終わりのセラフ〜転生した少年〜   作:鬼城

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なんとか出せました。

今回もオリ主が頑張っちゃいます!

それではどうぞ!


三十六話 少しの力

建物の屋上。そこから見える市役所の外には人質がはりつけされていた。そして、妙に静かで異質な雰囲気を漂わせている市役所を見てグレンは呟く。

 

「これは…完全に待ち伏せされてるな。さて、どうするかね」

 

「当然、人質を救うんだろ?」

 

「優、そういうことじゃない。待ち伏せされているってことは来ることを向こうは知っているってことだから人質を救うにも難しいんだよ」

 

「じゃあ、どうすんだよ」

 

「ここから狙撃しておびき寄せよう。もしも敵の数が多ければ…人質は見捨てて逃げる」

 

グレンのその言葉におれは眉をひそめるも反発はしない。しょうがない。一番辛いのはグレンだろうから。それでも、優は納得いかないらしい。

 

「なっ…そんなこと…‼︎」

 

「中佐、今回の任務の最重要事項はなんでしょう?」

 

優が反発しようと声を出したところでシノアがそれを手で制しグレンに質問をする。

 

「死なずに人数を維持することだ。次に人質の解放、最後に人質の救出。死ぬぐらいなら逃げる」

 

「つまり…逃げた先にさらに他の任務があるんですか?」

 

「あぁ、その通りだ鳴海。なるべく長期間吸血鬼どもをこの愛知に引き留め渋谷本隊が態勢を整える時間を稼ぐのが俺たちの役目だ」

 

なるほど、囮任務だったわけか…。

 

「何人殺せたかはわからないが、市役所にいるクローリー・ユースフォード、チェス・ベル、ホーン・スクルドの三人を除けば…目標八人中五人殺せてる計算になる。十分だ。人質を解放できたら今度はなるべく敵の目を引きながらできるだけ長く生き残る任務を始める。だからーー」

 

「だから、ここから狙撃して派手におびき寄せ、だけも逃げるって作戦ね。で、うまくいくなら人質も救う」

 

「もっとうまくいけば任務を終えた他の部隊も集まってクローリーたちも殺せるだろう」

 

「あは、いかないよ。そんなうまくは」

 

「…………ネガティブ深夜が」

 

「事実を言ってる。けど、できるだけうまくやろう。与一くん手伝って」

 

「あっ、はい!」

 

深夜の言葉に与一は返事をし鬼呪装備を展開する。

そんな中、俺は人質を見ていた。十字架の板にはりつけられている人質を…

 

「どうした?陵」

 

「ん?あぁ、君月か…。いや、ただ何で十字架なのかなぁって」

 

「十字架……物語では吸血鬼が苦手としているものだな」

 

「うん…そうだね。それか、キリスト教が関わっているか」

 

「どっちでもいいだろ。もうすぐ任務が始まる」

 

その君月の声で目線を与一の方へ向ける。どうやら、5階の方でクローリーを見つけたらしく狙撃許可を取っていた。

 

「撃て‼︎撃って殺せ‼︎」

 

「はい‼︎行け月光韻‼︎!」

 

狙撃許可がおりてすぐに撃つ与一。その鳥に変わった矢はクローリーのいる場所へ飛ぶ。そして、爆発音。

 

「……まだだ」

 

「どういうことだ?陵」

 

「あいつは避けたんじゃなく与一の矢を受け止めた。それほどまでに強いってことだ。だから優、気をつけろ」

 

「そのクローリーって奴そんなに強いのか?」

 

「覚えてない?新宿に行く前に戦った吸血鬼を」

 

「あ」

 

そこまで言うと優は思い出したのかグレンの持っている望遠鏡を奪い見る。

 

「あっ!あいつだ!すげぇ強かった奴‼︎」

 

「そう、強いな。見てやっとわかった。おまけに向こうは貴族が三人、こっちは人間15人。正面からぶつかったらまるで勝ち目はない」

 

「本当にそう思う?グレン。俺なら貴族二人は……まぁ、大丈夫かな」

 

「よく言う…。お前体力残ってないだろ」

 

「はは…バレてた?それでも、チェスとホーンだっけ?なんか今思うとチェスゲームの名前だな。そいつらならまぁ、負けることはないね」

 

「………信じていんだな?」

 

そのグレンの言葉にコクリと頷く。俺の言葉でグレンは腹を括ったのか指示を出す。

 

「クローリー・ユースフォードの攻撃は一瀬グレン隊だけでやる。チェス・ベルとホーン・スクルドの攻撃は鈴谷 陵。鳴海隊、シノア隊はその隙に人質を解放しろ」

 

「でも…お前らだけで大丈夫なのかよ?」

 

「あれ?優。心配してくれるの?」

 

「当たり前だろ!陵、死んだら許さないからな!」

 

「基本、逃げながら戦うから…まぁ、大丈夫だろ。五分でできるだけ人質を解放しろ。だが、五分過ぎたら撤退だ。北へ逃げろ、名古屋空港が集合場所だ」

 

「集合場所へ着いたらその先の任務は?」

 

「着いたらそこに指令者がある。指令書の通りに行動しろ。よし、じゃあさっさとやるぞ作戦開始だ。敵は?」

 

君月の質問に手短に答えグレンは深夜に敵の状況を聞く。

 

「動かないね〜、多分僕らが来るのを待ってる」

 

「で…こっちから攻撃を仕掛けるんですか?」

 

「あぁ、美十の言う通りだ。五士の幻覚で200人くらいでせめているように見せかけたい。出来るよな?」

 

「簡単に言ってくれるなぁ…敵に近づかないと無理だよ」

 

「じゃあ、近づけよ」

 

「はは、これは五士は死んだね」

 

「ちょっ、深夜様まで〜」

 

そんな会話をしながら気を紛らわす。

相手は余裕で落ち着いて待っている。きっと、これまでの相手のように挑発などをしてもうまくはいかない。

 

「…大丈夫ですよね?」

 

「ん?シノアか…。大丈夫だよ」

 

「体力が残ってないって…」

 

「あぁ……まぁ、俺は大丈夫だよ。それよりも…グレン達の方が心配だけどね」

 

「私…待ってますから。帰ってきてくださいね?」

 

「シノアが待ってくれるなら」

 

そして、始まる。この任務の最後の任務が…。

 

「始めろ!仲間を救出しいまから五分で撤退だ」

 

グレンの声を聞いて俺たちはそれぞれの任務に走り出した。

 

 

五士さんが幻術を展開しその中でそれぞれが人質を解放していく。クローリー・ユースフォードは人間が仕掛けているのを見ているだけで手を出さない。

 

「さーて、どれが指揮官かな」

 

そんな声が聞こえてくることからクローリーはグレンを探しているみたいだ。そして、同時に俺は失敗したなと考える。

(グレンがそのクローリーの相手だから指揮官って分かった時点で終わりなんじゃ…)

 

「殺しにきたぞ吸血鬼」

 

「あ、見たことある顔だ。じゃあ君が指揮官か」

 

俺の心配を他所にクローリーとグレンの戦いが始まる。グレンが刀を振るとそれをクローリーも剣を振ることでグレンを弾き飛ばした。その隙に次は深夜が狙う。

 

「うへぇ、強ぇ…だが、お前は終わりだ」

 

「はい、チェックメイト」

 

完璧なタイミング。きっとよけられないだろう攻撃。

しかし、クローリーはすべて弾を剣で斬ってすぐさまグレンの足を掴み深夜に向かって投げる。そして、二人は壁にぶつかって倒れる。

(やっば…あれは強い。いまの俺一人でどうにかなるかな?)

 

「そこに居る君は誰かな?」

 

「…へぇ、凄いね。バレるとは思わなかった」

 

「それ、本気?」

 

「いや、これぐらい分かって貰わないと困るから。クローリー・ユースフォード?」

 

後ろから狙う前にバレてしまった。流石に驚いた。でも、注意はこっちに惹きつけることが出来たはず…これでグレン達も逃げることが出来るかな?

 

「おまえも俺と戦う?」

 

「いや、俺が用あるのは…そこのチェス・ベルとホーン・スクルドなんだけど……どうやら君を足止めしないといけないみたい」

 

「…結果俺と戦うってことでしょ?」

 

「勘弁願いたいね。撤退させてくれない?」

 

「無理〜」

 

「そっか、でも…もう遅い」

 

それだけ言うと俺はグレンと深夜を起こして撤退をする。

敵に背中をみせてゆっくりと……

 

「逃すと思ってるの?」

 

「いや、きみは俺たちの所には来れないから」

 

「どういう…」

 

クローリー・ユースフォードのその後の言葉は続かなかった。クローリーが一歩踏み出した瞬間にその足が切断された。その状況にクローリーも驚いているのがわかる。

 

「だから無理だって言ったんだ」

 

「………」

 

「じゃ、撤退させてもらうから」

 

そう言いながら俺はグレンと深夜に肩を貸して歩き続ける。

俺がクローリーに仕掛けた罠。

空中のある一部分を細く重力を強くすることで言わば重力の刃が出来る。つまり、クローリーの足が切断されたのはクローリーの目の前に張り巡らせたたくさんの重力の刃の一つに当たったからとなる。

体力的にもこれが限界だが…十分逃げる時間くらいなら稼げる。

 

「って訳で…グレンと深夜は速く逃げてくれる?吸血鬼の狙いはグレンだからね」

 

「分かった」

 

「あれ?陵くんは逃げないの?」

 

「ええ、体力がないんで…少し休憩します」

 

そう少しの嘘をついて、クローリーがいるところを見る。すると…クローリーは既にその場所にはいなかった。

(!?どこにいった?……まさか‼︎)

 

「グレン、深夜逃げろ!」

 

その忠告は既に遅く、グレンと深夜の目の前にクローリーは下から床を突き破って現れた。

 

「やぁ、家畜君たち」

 

「まさか…下の階から来るとはね…」

 

「だって、あそこ絶対いっぱい罠かけてあるでしょ?」

 

「………グレン、深夜。ごめん、せめてクローリーからは逃げて」

 

当初の予定通り俺はチェスとホーンの相手をするため走る。そして刀をその二人に向けて振る。

 

「あら?私たちに勝負を?」

 

「クローリー様!クローリー様!この人間殺っちゃっていいですよね?」

 

「ん〜〜、いいよ。俺はこの二人を相手にするから」

 

チェスとホーンはそれを聞くと自分の服のスカートを少したくし上げてぺこりとお辞儀をする。

 

「第十七位始祖が一人チェス・ベル」

 

「第十七位始祖が一人ホーン・スクルド」

 

「日本帝鬼軍に所属鈴谷 陵」

 

なんとなく、自己紹介をされたのでこちらも返してみる。どうやら、その対応は間違っていなかったみたいだ。

二人の吸血鬼は笑顔を俺に向けている。まぁ…その笑顔はとてつもなく強いが…

 

「クローリー様を傷つけた奴の名前は知っておいて損はないですわよね?チェス?」

 

「うん♪それよりさ速く終わらせちゃお!」

 

そう言ってまず動き出したのはチェス。

そのまま真っ直ぐに突っ込んできたチェスの攻撃を受け止めながら背後から来た槍の斬撃を避ける。

 

「くっ…」

 

「さっきのをかわしましたか…」

 

「あはは、君強いんだね。でも、クローリー様の為にも殺さなくちゃ」

 

そして、さらに追撃してくる二人。そんな二人の猛攻にただ防御をすることしかできない。

 

『陵、負けちゃうの?』

 

『うるさい!くっそ…俺の溜めてた体力全て持ってけ沙鬼!』

 

『本気?どうなるか知らないわよ?』

 

『死なない程度に頼むよ』

 

出来れば使いたくなかった残りの体力。その全てを使ってこの建物ごと破壊する。その為にも隙を作らないといけない。

 

『少し時間がかかるわ。貴方が構築するわけではなく私がしないといけないから。だから、その間走ってはダメよ?』

 

『二分で用意。流石にそれ以上は体力を削られる』

 

そして、今尚つづく攻防に敵は怒りを見せる。

作戦が荒っぽくなっていき、避けるのが簡単になっていく。

 

「チェス!もっと冷静に!」

 

まぁ、それでもホーンはまだ冷静さをなくしていないみたいだ。

あと一分半……。

 

「本気で行く!鞭よ血を吸え!」

 

「チェス!?」

 

さらに速くなる吸血鬼の攻撃。流石にきついそう思い始めた頃、沙鬼から準備がもう終わるとの連絡が入る。

その連絡を聞いたあと、チェスの鞭をできるだけ威力を殺して手で受け止めた、これには相手も驚いたのか鞭を掴まれた!ということで一気に後退した。その隙を見逃すはずがない。

 

『今!!』

 

『重力保護バリア展開。形状変化一万個展開確認。目標吸血鬼がいる座標と名古屋市役所全体。発動まで3、2、1……』

 

0という合図と共に名古屋市役所全体を一万個の剣が襲う。その剣は約三分にわたって上空から降り注ぎ、地震に似た震えが起きたと同時に市役所を倒壊させる。

そんな状況を俺は静かに見守り……攻撃が終わったと同時に力なく倒れ落ちた。




次回の投稿は四月になります。

それでは次回もよろしくお願いします!
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