終わりのセラフ〜転生した少年〜   作:鬼城

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こんな駄文ですがこれからも読んでくださると嬉しいです!


三十七話 鬼才

血の匂いが鼻をくすぐる。

沢山の機械が置いてあって太陽の光が通らず、真っ暗な部屋。機械による淡い光で僅かながらに見える自分の小さな手はーー血で覆われている。

その手は自分のやめろという命令を聞かずになお目の前にある一人の死体からでる血をもてあそぶ。

なんて、居心地の悪い場所。

なんて、酷い記憶。

なんて、悪い夢。

そして俺は笑う。端で怯えているもう一人の人間を見て。

ーーあぁ、ここにも贄がある、と。

 

「ラ…ラララ〜♪」

 

「こ…こないで………。なんでもするから!!」

 

「ララ〜ララララ♪」

 

何かの歌を歌いながら、端にいる人間に近づく。

その人間は怯えた顔をしているのが何故だか分かった。暗い部屋なのにその人間が女性で……母親なのだと分かる。それでも、自分の身体は言うことを聞かずに女性へと近づく。

 

「ララ〜ラ」

 

歌が終わる。

刹那、女性の身体を自分の手が貫く。生温い血の感触。

そして、力無く倒れゆく女性。

 

「ご…めん…なさ、い。りょ、う」

 

その女性は笑っていた。涙を流して笑っていた。

さっきまでの怯えた表情はなく清々しい表情をしてーー。

それはきっと、幸せに死ねた訳ではない。それなのに彼女は笑う。その理由はきっと誰にも分からない。それでも、俺はその表情をみて少し救われた気分になった。

 

 

 

 

 

 

 

ーー酷く哀しい記憶。

 

 

目を開けると優、君月、与一、三宮、シノアの顔が目に映った。

心配そうな顔から一気に安心の顔に変わって五人全員が溜息をつく。

 

「良かった…目が覚めましたか」

 

「うん?……何分寝てた?」

 

「いえ、ほんの少しです」

 

「そっか……シノア達は怪我ない?」

 

「はい、剣が降る前に黒いバリアみたいなものが私たちを守ってくれたので」

 

どうやら、ちゃんと重力保護バリアは機能していたようだ。一通り会話を終えて周りを見渡すと市役所がほとんど全壊で瓦礫がそこら中にころがっている。そして、月鬼ノ組の人質を含めた仲間。かれらはなにが起きたのかよく分かっていないみたいで唯、全壊した市役所を見つめている。当然、その中にはグレンと深夜がいない。

 

「グレンと深夜はどうなった?」

 

「グレン中佐と深夜少将はあそこです」

 

そう言ってシノアが指さした場所に二人はいた。二人は同じ場所を見つめている。その場所をみてみるとそこには両腕がないクローリーに片足、片腕がないチェス。最後にーー。

腹部や腕、足に剣が刺さっており、二人を守るように立っているホーン。

 

「……クローリーさ、ま。チェス。ご無事、で?」

 

「ホーン?なんで…」

 

「チェス。私は大丈夫です。時間があれば、回復します、か、ら」

 

「ホーン。今は休め」

 

「クローリー様……ありが、とう…ござい、ます」

 

倒れるホーンをチェスが受け止める。

その途端に刺さっていた剣は砂のように消えてホーンの血だけがその場に残った。

それを見つめた後、クローリーはグレンと深夜を見る。

 

「君たち人間はやはり凄い。いつの間にこんなに力をつけていたんだ?」

 

「教えるかよ」

 

「いや、教えてもらう。フェリド君とかどうとか言ってられなくなった」

 

「ちっ…意外に仲間思いなんだな」

 

「まぁ、俺は昔は人間だったからな。それは否定しない」

 

そう言ってクローリーは動く。

今までと比べて遥かに速いスピードでグレン達に向かって走り出す。それをグレンは無言で見つめてギリギリの所で深夜の背中を思いっきり押す。

 

「なっ…!」

 

「深夜、後は頼んだ」

 

「何言ってる!?」

 

「あーー、俺はもうダメだ。逃げろ、あとは頼んだぞ」

 

その直後、グレンとクローリーを中心にして爆風が吹き荒れる。それは二人の戦いが始まったことを意味していて同時にグレンが囮となったことを意味していた。

 

「くっ……くそ!」

 

深夜は走りながらも悔しさを声に出す。

それはあまりにも柊家にしては感情を出しすぎていて彼は他の柊家の人と比べて人間味を帯びていた。それはやはり、彼が柊家の養子であったということでもあり、グレンの本当の仲間であった。ということを示していた。だから、俺はこんな人達のために力を尽くせる。背中を任せられる。だから後のことは任せよう。他でもない、グレンの家族に…仲間に。

 

「撤退だ!グレンは捨てる!」

 

その深夜による言葉は俺たちにしっかりと届き、そして誰もが心のなかで悲鳴をあげた。

 

 

新宿 日本帝鬼軍 第二都市

 

「第六天使移設準備完了」

 

「第七天使移設準備完了」

 

そんな声が響く中、ここ新宿では確実に準備が進められていた。沢山の車にゴンドラ。それらを暮人は見物するがのごとく、建物の屋上から見下ろしている。

 

「よし、もっと急げ、今日を逃せば人類は滅亡するぞ」

 

そう言いながらさらに指示をだす暮人。

その暮人の隣には三宮 葵がおり、只々立っている。指示が出るのを待っているのだろう。

そんな中で一人の男性と約五人ほどの人が暮人に近寄る。

 

「おい、暮人」

 

そう男性は言う。この口振りからして暮人と同じ家のものということが分かる。

ーー柊 征士郎

それが彼の名前だ。

そんな、五人ほど引き連れてきた征士郎に暮人は無表情で答える。

 

「なんだ、征士郎か。おまえも新宿に来たのか」

 

「父上の命令だ。おまえが失敗しないか監視に来た」

 

「………父上のやりそうなことだ」

 

「吸血鬼の貴族どもが攻めてくるらしいじゃないか。本当におまえに任せて大丈夫なのか?父上は失敗は許さないと言ってるぞ」

 

その言葉に暮人は無表情だった顔を崩し可笑しいというように笑う。

 

「…失敗は許さない?なんだそれ。は、ははは」

 

「な…なんで笑う?」

 

「だってその冗談は面白すぎるだろう。俺がここで失敗したらそこで人類は滅亡だ。そのあとはどうぞ好きに怒ってくれよ」

 

つまりはそういうことらしかった。

ここでの失敗は人類の失敗だ。そうなると人類は今度こそ本当の滅亡を辿る。そうだというのに、許さないと来た。どの状況でそんなことが言えるというのか。

それは人類が滅んだ時に責任をおえと言っているようなものだ。人類が滅んだ時に誰が責任を負うというのか?簡単だ。誰も負えない。だってそもそも人類がいないのだから。そうしたら、そこで終わりだ。

どうやら、父上である柊 天利は意外と間抜けらしい。などと考えながら暮人は笑う。それに征士郎は顔を赤くして怒鳴る。

 

「おい!!言葉に気をつけろよ‼︎その態度全部父上に言いつけて問題にーー!!」

 

そこで言葉は途切れる。

暮人により胸を強く押された征士郎が倒れたためだ。

突然、手を出されたために驚く征士郎。その征士郎に対して暮人は怒りを見せる。

 

「な…何すんだよ!?」

 

「前線に立たない無能どもは黙って見てろよ」

 

「誰が無能だって!?」

 

今度は征士郎が手を出す。

その手は暮人の襟を掴んでいた。それに暮人は冷たく見下ろしながら言う。

 

「おまえ、誰の襟を掴んでる?」

 

「お、脅したってこわくねぇぞ!!俺には父上からの命令がーー」

 

「はは、その父上はおまえがここで死んでも守ってくれるのか?」

 

少しの殺気を放しながら暮人は笑う。それに征士郎は必死になって暮人から離れ他の五人に向かって「お…おまえら!!俺を守っ…!!」と、でもその言葉は続かなかった。後ろを振り返って征士郎が見た光景は血を流して倒れているながら手下とそれを殺ったであろう金髪の女性ーー三宮 葵。

 

「…な、お…おまえらこんなことして許されると…」

 

「許されるさ、なにせ俺は今日世界を救うからな」

 

「……」

 

「暮人様、全部隊の準備が完了しました。いつでも移動できます。ヘリにお乗りください」

 

「ん、わかった」

 

葵の言葉を聞いて暮人はヘリに向かおうと歩き出す。しかし、それを征士郎の声が止めた。

 

「ヘリ!?いったいどこへ行く!?ここに吸血鬼が攻めてくるんだぞ!?」

 

「関東に吸血鬼は入れない。名古屋に封じ込める」

 

「なっ、そんな話は聞いてないぞ!?渋谷の兵も新宿で吸血鬼に対応するというから出したんだ!おまえ父上に逆らうつもりか!?」

 

「だったら……」

 

どうする?という言葉は続かずに暮人はありえないものを見たというように驚きを見せる。その目線の先には薄紫色の髪をした女性、真昼と似た顔をしているその女性はまさしく柊家のもの。

 

「…?おい!暮人…どこみて…」

 

征士郎は暮人の雰囲気が変わったことに気づき暮人が見ているものへと目線をずらす。やはり、彼も固まってしまった。

ありえないものを見るようにーー。

 

「は、ははっ」

 

暮人は笑う。おもしろいというようにーー。

しかし、征士郎は完全に怯えていて震えが隠せていなかった。

 

「柊 レミ……生きていたのか」

 

そして、その言葉に反応するようにレミはニコリと笑う。

その姿は6年前とほとんど変わりなくまさに不気味だ。

 

「あれ?暮人兄さん?老けた?」

 

「……今までどこにいた」

 

「え?死んだと思われていると思ってたんだけど…」

 

「あぁ、父上もそう思ってるだろうがな。俺は騙せてなかったぞ?死体もなかったしな」

 

「やっぱりか〜。じゃあさ、天利様に伝えといてくれない?私は自由な天使になりました、と」

 

その言葉に暮人は眉を顰めながらも了解したというようにコクリと頷く。その様子に暮人も緊張しているのだろうと分かった。

真昼が天才ならばレミは鬼才だ。

だが、それ故に恐れられた。柊 天利でさえも……。

真昼以上に愛を知らずに生きていた鬼才。彼女の正体は紛れもなく柊家の人間。

 

「そうそう、これ私からのプレゼント。それは鬼呪装備の遥か上を行く装備ーー神呪装備。鬼神である黒鬼よりも上の神を封じ込めた武器。それを使えるのは…天使か神ぐらいだけど…」

 

「神呪装備?」

 

「そ、でも触れないことをお勧めしますよ?それを使えば上位始祖を殺せるでしょうけど……触れたら最後、人間ではなくなる。本当の意味でね♪」

 

「なら、何故渡した?」

 

「そっちの方が面白そうだったから。それに6年分の誕生日プレゼント♪」

 

そう言って彼女は消える。

吸血鬼のように去ったわけではなくその場から消える。それはあまりにも速すぎただけなのかもしれない。だが、少なくても今は瞬間移動をしているようにしか見えなかった。




主人公の出番が少なかったこの回です。

神呪装備という新たな武器が生まれましたが…どこで使うのかはお楽しみです。想像ついている人もいるかもですが……

それでは、次回もよろしくお願いします!
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