みなさんはゴールデンウィーク楽しめていますか?
え?馬鹿な作者は死にましたよ。
さてさて、三十八話です。それではどうぞ!!
深夜の命令はここでいえば最適解だった。
ここにいれば完璧に全滅で……それでも、グレンという一人の犠牲がいる。グレンと数人の仲間、天秤にかけると必ず右に傾く。つまり、グレンは捨てるということだ。
それは、誰もが分かっていただろう。それでも、やはり認めたくはなかった。
「ふざけんな、てめぇ!!」
「…優さん!!撤退です!」
「冗談、だろ?シノア……グレンがまだ戦ってるんだぞ?俺ら、家族じゃなかったのかよ!?」
「………くッ、優。今は…逃げろ。グレンの、ためにも…ここでおまえが助けに、いっても…なんにも、ならない」
「陵まで……そんなこと、わからないだろ!?」
優……
言いたいことは分かる。グレンは家族だ。それを手放すことなど優は出来ない。でも、だからこそ…グレンの気持ちも考えないと。グレンだって家族に死んでほしくないんだ。
「お願いだ…から、優」
少し震えている声。俺の気持ちを汲み取ってか優は落ち着きを取り戻して静かになって、みんなに「ごめん」と謝る。
「…でも、でもさ。こんな何もない世界であっさり家族を捨てたら、その先は…これから、俺たち一体何に執着して生きりゃいいんだ?あいつは……グレンは俺たちの家族なんだぞ!!!」
グレンは家族だ。
あぁ、知っているさ。俺にとっても大切な存在だったのだからーー。
優も何かを思い出しているのだろう。その顔には涙が頬を伝っていた。
暫くの沈黙のあと、優は少しの涙を拭って俺たちに笑顔を向けた。
その笑顔は本当に清々しいほど光っていて……優が考えていることが分かってしまうのが悲しかった。
「ごめんみんな。やっぱ俺にはチームプレイは無理だった。おまえらは行けよ。俺はここに残る」
「バカが!残ったところで何ができる!!無駄死にだ、さっさと行くぞ!!」
君月が叫ぶ。それにも優は聞かずに鬼呪促進薬を手にし、口の中へ入れる。
「だ、ダメですよ優さんっ!!鬼呪促進薬を同時に2錠以上飲んだら死に……!!」
「家族を救えないくらいならーー」
「だめぇ!!!」
「死んだ方がマシだ」
そう言って促進薬を口にする優。シノアが駆けつけたときには優は飲み込んでしまっていて……だから、シノアは叫ぶ。
「2錠飲みましたよね!?吐いてください!!」
「…ん〜でもさ、なんか意外と大丈夫な感じも…」
そう言ったと同時に優は口から血を吐きそしてアアアァー!と声をあげながら倒れていった。
◆
「そんな……」
シノアがその場にしゃがみ込む。
誰もが言葉を失い場には三宮とシノアの泣き声だけが響く。
「君月…優を、担いで場を、はなれよう…」
「分かった」
俺の指示により君月はそっと優を担いで動き始める。それを見た後におれは与一を呼んで肩を貸してもらいながら立ち上がる。
少し遠くからはキンーと剣と剣が合わさる音。まだ、グレンは頑張っているらしい。だが、それもいつまでもつか分からない。
「シノア、三宮。せめて、安全な、ところまで…」
「……わかり、ました」
「…あぁ」
そう言って、近くにあった建物まで行って身をひそめる。
優を地面に寝かせるようにして置き、俺たちは優を囲むようにして集まった。まだ、間に合うかもしれないという希望を持って……
ーーあぁ、俺はいつも守れない
ーーこの力はなんのためにある?
ーー力が…まだ、足りない
ーー俺は弱い
ーー俺はなんのためにここにいる?
二人の家族を失いそうなこの状況。
目の前にあるのは真っ暗な暗闇。
もう…疲れたな。そう感じながら一度目を瞑った時、声が聞こえた。
『また、君は救えない』
『…そうだ、ね』
『だから、私の力がいる』
『………』
『さぁ、君の四つ目の特権はなんだい?』
『無限の体力』
『あはは、そう言うと思ったよ。でも、それは苦しい。無限の体力?そんなことしていたら君は死んでしまう。無限に体力があるということはそういうこと。自分が疲れていることも分からずに身体が限界を迎えるかもしれない』
『それでもいい』
『………あはははは。負けだ、私の…。よしそれじゃあこうしよう。体力は無限というより回復が異常に速いことにしよう。だから君は何度も体力がなくなりそれがすぐに回復するというループ。精神的苦痛だよねぇ。それは悪魔でも嫌がると思うよ』
『………』
『さぁ、与えよう。家族を救えるようにね!』
これで、神からの接触は終わり目を開ける。
すでに体力は戻っているらしくまた、動けそうだ。それを確認してから立ち上がりまだ、倒れている優を見つめた。
「陵くん?大丈夫なの?」
「ん、与一ありがと」
心配をかけたなと思いながら次はグレンがいるだろう場所の方向を見つめた。今から行けば間に合う。だが、優が心配だ。
「シノア、優は……」
「ダメです」
「へ?」
「行くつもりですよね?グレン中佐のところへ…少しは体力が戻っているようですが…行ったら陵さんも……」
「転生させた神と接触した。もうわかるね?シノア」
「……神様が…なんだって、言うんですか?私の…姉を助けてくれなかったのに…」
姉?柊 真昼のことだろうか?
過去に何があったのかは知らないがシノアは神を憎むような出来事があったのだろう。
きっとそれは俺と同じように…重い重い出来事を背負っているのかもしれない。
「俺は神に選ばれたとは思わない。でも、優がこんなにも頑張って家族を守ろうとした。なら、ならさ…俺も頑張らないと」
「そ、それは……」
「俺は……そんなことでしか罪滅ぼしができないから…」
その言葉にシノアは黙る。
と、それと同時に与一と君月の「優くん!」「優!」という声が聞こえた。そしてむくりと起き上がる優の姿が見える。
「……戻った。ちょっと行ってくる」
そう言うと優は物凄い速さでグレンのいる方へ走って行った。戻った。という言葉からさっきまで鬼と接触していたのだろう。そして、力を貰った。さっきのスピードは今までのよりも特に速かった。俺が促進薬なしで本気で鬼呪装備を使うのと同じぐらいよりちょっと遅い?いや…まぁ、速い。
「優が行ったから、行ってくるよ」
「俺も行く」
「君月…じゃあ、俺は先に行ってるよ?」
「分かった。俺もすぐに追いつく」
そして、優が向かった方向へ俺も走り出した。
◆
何処からくるか分からない攻撃。
やはり、クローリーは別格的に強かったらしい。ギリギリで凌ているクローリーの攻撃はだんだんと防げなくなっている。
それに、グレンは鬼の力をギリギリまで引き出している。いつ、鬼に乗っ取られるか分からない。それでも、彼は戦う。
「衝撃を吸収しろ!真昼ノ夜!」
力負けによる衝撃を吸収しながら戦うグレンはすでにもうジリ貧だ。誰がどう見ても負けが決定しているこの戦い。
そして、その予想はやはり正しくグレンの一振りがクローリーに躱されてグレンはバランスを崩す。それを見逃さないクローリーはすぐさまグレンの腕を掴み剣先を首元へ向ける。
「君の負けだ」
「ハハッ、誰が負けだって?俺がいなくてもこの任務は続く。俺一人が負けるならいい方だ」
「……任務ねぇ、君たちは何を目的としている?」
「知るかよ。上も何考えているのかサッパリなもんでね。俺は信用されてないから教えられないわけよ」
「ふぅん、君、嫌われてるんじゃないの?」
「否定はしないな」
昔に比べては一瀬の扱いはだいぶ良くなった方だが…それでも、ほかの名家に嫌われていることは変わりない。
もちろん、グレンも上を信頼するわけでもないのでお互い様といったところなのだろう。
「まぁ、いいや。拘束させてもらう」
「どうせ、勝手にするだろ?」
「はは、違いない」
チェスが差し出してきた拘束具をグレンへと使い、グレンをフェリドのところへ連れて行こうと歩き出すクローリー。
刹那ーー。
一線の光がクローリーを襲った。
◆
ほんの少しして、さっきまで戦っていた場所である市役所(崩壊)にたどり着く。そこには既についていた優が刀を横に振ってクローリーに初撃を与えていた。
だが、それは当然の如く見事に刀で受け止められ、防がれる。それを見て優は一旦後ろへ下がり刀をもう一度構える。その隣で俺もクローリーに刀を向けた。
「優は本当にバカだなぁ」
「うるせぇ、俺には家族を見捨てるなんで出来ないんだ」
「そうだね。だから俺も手伝うよ」
「……すまん」
「そこは素直にありがとでしょ」
戦闘前だというのにそんな変な会話をする。それでも誰が見てもそこには隙がない。優は物語の主人公のように強くなるなぁなどと思いながら俺はクローリーに向かってニコリと笑う。
「あはは、怖い怖い」
「グレンを…返してもらおうか?」
「嫌だね。力強くで来いよ」
その瞬間、俺と優は動く。
優は前から襲い、俺は背後から襲う。挟み討ちといったところだ。
その攻撃はクローリーには届かず空ぶった。建物が壊れていることもあり、動ける範囲が大きくなったためクローリーは上へ飛んで俺らの攻撃を回避したためだ。しかし、それを予想していた俺はジャンプしてクローリーの上までくるとそのまま刀を振り下ろした。
キンーッ
そんな音が空気を震わせる。
初めて両手で剣を握っていたクローリーの顔には苦しげな表情があった。と、そこに優も参戦しさらに追い討ちを掛ける。
「これで、終わりだ」
クローリーは俺の刀を防いであるため背中はガラ空き、そして優の攻撃を空中なので防ぐことすら出来ない。
しかし、優の攻撃は弾かれた。
「大丈夫ですか!?クローリー様!」
チェス・ベル。
間一髪というところでチェスは鞭を使って優の攻撃を防いでいた。その顔には余裕がない。それほどまでに優は強くなっていた。
しかし、チェスが戦闘に加わったことによりグレンの近くには負傷しているホーン・スクルドがいるだけだ。これならいつでもグレンを助けることができる。
「よっと…」
すぐさま、地面に足が着くとグレンの方向へダッシュする。しかし、それはやはり読まれていたのか目の前にはクローリーの姿があった。
「通すかよ」
最初の余裕は見られず剣を構えているクローリー。
そのクローリーに優は突っ込む。流石は猪突猛進と言われるだけある。冗談言ってる時じゃないか…。
「阿朱羅観音ーーー3刀!!!」
優の周りに刀がババババッと出る。
それを見て、クローリーは本当に、本気を出した。
「剣よ僕の血を吸え」
血の色である赤色をした剣を構える。それから放たれる威圧は凄まじきもので流石の俺でも冷や汗をかいてしまう。
アレを受け止めたら死ぬまではいかなくても重傷となる。そう頭の中で声が響く。
ーードオンッ
ギリギリのところでクローリーの攻撃を避ける。前にいた優も避けることが出来たみたいだ。その攻撃はずっと遠くのビルまで届きそのビルを倒壊させる。
まさに、チートである。
「ヤッバ」
「わ、これよけれるんだ。でも、これで終わり」
すぐさま、クローリーは剣を優に向かって振る。それを苦しげに防ぎ優は力負けして吹き飛ばされた。
ーーまだだ、まだ、力が足りない
そう呟く優。力に執着するのはいつものことだが今日は様子がおかしい。まるで……欲に支配されているような。そんな感覚さえ優に覚える。
「おい優!!こいつは他の貴族と次元が違う!!さっさと逃げろ。陵!早く優を連れて行け!!」
「無理だよ……グレン。優はすでに…」
さっきまでの違和感の答えにたどり着き俺はどうにか声を絞り出す。あれはもはや優であって優ではない。天使の時のようにまだ、乗っ取られることこそされてないが俺の声など聞こえやしない。
「な…なんでここまでして力が足りない…?」
「そりゃ、もちろん。君が家畜だからさ」
「黙れ」
「それとも何かい?君らは牛や豚を食べる時にいちいち家畜の反抗に怯えるのかい」
「黙れ黙れ黙れ!!」
そして優は満身創痍の状態でも刀を振る。それを見ることしか出来なかった俺はきっと臆病なのだろう。優を…失うのが怖い。俺の中で決定的な何かが壊れてしまうのではないかと怯えてしまう。その気持ちは行動までにも表れて刀を動かすことも俺には出来なかった。
次回ははやくに出したいと思いますのでよろしくお願いします!!