そして、四巻の話が全て終わります。
では四巻の最後!どうぞ〜
ーー次の日ーー
夜…俺はふと窓に近寄り空を見上げる。
その空は世界が崩壊していることを感じさせないほど綺麗な星空だった。
そんな星空を見ていると、急に悲しくなってくるのを感じる。まるで、心に穴が空いたような喪失感。そんな感情を紛らわすべく俺は夜風に当たろうと屋上へ向かった。
キィー、と音を立てて開く扉。
屋上には心地の良い風が吹いていた。俺はそんな中、その場に寝転がり星を見上げる。
「あれが、オリオン座で…」
それぞれの星を指でなぞりながら頭の中で繋げていく。そして、しばらくしてそれも飽きてきたのであの時の事を考える。
「《終わりのセラフ》か…あれが、天使の姿なのか?」
ヤハウェは俺を《終わりのセラフ》の世界に送ると言った。そして、それを救えとも…つまり、それこそがこの世界の鍵になるものなんだろう。
「じゃあ、俺が救うのは…優達のことなのか?でも…どうやって?」
答えがまるで見えない。セラフ…ヘブライ語で天使の意味を示す。それも熾天使を指す言葉だ。熾天使は天使の中で一番上の階級で唯一、神の隣に立てることを許された天使。
だからこそ…俺はあの神様がヤハウェだと分かったんだが…それに、名前が分からなかったら神剣使えなかったし…
「それにしても…優はいつ目覚めるのかな。」
今だ目が覚めない優を俺は少し心配していた。きっと睡眠効果の理由だけではないんだろうなぁ。と思いながら俺は目をつむった。
◆
目の前に、シノアそして優、三宮、与一、君月、沙耶…俺が今までかかわってきた人達がみんな倒れていた。
「…え?」
そして、俺の手には一振りの剣が握られておりポタポタと血がその剣から滴り落ちている。その血は俺のではないことぐらいすぐに分かった。
「…そんな…」
今にも消えそうな声を出した瞬間、景色がガラッと変わる。そこには、俺の過去の罪そのものである光景が映し出されていた。フェリドに殺されていく家族…なにも出来ず突っ立っている自分。それを嘲笑うかのごとく、死んでいった家族が笑った気がした。
◆
「…っ」
(俺の罪…か。)
久しぶりに見るあの夢…過去の出来事…。俺はこれを一人背負っていかなければならない。それは、優も同じくらい背負っているのだろう。
「失礼しますよ〜陵さ…!」
そう言って入ってきたシノアは俺を見て一瞬かたまる。そして、こっちに向って悲しそうな顔で歩いてくる。
「…?」
「また、一人で泣いてたんですね。」
「!?」
シノアに言われるまで涙に気づかなかった俺はすぐに涙を拭う。そしてなにごともなかったように…あっうん、無理みたいだ。
「私は、陵さんの彼女です。なので、私も貴方の背負っているもの一緒に背負います。」
「あっ…」
そして抱きしめてくるシノア。その時プツンと今まで色々背負っていた土台が割れたような気がした。俺はシノアの腕の中で声を上げて泣く、それはもう生まれたての赤ちゃんのように…何分たっただろうか。しばらくしてその涙は収まった。
「ありがとう、シノア。」
「私に出来ることがあったら言ってください。」
「はは、分かったよ。で、何か用があったんでしょ?」
俺は気持ちを切り替えシノアが来た理由を聞く。彼女のことだから、何か用があって来たのだろう。
「はい。実は…茜さんが来ています。」
別に驚くことは何もなかった。きっと優のアレが関係しているんだろう。
「そうなんだ。茜は今どこに?」
「君月さん達と一緒に応接間にいます。」
「そっか…、じゃあ行こうかな。」
そして、俺は応接間に行くべく歩みを進めた。茜にミカが生きていることを伝えるために…
◆
コンコンコンと扉を叩き、中から「どうぞ」という声を聞いて俺は応接間と書かれた扉を開く。
「やっときたか、陵。」
三宮の溜息まじりの声を無視して俺は目の前にいる茜の方を見た。久しぶりに見た茜の顔は何処か悲しさを含んだ顔をしていた。
応接間にはソファーが向かいあわせに置いてありその真ん中には机がある。茜が座っている方の向かい側に与一、君月が座っており三宮はそんな三人を見るようにして後ろの方で立っていた。
「ごめん三人とも、ちょっと席外してくれるかな?」
俺は隣にいるシノアに目線で行くように指示してさっきまで与一が座っていたところへ腰をおろす。
「分かった。俺たちは先に優の方を見てくるから。」
「うん、こっちもすぐに行くよ。」
君月の言葉にそう返して、皆が出て行くところを見送る。そして、バタンとドアが閉まるのを確認して俺は前にいる茜の方を見た。
とうの茜は今だ状況が分かっていないようだ。そのため顔に戸惑いの色が見える。
「じゃあ、さっさと終わらせようか。優にも会いたいだろうしね。」
「!?別にそんなんじゃ…」
そう言って顔を赤くさせる茜。そんな茜に、ニコッと笑いかけて俺は続ける。
「…ミカが…吸血鬼になって生きている。」
「…っえ?だって、ミカは…」
「そうだね。でも、生きていた。それでも、ある意味死んだのかもしれない。だって、人間としてのミカはもういないんだから…それでも家族は家族だよね?」
「う…ん。でも本当に?……それなら、また会えるんだ…。」
俺の話でミカが生きていることは信じたようだ。でも…俺が話せるのはここまでだ。優の事は言おうか迷ったけど、状況がはっきりしていないのに言うわけにはいかないだろう。それに茜を混乱させてしまう可能性がある。
「じゃあ、俺の話はここまで…後のことは優の目が覚めた時に話し合おう。」
「うん、そうだね。」
そして、俺たちはその部屋を後にした。
◆
ーー夜ーー
優は一人、目が覚めた。
「……ん」
起き上がると目の前には座りながらベットを枕にして寝ている与一が目に入る。
「…てか、どこだここ。俺、確か新宿にいたはずで…」
そして思い出すのはミカの声。その時ようやく今の状況を思い出した。
「って、そうだ‼︎みんなやられて…‼︎あれじゃあなんで俺生きてんだ!?」
色々と浮かぶ疑問。とりあえず、そこで寝ている与一をバシッと叩いて起こし、状況を聞く優。
「おい与一‼︎起きろ‼︎一体こりゃどうなってる!?」
「…あ、痛…」
そして、頭をさすりながら起きる与一。その目は俺を見ると大きく開かれた。
「ゆ、優くんっ!!?目が覚めたの!!?」
「そりゃ、こっちのセリフだ‼︎一体戦場は…」
優が言い終わる前に与一は優に抱きつく。その目には涙が浮かんでいた。もちろん、悲しいというものからではなく、嬉しいというものからだろう。
「ちょっ、質問に…‼︎」
「み…みんなに教えなきゃ!みんなすごい心配してたんだから!すぐにみんな呼んでくるね‼︎」
「待てって、だから質問に…!これだけは聞かせろ‼︎みんなは…あいつらみんな無事なのかよ!!?」
そう言って優は与一を引き止める。与一はひょいとドアから顔をだして笑顔で言う。
「あ…それ心配?」
「当たり前だろ」
「安心して、無事じゃなかったのは優くんとまぁ、陵くんもかな、」
「そうか…って、陵のやつ大丈夫かよ!」
ホッとしたのもつかの間、優は焦る。
それをやはり笑顔で答える与一。
「大丈夫だよ。優くんは7日昏睡状態だったけど、陵くんは5日だったから。それにみんな、すごい心配してて」
「7日?マジで?」
「まじで、だから伝えてくるね!」
そう言って部屋を出て行く与一。それを見送った優は一人空を見上げる。
「…そうか…、無事か…無事…そりゃよかった。……ミカ……じゃあ、ミカが生きてたのも夢じゃないのかよ…嘘だろ…はは、ははは…あいつほんとに死んでなくて…よかった…ほんとによかった…」
そして優は嬉し涙を零した。
◆
「シノア、どのタイミングででる?」
「そうですねぇ、与一さんはもう出て行ってしまいましたし…」
「泣いてるしなぁ、優…」
「あら、陵さんも泣いてましたよ?」
「…っ!」
優が一人涙を零している中、俺たちは優の部屋の前まで来ていた。そこまではいいのだが…まさか涙を流しているとは思わなかったので、今はシノアと謎の会議中である。
「わかりました!こうしましょう!」
そして、シノアが耳打ちしてきた内容に俺はのることにした。
「えーと、泣き虫くんの部屋はここですか〜?」
「泣き虫の優〜子供だなぁ?」
俺たちの声に反応して優は涙を隠す。だが、ことはもう遅し…
「もう顔ぐちゃぐちゃですよ。」
ニヤニヤとしながら言うシノア。
「え、え…いや、これは違っ…‼︎」
「あはは、いいですよ。別に…そりゃ泣くでしょう、家族が生きてたんですから。それに、陵さんも泣いてましたしね〜。」
「だから…それ言う!?」
「陵、お前も泣き虫じゃねーかよ。」
優に「うるさい」と言ってから、ゲンコツをくらわせる。「痛ぇ。」と優の声が聞こえたが、問題はないだろう。
「…ってか、いったいどうなってんだ?俺…途中から記憶ないんだけど…」
「…全然覚えてないんですか?」
「うん。」
優は暴走の事を覚えていないか…そっちの方が今はいいのかもしれないな…俺はシノアと顔を見合わせてお互いあのことは言わない方がいいとコンタクトをとる。
「そうですか…まぁ、優さんは途中で眠いって言って寝てましたしね。」
「う…ウソだろ?」
「「嘘〜」」
「…………」
優をいじりながら、話を進めていく。それはとても久しぶりのことで少し懐かしくも思えた。
「優さんは、突然気絶しました。部隊は壊滅の危機ーーですがそこで援軍が来たんです。柊 暮人 中将、及び、柊 深夜 少将が率いる、渋谷本隊が…」
この話は初耳だったでも、確かにすごい数の部隊がいたような気はする。それに対して初耳だったのは俺が、あのあとのことを聞かなかったのも理由の一つとしてあげられるだろう。まぁ、優の目が覚めてから聞こうと思ってたんだが…
「そ…それじゃ……」
「ミカさんのことですか?残念ながら逃がしました。」
シノアは優が言う前に優が言うであろう言葉に対して答える。
「じゃあ、死んでないんだな?」
「当たり前だよ、優…あのミカだよ?そう簡単に死なないよ。」
「…そうだよな…でも、逃がしたってことはミカは俺たちを置いて自分から逃げたのか?」
「それは…」
シノアが口を止める。きっと、言いにくいのだろう。
それを見て優は問題ないというように言う。
「別に遠慮しなくていい。ミカが敵だろうが味方だろうが、生きててさえくれりゃ俺はそれだけで十分だから…だから…事実だけを教えてくれ」
「病み上がりであまり興奮してほしくないから、あまり言いたくないのですが…」
「優なら大丈夫。だからシノア教えてあげてよ。」
「わかりました。ミカさんは最後まで二人を心配して…ですが、吸血鬼に連れ去られました。」
「そうか、分かった。ありがとう。」
やけに、素直な優だ。もとは優しい奴だから当たり前といったら当たり前なんだが…なんか、こっちが調子くるう。そう思っているのは俺だけなのだろうか。
「あと、心配してくれてありがとう。」
やっぱり、今日の優はおかしい。まぁ、それでもこういう時があってもいいのかもしれない。
そんな事を考えていると優は何かに気づいたようだ。その目線はシノアの首元。
「おまえ、その首の傷、大丈夫だったのか?」
「…あ、ああ〜…それのことですか。はい、ちょっと血を吸われただけなので…」
バンッー
「おい、馬鹿優‼︎やっと目を覚ましたか!」
急にドアが開いたので少しびっくりする俺とシノア…優は…おかしいな、驚いて無いみたいだ。俺はその勢いよく入ってきた、三宮を見る。それも、驚かせるなという意味を込めて、ジト目でみる。
「なんだよ、陵…」
「別に、ドアぐらい手で開けてくださいませんかねぇ。」
「別にと言っときながら文句いってるじゃないか!」
少し起こり気味でそう言ってくる三宮に「なんで、逆ギレ!?」と返そうとしたがそれを君月の声によって遮られる。いつの間にか君月と与一、茜は部屋に入っていたみたいだ。
「おまえら、病院の中でうるせぇよ。」
「うるさくした覚えはないよ。それは三宮だけだ。」
誤解をとくべく俺は真実を言っただけなのだが、何故か三宮に蹴られた。本当に理不尽だ。
「なんだよ、優。元気そうじゃねぇか。」
「うん、心配かけたな。」
「はぁ?なんでてめぇなんかの心配を俺がすんだ。」
今日は何故か素直な優にいつも素直じゃない君月。これはこれで、大変だ。そんな中シノアが君月を茶化しにはいる。
「とかいって、途中君月さんも甲斐甲斐しく、優さんの看病してましたけどね〜」
「ああ‼︎?」
少し照れているのか君月の顔は少し赤い。
「君月優しい奴だな!」
「うるせぇよ!陵。」
少し赤い顔がさらに赤くなる君月。
「ははは、あーえっと、それよりなんで茜がいるんだ?」
「おい、おまえら教えたんじゃなかったのか?」
君月の言葉に俺とシノアはそっぽを向く。完全に忘れていた事をどうか許して欲しい。
「まぁ、いいよ。それよりみんなちょっといい?」
「ん?」
「なんだ?」
「うん」
「はい」
とそれぞれが優の言葉に返事をする。
優は一息吐くと俺たちに向かって笑う。
「…ありがと、心配かけた。あと全員生き残ってよかった、俺は仲間に恵まれてるな。」
意外な言葉にみんな顔を見合わせる。俺は前の方から気にしてたので特に何も思わない。
「おいおい、これまだ治療いるだろ?」
「いやいや、実は優くん最初からいい子だったよ?」
「その通りだよ、与一。」
「いい子ちゃんアピールやめてほしいですよねぇ。」
「明らかに、頭とか打ってるな。」
「おまえらぶっ飛ばすよ?」
そして、優をいじったあと少しでも体を休ませてもらうため俺たちは部屋から出た。それでも俺は少し優の部屋に残る。
「ねぇ、優?」
「うん?」
きっと今、俺たちは考えていることが同じだろう。
「必ず…」
優も分かったみたいで、ああ…と、頷きかえしてくる。
そして…
「「救う」」
と二人でミカのことを考えながらつぶやいた。
ーー同時刻ーー
とある屋上で外の景色をながめている、人影。その人影は銀髪の吸血鬼、フェリド•バートリー。フェリドは外の景色を見ながらつぶやく。
「いや〜、しかし笑えるほど順調にきてるよね。相変わらず暴走していく人間の欲望に、全てを侮る吸血鬼たちの傲慢さ。そうは思わない?僕の新しいパートナー君、はいこれ、こっちの研究資料。」
そして、研究資料を渡すフェリド。相手は何も言わずにその場を立ち去った。
読んでくださりありがとうございました。
次回は、二千文字ぐらいで番外編を書こうと思います。本編を楽しみにしていただいている方、すみませんがお付き合いください。