 

「……」

 

 

そしてさっきまで寝転がっていた場所を見る。 そこには地面が円形に抉られたような跡が残っていた

 

 

「…………ちっ」

 

 

そういう反応をするのを、狼華は何度も目の当たりにしてきた。 だから今度もきっと……

 

 

「!!」

 

 

攻撃を仕掛けてきたものを確認すると、予想はあっけなく崩れ去った。 そこにいたのは、なんと朔だった。 少し見ない内にすっかり大人の身体付きになり、小さい頃からずっと着ている小さくなってしまった着物を胸元を大胆に広げていた。 同性なのに狼華は思わず目を奪われる

 

 

「……今までどこに行っていたの?」

 

「! ……えっと、その……」

 

 

朔の怒気を含んだ問いに、狼華は正気を取り戻した

 

 

「普通に戻ってこられるはずだったんだけど、向こう側で問題があって……」

 

「あって?」

 

「そ、それで……」

 

 

恐怖によって声が詰まり、言葉を紡ぎだすのが困難になる狼華

 

 

「遥か未来に飛ばされちゃったんだよ」

 

 

傍にいたミュウが、なぜか狼華の代わりに話した。 そんなミュウも、ほんの少しだけ身体が成長していた

 

 

「どうしてそれを?」

 

 

ミュウの頭に浮かんでいる黄色い宝玉をあえて無視し、狼華は訊いた

 

 

「朔が狼華の気をずっと探していたけどいくら探しても見当たらなかったし、ニーアが、誰かに会いに行ってるみたいだった、とか言ってたから……そうなのかなって」

 

「遊んでたんじゃないの?」

 

「…………」

 

 

神力を身に付けた後は……確かに遊んでいたかもしれない

 

 

「あの時は早く帰ってきてたよ?」

 

 

ミュウが言ってるのは本当に攫われた時だ

 

 

「……確かに」

 

「でしょ? 会いに行ったとか言ってるけど、実際は神隠しに遭ってたんだよ」

 

 

その場に居たんじゃないかというくらい核心をついてくるミュウ。 特に悪いことをしたわけでもないのに、狼華は冷や汗をかいた

 

 

「神隠し?」

 

「私よりちょっと幼いくらいの子供が何年も前から行方不明になった時、神様が連れて行ったかもっていうやつ」

 

 

ミュウが得意げに言う

 

 

「……攫われるとどうなるの?」

 

 

朔が狼華を見ながら訊く

 

 

「うーん……気に入った子を攫ってくるわけだから……」

 

「…………」

 

 

朔とミュウの狼華を見る視線が下にずれる

 

 

「……!」

 

 

狼華はお腹を見られてることを悟り、背を向けて身体を隠した

 

 

「……不倫?」

 

「…………!!」

 

 

そしてミュウの問いによって、さっきの話は子作りのことだと理解した

 

 

「違うもん……自分からすすんでやるなんてほとんどないもん……!」

 

 

狼華の駄々っ子ぶりに額を押さえる朔。 みっともない真似をするな、とでも言いたそうだった

 

 

「要するに……押し倒されちゃったんだ」

 

「……うん」

 

 

あの時の状況を思い出す狼華。 自分が無意識の内に発している何かにハクが侵されて、それで身体の模様が輝いたと思ったら自分の身体も火照ってきて、本能のままに交わった。 ……乗り気だった

 

 

「感想は?」

 

「身体が痙攣しておかしくなりそうだった」

 

 

率直に狼華は話した。 ハクの子種と一緒に力を注ぎこまれて、特に直に入ったお腹が苦しかった

 

 

「…………///」

 

 

顔を赤らめて両手で口元を隠すミュウ

 

 

「そんなにしたなら……できちゃったんじゃないの?」

 

「…………」

 

 

無言のまま狼華が下腹部の、ノヴァに付けられた所有印の辺りをさする。 やっぱり不安があった

 

 

「狼華って、初めて会った時もなんか襲われてたよね」

 

「あ……うん」

 

 

確か……てゐに危うく洗脳されかけた気がする。 あの時は都合のいい人形にされるところを、ミュウがニーアを投げつけてくれたおかげで助かった。 本当に感謝してる

 

 

「あの脱がしてくださいと言わんばかりの衣装が原因だったりして?」

 

「そうだと思って露出を抑えてみた。 ……けど駄目だった」

 

「肌を隠しただけなんだから当たり前じゃん……」

 

 

ミュウの指摘で、改めて狼華は自分の服装を見直した。 黒くて薄い生地で胴体をぴっちりと包み込んだだけで、着ている実感がほとんどない。 そしてその上から、上は前と同じ、下は尻尾で捲りあがらないように左右と前に布を垂らしただけ

 

 

「…………」

 

 

よくよく考えれば、黒い生地は肌にぴったりと合わせているわけだから、強調される部分は凄く強調される。 ということは上着を脱いだら裸と同じだ

 

 

「…………」

 

 

健全な子に見られても大丈夫なように、狼華は胸と股の間の生地を透けないように厚くしておくことにした

 

 

「自分の身体みつめちゃってどうしたの?」

 

「! ……服装をちょっと」

 

「厚着しても無駄なんじゃないかな」

 

「…………うぅ……」

 

 

狼華は胸の内で号泣した。 そしてこれ以上襲われませんようにと祈った。 この世界の神様……ではなくノヴァとロディに

 

 

[もしもし? 今、なんかビビっときたわ]

 

(…………)

 

 

祈りは届いたみたいだ




リ「第三回、もう既に回数忘れかけた質問コーナー。 ……適当に言ってって」
ノ「狼華が闇魔族のところから戻ってきたときになんか触手に捕らわれてたけど……されちゃったの?」
リ「される数分前に気がついて脱出したからぎりぎりセーフ」
ノ「もし気づくのが遅れてたら……?」
リ「力を根こそぎ吸い取られて無力にされた後にR18な展開、かな」
ノ「ちょっとそいつ消滅させてくる」
リ「(憶測でも言わなきゃよかった)」
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