俺たちは例の『鬼呪装備』の訓練のため城壁の外まで出てきていた。
「おーい、与一、陵、そっからバケモノ見えるか〜?」
「ん〜待ってね優くん。」
「俺はそんなに目はよくないよ。」
優の声に俺たち二人はそれぞれ返す。
俺と与一は今、信号機の上にいた。なぜなら優が言った通り『ヨハネの四騎士』を探すためだ。与一はそのヨハネを探すべく弓を構えている。その時、光の紋章が目の近くに現れるのでそれを使って探せるのだろう。いわゆるスコープと同じ役割だ。
「このまま進むと《ヨハネの四騎士》六匹と遭遇しそうだよ。」
「だってさ、どうする殺るか?」
与一の言葉を聞いて優が指示を煽る。そして、考え込むシノアや三宮に俺は提案してみた。
「ねー、俺たちで始末していいかな?俺と与一で奴等を仕留めるよ。」
「与一さんは出来るかもしれませんが…陵さんは近接武器ですよ?出来るんですか?」
「まぁね。与一は出来そう?」
そして俺は隣でヨハネを警戒している与一に聞く。
「うん、これくらいの距離なら………敵を撃て《月光韻》みんなを守るよ。」
その言葉と同時に与一の後ろに鬼が現れる。どうやら、すでに与一は具現化ができるようになっていたらしい。
そして、与一の攻撃によりヨハネの三匹が殺られる。あと残ったのは三匹…
「じゃあ、俺もやりますか……変形しろ」
そして、俺の手には黒いオーラを纏った一つの銃が握られる。すぐにその引き金を引き、ドオンッと音がしてヨハネ三匹は生き絶えた。
「…なっ、与一おまえ外に鬼出してなかったか‼︎?」
「へ?…あ、うん出したけど。」
「おいシノアどういうことだよ‼︎あいつ具現化できんじゃねぇか‼︎まぁ、陵もできてたけどさ!あいつらにだけ修業したのか!?」
「あーいえ、与一さん達はもともと《鬼呪》の制御能力が異常に高かったので自力で覚えちゃったみたいですねぇ。今はそれよりも陵さんの武器がなんなのか気になりますけどね。」
そう言いながらシノアはこっちを向いてくる。そのため、みんなもこっちを向いていた。俺に全ての視線が集まる。
「え?えっと…これなんにでも変形出来るんだよね〜」
「お!まじで!じゃあフライパンもできるのか!」
「出来ると思うよ…ほら」
そして、俺は銃の鬼呪装備をフライパンに変えてみせる。
「お〜、じゃあそれで切りあいしようぜ!」
「だまらっしゃい。」
俺は優の頭をフライパンで思いっきり殴った。その時ゴキッという変な音がしたが気にしないでおこう。
「っていうか、与一もどうやって出来るようになったんだ?」
「あっ、それはね夜寝る時とかに鬼といっぱい喋ってたからだとおもうよ。」
優の質問に少し戸惑いながらも答える与一。
「はぁ?俺の鬼は乗っ取ろうとする時しかでてこねぇんだけど?」
「え、そうなの?僕昨日は何色が好きなのかって話をしたんだけど…」
「へぇ、それを聞きゃいいんなら…おい阿朱羅丸おまえ何色が好きなんだ?」
そう刀に向けて聞く優ーー当然返って来たのは沈黙だった。
「無視すんなぁぁぁぁああああああ!」
一人で叫んでいる優を見て君月は「うるせぇ奴だな」と呟くとそれが聞こえたらしく優が君月に向かって聞く。
「あ!?おまえは鬼と話せんのかよ!」
「え?あ〜いやその…もちろんだ。」
そう少し焦りながら言う君月に誰もが思うーー嘘ついてるのバレバレだ。と…
「じゃあ、やってみろよ。」
「じゃあ、見てろ。おい《鬼箱王》答えろ、おまえの好きな色ってなんだ?」
ーシーンーー
「ほらあ!!」
「その顔をやめろ!」
「いやいや、責めないよ。俺も出来ねーし、つまりおまえも落ちこぼれ仲間か」
優は君月に近づくと大丈夫だと言いた気な顔をしてポンッと肩に手をおく。
「触んな。」
「はは、じゃあ始めようよシノア。」
優と君月の会話を聞きながら俺はシノアに言う。
「そうですね。どうですか?みっちゃん」
「ここなら大丈夫だろう。修業に失敗して鬼が暴走した時は怖いが…」
その三宮の『暴走』という言葉にそれぞれが反応して優の方を見る。そして沈黙ーー
「ん?なんだよ。」
「なんでもないよね。君月?」
「ああ、」
「じゃあ《鬼呪装備》の本格的な使い方の講義を始めましょーかー。」
重たい空気を切り替えるかのようにシノアが話を変える。
「さっきの与一さんを見たとおりアレが具現化です。与一さん達は自力習得でしたが、これはそんなに簡単ではありません。」
「おまえらまじですげぇよなぁ。」
シノアの言葉に優はそう感嘆する。
「いや、えへへ、それほどでも…」
「優も出来るようになるよ。」
「うんうん、陵くんの言う通りだよ。二人とも僕より強いからきっとすぐだよ。」
「いや、無理だ。」
与一の言葉に反論するように声をあげる三宮。
「優と君月は力ばっかり強くてまるで考えなしだからそううまくいかない。」
「あ?なんだよそれ」
「いえいえ、みっちゃんの言葉は褒め言葉です。そもそも力が強い凶暴なタイプの鬼はなかなか言うことを聞いてくれませんので…そのタイプは《憑依化》のタイプが多いんです。」
つまりはーー優と君月は《憑依》である。ということだ。
「まぁ、《憑依》は力が強い分不便で…武器を出したり消したりすることすら簡単に出来ませんしーー」
「ってか、そもそとこれ消えるもんだったの?」
そう鬼呪装備を指差していう優に三宮は自分の鬼呪装備を出して言う。
「じゃあ、いつもあたしはこのでっかいのを背負っていたか?」
「そう言われるとそうなんだけどさぁ。」
「鬼の悪意が強すぎる場合凶暴すぎてなかなか消えないんです。」
「…悪意ね、阿朱羅丸おまえ性格悪いのな。」
そう呟く優に俺は笑う。
「優と同じように素直じゃないだけじゃない?」
「うっせぇよ。」
「あはは〜、じゃあ次の段階いきます。優さんみっちゃんと斬り合いしてどっちが強いかやってみてくださーい。」
その声を聞いて三宮が優と距離をとり武器を構えた。
「この距離を保って戦うぞ。じゃいく!出てこい《天字竜》」
「まじで!?この距離で攻撃できんの!?」
そして三宮は斧を振り下ろす。その斧は地面に食い込むがそれ以外なにも起きず…
「…え?ってなんにも…」
刹那、優にゾクッとする寒気いや殺気ーーそして地面の中から出てきたのは数体に及ぶ鬼ーーその鬼は優を囲むようにしてでてきた。
「おわっちょっ…‼︎」
「はい、隙あり〜!」
動揺する優にさらにシノアの攻撃が加わる。
「やるぞ、阿朱羅丸ーー力を貸せ。」
優の顔に鬼の痣が浮かび上がったと思ったら優は一振りで三宮の鬼を一掃する。
「うっわ、いまの全部処理しきっちゃうんですかぁ…バケモノですね。」
「んーでも、ちょっとやばかったな。」
「鬼に特殊能力を使わせるタイプーそれがさっき見せたものです。」
シノアの説明に納得する優。その中で君月は質問する。
「だがあんな力があるなら何故吸血鬼との戦いの時にださなかった?」
「出せないんですよ。鬼を体から出すと体内の《鬼呪》濃度が下がって宿主が弱くなってしまうから…あ〜見せます。」
そしてシノアは自分の鎌を前に出す。
「では、陵さん。刀でわたしの鎌を押しててください。」
「了解!」
俺はシノアに言われたとおり二人の武器が一直線になるようにあわせる。
「じゃ、わたしは鬼を具現化しまーす。でてきて、しーちゃん。」
鎌から鬼が出てくる時シノアは俺の押す力により吹き飛ぶ。なるほど…自分が弱くなるということはこういうことだったのかと一人納得する。
「大丈夫?シノア。」
「陵さん、ひどーい」
「えっ?」
嘘泣きを始めるシノア。
「……シノアの馬鹿な芝居は置いておくとして、まぁこういうことだ。」
「身体能力で勝る吸血鬼を相手に近接戦での弱体化は命取りーーーか。だから具現化は使いにくい?」
三宮の言葉にそう考えた君月。
「まぁ、ケースバイケースです。超近距離を守ってくれる騎士さんがいればーー」
「じゃあ、俺と君月そして陵で仲間を守る。そうすりゃ俺たちは強くなれる。そういうことか?」
「あはは、そうでーす。三人がわたしたちのナイトになってくれれば…じゃあ、次の段階ーー今度は憑依です。」
そしてシノアは立ち上がり憑依について話始める。
「まぁ、おまえはあたしの鬼を斬った時それっぽいことしたがな。」
「あれかぁ〜あれ憑依なの?」
「いえ、さらに先にいきます。さっきのもう一度やってみてください。」
「力を貸してくれーー阿朱羅丸」
さっきと同じように優の顔に痣が浮かび上がる。
「その状態で自分の体を切って、武器に『血を吸え』って言ってみてください。」
「ふぅん、じゃあ、まっ…俺の血を吸え阿朱羅丸!俺と強くなろうぜ!」
優の手から血が流れ出る。そして目が赤く染まりーー
「始まった‼︎暴走する場合はすぐ来るぞ‼︎戦闘準備!」
三宮が叫ぶ中、優はその場に倒れた。
「…これ、どうなった?また暴走すんのか?」
「さぁ?まだわかりません。鬼と融合出来るまでまだ二十時間くらいはかかりますからねぇ。」
「「二十時間‼︎?」」
俺と君月の声が重なり響く。その声にヨハネが気付いたか不安になるが、大丈夫そうだ。
「…その間、仲間のあたし達がこいつを見守るんだ。」
「ではでは、ここで夜明かしになると思うのでーー焚き火の用意とかしましょーかー。」
「…なあ、ちょっといいか?おまえらさっきから仲間仲間行ってるが…正直 俺はその言葉を信用出来てない。」
そう君月は冷たい声で言う。その言葉に誰もが真剣な顔つきになり黙る。
「なんの話だ?」
「俺と与一は、軍の上層部ーー柊の奴らに尋問を受けた。聞かれたのは『あの戦場で何があったか』だ。」
なるほど、君月の言いたいことが分かる。
「で、俺は何も知らないで通した正解か?」
「それが、正解だろうね。」
「だが、いつまで秘密なのが正解だ?こいつは暴走したことも、シノアーおまえを殺そうとしたことも、まだ知らないだろう?」
「シノア…秘密はやめた方がいいんじゃない?」
「僕もそう思うよ、だって僕ら仲間だよね…?」
俺や与一も君月と同意見でシノアの方を向く。
「…そうですね。優さんが目を覚ましたら全部話しましょう。それは優さんのことだけでなく、わたしたち仲間みんなの話をーー」
その言葉を聞いて俺たちは安心しーーそして…
『本当の真実を知ることとなった。』
次回は、優と陵の稽古です。
それでは次回もお楽しみに?