終わりのセラフ〜転生した少年〜   作:鬼城

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サブタイトルに暴走と書いてありますが…本当に始まりの部分だけです。
長くなるので…(今回も長いですが…)切らせていただきました。
でわ、どうぞ!


十五話 暴走の始まり

ードッと音がして己を貫く音が聞こえたー

 

自分の血が流れていくのがわかる。体が冷めていくのが分かる。そして襲ってくるのは死の恐怖。

 

「…っ」

 

「死ね、吸血…え?なんで…陵が…」

 

「はは、優がミカを傷つけるところなんてみたくないからね。」

 

「は?…ミ…カ?」

 

俺の言葉を聞き優は俺の後ろにいる吸血鬼を見る。

そしてその目はさらに驚愕の色を見せた。

 

「…いや…うそだろ…」

 

「ゆ…優ちゃん?それに、陵ちゃん?」

 

ミカも驚いていた。

まぁ、俺も最初は驚いたが…本当にこの吸血鬼はミカだったらしい。今も二人とも驚きにより体が硬直している。

 

そんな二人を見た後、俺は自分の状況を見て笑う。情けない…っと、体には優の剣が刺さっており制服は自分の血で汚れている。

(手で少しは防いだ…けど、流石にきついな。)

俺は自分の残りの力を使ってゆっくり剣を抜いていく。

ちょうど抜き終わったとき、やっと状況を理解したグレンが声をあげた。

 

「お前…自分がなにしたか分かってるのか‼︎陵‼︎早く、その吸血鬼を殺せ!」

 

ミカはその言葉を聞き、その場から一旦逃げようとするが、グレンに刺した剣をグレンによって掴まれているため剣が抜けない、だから逃げることが出来ないみたいだ。その状況をみてグレンは勝ち誇ったように笑う。

 

「はっ、俺の勝ちだ。ヴァンパイア‼︎」

 

そしてグレンはミカに攻撃を仕掛ける。

それにより遠くに逃げるミカ。

 

それを見届けたあと、俺にはグレンのパンチが直撃する。

 

「ふざけんな‼︎てめぇなんで…邪魔した!」

 

「ごめ…んグレン。それでも!…っく」

 

その後の言葉は続かなかった。途端に体が重くなっていくのを感じる。

(やっば…、体が思うようにうごか…ない!)

 

そして、俺は意識を失った。

意識を失う前に見た光景はグレンが血を吐いて倒れていくというものだった。

 

 

そこは何回か来たことのある白い空間だった。

俺は目の前にいる自分の鬼に声をかける。

 

「ねぇ、沙鬼。俺は死んだの?」

 

「あれぐらいで、死んでもらったら困るわ。」

 

それは少し怒りを含んだ声。

 

「怒ってる?」

 

「怒ってなんかいないわ。それより、もうすぐ貴方は目が覚める。貴方が負った傷は私が治したから。」

 

「そっか…、ありがとね沙鬼!」

 

どうやら、傷を治す力が備わっているらしい。

最後に沙鬼の顔を見て感謝を伝えたのだが…とうの彼女は少し赤い顔を隠すようにして俺と反対の方へ向いている。

 

「ほんとに昔から、感謝言われるの恥ずかしがるの変わらないね。」

 

「うるさい!陵にはわからないわ!」

 

そして俺の意識は前線へと戻った。

 

 

目を開けるとそこには心配した顔をしているシノアが映った。そして傷が癒えていることを確認し俺は起き上がる。

 

「ごめん、シノア。」

 

「いえいえ、でもどうして庇ったりなんか…」

 

「家族がいるんだ。あの中に」

 

そして目を向けたのはミカがいる吸血鬼達の方。しばしの沈黙。その沈黙を…

 

「あっ、陵くん!目が冷めたんだね!」

 

と言う声が破る。

俺が起きたことに気付いて与一はパッと明るい顔で近寄ってきた。

 

「ごめん、迷惑をかけたね。」

 

「そんなことないよ。だってあの中に家族がいるんでしょ?」

 

きっと優から聞いたのだろう。

前の方を見るとそこには座りこんだままの優がいる。俺は立ち上がり優のもとへと行くべく歩みを進めた。

 

 

「あはっ、あれ百夜 優一郎君と鈴谷 陵君でしょー?いやーまさかの運命の再会。涙が出ちゃいそう〜。で…どうするんです?たぶんあの二人人間どもに利用されてますよ?」

 

銀髪の吸血鬼、フェリド•バートリーは隣にいる金髪の吸血鬼、ミカに問いかける。

 

「当然、救う」

 

「醜い人間どもの手から?」

 

「ああ。」

 

「でも、彼も人間ですよ。人間は決して僕らの仲間にはならない。」

 

フェリドはそう言ったあとポンと手を叩く。

何か良い案でも見つかったのだろう。

 

「あ、そうだ。じゃあクルルが君にしたように僕が優ちゃん達を吸血鬼にしてあげま…」

 

ガッとミカは素早く動きフェリドの首元を掴む。

 

「僕の家族に手を出したら、殺すぞおまえ。」

 

獅子のような鋭い目でフェリドを睨むミカ。

 

「ふふふふ、冗談ですよ〜珍しく熱くなっちゃって。ま、じゃあ手を貸してあげましょうか。他の人間は僕が止めてあげるから、君は君の大切なお姫様達を奪ってきなよ。」

 

「…」

 

ミカはジッとある一点を見つめる。そこには、人間の輪の中にいる優と陵の姿があった。

『優ちゃん、陵ちゃん…仲間がいるんだ…、二人とも優しいもんね。でもだからこそ優しすぎるからこそ、騙される。人間どもは、仲間ヅラしてるそいつらは…とても欲深いんだ。優ちゃん、陵ちゃん。』

そして、ミカはもう一度二人を救うと心に決めた。

 

 

優のそばに行っても優は俺に気付くことはなく、先ほどと変わらず、ずっとミカの方を見つめていた。そして、

 

「おい‼︎おまえミカなのか‼︎?」

 

とミカに向って叫ぶ。

ふと優の方を見ると優の頬には一筋の涙が伝っていた。そして次から次へと涙がこぼれる。

 

「ミカ…ミカ…‼︎ほ…ほんとにミカなんだ…‼︎」

 

「ゆ…優ちゃん…」

 

そんな二人の会話を見てフェリドは良いものを見たというように笑う。

 

「うわー、何あのかわいい態度。君がこだわるわけだなぁ。」

 

そして、スラッと剣を鞘から抜くと一言。

 

「じゃあ、あの二人以外の人間を皆殺しにしようかぁ。」

 

と、その時フェリドの後ろから新たに増える気配。

 

「私をお呼びと聞きましたが…第七位始祖様」

 

その声に誰が来たのかを悟りクルッと後ろを向くフェリド。

 

「ああ、クローリー君かぁ待ってたよ〜。君たちがいたらもうゲームセットだねぇー、彼らを殺す必要もない。よし、家畜にしよう。吸血鬼殲滅部隊家畜化計画〜、みんなであいつらの生き血を吸うよ〜。」

 

さらに増えた貴族を見てグレンは一人悪態をつく。

 

「くそ、また貴族がふえやがった。頭を潰すのに時間が掛かりすぎたか。終わりだ、新宿は捨てる。総員離脱態勢‼︎」

 

そのグレンからの命令により俺と優は、…え?と声を出した。そして俺たち二人はグレンに待ってくれるように頼む

 

「ち…ちょっと待ってくれよ!向こうにミカが…!俺の家族がいるんだ‼︎だから撤退は…」

 

「ミカをほっといていけないよ!せっかく会えたんだ!」

 

「じゃあ、ここで皆殺しにされりゃいいってのか。」

 

俺たち二人にそのグレンの冷たい言葉が突き刺さった。

(確かに…冷静さを失っていた。)

どんどん、冷静になっていくのが分かる。

 

「優くん…陵くん…」

 

「…陵さん、優さん今は…」

 

与一の困った顔…そしてシノアも与一と同じ顔をしている。

 

「撤退だ‼︎陣形を保ったまま新宿城壁内へ後退…‼︎」

 

その声に俺たちは仕方なく従った。

そして、撤退しようとした時、進行方向に銀髪の吸血鬼が見える。

 

「逃がさないよ〜ん。」

 

「やっぱり、お前か!フェリド•バートリー‼︎」

 

俺はフェリドに斬りかかる。

ミカを返せ。という気持ちを込めて…

だが、その一撃をフェリドは難なく躱す。

(そんなこと…計算済みだ!)

そしてフェリドが攻撃を躱したところで後ろに回っていた優が斬りかかる。それはこれほどとはないタイミングだった。それでもフェリドはよける。

 

「おお、速〜い。けどまだ若い。」

 

「くっそ、化け物かよ。」

 

今度はグレンが横から攻撃を仕掛けるがそれすらも尋常ではない速さでよけてフェリドはグレンの後ろに現れる。

 

「そして、ライオンも手負いじゃ剣線が鈍るねぇ。」

 

「!!」

 

そして、フェリドはグレンを蹴る。

 

「「グレン‼︎」」

 

グレンに駆け寄ろうとしたとき、優の動きが止まる。

優の肩にはフェリドの手が置かれていた。

 

「まずは君から味見……」

 

「優!」

 

俺が叫んだと同時にフェリドの腕が吹っ飛んだ。そして大量の血が吹き出す。

そのフェリドをやった本人は…ミカだった。

 

「あは、かわいい冗談じゃないか、ミカちゃん。そんなに怒るなよ〜。」

 

腕を切られたのにもかかわらずさっきまでと同じようにヘラヘラとした笑顔で笑うフェリド。

 

「優ちゃん、陵ちゃん。全部捨てて、僕と逃げよう。」

 

急にそんなことを言ってくる、ミカに俺たちは驚きが隠せない。

 

「へ?いや、逃げるって…」

 

「ミカ、何言ってるの?」

 

「いいから!」

 

そしてグッと俺たちはミカに腕を引かれる。

ミカはそのまま俺たちを両腕に抱えて走り出した。

 

「陵さ…‼︎……‼︎」

 

シノアの声が聞こえたがミカのスピードが速すぎて返すことが出来ない。

そんな中優はミカに向って叫ぶ。

 

「ちょっと、待て!ふざけんなミカ!いったいどういうことだよ‼︎」

 

「…二人は、あそこにいちゃダメなんだ。人間に利用される。だから…」

 

「いいから、ちょっと止まれ‼︎なんだよそれ‼︎いい加減にしろ‼︎」

 

「優の言う通りだ、ミカ。」

 

そして、俺たち二人はミカの手からサッと逃れる。

 

「……人間に利用される…?なんだよそれ…おまえは…」

 

ミカの顔が少し曇る。

 

「お…おまえ、もう…人間じゃないのか…?お…俺のせいか…俺が逃げたせいで…」

 

「…そうなの?ミカ?…だったら俺…」

 

「違う‼︎優ちゃん達は悪くない‼︎…いいから行こう?ここは危険なんだ…頼むよ…」

 

ミカのお願いだ。家族として、聞くべきなんだろう。俺に家族を教えてくれたのはミカだ。ミカには感謝しきれないほどに感謝している。だけど…

 

「ごめん…ミカ…。俺達はいけないよ。ここには俺の仲間が…」

 

ここにいる仲間にも大切なことを教えてもらったんだ。シノアや与一。それに君月、三宮…みんないい人で俺にはもったいないくらい…

 

「違う‼︎仲間は僕だけだ‼︎二人とも騙されないで‼︎人間どもは君達を利用…‼︎」

 

「いやぁぁぁあああっ‼︎」

 

ミカの言葉を遮るようにして聞こえてくる悲鳴。

 

「!?シノアの声…‼︎」

 

「シノア!?助けなきゃ…俺が守ると決めて…」

 

そしてシノアを助けに行こうと振り向くが…それは出来なかった。ミカが俺と優の肩を掴み、その行動を止める。

 

「お願い二人とも、振り返らないで‼︎後ろには何もない‼︎何もないんだ‼︎」

 

「放せよ…‼︎」

 

「何もないことになんて出来ないよ…!」

 

そしてミカの手を無理やり放し、俺達はその光景を見た。

 

俺達の仲間が吸血鬼達に歯を突き立てられ血を吸われている光景。俺はその状況の中からシノアの姿を探す。シノアは吸血鬼に首を地面に押さえつけられていた。

 

「!?…助けなきゃ…助けなきゃ!」

 

「やめろ‼︎」

 

俺は助けに行こうと動き出すが、またしてもミカに止められる。

 

「二人とも、もう行こう‼︎」

 

「放せ!放せよ!俺はシノアだけでも…命に代えても…守るって決めたんだ!」

 

シノアは俺達の方を向いて逃げるように促している。

だがその途中で吸血鬼に口を塞がれる。

 

「家畜が喋るなよ。」

 

「やめてくれ‼︎う…うわあああぁぁあ…‼︎」

 

優が叫んだと同時に優の左目から血が流れる。

 

「優?」

 

俺もその異変に気づく。それは優であり優ではない別の何かだった。

 

 

優は気付くとここにいた。目の前には自分の契約している鬼…《阿朱羅丸》がいる。

 

「…あれ、なんだこれ。おい阿朱羅丸」

 

「んー?ああ優、何?」

 

阿朱羅丸は優の方を振り向く。

 

「こりゃいったいなんだ?おまえ俺を乗っ取ろうとしてるのか?」

 

「違うよ、僕は何もしてない。でも、困ったなあこれ…まさか鬼である僕が取り憑いた人間のバケモノっぷりに怯えることになるとはね、」

 

優は訳が分からないといったような顔持ちで阿朱羅丸を見つめる。

 

「なんだよ、それ…」

 

「あの空見てよ。世界を呪うように真っ黒に染まってーーー。」

 

そして優は阿朱羅丸に言われたため空を見る。前に来たときの真っ白な空と打って変わって今は阿朱羅丸がいったように、雰囲気の悪い黒い空が広がっている。

 

「ねぇ優、ミカの言う通りだ。まだ間に合うなら三人で人間から逃げた方がいい、じゃないと君はもう人じゃいられなく……」

 

「?どうした?」

 

「あ…だめだ、手遅れみたいーー。君の人間じゃない部分の暴走が始まる。」

 

そして優が見たのは空からラッパを吹いて舞い降りてくる天使の姿だった。

 

 

優の背中からドス黒い翼のようなものが出てくる。

(何が起こってる!?)

 

グレンはその優の姿をみて笑う。そして…

 

「…始まった。」

 

と呟いた。

 




UA10000突破しました。
読んでくださりありがとうございます!

次回ですが…今日出せたら出しますのでよろしくお願いします!
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